第2巻第2号

第2巻第2号

第2巻第2号(1947/2/1)

LOCK 2月号

目次

短編  天誅:森下雨村:p.4

随筆  一人の芭蕉の問題:江戸川乱歩:p.24

短編  悪魔か精霊か?:紗原砂一:p.30

短編  印度手品:女銭外二:p.50

短編  湖畔の廃屋:中島親:p.59

随筆  シムノンの新作:井上英三:p.72

怪奇実話  倫敦の殺人魔:青江耿介:p.74

ロック大学  顔:阿知波五郎:p.82

連載  蝶々殺人事件(6):横溝正史:p.84

天誅:森下雨村

作家以外に編集者・翻訳家などで活躍した戦前・戦後探偵小説には必ず登場する名前です。

作品数もかなりありますが、代表作として現在も読まれている作品はどれかと言われるとはっきりしません。

作品も創作か、犯罪実話か翻案か不明なものもあります。

昭和40年没。

本作は2段組(通常は3段組)で挿絵他、きれいに組まれているので準備された原稿でしょう。

内容は、犯罪実話に近い。

一人の芭蕉の問題:江戸川乱歩

木々の随筆に続いて、いよいよ巨匠登場の感があります。

現在でも有名なこの随筆は、複数の作家にとって創作の目標となりました。そもそも探偵小説(本格)と文学性を合わせてもつ 作品を理想の姿とするこの随筆の実現がなされたのかどうかは、結論があるのかどうかさえ不明です。

俳句を芸術に高めた芭蕉の存在から、探偵小説にも天才が現れる期待を書いた随筆です。

全号の木々の随筆に答える形で書かれており、3段組の最下段にコラム漫画を載せてページ数を稼いでいます。

魚の国記録:前編 悪魔か精霊か?:紗原砂一

目次と異なりますが、原本の通りです。読み切りのように目次に載せる事は多くありました。

正体不明の新人として登場しています。雑誌「幻影城 1975.09」で鮎川哲也の「幻の探偵作家を求めて」に登場します。そこで 紗原砂一=紗原幻一郎となっています。ただし、単行本「幻の探偵作家を求めて」には収録されていません。

作品数は少数ですが、ロックから登場した作家として記憶に残るでしょう。

印度手品:女銭外二

橋本五郎は、複数のペンネームを使用しています。戦後に3作使用したのがこの「女銭外二」名義です。

短編となっていますが今で見ると掌編・コント的な作品です。橋本は色々な作風の作品を書いていますが、本作はミステリな 謎というよりも戦争と中国の情景描写した作品といえ、ミステリといえるかどうか微妙です。

橋本五郎は、最近では論創社から「探偵小説選集(上)(下)」2冊が刊行されています。その最後に採られているのが本作 です。基本的には戦前の作家といえるでしょう。

湖畔の廃屋:中島親

中島親は、作家というよりも編集者・評論家としての活動が知られています。戦後は創作も手がけましたがは少ないです。

当時のページ数制限も絡み、自身の論と作品の実践との関係は微妙です。

本作は2名の登場人物のやりとりで話が進みます。密室トリックも登場しますが破滅的終わりの犯罪小説的要素も強いです。

シムノンの新作:井上英三

デイリー・ウィークの紹介です。題名に関する事は半分くらいで、残りは英米作家の別名義の話です。

倫敦の殺人魔:青江耿介

怪奇実話と題されたものです。

内容は、実話風に書かれていますがフィクションなのかノンフィクションなのかは分かりません。

あるいは、翻案かもしれませんが手がかりはありません。

顔:阿知波五郎

LOCK大学として「顔」を取り上げています。

結論は、犯罪者顔はないという予想通りの展開となります。

連載  蝶々殺人事件(6):横溝正史

第11章から12章です。まだまだ後半に入った所です。

ただし次号予告は、回数は「?」となっています。とても次回解決とは思えませんがその可能性もあるとの記入でしょうか。