で始まるタイトルの映画

幸せの1ページ

今は無き三軒茶屋の名画座で『セックス・アンド・ザ・シティ』と2本立ての2本目で観た。
ジョディ・フォスターが登場した途端、「ああやっと女優が出て来た」と思ってしまった、それくらい『SATC』の女優達とは格が違う、と言う事か。
引き籠りの小説家が、あの完璧な二の腕とか無理がある、とは思うんだが。

無理だらけなんだけどね。
まずアレクサンドラが島に行く動機が弱い。
場所を教わったらキチンと通報し直せば良いだけの事だし、彼女がノコノコ出て行ったからといって役に立つとは思えず(それが結構役に立っちゃうからまた無理)そもそも病的な引き籠りがあんな理由で見知らぬ島、それも危険が待つ島へ出掛けるとは、どうしても思えない。のっけから残念。
島にたどり着くまでの大冒険も、行動力体力共に成し遂げられるとは思えない。作家だから知識や発想力はあったにせよ。
そして無理を通して始まった上に案外、盛り上がらずに幕が降りる。

しかしニムは可愛いし賢くて、アクシデントさえなければあんな生活は憧れる。
アシカもペリカンも亀も可愛いがトカゲ最高!
だから残念、"トカゲ爆弾"は楽しめず、むしろ憤慨してしまった。「お友達」になんちゅー事すんねん!?
無理と言えば、下調べもせずに客を連れて来る旅行社?も謎。と、言うか御都合主義なんだけど。

アレクサンドラの妄想と現実が交錯する辺りは面白かったのだが、これって基本子供向けの映画のようなのに、ちょっとアンバランスかな。
作家も引き籠りも設定があまり生かされてないと思ったが、この妄想癖は"引き籠りの作家"らしい味付け、という事なのかも。
そして彼女のヒーローと、ニムのパパは、同じ役者?
顔が普通でよく分からなかったけど、『300』で『オペラ座の怪人』じゃーないですか!
覚えにくい顔ってあるよね。

島の自然は美しく、本当にパラダイス。
しかも電気もネットも普通に使えるとか(どっから引いてる?)いいとこ取り過ぎる。
結局、都会の豪華な部屋から絶海の孤島に、引き籠りの場が移ったというだけのような気もするが、まあ同居人ができたから大進歩と言えるか。
今は原稿はネット経由で遅れるし、そんな生活してみたいかも。
あ、生意気な義理の娘はいなくてもいいや。可愛かったけど。

幸せの始まりは

リース・ウィザースプーンのラブコメは面白い、という印象を持っていたが、コレはダメでしたね。
笑えないし共感できない。それ以前に、展開の無理矢理感とご都合感が何とも楽しくない。
彼女がこれまで見せた、元気一杯で前向きで挫けない、でも人情厚くお調子者…といった魅力が、今回全く見当たらず、一番の"売り"である表情の笑顔も少ししか見せずで、それでも客を引っ張れる程の魅力は、この女優には無い。

ニコルソンの登場時だけはソコソコ楽しかったが、多分この人はどんな脚本でも面白く見せてしまうのだろう。
と言うかなぜこの脚本で出演した?
不思議でならない。リースのファンだとか???

男性二人、好対照なタイプで、どちらと「くっつけ」たいかは冒頭から丸わかり。
その冒頭辺りも、リサの事情とジョージの事情をそれぞれの目線で描いてしまうから、もう二人の物語に決まっているワケで。
「どっちを選ぶの?」というハラハラドキドキも無ければ、結果「こっちで良かったー」というカタルシスも無い。

だってマティってイイ奴じゃん?
対するジョージは、特に魅力を感じない。
要は相性の問題だけであって、それはそれでいいんだけど。
明らかに性格的に相性悪いのは最初から分かり切っているのに、マティと同棲まで始めちゃうリサ。
自分の期待通りでないと、いちいち怒鳴り散らして荷物まとめるリサ。
たいした付き合いもない男の家にノコノコ入り込んでお酒をガブ飲みし、ブラ紐丸見せでごゴロゴロして見せるリサ。
全然共感できません。

マッチョのマティ、見た顔と思ったらライフ・アクアティックの息子!
あれも可哀想だったけど、この役もたいがいだわ。
引く手あまたのマティがリサに熱を上げる理由も分からないし、全く心惹かれているようにも気が合うようにも見えないのにマティと本気で付き合おうとするリサも謎。
「映画なんてリア充は金落とさないからオタクに媚びるしかないのさ」と言った友人(オタク)の言葉を思い出した。

G.I.ジェーン

全くたまたま、『GIRL ガール』なんぞと続けて観てしまった。
どちらも"女"にこだわり、"女"が頑張る映画、なんだけど、頑張りの方向が正反対で、しかもどちらもたいして応援する気になれないという(笑)。

デミ・ムーアは元々、たいして好きな女優ではないし、公開当時は丸刈りの彼女の姿とタイトルのバカっぽさで敬遠して、全然観る気にならなかった。
随分と時が経ち、ふと気が向いて観てみれば、あまりのガチぶりに最初は呆れ、中盤はドン引き、終盤(明らかに蛇足の戦争シーンは除く)はとうとう引き込まれてしまった(笑)。
いや〜デミ凄いわ。なんだか凄いわ。闇雲に凄いわ。

マスター・チーフのヴィゴ・モーテンセンが、なかなかセクシー。元々イケメンだけど、こういう役もピタリとハマるのね。ちょっと見直した。
議員役のアン・バンクロフトも美しく、流石の貫禄だった。
…でもやっぱり、この映画は最初から最後まで、デミ様の独壇場!だよね。
地獄の特訓に送り込まれる前の彼女は、ちゃんと美人に見えるし、終盤へ向かう腹筋やら上腕二頭筋やらが見応えタップリ。
坊主刈りは『私の中のあなた』でキャメロン・ディアスも披露しているが、デミの方が8年も早いから凄い。(ただし、刈り上げ姿の衝撃はキャメロンの方が大きかった…)
残念なのは、坊主にしてからのデミが殆ど女に見えず、「胸の膨らんだ男」になっちゃってる所かな。
だからボコボコに殴られてるのを見かねた兵士が止めに入るシーンなんかも、あまり説得力を感じなかった。むしろあのデカい胸が不思議な物体に見えて来た。うん、タダの邪魔な出っ張り。

ごめん、リドリー・スコット監督だったのね。
そうと知ると、いきなりハネ上がる私の中のハードル。リドリー調子悪かったんだろか?(笑)
スコット監督らしい重厚さや美しさを感じなかったな。
尤も、私は彼を「男惚れ監督」と思っているので、元々女性の描き方はそう上手くもないのかも、と考えると納得もいくというものだわ。って言うかデミに男惚れしても違和感ナシ(笑)。
なぜこんなテーマに手を出してしまったのか。

1番マズイのは、なぜデミ様があんな過酷な訓練に参加する気になったかが分からないところだよな。
その上、どんなに厳しくても所詮は訓練だと分かって観ているこちらとしては、あまりハラハラもドキドキもしない。
と、思って観ていたら、流石に気付いたのか最後の土壇場で突然実戦に突入。
それは、違うだろう………違う、よね????

と、まあ、とにかく無理無理感がひたすら押し寄せるばかりなんだが、それでもとにかくデミ・ムーアのガッツの前にはひれ伏さざるを得ない、やはりタダモノではなかったのだな、と再認識した映画にはなった。
好きかと問われれば、そうでもないんだけどさ。
でも、ここまで頑張る人は無視はできないわ。

シークレット・ウインドゥ

スティーヴン・キング原作*で、主演が芸達者ジョニー・デップ。
ちょっと楽しみにしてたんだけど、ダメでした。

デップ演ずるモートが小説家、という時点で、ちょっとイヤ〜な予感がしたんだけどさ。
スランプの小説家なんて正気じゃないに決まってるじゃん。
そう言えば、前後して『スイミング・プール』を観たんだけど、どうせならあれくらいアチラに行っちゃって欲しいわ。

ティモシー・ハットン!
タップス』の夢見る瞳は何処。
すっかり貫禄がついて、いいおっさんいやいい役者っぽくなっていた。人間臭くなったと言うか。

デップは相変わらず何を演ってもサマになってて、特にあのミョ〜に黒目勝ちなでかい目が苦手な私にとっては、眼鏡使用はとても良かった。
湖畔の景色とか家の中もキレイに撮ってるんだけどなあ…。
犬いぢめる奴は、取りあえず許さん!
それにしてもアメリカ人、心の旅しすぎちゃうか?
私はもう、飽きちゃったな。
デップの腰の引けた演技と、ラストのわざとらしい変貌ぶりが、笑えると言えば楽しく笑えたな。

*参照:『ショーシャンクの空に』『スタンド・バイ・ミー』『ミザリー』『キャリー』『ゴールデン・ボーイ』

シービスケット

ツボにはまる、という言葉があるけれど、これはまさしく、私にとっての泣ツボ直撃だったみたい。
なにしろフラリと入った映画館で(悲しいくらいガラガラでした、こんないい映画…)、開始10分くらいから、ほとんどずっと泣き通し。
劇場でこんなにズタボロに泣いてしまったのは、生まれて初めて。

