― 在外被爆者に関するトピックスをいくつか抜粋して紹介します ―

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2004年 9-10月 11月 12月
※(かっこ)内の日付は当ホームページにおける更新日です。
※情報は上から [日付の新しいもの→古いもの] の順で並んでいます。

2005年3月

(3月23日) 在ブラジル原爆被爆者協会の森田会長夫妻 長崎県、市に要請書を提出
(3月17日) 在外被爆者葬祭料訴訟 長崎市が控訴 厚労省の要請受け
(3月17日) 8月6日の平和祈念式典 ブラジルなど38カ国の元首、大使に参列求める方針
広島市
(3月17日) 山口県 被爆者渡日支援事業の実施要綱まとめ運用を開始 全国で3番目
(3月17日) 在外被爆者の渡日に同行する介助者への支給基準について合意
― 広島、長崎4県市と厚労省
(3月15日) 在外被爆者への葬祭料認める 初の司法判断 長崎地裁
(3月15日) ブラジル在住の韓国国籍者・「泰一さん ようやく念願の手帳を取得
(3月15日) ブラジル、米国、韓国の被爆者団体代表 広島県、市に要請書を提出
(3月15日) 韓国人女性 手帳交付却下で長崎市を提訴へ 在外被爆者では初
(3月15日) 韓国原爆被害者協会 韓国政府、日本の支援団体と「手帳取得促進共同委」を設置
(3月15日) ブラジル、米国、韓国の被爆者団体代表 尾辻厚労相と会見、要望書を提出
(3月15日) 「在外被爆者保健医療助成事業」3月末にもスタート
〜 ブラジルでは民間保険加入者だけに支給 未加入者には支給なく、今後に課題

(2005年3月23日)
 【長崎新聞】〔在ブラジル原爆被爆者協会の森田会長夫妻 長崎県、市に要請書を提出

※〔ブラジル、米国、韓国の被爆者団体代表 尾辻厚労相と会見、要望書を提出
  〔
ブラジル、米国、韓国の被爆者団体代表 広島県、市に要請書を提出〕     ― の続報

 3月23日付『長崎新聞』は、当協会の森田隆会長と妻の綾子事務局長が、22日長崎県庁と長崎市役所を訪問し、担当職員に要望書(→ ブラジル「要請書」2005年2月28日付)を提出したことを伝えました。

 今回の訪日では2月28日の厚生労働省、3月5日の広島県庁、市役所に続く、行政機関への訪問・要請書提出になります。

 また森田会長夫妻は同日、長崎市内で一般向けの講演を行い、在外被爆者、在ブラジル被爆者の立場や心情などを語り伝えました。

 → 詳細は『長崎新聞』3月23日付 をご覧ください。

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(2005年3月17日)
 【長崎新聞】〔在外被爆者葬祭料訴訟 長崎市が控訴 厚労省の要請受け

   ※〔在外被爆者への葬祭料認める 初の司法判断 長崎地裁〕の続報

 3月17日付『長崎新聞』によると、韓国在住で昨年7月に亡くなられた故・崔季Kさん(享年78)の妻、白楽任さん(76)が、長崎市を相手取り、被爆者援護法に基づく葬祭料の支給申請を同市が却下した処分を取り消すよう求め全面勝訴した長崎地裁判決に対し、被告である同市は16日、判決を不服として福岡高裁に控訴しました。

 11、16、17日付同紙によると、同市の伊藤一長市長は10日「市として控訴したくないとの意向を国に伝える」と語り、15日厚生労働省の西博義副大臣と面会しました。しかし西副大臣は「心情的には理解できる」としながらも「上級審の審判を仰ぎたい」と、伊藤市長に控訴を要請した、ということです。

 葬祭料支給は、国が定めた被爆者援護法に基づいて自治体が行う“法定受託事務”(地方自治法第2条2項)であるため、法の縛りがある以上、長崎市単独で施行方針を決めることができません。そのため同市長は「国の控訴の方針は残念」と話す一方で「法定受託事務という趣旨からいえば、国の方針を引き継ぐことになる」として、最終的に控訴に踏み切った模様です。

 これに対し、崔さんの遺族は「ほかの在外被爆者のために勝つまで努力する。悔しい思いでいっぱい」と話した、といいます。

 → 詳報は『長崎新聞』3月16日付、同17日付 をご覧ください。

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(2005年3月17日)
 【中国新聞】〔8月6日の平和祈念式典 ブラジルなど38カ国の元首、大使に参列求める方針 広島市

