わが国のスイッチバック型停車場4:中部編



かつての中央本線(東線)は、一線区として最多のスイッチバック (8ヵ所)を誇る 山岳路線であったが、電化に伴う構内配線改良などで、 現在では旅客列車が折り返しをするである場所はなくなった。 一方で、篠ノ井線には、電化された今も、 3つのスイッチバックが連続する”現役”最多スイッチバック路線である。
「鉄道ジャーナル」昭和55年6月号によると、中央本線のスイッチバックは、 「小仏信号場」(単線時代:現在の高尾〜相模湖間に存在)を加えて、 計9ヶ所であったとされている。 ただ、「全線全駅鉄道の旅6:中央・上信越2100キロ」(小学館刊)によると、 「相模湖までを複線にするときは、小仏トンネルの手前までをまず複線とし、 単線に変わるところに小仏信号場を置き、 小仏トンネルの改修工事が終わって複線にしたときに この信号場を廃止した」となっている。 この記述から推測すると、ここで言う「小仏信号場」は、トンネル工事の間だけ、 単線区間と複線区間の合流点という意味合いで存在した、一時的な施設であり、 スイッチバックとしての構造を本当に持っていたのかは、 多少疑問となってくる。
さらに、「停車場変遷大事典」(JTB刊)によると、 小仏信号場の開業は昭和27年(駅間距離は、浅川4.3km+5.2km相模湖)で、 昭和32年に「移転?」で駅間距離が、200m浅川方面に移動しているのが分かる。 推測の域を出ないが、当初のスイッチバック型信号場は、小仏トンネル東側の複線化で 廃止、同時に複線と単線の合流地点に、新たな「小仏信号場」を置いたと考えるのは いかがであろうか?

以上の考察に関して、「東京附近改良計画 第3編」(昭和31年度)に、 「浅川〜相模湖には小仏、四方津〜鳥沢には梁川の信号場があるがいずれも行違い設備がなく、 ただ続行列車に対する閉塞区間の境界となっているだけである」という記述があり、 また「東京第一工事局八十年史」(昭和51年発行)には、 高尾・相模湖間の線路増設工事の説明として 「32年度にまず中間の小仏に行違い設備を設けて一応の緩和を図り…」という 記載が見られる。
さらに、平成12年発行の「鉄道青春時代」の55ページに、昭和35年時点の 小仏信号場での列車交換が撮られた写真が掲載されているが、 それらの資料を総合するに、やはり 「小仏信号場には、どの時点でも、折り返し型の 配線は存在しなかった」 と結論付けるのが妥当だと思うに至った。
よって、大変残念ながら、以下の表から「小仏」の名を削除させていただくことにした。 (平成14年9月時点)

なお、以上の資料の発掘・分析ともに、兵庫県の原英俊氏によるところが大きかった。この場を借りて お礼を申し上げたい。
「レイル」No.27掲載の「箱根越えの信号所」(山梨孝夫氏著)によると、 東海道線時代の箱根越え区間に設置された信号所は 「谷峨、足柄、神山、富士岡、岩波(岩浪)」の5か所であるとなっている。 そのうち、「足柄」に関しては、待避線を持つ、スイッチバックということが 現地調査でも確認されているので、当ページのリストに追加させていただいたが、 「神山」に関しては、氏の調査でも、待避線の存在が確認されていない。
鉄道友の会静岡支部報「展望車」誌上に、、大井川鉄道の白井昭氏が 「西の小箱根と称された金谷〜菊川間:東京基点218km地点に、 友田信号場 と呼ばれる、スイッチバックを備えた信号場があった」 との旨の寄稿をされている。 これは、同誌編集の平野正範氏よりご報告いただいた情報である。 この場をお借りしてお礼を申し上げたい。
当信号場の沿革及び現状報告掲載(平成14年10月7日)。

駅名 路線(社名) 現状 勾配
(単位=パーミル
:下り列車に対して)
備考
国鉄〜JR
谷峨 御殿場線 × 12 昭和30年代には施設廃止
足柄信号場 御殿場線 × 25 足柄駅より1.44km御殿場寄り
富士岡 御殿場線 × −25
岩波 御殿場線 × −25
友田信号場 東海道本線 × −10〜L〜−10 金谷〜菊川間
初狩 中央本線 25 現在は貨物のみ施設使用
笹子 中央本線 × 25
勝沼 中央本線 × −25 現在「勝沼ぶどう郷」に改称
韮崎 中央本線 × 13.3〜25 現在も擬似折り返し構造在り?
新府信号場 中央本線 × 25 戦時型信号場形態
穴山 中央本線 × 25
長坂 中央本線 × 25 複線時、唯一の巻き込み式
東塩尻信号場 中央本線 × 26.7 地形との関係に特殊性あり
桑ノ原信号場 篠ノ井線 25
姨捨 篠ノ井線 25
羽尾信号場 篠ノ井線 × 25 最も新しい勾配型スイッチバック
潮沢信号場 篠ノ井線 × −25 同区間唯一の廃止スイッチバック
塩尻 中央本線 実質的には折り返し解消だが…
私鉄
富士吉田 富士急行
遠州馬込 遠州鉄道 ×
左富士信号場 岳南鉄道 × 吉原〜日産前
大屋 上田丸子電鉄 ×
小中尾信号場 木曾森林鉄道 ×
駄知 東濃鉄道(駄知線) × −?
美濃大久保 西濃鉄道支線
新可児 名古屋鉄道(広見線)
知立 名古屋鉄道(三河線) ×
大垣 近畿日本鉄道(養老線)

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