安全な家が欲しい!(丈夫な家=安全な家?)
従来、地震国日本における「丈夫な家」とは、地震に強い家、すなわち耐震住宅を指すものと考えるのが一般的でした。私は、以前から免震工法には興味がありましたが、美術館、博物館、文化財などの特殊な建造物のためのもので、一般市民が手を出せるような価格ではないと思い込んでいました。しかし、2000年に建築基準法が改正され、自分の手が届きそうな価格になっていることを知り、検討を始めたのです。
高齢者がいる我が家にとって、「この家にいれば絶対安全」と思える家を建てることが究極の目標でした。
免震住宅とは(地震でも揺れない家)
普通の住宅は、コンクリートの基礎に建物本体をボルト等でしっかりと固定します。そのため、地震が発生した場合、地面の揺れがそのまま基礎を通じて直接建物本体に伝わってくるので、建物の倒壊は免れたとしても、内装、家具などへの被害や住人の身体的、精神的な影響は容易に想像できます。一方、免震住宅は、基礎と建物本体を固定せず、間にボールベアリングや積層ゴム等を挟み込むことによって、地震による基礎の揺れを建物本体に直接伝えないようにしたものです。(ここで紹介する住宅では、ボールベアリングを使用するタイプの免震装置を取り付けます。)
一般の耐震住宅は、「地震の揺れに耐え、倒壊しない」ことを目指していますが、免震住宅は、「地震が起きても揺れない」ことを目指しているのです。
ただ、「免震」といっても、全く揺れないわけではありません。地震による「鋭い揺れ」を、「ゆっくりとした揺れ」に変えることによって、建物本体や家具、住人のダメージを軽減させる(ほとんど皆無にする)仕組みだと私は理解しています。その結果として、阪神淡路大震災クラスの揺れでも、「テーブルの上の一輪差しが倒れない」「コップの水がこぼれない」という画期的な実大実験結果を得ています。最近、この実験映像をTVコマーシャルで流しているハウスメーカーもありますので、ご覧になった方も多いことでしょう。
免震の原理や装置の構造等については、様々な研究機関やハウスメーカーのホームページで紹介されるようになりましたので、詳しい説明はそちらにお任せします。
土地についての制約(じょ~ぶな土地でないとダメです)
地盤改良技術の進歩により、多少軟弱な地盤でも安心して住宅が建てられるようになりましたが、免震住宅には地盤について大きな制約があります。まず、軟弱な地盤(鋼管杭による補強が必要な地盤など)の土地には建てられません。また、地震の際に液状化する可能性のある土地にも建てられません。そのため、免震住宅を建てることを想定して土地を探される方は、十分注意が必要です。実際に免震住宅が建てられる土地か否かは、ボーリングによる地質調査が必要になります。
免震住宅を建てたい思いが極めて強かった私は、不動産業者に次のような条件で土地を探してもらいました。
・○○線の駅から徒歩5分以内であること
(これは免震とは関係ないか(^_^;))
・平坦な土地であること
・付近に田んぼ、川、沼などがないこと
そして紹介された土地の周囲にお住まいの方々に、この土地の今までの状況等について話を伺い、地盤調査を行った上で購入を決めました。
設計上の制約(えっ! 今どきエレベーターつけられないの?)
建物の設計上でも、免震住宅には様々な制約があります。そのうち、私が当初考えていたプランで引っかかってしまった「制約」について、ご紹介します。
①ホームエレベーターを設置できません。
見晴らしのよい2階を高齢の両親の居住スペースにすべく、ホームエレベーターの設置を考えていましたが、免震装置との兼ね合いでダメだそうです。両親の居住スペースは1階にしました。
②ユニットバスは、建物の角にレイアウトできません。
これも、免震装置との兼ね合いでダメだそうです。結局、50cmのデッドスペースが生まれてしまいました。
③パイプスペースを壁際に設置できません。
④ウッドデッキを設置できません。
設置する場合、掃出し窓から40cm以上の段差になってしまいます。
⑤建物の周囲50cm以内には、基礎の高さ以上の物は何も置けません。
地震が起きたときに外壁と衝突したり、人が外壁との間に挟まれたりする危険があるためです。エアコンの室外機等も、建物の外壁に取り付けるか、バルコニー等に置くことになります。