大恐慌時代のアメリカ。
それぞれに傷付いた3人と、挫折した一頭の馬が出会い、栄光に挫折、そして再生を共にする、まさしく真正面直球勝負の感動物語。
脚本も演出も、それぞれの役者の演技にも、安いケレン味は微塵も無く、素直で上品だ。観ていて何度も「王道」という言葉が頭に浮かんだ。
そして美しい絵の数々。紅葉の中を走る馬の美しい事!
さらに、レースシーンの迫力、臨場感、そしてやっぱり美しさ。
作品テーマも「必ずやり直せる」という、気恥ずかしい程 真正面ぶり。
でも、この映画の首尾一貫した密度の濃さと、まっすぐに流れる優しさ、強さに、思わず襟を正してテーマに同調したくなる。

監督は、ゲーリー・ロス。
あらら、私のだーい好きな『ビック』の脚本家だ。ナルホド。
だいぶタイプの違う映画だが、丁寧さ、手堅さ、品の良さは変わらない。
加えて絵の美しさ(ナゼにここまで!?と思う程だ)。単なる木や空や街並みが、なぜこんなにも美しいのか。
その上、世界で一番美しい動物、馬。
レース中の疾走するサラブレットはもちろんの事、草原に横たわって昼寝するビスケットの幸福な姿。酷い扱いに荒れてしまったけれど、理解者を得てじっと見つめるつぶらな瞳。そして、不遇の時代に身に付いてしまった悪い癖を取り払って、本来の走りを取り戻す時の、森を走るシーン。圧倒的に美しくキモチイイ。騎手も馬も脚を傷めて、白い包帯姿でじっと向き合うシーンも、胸に迫った。
 
馬主のジェフ・ブリッジス、調教師のクリス・クーパー、騎手のトビー・マクガイア、みんな良かった。
マクガイアは「馬は小さい、騎手はでかい」、常にウェイトと戦う大柄な騎手レッドの役。劇中でも食事制限のシーンが繰り返し出て来るが、実際にかなり頑張ったみたい。『スパイダーマン』とは別人のように頬がこけて厳しい顔になっている。騎乗姿もサマになっていた。
ジェフ・ブリッジスは家族を失った成り金男ハワーズ。悲しみを知るからこそ他人を許せる。シブイです。
渋くて素敵なんだけど、老けたねえ、ブリッジス。『フィッシャーキング』の頃はワイルドでセクシーでとっても好みだったので、ちょっと寂しいんだけどね。
クリス・クーパーは、世捨て人のような職人気質の調教師。目と目が合えば馬と語り合える男。この人が「無駄な命なんて無い」なぞと言うと、ちっとも気障でなく素直に頷いてしまう。
そして、馬!シービスケット、よくもまあ、こんな可愛らしい顔した馬を連れて来たもんだ。つぶらな瞳を覗き込むだけで、訳も無く涙が溢れてしまう。対する敵役のウォーアドミラルは、大きく黒く、精悍。同じ競走馬でも、見事に表情が違う。素晴らしい!

最初観た時は知らなかったんだけど、物語りは実話らしい。
実話の映画化というと、どうしても食い足りない印象の物が多いけど、これはそういうぎこちなさが全く感じられなかった。
シービスケットが全米No.1の馬になったアドミラルとのマッチレースの最終コーナーで、ビスケットの騎手が相手に告げた「あばよチャーリー」という台詞は、当時流行語になったとか。いやはや。
余談だけど、この騎手「アイスマン」を演じたハンサムな男性は、実際に殿堂入りしてる名ジョッキーなんだそうだ。全然違和感無く俳優してた。「事実は小説より…」とは陳腐な言葉だが、この人の存在が一番「奇」かも。

JM 

タケちゃん、わっかい!
そしてあらら?この人けっこうオトコマエだった???
さすがハリウッドの撮影技術、かもしらんが、バイク事故が94年、この映画公開が95年という事は、撮影は事故直前だったのかな。

それにしてもまあ、つまらない映画だった。
出来損ないのアニメみたいなストーリー、相も変わらず木偶人形のようなキアヌ、モタモタした展開に、ありきたりな大企業とレジスタンスの表現。
強いて言えば、タケシの出演と、日本が扱われてる事が興味を惹いたのだが、これがまた凄い表現で。
「パパ−!新しいドレスをありがとう♪」と、繰り返し流されるビデオの中のタケシの愛娘が着ているのは、花魁みたいな赤い襦袢。はい、長襦袢。ご丁寧にも白の半襟付きの。
しかし、そのスットコビデオを繰り返し見つめるタケちゃんの、世にも優しい眼差しはナカナカだった。ほぼ唯一の見所。
思えば私は『戦場のメリークリスマス』のラストシーンのこの人の笑顔にヤラレちゃったんであった。

ヒロインは美人さんだったが、内容がコレでは生かせるハズもなく、残念。
まあ、ボンヤリしたキアヌとワイルドな美人の並びは面白かった。
あとはあの、宣伝で良く使われてた、SF的なヘッドギヤ付けたキアヌのビジュアルね。人工的な顔だから、ああいうの似合う。
それにしてもキアヌのあの動きの鈍さ…『スピード』もたいがいだったが、もうちょっと上手い事撮れんのかい…と、思ったら、この直後に『マトリックス』が出るのね。分かってる人はいるモンだ(笑)。

主役のみならず、脇役も本当に、どいつもこいつもハズしててさ。
"ヤクザ"のタケシはともかく、その手下が全然日本人に見えない。白人の美人秘書は実は日本髪結ってキモノ着てて、その努力は認めよう。
その他の、"スパイダー"だのウド・キアだの、思わせぶりな扮装で出て来ちゃさくさく消えてくし。レジスタンスの黒人はヒップホップのスターらしく、個性的な風貌だったが、やはりただ出て来ただけ。
イルカちゃんもせっかくのアイディアなのに、なんだかなぁ…だった。それにしても「魚じゃん」ってキアヌ…(ため息)。
あのマッチョなキリストみたいなのがドルフ・ラングレンとは気付かなかった。あの役も何しに出て来たんだか…、消化不良。
シンジは絶対中華系だと思ったら違った(笑)。

きっと、ちゃんと作れば面白くなる要素はいっぱいあると思うの。
けど、いちいちピントがズレでると言うか、「なんだったの…」の連続で、「脳に情報を入れて運ぶ」という設定も映画的ダイナミズムに欠けると言うか。
残念。

シェイド

スチュアート・タウンゼントがショボいせいか、ずっと誰が主役なんだか分からず、最後まで誰に思い入れして良いのか分からず…つまり、ストーリーにのめり込めなかった。
最初はジェイミー・フォックスが主役なのかと思ったら、タダのアホだったし。
ガブリエル・バーンの方が風格があって、「ケチなチンピラ」扱いに違和感。黒人系の女優さん(タンディ・ニュートン)は美人で目の保養だったけど、コレも中途半端な悪女ぶりで不完全燃焼。
そして、何と言ってもスタローンですよ(笑)。
なんだろう、中盤まで待たされたせいで尚更に、「この人が出るのはつまらない映画感」が凄まじかった。
ロッキー』だけは好きなんだけどなぁ。1本目限定ね。
だって悪い事もかっこ悪い事も絶対しないじゃん。

ギャンブルが嫌い、ってのもあるけど、それにしても盛り上がらないゲームだったな。
って言うかポーカーって、見てて楽しいものなのか???とすら思ってしまったが、ゲームそのものの比重自体も低くて、どうでもいい(上記理由による)人達がどうでもいい騙し合いを繰り返す。
スタローンとは反対に、ハル・ホルブルック、ダイナ・メリルと、出て来るだけで画面がハイグレードになる俳優さん達を拝めたのがせめてもの救いか。

そう言えば私、『スティング』も観てないんだった…。

ジェシー・ジェームズの暗殺

ホモ臭い映画だ………。

眠いし暗いし退屈で、長いなーどうしようーと思いつつ観たけれど、最後まで見たらそれなりに残るものがあった。
実際に前のめりで見たのは「暗殺」の直前辺りからなのだが(笑)つまりそこに至る長い長い前振りが、それなりに機能していたという事ではある。

ブラピのカリスマ性と危うさもさる事ながら。「若造」ボブのケイシー・アフレックが凄い。
「ああっ殺されちゃう!」ではなく「あーあ殺しちゃうの?」だったのが、その良い証拠。
この人今まで何本か見てるはずなんだけど、殆ど記憶に残ってなかった。それがこの強烈な印象。ハマり役という事か、彼が実力を発揮できる立ち位置にやっと立ったのか。
ベンの弟だって?あまり似てないね。芝居はずっと上手そう。
登場と同時に、ハンサムな甘い顔にもかかわらず、何やら「うげ〜」という拒否反応が出た。
「暗殺」が誰の手によるものか、全く予備知識は無かったが、「コイツは信用ならん」と強く思わせる何かが明確にあった。
対するブラピは、薄汚い衣装ながら老若男女全方向にセクシー光線を放ちつつ、魅力的ではあっても決してデキた人ではない「伝説の悪党」を体現している。

常に薄暗い開拓時代の家屋、夜の森、酒場、ホコリまみれのテンガロンハットに髭面の薄汚れた男達。地味なエプロンにヘアキャップの女達。
前半、と言うか最終コーナー直前までは、その絵的な地味さが眠気を誘って辛かったのだが、その長い長い(起承転結の)「承」部分が終盤ちゃんと効いて来る。
登場人物がやたら多く、似たり寄ったりのならず者ばかりで判別にイライラしたが、終わってしまえば「なんかいっぱい雑魚がいたけど消えたな」程度の認識でOKだった。
強いて言えばボブの兄とジェシーの従兄弟程度は把握しておくと良いが、それ以外は大勢に影響無し。
そんな中で、すっかり老齢に達したサム・シェパード(ジェシーの兄)が一人異彩を放っていた(がすぐ消えた…絶対また出て来ると思った重要ポジだったのに!)

