第3巻第3号

第3巻第3号

第3巻第3号(1948/05/01)

LOCK 3・4月合併号

目次

短編  毒殺魔:木村荘十:p.2

短編  女賊と少年:香山滋:p.17

短編  墓標に絡む女:永瀬三吾:p.28

短編  万太郎の耳:山田風太郎:p.36

コント  或る夜の冒険:玉川一郎:p.48

短編  清瀧川の惨劇(2):北洋:p.55

コント  恋愛遊戯:三上紫郎:p.64

短編  菊五郎巡査:村上元三:p.67

短編  毒殺魔:木村荘十

1897/1/12-1967/5/6。非探偵小説の作家で、戦前に複数の文学賞の受賞・候補歴があります。13回直木賞受賞。

作品の前に「探偵小説でも、犯罪実話小説でもない」と注意書きがあります。

内容は「帝銀事件」と類似した満州の事件を書くというスタイルです。

事件を起こすまでの人間心理・環境を描いたという事だが、私にはそれが犯罪小説だと思えます。

短編  女賊と少年:香山滋

戦後すぐの「探偵雑誌・宝石」の新人コンクールでデビューして、少数の長編と多数の短編を書きました。

作風は典型的な秘境小説・幻想小説・SF小説などのロマンを描きます。

少年と出会った主人公の女性が、いなくなった少年を捜すうちに、やけになって女賊になって伯爵夫人の部屋に しのび込むと・・・コント風の結末になって行きます。

短編  墓標に絡む女:永瀬三吾

1902/9/1-1990/11/19。前年にデビューして、「売国奴」で探偵作家クラブ賞受賞。短編集「白眼鬼」。

代表作からと殆ど作品が読まれていない事から、スパイ小説作家と思われがちですが、本作は本格と犯罪小説の中間的な 内容です。ページ数の余裕があればもっと展開出来たように思います。

短編  万太郎の耳:山田風太郎

戦後派の巨匠のデビュー当時の作品です。

人間の感情を音楽として聞く事ができる耳を持つ主人公は、ある女性に恋愛の音楽を聴いて、真実を告白します。 しかし、恋愛の音楽と思ったのは実は・・・・。

特殊な能力を色々な科学的な裏付けがあるように書きつらねる作風が早くも強く表れています。

コント  或る夜の冒険:玉川一郎

1905/11/5-1978/10/15。戦前・戦後に直木賞候補2回、ユーモア小説らしいが、現在は殆ど知られていない。

主人公がデパート泥棒の話に騙されてついには一緒に盗みに入ったが、そこは警備員がいて捕まってしまいます。

そのときの相方の行動とその結末は・・・・。

短編  清瀧川の惨劇(2):北洋

「ロック」デビューの少ない作家です。本作はやや長い作品で、2回に分けて掲載されています。

細部の表示に疑問がありますが、当時の科学捜査を取り上げた本格探偵小説です。

特に意味のある分載ではありませんが、何故か2回目も1章から始まっています。間違い?。

光岡が京都府の警察に協力していた頃の話ですが、特に突飛な謎でも特殊な謎でもありません。 本作の狙いを作者は最後に後書き風に書いています、科学捜査は如何に有効なのかを。

コント  恋愛遊戯:三上紫郎

現在一番知られている名前は「九鬼紫郎」名義でしょう。他にも多数の名義で多くの作品を書いています。

「九鬼たん」「三木紫郎」「三上紫郎」「霧島四郎」「石光琴作」他。

有閑夫人が遊びで始めた、気の弱い男性に恋を仕掛けてからふる遊戯。

そのうちに、その事を知った男が夫人に本当に恋をしかけて逆にふるという復讐を仕掛けますが・・・。

短編  菊五郎巡査:村上元三

時代小説の大家で、直木受賞というよりも、長く直木賞の選考委員を行っていた事が有名です。

捕物帖でも、内容的には探偵小説とは遠い作風です。

時代は明治、主人公の巡査が複数の事件とその合間にあう女。そしてあるときに思いがけない所で再会します。

軽く読ませますが、謎ときとは無縁です。「加田三七捕物帳」は江戸時代の話ですが、最後に加田三七が登場して・・意味不明 です。