羽鶴


日鉄鉱業羽鶴専用線 昭和26年開業:平成3年 路線廃止のため消滅

栃木県の葛生は石灰石の産地であるが、 この地に引かれた多くの専用線の中で、 日鉄鉱業が、昭和26年に開業した専用鉄道(上白石〜羽鶴)が、 羽鶴専用線である。 その終点である羽鶴は、山に分け入った狭隘な地形と、鉱山関連施設との 関係で、全国的にも珍しい折り返し型の終着駅となった(奇しくも、現在判明している同型の、 国鉄・東赤谷や岩手開発鉄道・岩手石橋も鉱山関係の終着駅である)。
つまり、葛生方面から進入していた貨物列車は、先端に10m程のトンネルを有する 引き上げ線に一旦突っ込んだ上で、荷の積み下ろし線や機関庫(下り列車から見て右後方)、 あるいは、ドロマイド工場(ドロマイドは、鋼鉄の鍛練や、道路の舗装資材、農業用の肥料など、 幅広く使われる鉱石)への引き上げ線(同様に、左後方)にバックで入っていく。 本線を挟んで両側に構内が形成されているという、模型のレイアウトのような 面白い駅と言えよう。
なお、筆者もSLブーム世代であるが、この専用線は、当時、古典テンダー機を タンク機に改造した1080号機が使われていたことで、有名であった。 昭和31年に、DLの予備機として当地へ転属した本機は、 SLファンの垂涎の的となり、東武鉄道の貨物削減に伴って、 当鉄道が廃止された、平成3年11月26日を迎えるまで、 明治時代を忍ばせる勇姿を、ファンの前に見せてくれた(『鉄道廃線跡を歩くX』によると、 1080号機は、その後も当地で大切に保存されているとのこと)。


埼玉県の久保田雅博氏から、廃止直前の平成3年11月23日に、当地を訪問した際に 撮影された写真類を提供していただいた(上記配線図も、久保田氏が当時、現地で調べた スケッチを参考にさせていただいた)。この場を借りてお礼を申し上げたい。




*最上段は、構内風景。 左手の勾配線が、葛生からの本線。前方に10mほどの短い“突っ込みトンネル”が見える。
*2段目は、逆に、突っ込みトンネルの上方から構内を俯瞰したもの。 画面中央奥、右にカーブしながら勾配を下っていくのが、常盤〜上白石へと向かう本線である。
*3段目左は、当線のスター・1080号タンク式機関車。 廃止間近であっても、掃除もされ、油も注された状態で、 引き上げ線から最も近い庫に収められていたとのこと。
*同右は、構内の外れにある、機関庫に留置されているDL。 これもナローのジオラマ模型のような涙モノの光景である。
※1080号と構内を捉えた走行写真募集中!


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