解説:ブラジルの医療保険制度について
いろいろな方からブラジルの医療保険制度、および制度の変更についての質問を受けますので、
我々がわかる範囲で説明します。
基本的には 従来 健康管理制度は 国の責任として担当官庁である厚生省(Ministerio da Saude) が実施しておりました。
勤労者全体から税金として集計された財政は
「医療、健康部門」
「社会年金部門」
の2つに分けられ、運営されていました。
しかし「年金部門」への財政流出が増大し国家財政が圧迫されるに従い、
「医療」は
連邦政府によるものではなく、
民間企業による個人契約の健康医療保険へと移っていきました。
これは、保険会社と契約して毎月の掛け金を支払うことで、医療費の一部を保険会社が負担する、という制度(システム)です。
上下の差が著しい当国において 富裕層は早々に民間の新しい制度を受け入れ、短い期間でこの制度は広まりました。
この傾向は勿論大都市において多く見られます。
地方の町においては 公式病院医療も定着し 住民が安心して暮らせるという事実もあります。
保険企業は多くの加入者を獲得するため契約金を引き下げました。企業、会社単位の団体加入等も常識になってきました。
その一方で、保険企業は支出を抑えるために、契約事項に数々の制限(年齢、空期間、病気、等)を設けました。
1998年に健康医療保険会社は、一つの大きい問題に直面しました。
それは いざ加入者が保険を使う時
制限によって治療が受けられない病気が多いために、
加入者と
保険会社の対立が起きたことです。
両者の対立が酷くなったため、連邦政府は
法令によって病気制限を取り除きました。
もちろん その時期にも支払い額の調整がありました。
この間、多くの人は新制度に切り替えることができないか、あるいはしませんでした。
また新法令では、年齢による制限、つまり病気・けがの発生率が高くなる高齢者ほど掛け金が高額になる、といった点については考慮されませんでした。
月掛け金額は5歳 または 10歳間隔の節目で増額され、高齢者には 容赦なく高額な請求が要求されました。
一番必要な時期に保険加入の放棄を余儀なくされた人も多いのです。
今年(2004年)の中旬 この年齢制限による弊害が社会問題化し、連邦政府は
掛け額増額年齢制限をすべて60歳までと設定しました。
それを見込んで 各大手保険会社は
保険掛け金の調整 (勿論高額に) を一気に実施したのです。
このような民間を主体にした医療保険制度は比較的新しいので これからどう変わっていくかが心配です。
ましてや民間企業ですから保証も無いのと同然です。
また会社によっての格差もあります。
しかし 一面、これにたよらざるをえないのも事実です。
こういった現状を踏まえた上での協会の立場 ご理解いただけたらと切に思います。
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