 3月16日付『中国新聞』によると、広島市は15日、被爆60年にあたる今年8月6日の平和祈念式典に、38カ国の元首、駐日大使らの参列を求める方針を示しました。

 同市は過去にも、米英ロ仏中、インド、パキスタンなどの核兵器保有国などを中心とした諸国に参列を呼びかけてきましたが、今年は新たにブラジル、メキシコ、エジプト、南アフリカ、スウェーデン、アイルランド、ニュージーランドの「新アジェンダ連合(NAC)」7カ国、EU加盟25カ国、カナダ、オーストラリアなどにも参列の要請文を送る、ということです。

 なお「新アジェンダ連合(NAC)」とは、1998年6月に共同宣言「核兵器のない世界へ - 新たなアジェンダの必要性」を発表した核軍縮推進派の国家グループです(『現代用語の基礎知識 2005』438ページより)。

 → 詳報は『中国新聞』3月16日付 をご覧ください。

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(2005年3月17日)
 【中国新聞】〔山口県 被爆者渡日支援事業の実施要綱まとめ運用を開始 全国で3番目

 3月16日付『中国新聞』によると、山口県はこのほど在外被爆者渡日支援事業の実施要綱をまとめ、運用を開始しました。

 同紙によると、国による在外被爆者渡日支援事業は2002年7月、広島、長崎4県市を実施主体としてスタート。03年8月からは全都道府県にも拡大しています。
 このうち具体的に要綱を策定するのは大阪府、福岡県に続き山口県が3番目となります。

 同県では近く、韓国原爆被害者協会と大韓赤十字社に要綱を送り、「被爆者健康手帳交付「被爆確認証交付」「情報提供・相談」を柱とした支援事業の開始を説明する、ということです。

 → 詳報は『中国新聞』3月16日付 をご覧ください。

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(2005年3月17日)
 【中国新聞】〔在外被爆者の渡日に同行する介助者への支給基準について合意 ― 広島、長崎4県市と厚労省

   ※ 2004年11月8日の続報

 3月15日付『中国新聞』によると、広島、長崎の4県市と厚生労働省は14日までに、在外被爆者の渡日に介助者が同行する場合、国が介助者に支給する旅費などの支給基準について合意しました。

 厚生労働省は昨年9月1日付で、単独の渡日が困難な被爆者に介助者の同行を認める通知を出しました。しかし4県市では、通知内容にあいまいな部分があるとして、判断基準を一致させるために担当者が集まって協議を行ってきました。

 同紙によれば、今回の合意の結果、たとえば被爆者健康手帳の交付申請では、厚労省から介助者一人に対し、往復渡航費、申請前日から交付翌日までの宿泊費(一日あたり7,800円)と日当(同1,700円)が支給されることになります。つまり在外被爆者と同額です。

 ただし渡日治療では、病院側が介助者の付き添いを必要と判断した場合を除き、介助者は一度帰国し、被爆者が退院する時に再び渡日してもらう方針だということです。

 なお介助者が同行する場合、
・支給される介助者の費用は原則1人分
・「要介助状態申告書」と「質問表」の提出が必要
 ということです。

 → 詳報は『中国新聞』3月15日付 をご覧ください。

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(2005年3月15日)
 【長崎新聞】〔在外被爆者への葬祭料認める 初の司法判断 長崎地裁

   ※ 2004年10月10日の続報   ※ 2005年2月9日に関連記事あり

 3月9日付『長崎新聞』によると、8日、韓国在住で昨年7月に亡くなられた故・崔季Kさん(享年78)の妻、白楽任さん(76)が、長崎市を相手取り、被爆者援護法に基づく葬祭料の支給申請を同市が却下した処分を取り消すよう求めた裁判の判決が言い渡されました。判決で田川直之裁判長は「在外被爆者が援護を受けることができないのは同法の趣旨に反する」とし、原告の主張を全面的に認める判決を下しました。

 在外被爆者の葬祭料をめぐる訴訟は広島、大阪地裁でも係争中ですが、今回の判決は、亡くなった在外被爆者の遺族への葬祭料支給申請を認めた初の画期的な司法判断となりました。

 被爆者援護法では、
「都道府県知事は、被爆者が死亡したときは、葬祭を行う者に対し、政令で定めるところにより、葬祭料を支給する。ただし、その死亡が原子爆弾の傷害作用の影響によるものでないことが明らかな場合は、この限りではない」
と定められています(第32条)。
 判決で田川裁判長は、崔さんが亡くなった当時、長崎市が居住地または現在地でなかったことだけを理由に却下処分を行ったのは同法32条に反し「違法」とし、処分の取り消しを言い渡しました。

 この判決に対し、3月11日付『長崎新聞』によると、伊藤一長・長崎市長は10日、市議会世話人会で「市として控訴したくない意向を国に伝える」と語ったそうです。

 なお崔さんをめぐっては、「日本国外からの健康管理手当申請を却下したのは違法」と長崎市を訴えた裁判が福岡高裁で、また未払い手当の支給を同市に求めた裁判が長崎地裁でそれぞれ係争中ということです。

