穴山
中央本線 大正2年開業:昭和46年配線変更により消滅
スイッチバックの配線等は、長坂(単線時代)と非常によく似ていたが、
この駅も昭和46年、同区間の複線化に伴い、スイッチバックを解消、
勾配中に新ホームを設置し、電車列車のみを停車させるようになった。
なお、中央本線では、複線化に際して、各所で大幅な線形改良が行われており、
穴山から日野春方向に向かう現在線は、単線スイッチバック時代とは、別ルートになっている
(JTB刊「鉄道配線跡を歩く」P86参照)。
この穴山駅で特筆すべきは、何と言っても、スイッチバック時代からの駅舎が、
未だ現役だということであろう。
廃止されたスイッチバックで、旧駅舎が現存するのは、ここが唯一ではないだろうか?
(筆者は、かつて、スイッチバック廃止後の日田彦山線:呼野で旧駅舎を見かけたが、
ここも、すでに現存してないと思われる)
しかも、廃止後だけでも、30年近くも生きてきた駅舎―――
無人駅とは言え、なんとか、このままの形で生き長らえてほしいものである
(※残念なことに、平成12年中に、
この旧駅舎は取り壊されたことが判明。以下、その勇姿を偲び、
当時のカラー写真掲載)。
*写真は、すべて平成11年11月撮影。
上段左は、スイッチバック時代から使われてきた駅舎。
乗客は、跨線橋から直接繋がっている、(旧駅構内を横切るために不自然に長い)歩道を通って、
駅本屋に向かう。
上段右は、現駅を発車する下り普通列車。左手の高台が、
かつての発着線跡である。
中段は、旧分岐点付近から、旧発着線方向を臨んだ光景(左)と
旧引き上げ線方向を臨んだもの(右)。どちら側にも、
スイッチバック名残の留置線が伸びており、
かつての光景を偲ぶには十分な雰囲気をたたえている。
下段は、引き上げ線跡を見下ろしながら、勾配上を行き交う列車たち。
線路は存在するものの、長坂とは違って、ずいぶん短くカットされてしまった。
●思いでの穴山駅旧駅舎
平成11年末の時点では、健在であったスイッチバック時代からの駅舎であったが、
筆者の願いもむなしく、平成12年の夏頃までには、
新しい駅舎に立て替えられていたことが判明。
跨線橋を渡ったすぐのところに建てられた、新駅舎は、こじんまりと機能的に
まとまった趣味の良いものと言えるが、それにしても、思いの他きれいに使われて
きた旧駅舎が、消え去ってしまったことは、本当に残念なことである
以下、旧駅舎を偲んで、筆者が平成11年11月に訪問した際に撮影した、
その最後の姿を紹介したい。
壁なども、きれいに塗られており、まだまだ現役を続けられそうな気運のようなものが、
筆者には伝わってきただけに、返す返すも残念である。
また、ひとつ、スイッチバックの生き証人が、消えていった……。
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