第3巻第1号
第3巻第1号(1948/01/01)
LOCK 1月号(版型変更)
目次
短編 818:島田一男:p.4
短編 月魄(つきしろ):那珂川透:p.20
短編 異形の妖精:北洋:p.28
コント コント・アルバム:p.38
短編 蜘蛛の糸:橋本哲男:p.48
随筆 恐ろしき夢魔:富田常雄:p.54
実話 監獄の歯車止:青江耿介:p.57
連載 奇蹟のボレロ(完結編):角田喜久雄:p.62
短編 818:島田一男
戦後の第1回雑誌「宝石」新人賞は、いわゆる豊作だった。短編「殺人演出」で登場したこの著者もその一人です。
作者はその後も多数の作品を書き、「事件記者」で探偵クラブ賞も受賞しています。
本作は「殺人演出」と同様に緩い密室状況を扱っていますが、主題は「818」の題名通りのダイイングメッセージです。
複数の解釈があるようにも思えますが、作者はひねった解答を用意しています。
短編 月魄(つきしろ):那珂川透
題名は読む機種によっては、フォントがないでしょう。
本作は、現在では本格推理の巨匠の鮎川哲也の実質のデビュー作とされています。
しかし内容的には、幻想的な小説で本作から後年の作者を予想する事は難しいです。
ペンネームもフォントがないかもしれないが、本名の「中川透」から取っています。目次は誤植になっています。
短編 異形の妖精:北洋
ロックを主に発表した作者ですが、科学知識を活かした作品が特徴です。
本作は、結末は科学的にまとめてありますが内容は幻想的に描かれていますし、SF的な要素を加えています。
おなじみの光岡の視点から描かれている事が、後半の1カ所の記述で判ります。
コント コント・アルバム
海外作品の翻訳ですが、その完訳レベルは不明です。
テウフィック「ナスルと驢馬」・レルモントフ「死相」・インゲマン「開かずの間」の3作です。
3作目はやや長い。翻訳者も不明で、紹介類はまったくありません。
短編 蜘蛛の糸:橋本哲男
芥川龍之介の「蜘蛛の糸」をモチーフに、夢と殺人と狂人とを混ぜあわせた小説です。
詰め込みすぎか、逆に内容が無いのか判断しにくい作品です。法医学や精神異常分析の知識も出てきますがその方面に 詳しいとも言い切れません。
同姓同名が多いので、作者不詳としておくしかないように思う。
随筆 恐ろしき夢魔:富田常雄
「姿三四郎」「弁慶」等の多くの作品のある小説家です。直木賞受賞。時代小説作家といえるでしょう。
本随筆は、編集者から探偵小説の依頼を受けたが、このジャンルは書けないという内容です。
実話 監獄の歯車止:青江耿介
ほぼ連載のように登場する作者ですが、これ以前と同様に、何も判りません。
連載 奇蹟のボレロ(完結編):角田喜久雄
連載7回目の完結編です。第12章から13章までです。
第13章の章題は、「解決」です。雑誌のほうは不定期になりつつありますが、この連載は無事に終わりました。
その他
3年目に入って、判型変更・編集者の変更等がありました。
横溝正史「蝶々殺人事件」の月書房からの単行本の広告があります。
逆に、次号予告はありません。