 → 詳報は『長崎新聞』3月7日付、同9日付、同11日付 をご覧ください。

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(2005年3月15日)
 〔ブラジル在住の韓国国籍者・「泰一さん ようやく念願の手帳を取得

 私たち在ブラジル原爆被爆者協会会員の韓国国籍者・「泰一(バイ・タイイル)さん(78)が3日、広島県庁で念願の被爆者健康手帳を取得しました。

 「さんは京都生まれの元在日韓国人で、広島で入市被爆しました。終戦直後に祖国・韓国へ移り、1965年ブラジルに移住。子どもたちも無事成長、独立し、現在はサンパウロ市内で奥さんと2人暮らしをしています。

 県への手帳申請の打診は、これまで十数年にわたり協会を通じて行ってきましたが、被爆を証明する証人がいないとの理由から、数度にわたって却下され続けてきました。「さんも近年は「手帳申請を認めてもらえないのは、自分が韓国人だからだろうか」と感じ、悔しさと悲しみに包まれたといいます。
 しかし昨年6月、日本被団協を通じて証人探しを行った結果、被爆当時に近所に住んでおられた村上平人さんが名乗り出てくださいました。おかげで今回、森田会長夫妻とともに約60年ぶりに訪日し、手帳取得を果たすことができたのです。

 7日、検査入院先の広島共立病院で、「さんは病院を訪れた村上さんと再開。朝日、共同はじめ主要メディア各社も取材に訪れ、このニュースを報じてくださいました。

 なお、被爆者健康手帳の交付申請にあたっての審査基準は都道府県によって差があり、広島、長崎以外の都府県では、証人がいなくても手帳が交付されるケースが少なからず見受けられます。
 原爆投下から60年が経ち、とりわけ在外被爆者にとっては証人探しが極めて困難です。手帳交付申請には第三者の証言が必ず必要なのでしょうか? 各都道府県の審査基準を統一化するとともに、担当職員の方々にはより柔軟な対応をしていただくことを希望いたします。

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(2005年3月15日)
 【中国新聞】〔ブラジル、米国、韓国の被爆者団体代表 広島県、市に要請書を提出

※〔ブラジル、米国、韓国の被爆者団体代表 尾辻厚労相と会見、要望書を提出〕の続報

 3月5日付『中国新聞』はじめ主要メディア各社は、ブラジル、米国、韓国の3カ国に在住する被爆者代表が、4日広島県庁と広島市役所を訪問し、担当職員に要望書を提出したことを伝えました。

 2月28日の厚生労働省訪問に続き、この日、同県庁と市役所を訪れたのは、訪日中の
・在ブラジル原爆被爆者協会の森田隆会長(80)
・米国原爆被爆者協会の遠藤篤会長(75)
・韓国原爆被害者協会の郭貴勲会長(80)
です。

 3代表は県、市それぞれの担当職員と面会。厚労省に提出した要望書を手渡し(→ ブラジル「要請書」2005年2月28日付)、高齢化に伴い訪日が困難な在外被爆者の置かれる深刻な実態を訴えました。

 → 詳細は『中国新聞』3月5日付 をご覧ください。

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(2005年3月15日)
 【長崎新聞】〔韓国人女性 手帳交付却下で長崎市を提訴へ 在外被爆者では初

 3月2日付『長崎新聞』によると、長崎で被爆した韓国人女性の郭福南さん(76)は、被爆者健康手帳交付申請を長崎市に却下されたのを不服として、却下処分の取り消しを求め、近く市を相手どり長崎地裁に提訴します。 

 在外被爆者が長崎市に対して手帳申請却下処分の取り消しを求める訴訟に踏み切るのは、初めてのことになります。

 → 詳細は『長崎新聞』3月2日付 をご覧ください。

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(2005年3月15日)
 【長崎新聞】〔韓国原爆被害者協会 韓国政府、日本の支援団体と「手帳取得促進共同委」を設置

 3月1日付『長崎新聞』によると、訪日中の韓国原爆被害者協会・郭貴勲会長は2月28日までに、 韓国政府などの関係機関と日本の支援団体との3者で「被爆者手帳取得促進共同委員会」を設置したことを明らかにしました。

