第2巻第4号

第2巻第4号

第2巻第4号(1947/04/01)

LOCK 4月号

目次

短編  不思議な母:大下宇陀児:p.4

随筆  探偵小説の宿命について再説:江戸川乱歩:p.28

短編  天眼鏡:北町一郎:p.32

短編  桃色の食慾:渡辺啓助:p.40

短編  ダンサーの怪死:関根稔:p.56

短編  恐怖の丘:土英雄:p.68

ロック大学  双生児の話:阿知波五郎:p.78

連載  蝶々殺人事件(8・完結編):横溝正史:p.82

不思議な母:大下宇陀児

大下は1925年デビューのベテラン作家で戦前から活躍しています。作風は本格ではなくて犯罪小説風です。

戦後も複数の長編で活躍しています。ロックに発表した小説は、本作のみです。光文社のアンソロジーに本作は掲載されて います。大下の作風らしい短編ともいえます。

「石の下の記録」で探偵倶楽部賞受賞しています。

探偵小説の宿命について再説:江戸川乱歩

木々高太郎と江戸川乱歩の随筆が交互に掲載された時期です。

編集方針的には論争としたかったと予想できますが、共に変格推理に属する作家ですので、著しい食い違いはなく差は 方法論の差である。

そして、本論で木々の方法で達成できるならば、敗北は幸福といえるとしています。

後年に残るのは、2月号の「1人の芭蕉の問題」であり、論争としてはほとんど尽きている感がします。

天眼鏡:北町一郎

戦前からの作者で当時の流行作家の一人です。ユーモア小説といわれており、一部にミステリ味もあるとされています。

著書は複数出されており、現在でも一部の愛好家は求めているようです。イメージとしては時代により風化した作家とも感じます。

本作も、探偵事件から書き出しますがユーモア小説的な落ちのある話です。

桃色の食慾:渡辺啓助

名前については字体が「渡邊」になっています。これは多くの作品でも同じですし、現在も双方を使う人はいます。

戦前から作品を発表しはじめ、近年死去した探偵小説界の長老です。作品は、戦前派の多くと同じ変格派です。

幻想・ホラー・空想が混ざった変格作品が多いです、本作もそのひとつと言えます。鮎川哲也のアンソロジー「復讐墓参」に 掲載されています。

ダンサーの怪死:関根稔

一般公募を行っているので、見慣れぬ作者名が多いです。

この作者についても全く不明で、創作か別名義かさえも不明です。

如何にも本格探偵小説風の書き出し・進行です。何故か2日後に解剖を行うと事件が解決するというのは、小説としては 不可解です。

小説なのか、別名義なのかも分からないという意味はこの不思議な作品内容故です。

恐怖の丘:土英雄

この作者も不明です。長崎という記述は、投稿作家の住所の様です。雑誌「宝石」で活躍したようで、「江戸川乱歩と 13の宝石2」に乱歩のルービックで紹介されています。

作品中作が登場する話です。当時はどうだったのかは不明です。現在は類似構成が増えすぎたとは思います。

双生児の話:阿知波五郎

連載のロック大学です。

一卵性双生児について関連文献とその内容を紹介しています。

連載  蝶々殺人事件(8・完結編):横溝正史

第17章から第20章です。その後に「映画化企画なる」と「蝶々殺人事件懸賞犯人探し当選発表」があります。

日本最初の「読者への挑戦」にあたる「間奏曲」は第17章の最後に当たります。しかし初出のこの雑誌ではそれは ありません。その代わりに第18章の最後に「波線」がひかれています。それが何かの意味があるのかどうかは不明です。

現在流通のテキストでは、「間奏曲」が加わり、「波線」は削除されています。

少なくても完結編は、18章か19章からになるべきだったと思います。懸賞募集結果は正解なしで、前号に推理するには 不十分とのお詫びがでた事もあり、手際の悪さが感じられます。

しかし、本長編連載がのロックを支えた事は間違いなく、当時連載を待っていた人の事を考えてしまいます。