私は元々ギャングだのヤクザだのに全く心惹かれない(皆が大好き『ゴッドファーザー』も苦手)ので、今回も例に洩れず、いくらブラピがセクシーでも強盗じゃん?と、冷めた目で見ていたんだが、実話が元だという結末の展開があまりに衝撃的で、さすがにちょっと強盗が気の毒になった。
眠いし長いし主人公(ボブだよね?)は応援できないしで閉口したが、終わってみれば強烈な印象が残る、見応えのある映画になった。

多分、思春期に観ていたら、もっと反応が強かったタイプの映画だと思う。
壊れかけのカリスマ、憧れと名声欲と恐怖心に翻弄される若造。
結果、焦がれた対象を潰す事で自身がそれに成り代わるかのようなボブではあるが、もちろん世間はそんな風には認めてはくれなかった。
時々聞くストーカー殺人事件にも似た、特定の他人への愛憎と執着心。歪んではいるがストレートな、もしかしたら"憧れ"というものの本質かもしれない。
対するジェシーの方は、歳も取って追い詰められて、もう疲れちゃってて、逃げ場を探していたようにも見える。
(少なくとも映画では)「押すなよ、絶対に押すなよ!」みたいだったもんな、あの最期。

歳を重ねるにつれ、他人への憧れという感情は目減りして、或いは別のものに変容して行くように思う。
だからもっと若い頃、とりわけ思春期にでも観ておけば、もっとその辺りが刺さったように思い、残念なような、照れ臭いような落ち着かない気持ちになった。
腐女子の皆様はきっと、大好きだと思うな。

シェフ 三ツ星フードトラック始めました 4/15

キューバって殆ど知識が無いんだけど、何だろうこの良いイメージは。
やっぱり音楽のせいかなぁ?
と、いうワケで、ゴキゲンなキューバミュージックに乗せて展開する、頑固一徹職人シェフの一夏の冒険物語。

主演のおっさん、監督も兼任なんだ。
結構そっち方面で活躍してるみたいだけど、役者としても全く違和感無く、見苦しすぎずイケメン過ぎず、全くシェフらしく見えた。

キューバサンドは正直、三ツ星シェフが本気でやりたいの?
という気がしないでもなかったが。
まあ、きっと物凄く美味しいんだろうね。
途中"ベニエ"と言うのが出て来るが、こっちは知ってる!
カフェ・デュ・モンドというチェーン店で出してた、柔らかくて軽い揚げ菓子。これがチコリ入りのカフェオレに合うのよ〜!
と、思ったら、もう日本から撤退しちゃってた。美味しかったのに…。

全体に陽気で前向きな、楽しい映画だったんだが、子供はやっぱり可哀想に思えてしまってモヤモヤする。
仕方ないの、と言われればそうなんだけど、父も母も好きに生きて楽しそうで、子供にばかりしわ寄せが来てて、なのにあのしっかり者の息子は父も母も大好きで。切ない。
もっとも、あの子の役割は「可哀想」ではなくて、若い世代としてSNSの力を最大限に利用できるためのハイスペック戦士だったワケで、そこはまんまと爽快感をいただいた。
正直私もそんなに詳しくないので、評論家とフェフのバトルの行き違いについては良く分からなかったけど。

まあ、あの評論家がフェフのファンだって事は、何となく読めてしまったけどね。
それにしては口汚過ぎ(笑)そういう芸風なのか、余程期待を裏切られて腹が立っていたのか。
(ウィル・スミスの殴打事件じゃないけど、毒舌芸みたいなのももう無理な時代なのかも、とは思う)
色々とうまく行き過ぎの感も無くはないが、それもこれも、当のシェフが図抜けた実力があってこそ、と思えば気にならない。
あのままずっとトラックで商売するはずもなし、評論家が来なくても、いずれ誰かが投資を申し出た事でしょうから。

妻役のソフィア・ベルガラ。エキゾチックで綺麗だった。と思ったらコロンビア出身ですか。
他にもスカーレット・ヨハンソンやロバート・ダウニー・Jr、何よりダスティン・ホフマンをあんな脇役で起用しちゃうのも、監督兼主演が有名プロデューサーなればこそ?
最後にダスティン店長は出て来るかと思ったのになー、そっちじゃなくて評論家の方だった。

全体に楽しく面白かったが、最大の山場が冒頭の評論家にキレ散らかしたシーンだったのは、まあ、ご愛嬌か。
しかし色々と、怖い世の中でもあるよねぇ。

シェルタリング・スカイ

こ、こんなにミもフタもない話だったっけか…(汗)。

公開当時、多分劇場で観てる。
ひたすら続くオレンジ色の砂漠の美しさや、エキゾチックな人々の風俗習慣の描写が印象的だったが、ストーリーについては殆ど理解していなかったのかも、あまり印象に残ってなかった。
確か故・淀長さんが大絶賛だったんだよね…。

デブラ・ウィンガーはこの後、ハリウッド中の女優達に探されるワケだが(笑)、なるほど美人。ちょっと知的過ぎて硬い印象があって、それとこの役のグダグダっぷりが不思議なバランスになってるな。
ダンナの方がマルコヴィッチだったとは、当時は全然意識に無かった。
若い頃の彼は、なんとナカナカに二枚目で色っぽい。まあ隠しきれない胡散臭さが匂い立ってはいるけれど。

第二次大戦が終わった直後、という時代設定で、確かに昔の事だから、まあ色々と行き届かない事は多かったのでしょうが。
それにしてもあの展開はスゴスギル。「死病だけど持ち直す人もいるんでよろしく」って妻一人に任せて行っちゃうとか。死なれて放り出して行きずりの遊牧民にヒッチハイクしちゃうとか。
シェルタリングスカイって、なんなんだろう?
なんか絶景で腰振りながら語り合っていたけれど、あの状況であの話題という事を差し引いても、どう物語にからんでいるのか理解できない、歯痒い。

それでも、問答無用に美しい砂漠の光景が、この映画の全てを体現するような、完成度の高い出来映えを見せている。
マルコヴィッチやウィンガーのみならず、俳優陣も皆本当にこういう人なのかと見まごうような好演で、良い映画と言わないとマズイような風格が、確かにある。
雰囲気はいいし、映像は素晴らしいのだが、心に響くまではいかなかった、私にとっては残念な映画。

潮風のいたずら

記憶喪失ネタ、一度は描いてみたいけど、未だ手付かず。
古くは涙の名作『ひまわり』なんてのもあるけど、興味深いだけに、安直に流れてしまいそうで、要注意なのかも。(超能力とか、多重人格とかも同様で、なかなか手が出せない。)
とは言え「潮風のいたずら」は、笑って済ませられる安直なコメディであり、そのくせ要所でちゃーんと「じ〜ん」とさせてもくれる、めでたくも美しい傑作だ。タイトルをなんとかしてくれ。

もう一つ、主演のゴールディ・ホーンとカート・ラッセルは、私生活でも有名なラブラブカップル。
そういう企画も、つまんない映画に流れがちだけど、二人は本当にお似合い(かなりの年齢差らしいが、ゴールディ・妖怪・ホーンはものともしない)だし、魅力的。「あーもお、やってらんないっ!」感満載で、それもまた楽し。まあ、二人のファンだから、私は。

ゴールディは、傲慢な富豪マダムから、記憶喪失で貧乏主婦に急展開。ゴージャスなけだるさも、無邪気な元気ぶりも堪能させてくれる。
対するラッセルは、子沢山の大工。でぇく!なんてセクシーな職業目撃者』のハリソン・フォードもステキだったけど、ラッセルも金槌がよく似合って、惚れ惚れする大工ぶり。
ロマンティックコメディの王道として、最初は反発し合う二人が次第に惹かれ合う、というのはパターンだけど、この二人が惹かれ合う過程は、本当に説得力があって無理が無い。設定、構成、セリフのディティール?プラス、やっぱり二人のピュアなオーラのせいかなあ。
二人が心から結ばれてのベッドシーン(あらあら)は、感動的。
かなり強引なハッピーエンドのオーバーアクションも、すんなりと気持ちに乗れてしまう。ああ、楽しかった。  