 同委員会は今後、被爆者健康手帳をまだ取得できないでいる在韓被爆者の手帳取得を促すため、広島、長崎両県市などとの窓口となって活動するということです。

 同協会によると、韓国の会員約2300人のうち手帳取得者は約1700人。一方、未取得の方は会員以外を含め約800人ということです。

 また3月10日付『長崎新聞』によると、郭会長は今月9日、長崎県、市にも同委員会への協力を要請しました。

 → 詳細は『長崎新聞』3月1日付、同10日付 をご覧ください。

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(2005年3月15日)
 【中国新聞】【長崎新聞】〔ブラジル、米国、韓国の被爆者団体代表 尾辻厚労相と会見、要望書を提出

 3月1日付『中国新聞』『長崎新聞』はじめ主要メディア各社は、ブラジル、米国、韓国の3カ国に在住する被爆者代表らが、2月28日厚生労働省を訪問し、尾辻秀久厚労相に要望書を提出したことを伝えました。

 同相を訪れたのは、訪日中の
・在ブラジル原爆被爆者協会の森田隆会長(80)
・米国原爆被爆者協会の遠藤篤会長(75)
・韓国原爆被害者協会の郭貴勲会長(80)
ら、計6人です。

 このうち、ブラジルの森田会長は
@ 被爆者健康手帳の発行事務の円滑化
  居住国での手帳申請の実現
A 居住国での健康管理手当申請の実現
B 「在外被爆者保健医療助成事業」の実施方法の見直し
  現地日系医療機関の厚労省による指定病院化の検討
C 「在外被爆者保健医療助成事業」による助成が受けられない被爆者健康手帳所有者の救済
を主に要望しました。→ 「要請書」2005年2月28日付(クリック!)

 このほか、3団体の代表は、高齢化により渡日が困難な被爆者が増えている現状を訴え、
・「在外被爆者保健医療助成事業」の年間およそ13万円の上限枠の撤廃
など、日本国内在住の被爆者と同じ援護を居住国でも受けられるよう求めました。

 これに対し、尾辻厚労相は
「問題は前向きに、できるだけ早く解決させないといけない。国としても検討している」
(『中国新聞』 - 遠藤会長より)
「関係者と相談して検討したい」(『長崎新聞』 - 関係者より)
と回答されたということです。

 → 詳細は『中国新聞』『長崎新聞』3月1日付 をご覧ください。

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(2005年3月15日)
 【長崎新聞】〔「在外被爆者保健医療助成事業」3月末にもスタート
 〔ブラジルでは民間保険加入者だけに支給 未加入者には支給なく、今後に課題

※ 関連記事 → 2004年9月22日、11月11〜16日、11月26日、12月2日

 2月16日、18日付『長崎新聞』によると、日本政府が在外被爆者の現地での医療費を助成する「在外被爆者保健医療助成事業」が、3月末にもスタートすることになりました。

 この事業は
「被爆者健康手帳を所持する被爆者であれば、日本国外にいても、その国の病院・診療所でかかった治療代・薬代は年間一人当たりおよそ13万円を上限に日本政府が負担してくれる」
という制度です。
 昨年10月にスタートする予定でしたが、事業実施を決めた厚生労働省と、法定受託事務として実施主体となる広島、長崎の両県市との間で、実施方法などの調整に時間が掛かり、スタート時期がずれ込んでいました。

 18日付『長崎新聞』によると、韓国を担当する長崎県は2月17日、大韓赤十字社と事務委託契約を結び、3月末から同社を通じて約1800人の在韓被爆者への医療費支給を開始することになりました。支給されるのは昨年10月以降の医療費で、本人が実際に負担した金額を請求することで支払われるようになります。

 また16日付の同紙によれば、北米およびその他の地域を担当する広島市も、日本公衆衛生協会(厚労省の外郭団体)を通して現地在住の約1000人への医療費を支給する予定です。これも韓国と同じく、本人が負担した医療費を請求し支払われることになります。

 → 以上、詳細は『長崎新聞』2月16日付、同18日付 をご覧ください。

  一方、私どもブラジルも、担当の広島県から同協会を通じて医療費の助成が実施される予定です。
 ただしブラジルの場合は他の地域と異なり、本人が民間の医療保険に支払った保険料に対して助成金が支給されることになっています。
 ブラジルは医療費が高額なため、年収が一定以上の人は、医療費の負担を少しでも軽くするため民間の医療保険に加入することが常識となっています。→ 詳細(クリック!)
 しかし、私どもブラジル在住被爆者の仲間には、家計の事情から、民間の医療保険に加入できないでいる者も多くおります。
 今回スタートする制度では、こういった人々、つまり家計が苦しく民間の医療保険に未加入でいる仲間は、「在外被爆者保健医療助成事業」による助成が1円も受けられないことになってしまうのです。

 せっかくの日本政府の厚意による事業なのに、その助成を受けられる者と受けられない者がいる…、しかも生活が苦しい者ほど助成を受けることができない…。
 この改善を求めるのが、私どもの今後の急務の課題となっています。

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