第2巻第3号
第2巻第3号(1947/3/1)
LOCK 3月号
目次
短編 二本の調味料:段紗兒:p.4
随筆 新泉録4-7:木々高太郎:p.24
短編 完全殺人:井上英三:p.30
怪奇実話 巴里のコマ切れ事件:青江耿介:p.48
短編 ルシタニア号事件:北洋:p.62
短編 魚の国記録 後編・絢爛たる終曲:紗原砂一:p.80
ロック大学 死:阿知波五郎:p.100
連載 蝶々殺人事件(7):横溝正史:p.103
二本の調味料:段紗兒
一度は翻訳として予告されましたが、版権の関係で海外作品の翻訳が掲載されなくなりました。
本作は明らかに、ロード・ダンセイニの有名な作品の翻訳です。しかしその事の記述はなく、登場人物名も変えてあります。
原作は、変格探偵小説・奇妙な味の代表との評価で知られています。
全訳のように思いますが版権の関係で、掲載出来なかったものを強引に掲載したと推察出来ます。
新泉録4-7:木々高太郎
木々の随筆の2回目です。編集部の意向もあるのか、前号に対して「乱歩氏に答へる」の副題があります。
理念は類似だが方法論が異なるという趣旨に読めます。依然として探偵小説芸術論を唱え続けています。
ただ木々の内容は、本人の主張とは異なりはなはだ後退した内容になっているようです。そしてその行き先は、天才は必要と しない。探偵小説だけの問題ではないという、不思議な展開になっています。
最後に具体的にこの問題を続けたいとしているが、この時点で戦前の木々・甲賀の論争とは異なる事が分かるでしょう。
完全殺人:井上英三
詳細不明ですが、当時の海外作品の翻訳者として名前はしばしば登場します。
本作は創作となっています。内容的には、いつの時代でもよく書かれる探偵マニアが集まって話をする展開です。従って題名は 本格探偵小説風ですが、コントに属すると思います。
巴里のコマ切れ事件:青江耿介
ロックに度々登場する作者ですが、詳細は不明です。前号に続いてヨーロッパを舞台にした犯罪実話です。
創作か翻訳か翻案か等は不明です。とにかく、翻訳かどうかはっきりさせない掲載が多いので詳細は分かりません。話の内容から もそれを推察する事は難しいでしょう。
ルシタニア号事件:北洋
ロックでデビューしてある程度の作品数を残した作者です。これ自体が珍しいです。
その作者の詳細は、後に雑誌「幻影城」で鮎川哲也の「幻の探偵作家を訪ねて」で明らかになります。後に単行本にまとめられて います。そこに書誌が掲載されています。
作者は物理学者で、科学的な内容をメインに探偵小説を書く事を特徴にしたとされています。若くして亡くなっています。
科学者・光岡を主人公にした作品のひとつです。特に専門的な知識を含む内容と言えます。
魚の国記録 後編・絢爛たる終曲:紗原砂一
前号との前編・後編で1作となっています。作者については前編の通りです。ただミステリー資料館のアンソロジーでは行方不明 のようでどこまでも幻の作家です。
作品は、幻想と怪奇とSFと冒険の要素のあるもので、読者の受け取り方と時代性の考慮で評価が変わるでしょう。
死:阿知波五郎
連載のロック大学です。
死の予告、恐怖、苦痛等を順次並べています。小説から抜き出した例を並べた感じで、医学的な考察とは言いにくい内容です。
連載 蝶々殺人事件(7):横溝正史
第13章から第16章です。予告と読者へのお詫びで次号完結となっています。
実際にその様になったのですが、詳しい読者は分かりますが有名な読者への挑戦状に当たる「間奏曲」があるのは第17章の あとです。
そして編集部からのお詫びで、「予定回数を2回伸ばしても、データが出きらず、純論理的『犯人探し』が、想像力を要する 『犯人当て』になった」とあります。
ようするに第17章まで進まなければならない予定が、第16章で終わり次の完結編に進む事になったという事と思います。 ただ疑問もありますがそれは完結編で・・。