シカゴ

ミュージカル、たいして好きじゃないんだけど、まあ今回は、けっこう楽しかったかなあ。
ゼタ・ジョーンズ、すごい迫力!歌も踊りも本当にウマイ(みたいよ)。それになにより、あの身体はただもんじゃない。元々美人でスタイルもいいとは思っていたけど、あそこまで見せびらかされると、もう本当に、脱帽。
対するレニー・ゼルウィガー、『ブリジット・ジョーンズの日記』のおかげで、ポッチャリイメージが強かったけど、実はこちらが本来の姿らしく、見事な脚線美に、それでもまだ顔はちょっとポッチャリ感を残していて、キュート。
女優2人の迫力に対して、リチャード・ギアの、毎度ながらの安っぽさ。「悪徳弁護士」だから、あんなモンでいいのかもしれないけど、歌も踊りも身体も顔も、あまりにもオソマツ…。

ストーリーは、他愛無い、と言うか、正直なんの感動も無かった。女二人の逞しさ、太々しさは面白かったけど。不謹慎だと非難する向きもあるけれど、私的には、殺されたのはクズばかり、べつにいいんじゃ?ってところかな。人のいいダンナは、ちょっと気の毒だったけど、女心を分からないのも罪のうち。

華やかで、綺麗で、ゴージャス。
たいして人生考えさせられなくても(マスコミ批判とか、言ってる人もいるけど)充分楽しめる娯楽作品だと思います。

追記:リチャード・ギアの演じた悪徳弁護士の役、トラボルタが蹴ってたんだって!そして『シカゴ』の大ヒットを見て蹴ったのを悔やんでるんだって。ジョンのバカー。
そっちの配役で、撮り直して欲しいわ、実際。

四月物語

岩井俊二監督って有名だよね?
とか思って見てみたら……うー。
松たか子は好きだし、当時二十歳の彼女はそれはそれは初々しくて可愛らしいのだけれど。
それ以外は全くつまらない。

冒頭、上京する娘を見送る一家のシーンで、すでにテンションはダダ下がり。
超有名人の父、美人の母、売れっ子の兄、気の毒な程似てない姉。実の家族が総動員で、可愛らしい末娘を送り出す、と。このイキナリ楽屋落ち感。いや内容が面白ければご愛敬で済むんだけどさ。
松さんの容姿や仕草は可愛らしいが、このヒロインは終始グズグズモダモダしていて全然可愛くない
いったい何が気に入らないのと聞いてみたくなる程、何をやっても仏頂面と作り笑いの繰り返し…と、ウンザリして見ていたら、実は高校の上級生に憧れて東京へ追いかけて来た、受験必死で頑張った、と唐突に一人語りが始まり、アテにしていたバイト先でスンナリ先輩と再会、先方が自分を覚えていたのですっかりゴキゲンになって、ジ・エンド。
ふう…。
(あれっ、ココってもしかして、カタルシス感じるトコ?書き終わって気付いた)

憧れの先輩が田辺誠一だったり、途中見に行く映画の中の信長が江口洋介、光秀が石井竜也だったりと笑える配役もあるものの、だから何だってくらい活躍しない。
なんでしょうかこの、何の工夫も無い素人のブログみたいな映画。

ジキル&ハイド

マルコヴィッチは名優だと思うし好きなんだけど、いかんせん顔に特徴あり過ぎ(笑)。
もちろん、大多数の客は「ジキル」と「ハイド」が同一人物というくらいの知識は持って見てるワケなんだけど、それにしても。
もうどう見ても、ジキルとハイドが同じ人で、しかもヒロインが意外に早くバッチリ顔を合わせてしまうのに、全く気付かない、というのは、何の茶番かと。ご主人様のコスプレにお付き合いする従順なメイド…だったら別の方向に面白いかもしれないが。

そのメアリーを演じるジュリア・ロバーツ。
元々あまり美しい人とは思ってなかったが、すっかり老け込んでしまって、取っ替え引っ替えの(現代目線で)素敵なメイド服姿が、なにやら痛々しい。
と、思いつつ見始めたんだが、あの過剰に神経質な不健康な顔付きは、この世界にはピタリとハマっていたみたい。
何となく『ローズマリーの赤ちゃん』のミア・ファローを思い出した。
ホラー系被害者顔と言うか、追い詰められタイプと言うか。これはこれで良し。

全編を通して流れるゴシックな雰囲気はとても好みなんだが、いかんせん話がイマイチだった。
ジキルとハイドの二重性がちっともスリリングじゃないし、そもそもジキル博士の見た目が怪し過ぎて「人格者の紳士」に見えない。方やハイド氏の方は、粗野にふるまってもなんかカワイイ(笑)。
もっともっとわざとらしいくらいに特殊メイクするとか、本来なら別の役者を当てても良いところだったのに。(原作では顔も身長すらも全然違ったはず)
おそらくムード重視だったんだろうが、結局行われた犯罪もウヤムヤな描かれ方だし、心閉じてる系のヒロインなので細部の気持ちが伝わって来にくいし。
残念ながら、終盤のクライマックス前に眠気に襲われてしまった。
最後の"エイリアン"に至っては、まあちょっと面白かったけど…うーん。

大好きな『ヒーロー/靴をなくした天使』の監督なのね。
うん、本当に雰囲気はキッチリ作り込んであって、いいんだけど。
もうちょっと頑張っていただきたかった。
グレン・クローズは相変わらず、物凄くかっこよかった。

16ブロック

『ダイハード』で世界に躍り出たブルース・ウィリスは、紛れもなく新しいタイプのヒーローを体現していた。
一見あまり強そうじゃない、情けない泣き言を言う、なんならベソまでかいて見せる。が、無茶苦茶に強い。
そのブルースのイメージで見ると「ブルース歳取ったなぁ…」と感慨深いんであるが、ええ…ちょっとコレ(汗)という気分にもなる。
足を引きずりヨボヨボ歩く、アル中刑事。
仕事にヤル気は全く見せず、終始ドンヨリ
もちろんずっとそれではアクション映画にならないんだが、結構ギリギリまでドンヨリしてて、彼を憐れむ同僚達とのやり取りも含め、この役作りはナカナカのものだ。

対する囚人のエディ・バンカー。
やたら口数が多く終始ハイテンションで落ち着きがなく、一方的に夢をまくし立てるうるさい男
私は正直、黒人系マシンガントークキャラが苦手(エディ・マーフィークリス・タッカー…)なんだが、ブルースのドンヨリぶりと相殺するせいか、今回の彼はギリギリ嫌な印象が無い。
どこか物優しくて、正義と愛情に溢れている人となりが見えて来る中盤以降は尚の事、多少ウザいのは我慢できる気がして来る(あ、下ネタが無いからか?)。

物語は、その囚人を「たった16ブロック先」へ護送する、はずだったのに…という物だが、うーん。
キャラ作りは良かったのに、展開はイマイチで、ちょっと間延びした印象かな。悪くはないんだけど。
まずブルースが悪事に加担してたのは容易に予想が付いてしまってサプライズでもショッキングでもなんでも無いし、バディ物としても正反対の二人がどこで響き合うのかが弱い気がした。
あんなヨレヨレの老刑事を奮い立たせる程の力があったのか?
いえ、理屈では分かるし、刑事も自分でも何とかしたかったのが本音だろうけれどね。なにせブルースなんだし。
もしかしてブルースはケーキが好き?(笑)
あとは、もしかしたら地理が分かっているとより臨場感があって良かったかもしれない。これが渋谷や横浜だったら、と考えるとちょっと面白い。

エリート然とした元同僚・デヴィッド・モースのムカつく演技、終盤のやり取りも、女検事とのタッグも見応えがあった。
あと見どころはバス脱出シーンだが、まああの善良さは泣かせるわな…。
どう考えても、刑事が囚人を見捨ててしまっては映画にならないワケで、何故か覚醒したブルースの貌は、やっぱりシビレる。
ラストも手紙にケーキというのは、地味だよねぇ。
(と思ったらケーキ配達人はリチャード・ドナー監督ですって!)
もうちょっと、惜しい!という部分もあるけれど、地味なりに手堅い、やる事はちゃんとやってる映画でした。

地獄の黙示録<特別版> 

眠いんだよね。
何度もトライしてるんだけど、いっつも寝ちゃう。
熱烈なファンがいるでしょ、それに今度は特別版だって言うし(と、言っても従来版をちゃんと観てないのでドコが特別かは分からないんだけど)。歳取ると面白くなるって事も、無いことも無いし。
で、観ました。3〜4回、睡魔に負けて、退屈さに気が散って、また巻き戻して、通算何時間かかった事か。

