わが国のスイッチバック型停車場5:北陸・関西編
大正初期に建設された、北陸本線の山岳区間は、敦賀を挟んで5ヵ所のスイッチバックを有する
難所であったが、他線区に先駆けた交流電化や、開通当時国内最長の「北陸トンネル」という
トピックスの陰で、全て消滅した。一方で、関西地区の2つしかないスイッチバック施設は、
どちらも未だ現存。電車区間の北宇智などは、残っていること自体が“奇跡”とも言える
(*2006〜2007年にかけて、中在家の施設使用停止、北宇智の配線変更――
と、相次いで、その役割と“奇跡”を終えた)。
なお、私鉄に目をやると、なんと言っても立山砂防軌道が
光っている。
樺平にある18段という折り返し数(線区全体では計45段!)は、もちろん我が国でダントツである。
*
東海道本線が全通する前、長浜〜浜大津間を琵琶湖の水運に頼っていた時代、
京都から浜大津へと向かう線路は現在線の遥か南を迂回し、
現在の膳所駅に位置する「馬場」(大正2年「大津」と改称)から、
折り返し構造で、琵琶湖畔の浜大津へと向かっていた。
しかし、明治22年、米原方面から来た線路と繋がれた時点(=東海道本線全通)で、
浜大津方面への線路は残ったものの、
“東海道線としての折り返し構造”は解消されたと言える。
一方、やはり旧線時代の山科盆地から逢坂山トンネルに向かう
25パーミル複線区間に大正2年設置されたのが、
「大塚信号所」である。
「谷峨」や「友田」のように、上下線間に渡り線、
上り勾配側(上り線)後方に引き上げ線という構造であったが、
地形上、引き上げ線は谷側に引き出されたと考えられる
(なお、通常の運行では当信号場に停車する列車はなかったらしく、
引き上げ線はあくまで予備的施設で、閉塞区間短縮が主目的であったことは想像に難くない)。
しかし、大正10年の京都〜大津間の路線変更により消滅
(その際、現在の「大津」駅開業、同時に「大津」は「膳所」と改称された)。
駅名 |
路線(社名) |
現状 |
勾配
(単位=パーミル
:下り列車に対して)
|
備考 |
国鉄〜JR
|
馬場 |
東海道本線 |
× |
− |
現膳所 |
大塚(信) |
東海道本線 |
× |
−25 |
旧逢坂山越え区間 |
刀根 |
北陸本線 |
× |
−25 |
柳ヶ瀬線移行時に消滅 |
深山(信) |
北陸本線 |
× |
14 |
戦時型信号場 |
新保 |
北陸本線 |
× |
25 |
|
葉原(信) |
北陸本線 |
× |
25 |
|
山中(信) |
北陸本線 |
× |
−25 |
|
中在家(信) |
関西本線 |
△ |
25 |
平成18年施設使用中止 |
北宇智 |
和歌山線 |
× |
−16〜3〜20 |
平成19年棒線化により廃止 |
東舞鶴 |
舞鶴線 |
× |
− |
|
私鉄
|
上市 |
富山地方鉄道 |
○ |
|
|
鐘釣 |
黒部峡谷鉄道 |
○ |
|
熊ノ平と同タイプ |
立山砂防軌道 |
|
○ |
|
驚異の連続18段スイッチバック |
岡本新 |
福井鉄道南越線 |
× |
|
|
丸岡 |
京福電鉄(丸岡線) |
× |
|
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