わが国のスイッチバック型停車場3:上信越・関東編



信越本線の峠越えと言えば、横軽のアプト区間が有名であるが、 スイッチバックも、日本最古の 松井田をはじめ 5ヵ所の停車場が存在した。しかし、改良が進んだ現在では、 二本木を残して すべて廃止されている。 関東地方は、地形的にもスイッチバック自体 少ない上に、現在では国鉄時代のもの は全て消滅しているが、 一方、私鉄に目を転じると、40年前に消えた “日本最初の登山電車”東武鉄道伊香保軌道線:伊香保線に代わり、 今なお、80パーミルの勾配中に3つのスイッチバックを抱える 箱根登山鉄道の存在が光っている。
古典蒸気1080号機の活躍で有名だった、日鉄鉱業羽鶴専用線 の終着駅・羽鶴が、スイッチバック構造であるということが判明したので、 リストに加えさせていただいた(平成15年8月)。
なお、「鉄道ピクトリアル」平成11年9月号誌上に、「(中央線・新府の線形は) この時期に上越線等でも設置された“戦時型信号場”と呼ばれるものであった」 (祖田圭介氏) という記述があったことからすると、上越国境の勾配区間あたりに、加速線を有する 簡易型のスイッチバックがあった可能性がある ()。
同平成元年2月号誌上で、同じく祖田氏が 「(昭和)18年上越線越後大沢(信)…が加速線を持った行違駅タイプの戦時型信号場 として建設された」と記しているのが、確認された。 なお、「停車場変遷大事典」によると、上越線には、 清水トンネル内を除いて、この越後大沢(信)以外に、 複数の信号場が、戦時中に開業しているが、 後閑〜上牧間に設置された、下牧(信)が同様の構造と確認された他は、 不明である。
「汽笛一声」の「初代・横浜駅(現・桜木町駅付近)」から、 明治20年国府津まで線路延長された際、スイッチバック構造が出現。 これは大正4年の二代目横浜駅(東急東横線・旧高島町駅付近) 誕生により廃止されることとなるが、遅れ馳せながらリストに加えさせていただく。
東京・足立区の斉藤氏より「戦時中に設置された上越線・井野(信号場) が“空襲時、林の中へ列車を隠すための引き込み線”として設置されたとの記述を発見」 との報告あり。これは、戦時におけるスイッチバック型配線の未だ知られざる用途として、 他の同様施設の存在可能性も含めて、今後の調査を待つものである (但し、本信号場が構造的に「スイッチバック」と言えるものかが、未だ疑問のため、 現状ではリストに加えないこととする)。

駅名 路線(社名) 現状 勾配
(単位=パーミル
:下り列車に対して)
備考
国鉄〜JR
東赤谷 赤谷線 × 22〜3.5 国鉄唯一の折り返し型終着駅
松井田 信越本線 × 25 我が国最古のスイッチバック
熊ノ平 信越本線 × 66.7〜L〜66.7 アプト区間の変則的停車場
御代田 信越本線(しなの鉄道) × −25 引き上げ線跡にD51保存
関山 信越本線 × −25 旧駅構内に架線存在
二本木 信越本線 −25 頼みの貨物発着が終焉
下牧(信) 上越線 × 戦時型信号場
右側通行
越後大沢(信) 上越線 × −? 戦時型信号場
現在の「大沢」駅
間藤 足尾線(わたらせ渓谷鐵道) × 26.7 現役時も貨物のみ施設使用
武蔵五日市 五日市線 × 25 国電区間に意外な線形
大網 房総東線 ×
横浜 東海道本線 × 初代
私鉄
上見附 栃尾鉄道(越後交通栃尾線) ×
西長岡 越後交通長岡線 ×
寺泊海水浴 長岡鉄道 ×
元宿 東武鉄道伊香保軌道線 × 28〜48 伊香保線
六本松 東武鉄道伊香保軌道線 × 58〜44 伊香保線
大日向診療所前 東武鉄道伊香保軌道線 × 44 伊香保線
水沢 東武鉄道伊香保軌道線 × 48〜42 伊香保線
羽鶴 日鉄鉱業羽鶴専用線 × 33 折り返し型終着駅
二度上 草軽電気鉄道 × 小規模ながらも、本格的Z型!
東三原 草軽電気鉄道 × 大規模な三段式Z型!
万座温泉口 草軽電気鉄道 × 旧称「石津平」
2つのホームが特徴!
湯田中 長野電鉄 × 40〜5 変則的ミニスイッチバック
東武鉄道(野田線)
飯能 西武鉄道(池袋線)
藤沢 小田急電鉄
出山(信) 箱根登山鉄道
大平台 箱根登山鉄道
上大平台(信) 箱根登山鉄道 66〜80

メニューページに折り返す
スイッチバックリスト4(中部編)に向けて発車する