やっぱりつまらんかった
有名なワーグナーでロ−プ滑り降りるシーン、あれだけ予告編で観れば、私はもういいや。
あと興味をそそられたのは、チャーリー・シンって本当にパパ似ね、って事と、子犬がヒドイ目に合わないかとヒヤヒヤしたくらいかな。
支持者は「哲学的」とか「深い世界」とか言ってるようだけど、私には見えない深みのようだ。
むしろ、空虚な印象、あ、戦争は虚しいとか、そんなんじゃなくて。
『ゴットファーザー』もダメだしな、私。やっぱりコッポラさんとは相性悪いみたい。
オシャレでスタイルいいんだけど、話してみるとパアな若い子みたいなー。

ただし、CGも無い時代に、あの映像を、しかも大量に撮った、という点では、素直に脱帽します。
あれじゃ破産もするわよね。

シザーハンズ

ウーン、なんというセンス。
両手がハサミの人造人間なんて可笑し過ぎる。

ティム・バートンは「心優しき異形の物が愚民に迫害される」話がだ〜い好きだね。
幸運にも私は、この映画が初めてのバ−トン作品だったので、何の思い込みも無く楽しく観る亊ができた。
正直言って、あまりにも何度も何度も同じ事を繰り返しぐるぐるやっているので、「もういいよ」って思うようになっちゃったけど、それはもっと先の話。
『シザーハンズ』でも、いくら何でも女の子が薄情過ぎ、とか、大衆が愚かと言ってもヒステリック過ぎないか、とか、色々思いはしましたが、そしてそういう点から「薄い」印象は否めなかったんだけど。

全体にカラフルでプラスチックっぽい家並みや人々の服装とか、いかにもな博士の城とか、その行き当たりばったりな性格とか。町の人々のバカっぽさとか。雪の降る景色もね。
作り事として、きちんと一貫性があると言うか、「これは寓話ですよ」というサインが常に点灯しているので、これはこれで良しとしよう、という気にもなる。
ファンタジーなのだから薄いのも極端なのも許せる。
ラストもきれいにキマッて、「愛の寓話」の完成度は高い、これ一本を観れば。

両手がハサミの人造人間を演じた、ジョニー・デップ。
最高にチャーミング。
ぎこちなくも瑞々しい表情、怪しいメイクの中でもウルウルした瞳。
今では演技派の名を欲しいままの売れっ子俳優の、若かりし姿が堪能できる。
…本当は私、デップの顔がキライ
ごめん、いい俳優だと思うんだけど、どうもダメなの、あの黒目がちの瞳、アゴ無し気味の輪郭、薄い唇。
そんな私も、この「ハサミ男」の扮装なら、安心して思い入れができた。

あとデップで好きなのは『パイレーツ・オブ・カリビアン』だな(笑)。


 
 

七年目の浮気

マリリン・モンローの魅力炸裂の、上質なコメディ、チョー有名。
本当に楽しいんだから。
巨匠ビリー・ワイルダーは、時のセックスシンボルであったマリリンを「立つ事と歩く事だけはマトモ」と酷評した、らしい。
『ナイアガラ』で、歩く事で名を上げたマリリン。そしてお見事、この映画で、マリリンは立つ事(言わずと知れた地下鉄のシーン)で大スターになったのだった。

セクシー、セクシーと言われるけれど、マリリン・モンローの本質は、透明で清らかだ。だからセクシーなのかも知れないけど、そんなムゴい考え方には私はかかわりたくもない。
この映画でも、いわゆる「頭の軽いブロンド」を、見事ドンピシャで演じているけれど、そこには何の罪も無く、ただただ可愛い女が幸せそうに立っているだけなのだ。

入浴中に水道管の故障か何かで、マリリンは業者の助けを呼ぶハメになり、「とっても恥ずかしかったわ」。聞かされた主人公の中年男は当然、「わかるよ」と同情(しながら現場を想像して興奮、大多数の男性観客も同様のはず)。すると彼女は言葉を継ぐ、「だって初対面の男の人に会うのにペディキュアもしていなかったのよ」。
…元祖天然ボケ!?
いやいや。
たとえば有名な「シャネルの5番」発言同様、マリリンのセックスアピール無しには成り立たなかったユーモアだ。
色っぽいって、凄い。

物語は、結婚生活もマンネリ気味、その上色々ストレスも抱えた主人公が、妻子の留守中に魅力的な若い女性にフラリと心引かれる、つまり「浮気」なんだけど、ドロドロした雰囲気は微塵も無い。
誰も傷付かず、誰も怒らず、みんなが少し幸せになって幕は降りる。
現実は、そううまくは行かないよ、と、言ってしまえばそうなんだけど、そこはそれ、ちゃんと説得力があるようにできている。
男も女も、なんと言うか、身の丈以上を望まない、みたいな所があって、潔いのよ。
みんなが欲しがる物を、取りあえず狙ったりしない。
「愛人志望よ」と公言するマリリン。当時はかなり過激発言だったんじゃないかと思うんだけど、彼女の口から出ると、うっかり聞き流してしまいそうに自然で無理が無い。しかも「シャイな男性が好き」アメリカではシャイは病気の一種と言われる(らしい)のに!
二人の「恋」は、優しいキスをピークにストンと終わってしまう。
…ダメ男の妄想だったんだろうか?なんて気もするサワヤカさ。
でも男は確実に、以前とは違っている。前向きに。

「不幸」って現象じゃなくて性格だよね、と、以前からの思いをつくづく実感するこの頃。
しかし「不幸」な性格を矯正するのって、案外難しいのかも、なんても思ってしまう今日この頃なのでした。

シックス・センス 

ブルース・ウィリスが観客に向かって「僕との秘密だよ」と約束を迫る、というキャッチーな宣伝が功を奏したんだか裏目に出たんだか。
「オチを見抜いたか否か」ばかりが取り沙汰されて、つまんない事になっちゃった気もする、かと言って映画評なんかで結末をベラベラ垂れ流されてもマズイだろうけど、丁寧に作られた、いい映画なのに、なんだかもったいないなあ。

この監督、インド人だって?
なるほど、登場する幽霊達は、恐いよりも哀しい印象が強く、『シックスセンス』つまり霊視能力を持つ少年の葛藤と決着の付け方も、東洋的、って気もしますな。その分、我々日本人には馴染み易くもあり、逆に西欧人が見るよりはショックが少ないかも。
全体に静かでしっとりとした雰囲気で、落としたトーンの絵も美しく、時たま恐い(笑)幽霊達の描き方も上品だ。会話もどこか散文的で深そうで、心地良い緊張感が持続する。
オチにまつわるアノ手コノ手も、かなり無理のある勝負に良心的に丁寧に取り組んでいて、とても好感が持てた。
書き手の立場から見ても、こういう工夫を見るのはとっても興味深いしね。

「見えちゃう」少年役は、天才子役の誉れも高いハーレイ・ジョエル・オスメント君。
うまそうだな、ってのはなんとなく分かるけど。
ごめん。顔がキライ
ま、そんな事ぁどーでもいいんだけど、ハ−レイ君がすごい美少年でも、映画の価値がたいして上がるとも思えないし。それよかやっぱ演技力が大事よね、 「A.I」はともかく、この役は。
絵や音の演出(いい感じでタイミング取って来るのよ)もさる事ながら、ヒリヒリした孤独感や、やるせない恐怖感。あれ程体感的に伝わって来るのは、やはり彼の演技によるところが大なのでしょう。
でも、ブルースも良かったよー。
出世作の『ダイ・ハード』にしてからが、ムチャクチャ強いのになんかナサケナイ、っていう、下手じゃできない役だった、と思うの。けっこうキメが細かいんです。

ミステリーもさる事ながら、ドラマ的にも色々盛り込んであって、医師と妻、少年と母、母親とその母、それから幽霊達の事情と、見ごたえあった、かなり泣けちゃった。
母親のカリカリした様子とか、担任教師のキレッぷりとかもリアルで良かった。
でもちゃんと幽霊登場シーンはショッキングで、あ〜やっぱやだよねー、って、言ってあげたくなる、私は見た事ないけど(同業者には「見える」人がとても多い)、少し気持ちを分かってあげられる気がした。

と、言う訳で、私はこの映画を「一発オチで二度目は見られない」とは全然思わない。
はい、問題のオチはすぐ気付きましたが、ラストまですごーく面白かった。
でも、モチロンここでは明かしません、ネタバレありでやってるけど、だってブルースとの約束だもん。

シックス・デイ 

シュワを殴り倒すシュワ。見つめ合い微笑み合うシュワとシュワ。ヘリにぶら下がるシュワにぶら下がるシュワ…。
なかなかシュールな光景が展開する、クローン物。
当時かなりなシュワルツェネッガーファンだったが、率直に言って「シュワは二つはいらない」だったな。画面が暑苦しくてだな。

公開当時は、わりと印象が薄い映画だったんだけど、14年経って見直したらなかなか面白かった。
シュワ×2以外にも、リアル過ぎて怖い人形やら、「新品のブーツ」やら、ホログラフ?のバーチャルポルノ姉ちゃんやら。瀕死で自分のクローンに身ぐるみ剥がれるとか。なかなかシュールな小ネタがいっぱい。微妙な"近未来都市"のデザインも、なんだかこそばゆく楽しい。
設定は2010年。クローン技術は実際に一部実用・商業化されている。ペットとかね。
ぶっちゃけ私は、クローン人間もきっとどこかで作られて(作ろうとされて)いるだろうと思っているんだけれど。
そして世界のどこかで、『ルパン三世 ルパンVS複製人間』のマモー的世界が展開されているのだ…ヒョエエェ…!

