第2巻第1号
第2巻第1号(1947/1/1)
LOCK 一月号
目次
短編 R夫人の横顔:水谷準:p.4
短編 黒苺:妹尾アキ夫:p.26
短編 声音誘導:青江耿介:p.42
短編 身替り結婚:勝伸枝:p.80
短編 豹助謎を解く:九鬼たん:p.99
ロック大学 手と足:阿知波五郎:p.78
随筆 新泉録:木々高太郎:p.22
犯罪奇談 鼠と遊ぶ男:森下雨村:p.90
連載 蝶々殺人事件(5):横溝正史:p.112
R夫人の横顔:水谷準
1947年は4年間の雑誌発行期間でも一番安定な時期でしょう。
戦前からの巨匠が次々登場します。水谷準も、戦争前後の探偵小説に欠かせない作者です。
代表作は戦前に多いですが戦後は専業作家として活躍しました。
長編も有りますが基本は短編作家で、本作が戦後の最初の作品として、この作者の作品集には多く採られています。
戦前戦後共に変格・怪奇・幻想探偵小説を書いていたと言えるでしょう。
短編集は度々出版されており、本作もテキスト的には入手しやすいと言えます。
黒苺:妹尾アキ夫
アキは漢字を使用しています。戦前戦後作家で、変格探偵小説作家です。
本作は「ブラック・ベリイ」とルビがあります。そして、題名の横に「ほんあん」ともなっています。
翻訳も多い作者ですので、創作か翻訳か翻案かがはっきりしません。後者としたら原作者は書いてありません。
内容的には、コント的な本格探偵小説です。
声音誘導:青江耿介
本雑誌では創作に翻訳に度々登場する名前です。
コント風の本格探偵小説です。枚数的に奥深くはありません。
身替り結婚:勝伸枝
延原謙夫人で10作程度発表があると言われていますが、現在では作品は殆ど目にすることは無いでしょう。
題名から予想されるユーモアコントです。順当な展開の掌編です。
豹助謎を解く:九鬼たん
たん:は漢字です。ほかにも多数の名義を持ちます:九鬼紫郎・三上紫郎他
「豹助シリーズ」は戦後のユーモア本格のシリーズです。怪奇小説・時代小説など多彩な作品があります。
複数の雑誌の編集長としても知られています。また「探偵小説百科」という入門書も出版しています。編集長時代の交友歴から 当時の作家の事情には詳しかった。
ある程度のマニアには知名度は高いですが、現在入手出来る作品は少なくなっています。
豹助は、短編向けのつかみところのないキャラクターです。
手と足:阿知波五郎
「医博」の称号があり、医学随筆という内容です。「楢木重太」「楢木重太郎」その他の名義でも書いています。
その後雑誌「宝石」等に作品を発表しています。
新泉録:木々高太郎
医学博士の林髞として著名で、当時の探偵小説界を支える文化人でした。ただ本格探偵小説を認めていても、探偵小説芸術論 をかかげて戦前に甲賀三郎と論争を行った。
医学知識を使用した短編の代表作が多いですが、長編では心理的小説が多く探偵小説の謎という面では弱かった。
知名度から影響は大きく、探偵小説の発展と方向性へは現在では評価が分かれる傾向があります。
当時の探偵小説界ではなくてはならない存在で、随筆での雑誌「ロック」への登場となりました。編集者は江戸川乱歩との 間に論争を期待したとも言われていますが、戦前の論争の様には展開しなかったようです。
鼠と遊ぶ男:森下雨村
作家と共に、編集者・翻訳家としても活躍したビッグネームの一人です。
長編短編含めて作品数は多いが、オリジナルと翻案と翻訳があり、区別は難しいです。
犯罪奇談とされているこの作も、どれに当たるのか不明です。小説となっていないので、オリジナルではないと推定します。
連載 蝶々殺人事件(5):横溝正史
数回との作者の言葉で始まった連載ですが、8回まで延長との記載があります。
連載5回目は、第九章からで音譜と楽譜が登場します。掲載位置で、上とか次とかの表現は異なるようです。