その他クローン達も面白かった。
「生きてるのが虚しくなるわよ」という、怖いお姉ちゃんが好き♪
自分の死体を何度も乗り越えて来たら、否応なしに哲学的にもなろうというもの(そうでもないのもいたが)。
手塚治虫作『火の鳥』の中にも印象的なクローン話があるが、ちょっと思い出したり。あちらの方がずっとシリアスだったけど。そして涼やかな美青年@ロックのクローンなら何体でもOKだけど(笑)。
クローンを扱う上で最も重要なのは、"アイデンティティー"のあり方に関する問題で、その点でも、またサスペンスとしても、良い所を突いて来たと思う。
シュワ演じる主人公の名が"アダム"というのも、なんか意欲を感じるね。

ただ、この映画でも「記憶伝承」に関しては、ちょっと無理があり過ぎな印象で、そこは残念だったが、ストーリーの進行上、それと知れない程度の簡単な手法にしなくてはならず、ここは苦しいところ。
そういった"ツッコミ所"は数々あるものの、軽く観られて考えようと思えば考え込める、面白い主題だと思う。
ストーリー運びも、それなりに整合性が取れていて頑張った、という印象。ただちょっと長過ぎたのは、やはり娯楽性ひとつに絞り切れなかったせいか。
うまく機能しているかは別として、ただドッカンドッカンやってるだけでは気が済まなかったのであろうシュワちゃんが、やっぱり好きだ。

アクション映画としては、ちょっと中途半端という感が無きにしも非ず、ではあるが、これは構成や脚本やCGのせいと言うより、シュワちゃんが歳取っちゃったから、というのが大きいように思う。
ターミネーター』当時の、胸に風船仕込んだみたいな彼が二体並んでてごらんよ(笑)。私はそれ、見たかった。
ドリー出現が遅過ぎたのが残念だ。

60セカンズ

車好きな人なら楽しめるのかな…???
綺麗なクラシックカーがいっぱい登場して、まあそれはそれで見応えはあったんだけど。

うーん。
"伝説の車泥棒"ってトコに、1mmも魅力を感じないのよ私。
しかも演じるのがニコラス・ケイジ。
好きな俳優さんだけど、演技込みの魅力だから、ただ出て来て魅力の無い役をやられても、おまけに演技力の見せ場もほぼ無しで。
普通に若いイケメン使ってくれたらまだ楽しめたのに(笑)

悪役もショボくて魅力無し。
兄弟モノは好きだけど、たいした掘り下げも無し。
タイトルの"60Seconds"が全然生かされてない(60秒で車を盗む、という意味らしい)し、一晩で50台盗むのも、途方も無い数の割に特に秀でたアイディアがあるワケでもない。
無茶な期限を切られて間に合うか!?というタイムリミットのハラハラ感も盛り上げず、「遅れちゃったーいいじゃん14分くらいー」で結局モメて敵を皆殺し…だったら50台盗む前に戦えや、という。
仲間はいっぱい出て来るが、どれも小粒でたいして活躍しない。
アンジェリーナ・ジョリーは金髪が似合わない。
 
本当に、本当にタダのアクション満載映画で、心に響くモノが何も無い。
正直高級車に対してセクシーだのたまらんだのと美女になぞらえた言い草も(気持ちは分かるけど)気持ち悪い。アンジーまで一緒になって!
刑事コンビのトボケたやり取り、特に白人の方のボンヤリっぷりがちょっと笑えたのと、車工場の親父やってても上品なロバート・デュバルが素敵だった事くらいかな。

疾風ロンド 

原作・東野圭吾って、ちょっと意外だったんですけど。
何か微妙なコメディタッチと言うか(笑えないけど)軽い演出が多くて、いつもの東野圭吾の陰々滅々っぷりとちょっと違うかなと。
ラストもスッキリ片付いてハッピーエンドだし。
あまり爽快感は無かったけど。

安部ちゃんは好きなんだが、こういう役を見ると一本調子だなーと思う。
滑舌悪いしね…。
でも好きだけど。ちょっと物足りなかった。
渦中の"高野くん"が、志尊淳だったの!?ビックリ!
こんな頃から出てたんだ。普通に可愛い少年だったのね(笑)そしてなかなか達者だった。
柄本明、堀内敬子、野間口徹、生瀬勝久、麻生祐未と、コメディ得意な人々を揃えて、ほぼ滑ってるかチョイ役過ぎて残念か。
なぜこうも笑えないのか…って言うか、最恐細菌兵器で笑えと言われても、無理だわー。悪趣味過ぎる。

"オリンピック候補の女子スキー選手"ね。
スタント使うのは仕方ないんだけど、ゴーグル付けてる時と外してる時のスタイルが違い過ぎで笑ってしまった。
ハリウッドなんかだと役者ソックリに筋トレするとか聞くけど、せめて骨格の近い人を選んであげないと可哀想、特に女優の方がスタイル悪い場合には、まずいよコレ。
なんだろうこの意地の悪そうな顔の大根の女の子は、と思ったら、AKBですか。なるほど………。

物語は、炭疽菌の行方が二転三転したり、スキー少女の言葉が伏線になってたり、父と息子、母と息子の関係性やら、競技選手の引退問題やらと、なかなか緻密に組んであって、そこは原作の力なのかな、とは思った。
でも無駄に騒がしい選出と、おちゃらけた言葉を連ねる脚本のせいで、功を奏したとは言い難く、残念な仕上がり。

なぜこうも笑えないかと言うと、平たく言えば「不謹慎」だからだと思う。
現実に人が沢山亡くなっている炭疽菌で笑いを取ろうというのがまず引く上に、たまたま私が見たのはコロナウイルスで話題沸騰の時期のTV放映。
笑えないわー。

笑えなかったけど、野間口さんのホテルマンはちょっと好き。ああいう人いそう。

下妻物語 

「下妻」とは、栃木だか茨城だかの(ご免なさい、茨城です)田舎町。
田んぼと畑の真ん中で、ゴテゴテのロリータ服に身を固めた孤高の「桃子」深田恭子と、バリバリ特攻服て燃えるヤンキー娘「いちご」土屋アンナの、怒濤の友情物語。
女の子が元気な点では同じ『スウィングガールズ』とは対局の印象だけど、結局「若いっていいなぁ」と同じ地点に着地する。意外にもちゃんとした「青春映画」だった。

深田恭子って、なんか気になる人。TVドラマではつまらない役も多いが、けっこう上手いんだろうな、とは思っていた。大当たり。
土屋アンナという人は、CMで顔を知ってる程度のモデルだったから、どうなの?と思ったけど、堂々渡り合っている。大当たり。
なにしろ二人の女の子がそれぞれに元気で生き生きしてて、物凄くキマッてる。
こういう役どころって、”素”が見えたら台無し、だと思うのだけれど、二人とも「これが素でしょ」と思わせる集中力の凄さ。
凝りに凝った画面作り(ちょっと『CASSHERN』を思い出してしまった程…しかし、この出来上がりの違いは残酷だ)や、軽妙洒脱な脚本の力は言うまでもなく見事だけれど、やはり主演女優二人の勝利、だと思う。
演技力だけでなく、二人とも容姿もとても可愛らしく、個性的な衣装が良く似合う。これも映画の楽しみの大きな要素だ。
終盤、桃子は態度で、いちごは服装で、友達の領域に踏み込む。これまた、凄くキマッてて、楽しい。

そして心地良いのが、全体に流れる、バランスの良い自立的な世界観。
自分の道を突っ走る少女二人は、泣き言も愚痴も言わないが、それぞれの「戦闘服」の下にしまわれた柔らかさがほの見えて、切ない。
ヤンキーのダサさや滑稽さを笑いながらも、愛があるのが見える。
孤高である事、硬派である事を、安易に否定するようなぬるい真似をせず、二人は二人のまま互いを認め合い、それでも互いにブレない自分の道を歩み続ける。
鮮やかな展開を観るうちに、何度も涙ぐんでしまった。

シャーロック・ホームズvsモンスター 

これは…(笑)
エイリアンvs.プレデター』なんて映画が意外に面白かったので、調子に乗って観てみましたが…うん。
普通はこうだよね、という。

ホームズは小柄なのがマイナスだが神経質そうでKYな感じは良かった。
個人的にはロバート・ダウニー・Jrより原作イメージに近いな。
ワトソンも、私はわりと無骨なイメージを持っていたので悪くない。
ロンドンの街の雰囲気とか、絵が意外と綺麗で(モンスターのCGは除く)機械仕掛けの女優さんも良かった。
主役二人と、舞台背景と、キーパーソンがナカナカなので、ホームズものとしてはイイ線行ってると言っても過言ではないよ。
でもまあ、内容が…うん。(笑)

困ったモンです。

シャイン

あ〜〜〜〜〜辛かった!
もう、なんなん、あの親父!?

って言うか、妬みなのは分かり切っているけれど。
幼少期の父親もその父親に行く手を阻まれたのが元凶になっていると。
母と娘の間でのこういった関係を扱う作品は多い気がするが、そりゃ男同士だってありますわな。
むしろ男だと、より露骨で暴力的
このテの父にとって息子は、自力で満たされない己の虚栄心を満たす存在、だからこそ自慢ではあっても手の中で支配したい、手に余る程大きくなる事は許せない。
最後に父が訪ねて来た時はトドメ刺しに来たかと気が気じゃなかった。

ジェフリー・ラッシュが、とにかく凄いんだけど、子役もまた熱演で、もう切ないやら腹立たしいやら。
コンクールよりもバーで演奏するディヴィットが幸福そうで、もうここでいいじゃん、と一瞬思ってしまったのだが。
でも本当に才能のある人というのは、それでは収まらないのでしょうね。
最終的には大劇場での大成功こそが本当に彼を満たすのだという、遠回りはしてもハッピーエンドで良かった。
そして結婚って、やっぱり幸福の必須条件かも、と思う程、あの結末は驚きと共に嬉しくも感じた。

数々の美しいピアノの旋律。血を分けた父とは裏腹に心優しき他人達、天才に惹かれる心と、心温まるシーンも多くあるが、それだけに肉親の残酷さが痛くて苦しくて。
もう親父刺し殺せ!とまで思ってしまった(しなくて良かったよ、もちろん)。
ラッシュはもちろん、父親役のアーミン・ミューラー=スタールも名演技!本当に引き込まれた。
そして音楽。
ピアノの音源は、実在するデイヴィッド・ヘルフゴッドの演奏を使っているだそうだが、これまた本当に引き込まれる。
アマデウス』に次いで、「この映画どう?」と聞かれて「音楽が良かった」と答えてしまいそうな映画だった。

そうそう、これ一応実話なんですね。デイヴィッド・ヘルフゴッドは現役で活躍中のピアニスト。
そしてやっぱり、奇行が目立つ人らしい。
現実とは違う部分も色々あるようで、それはそれで興味深いのだが、それはそれとして映画の出来は本当に素晴らしい、ただし実在のピアニストがいなければ、あれほど感動的な演奏は入れられなかったでしょうね。

ジャッカル

これ何度か観てるんだけど、何度観ても忘れてて中盤やっと思い出す。
ぶっちゃけつまらない
ただ、ところどころ胸クソ悪過ぎて印象的な表現があって、ソコに差し掛かると「あっ」って思い出すのね。
銃を作らせたデブ=ジャック・ブラックじゃん!を走らせて撃つシーン(コレって定番?)だとか。
「黒い血が出てるから肝臓やられたって事ね」とか。

ブルース・ウィリスは大好きなんだが、この役はこなしていたとは言い難いんじゃないかな。
無表情がキマらない。とことん冷血なワルなんだけど、この人の容姿は生活感があり過ぎると言うか、ストイックな殺し屋には見えない(それを逆手に取ったのが『隣のヒットマン』むしろあっちはホンモノのヒットマンに見えた)。
なんだかんだ、愛嬌が命だと思うのよこの人は。
それに私が上記のような、冷血を現す残虐なシーンが好みじゃない、というのも大きいかな。
そして私的1番の敗因は、主演のリチャード・ギアがな。どうにも好きになれないのよ。
なんでしょうかあの表情の無い顔(無表情が売りのブルースの役が目立たない程無表情)。特に目が、昆虫の眼を見た時みたいな感情の無さ。もはや怖い
『プリティ・ウーマン』も『トゥルー・ナイト』も、彼が主演でなかったら楽しい良い映画だったのにと、残念でならない。『シカゴ』の無能っぷりは言わずもがなね。

で、貧相なヒロインだな、と思ったらマチルダ・メイではありませんかっっっ!!!
スペースバンパイア』から12年経ってますか…あんなにグラマラスで可愛かったのに。
と、嘆きつつ見ていたけど、ラストのくだりは迫力があった。演技というより顔立ちがシリアス向け。実は彼女がラスボス!?と一瞬ワクワクしたくらい、シャープで趣きのある表情だった。やはり恐るべし、フランス娘?

でもまあ、他にはそんなに楽しい展開も無く、普通に終わってしまってまあそうだよね、という。
地下鉄のシーンでは、人質の女の子を放してやったのはちょっと意外だけどホッとした。

なんか元ネタがあるらしいけど、原作者に許可をもらえなかったとか、そんな話も納得の出来だと思う。
ダイ・ハード』で一躍スターダムにのし上がったブルース・ウィリス。
今でも押しも押されぬ大スターだけど。
その間には『スリー・リバーズ』やら『ハドソン・ホーク』やら、こんな時代もあったのよ、という。

ジャック・サマースビー 

ジョディ・フォスターは30歳そこそこといったところか、陶器の人形のような美しさで見惚れてしまった。
白い肌に真っ青な瞳。クールだがドレスに負けない華やかな貌。
この人は意外と(スタイルがあまり良くない事も相まって)現代版より時代掛かったコスプレ物が美しいのかも。
そう言えば先日観た『マーヴェリック』で「ジョディーが一番可愛い映画」認定したばかりだった、アレも西部劇。

時代は南北戦争終結当時。
今の感覚だと「なぜ?」「どうして!?」と言いたくなる事も多々あるが、南部の田舎町での息苦しい世間、奴隷解放にとまどう白人と黒人、戦争で荒事に慣れた人々の荒んだ心…等々、及ばないながらも想像すると、まあこういうのもアリかなあ、とは思う。
思うけれども、あまりの後味の悪さに、何で観ちゃったのかなぁ、もう観たくないな、と思ってしまう内容だった。
もういいじゃん、"妻"が愛してると言ってるんだから。
と、これはいつでもどこでも逃げ出せる、現代人の言い分。

一番許しがたいのは犬の件かな。
しかし当時の裁判って、こんなにズサンなものだったのか。
(そうだった気もするけど)
一人殺すと情状酌量の余地無く死刑、というのも厳しいし、そもそも被害者はタチが悪くて正当防衛っぽくもある。
しかも証人は"ジャック・サマースビー"に対してフラットではなくて、他の目撃者の証言は曖昧。
最低だった自分に別れを告げて、もっと最低の男に成り代わってしまったでござる、でも訂正はしないよ、って。
うーん。
やっぱりどんなにあがいても、生き延びて欲しかったな。

リチャード・ギアはあまり好きな俳優ではない(ナマズ顔で)けど、この役は良く似合って好演だった。
ジョディとの並びもシックリ来てお似合い。
実像としては登場しない"本物"の、冷酷でDVな顔も、人を騙して世渡りしていた過去の顔も、容易に想像ができてしまう、存在感の幅を感じた。

青い空や、育って行く煙草の木、クラシカルな人々の衣装や小物等、絵的にもとても楽しめた。
決して面白くなかった訳ではない、むしろ引き込まれた。
でももう、観たくはないかな。

ジャックと天空の巨人

うーん。
全然面白くなかった。すっかり退屈してしまった。
ロード・オブ・ザ・リング』を観て思ったけど、私の感性はこういうベタベタのファンタジー路線はダメなのかも。
って言うか似てたよね?『ROL』に。と、思ったら監督は『X-men』ですか。ふーん。(どっちもイマイチ

童話『ジャックと豆の木』がベースになってる事はすぐ分かるけど、ジャックは少年じゃないし王女と恋とか、巨人が天空から降りて来て地上を荒らしまくるとか…巨人達が絶対服従の王冠(巨人的には指輪サイズ…あーやっぱり指輪)とかとか。なるほど・ザ・ファンタジー要素満載。RPG要素と言ってもいいかも。やった事無いけど。
なんか絶対服従の王冠とか、出て来るだけでしらけてしまう。都合の良い小道具ね、と。
お金は掛かってそうだし、衣装や美術は観て楽しかったけど。

まず主人公に魅力が無い
金も力も無い平凡な一般人が、勇気を奮い起こして大奮闘、というのが定番なのは分かっているが、それにしても容姿も性格設定も、本当に平凡過ぎてつまらなかった。
姫は当然のようにジャックと恋に堕ちるんだが、ぶっちゃけ、勇敢で忠実でかっこいいユアン・マクレガーの騎士をスルーして何故田舎臭いよわっちい農民にまっしぐらなのか、どう考えても分からん
そうそう、マクレガーはとても、素敵だった。こんな映画にゃもったいない。
姫はキリリとした美人で、金色の甲冑姿も凛々しく美しかった。
でも、せっかくの美人さんも、そんなワケで(↑)恋心とかが表現不足で、役柄に深みが無くキャラクターに魅力も無い。
王様もなんだか気色悪かったし(悪役かと思った)、悪役も小物で魅力無し。しかもクライマックスの決戦前にアッサリ退場という…これは盛り上がらないわぁ。

巨人の描写については、まあ今の時代ならではのCG駆使した気持ち悪さで、なんだか日本製の深夜アニメを観てる気分になった。
巨人族は基本、頭は弱い設定なようで、敵としてはストーリー的に食い足りない。キャラクターも立ってるのは双頭(と言うか一個半・笑)の将軍くらいだったし。
絵的にはまあ、幼い子供だったら、うなされたかも。かなりキモチワルくて良かった。画面から臭って来そうで(笑)。
前後の"読み聞かせ"シーンといい、薄い人物描写といい、これは本気で子供向けなのかな。それにしては恋愛要素が重すぎる。冒険物としてもだが。

ジャック役の子(ニコラス・ホルト)が、かの『アバウト・ア・ボーイ』の小デブ少年だったと知って大笑い。
当時は不細工だけど味があった。まさかこんな形で再会する事になろうとは。
ジャック役は大いに不満ではあったけど、今後に期待は持てるかもしれない。

ジャッジ・ドレッド(2012)

スタローン版を笑って観た覚えはあるのだが、ネット検索するまでコレとの繋がりに思い至らなかった。
言われてみれば、あのヘンテコな制服…多分原作漫画通りなのであろう…ヘルメットも同じなのだが。
それくらい、両者の印象は違っていたみたい。

残念だったのは、あのヘルメットのせいで主人公の"ドレッド"の表情が見えないこと。
クールでドライな役回りだから、それでいいのかもしれないけれど、正直どんな顔してるか分からない人に思い入れはしにくくて(その点スタローンなら世界的に面が割れてるので観る側が勝手に以前の記憶から補填できるという笑)
そう考えてみると『ロボコップ』って本当に秀逸だったな。
やはり口元だけ出した間抜けなヘルメット姿でも、ピーター・ウェラーの哀愁溢れる瞳があまりにも印象的で、思い入れできないどころの騒ぎじゃなかった。好き。

新米ドレッドのアンダーソン(オリヴィア・サールビー)は素晴らしかった。
本来安全対策であるヘルメットを被らないとか、新米の能力を見てもいないのにアッサリ許す辺りが大丈夫なのかと心配になったのだが。
もちろん映画的には前記の表情問題や、せっかくのかわい子ちゃんを無駄遣いするな問題とか、あるワケだが。
言い訳に「超能力使えなくなる」というのも、考えたねと思わなくもないが、雑な印象は免れない。
あのちょっとわざとらしい金髪の色味が絶妙、グレーが主体の背景から見事に浮き出して、抜群の存在感を醸すと同時に、マンガっぽさとリアリティの間で彼女の容貌を最大限魅力的にセクシーに見せている、と思う。
でも現実問題間違いなく狙い撃ちされるよね…。
ミステリアスで凛々しく勇敢、でも新米だからハラハラする所もあって、抵抗無く応援したくなる魅力的なキャラクターだった。
…終盤あまりにも有能で、足りなかった"3点"はいったいドコだったんだと首を捻ったが(笑)

悪のラスボス"ママ"のレナ・ヘディも、とても良かった。
花の顔(かんばせ)に無残な傷、というのがすでにキャッチーこの上ないんだが、個人的には、そして映画の性質(流血グロの多さでも『ロボコップ』を思い出した)から思うと、もう少しゲスな部分を見せて欲しかったかな?
しかし美しい人ね、と思ったら『ブラザース・グリム』の彼女でしたか。ワイルド・ビューティーとでも言いましょうか。

巨大なビルがスラム化してるとか、シャッター閉めちゃうとか、あの麻薬と落下処刑の合わせ技がとっても怖いとか。
アイディアが色々あって、退屈はしなかったけど、ストーリーとしては単純過ぎたかな。
心に残るのはスローモーション落下と新米ちゃんの金髪の色、というのはちょっと寂しい気もするが、残酷描写が嫌いでなければ楽しめると思うし、なんならこの二人で続編見てもいいかな。

シャッフル(2007)

最初の発想は多分、面白そうだと思ったんだけど。
一応蒔いた種は刈り取ってるような気もするし、そういう点では頑張ってはいるのでしょう。
でもごめん、面白く無い。
と、言うか、これだけ捏ねくり回し愛だ家族だ信仰だと言った割には全くカタルシスが無い

サンドラ・ブロックはわりと好きな女優だったけど、今回は本当に鬱陶しいおばさんだった。
あのでかいお尻はなんなの…旦那も外見に全く魅力が無い上に、内容的にも「夫で父」という所属以外に魅力要素が無い。
いっそ"不倫"は未遂じゃなくても、と思ったのだが、アメリカ人は夫婦間の貞操観念が恐ろしく厳しい、のかも。(つまり未遂でない限り死ぬ前に妻との愛を再確認する事すら許されない程に。)
まずそこからヌルい印象で、事実を知った途端に冷えた顔をするサンドラさんがちょっと怖くて引いてしまった。
面白かったのは不倫未遂相手の金髪美人が、急に訪ねた自宅でのスッピン(風)姿が外出時と落差が凄くて、意地悪だな〜と(笑)。
あと、夫の最後の留守電の「キャッチホン」の真相は、ちょっと面白かった。

神父に相談したさいに、過去の実例として、未来を見たせいで余計な真似をして酷い事になってしまう話が出ていて、ある意味用意周到なのだが、どうせならもっとそっちに傾いても良かったのでは。
正直あの夫婦があのままハッピーエンドになってしまってもドッチラケだし、それならジタバタして愛は取り戻したけど運命は変えられなかった、では弱い。
そもそもスタート地点では、夫婦はわりと幸福そうで良い家庭に見えていたしね。
"シャッフル"のせいで不倫未遂にも気付いたのであって、それまでは"出張"を丸々信じて呑気に帰りを待ってたのだから。

細かい所も色々と雑と言うか、娘の顔の傷のできるタイミングとかもおかしいし、ちゃんと社会生活してるはずのヒロインが今日は何曜日かを把握しないまま延々と過ごしてるし、夫ときっちり話し合う時間はあるはずなのにヒスばかり起こしてるし。
娘の顔の傷も、ちゃんとした理由があるのに何故濡れ衣をそのままにわめき散らして暴れるばかりなのか。
…まあ夫が死んだり生きてたりしたらパニクるのは致し方ないが、それにしても学習能力が低すぎて見ていてウンザリしてしまった。
最終的に事故の件も、どうせならもっとガッツリ「私のせいで」な展開にしてしまっても良かったのに、なんだかアヤフヤでモヤモヤで、と言うかそもそも、この夫婦に全然思い入れができなかったので、まあどうでもええわな、という気持ちのまま事故シーンに突入してしまったのでどうしようもないか。
あと運転中の通話は危険ですからやめましょう(笑)。
ラストは予想通り取って付けたように妊娠してて、陳腐さに笑ったわ。

家族愛を推したい事だけは分かったが、結局何がやりたいのか良く分からない、あまり知りたい気持ちにもならない映画だった。
娘二人は好演。

しゃべれどもしゃべれども 

評判の良い映画なのは知っていたが、なかなか見る機会に恵まれず、先に原作の小説を読んで、いたく感動してしまった。
そういうのは善し悪しで、どうしても比べてしまって映画その物を評価しにくくなるんだが、結論から言うと、どちらもとても、良かった。

主演の国文君、どうかな?と思ったけれど、少し歳を重ねて、いい感じになってますね。人なつこい瞳と、ちょっとモッサリして来た風情に安心感があって、着物姿も言う程似合わなくないし(笑)。演技もビックリする程自然体で、映画の始めから『国分君』ではなく『三つ葉』として見る事ができた。
香里奈もどうかな?と思ったけれど、仏頂面が可愛くて、なかなか良かった。鼻の頭を赤くした泣き顔とか、たまに見せるから価値の上がる笑顔もいい。
私的に赤丸急上昇中の松重豊さん、気難しく生真面目な元野球選手、ピッタリだった。ヘタクソな解説も、本当にヘタだった(笑)。日本家屋に合わない企画の長身が、あちこちで強調して撮られていて、それも笑える。
でもまあ、一番の功労賞は、あの子役だね。何とも小生意気で、生き生きしてて、何しろ落語が上手い!聞き入ってしまった、本当に落語好っきやねん!というのが伝わって来る、凄い。

古いモノがいっぱいの舞台設定も、見ていてとても楽しかった。
硝子障子の引き戸の玄関、縁側、お茶やカッポレの稽古、ほおずき市や浅草寺。チンチン電車。寄席の表裏。
香里奈の浴衣姿も良かったが、いつまでも可憐な八千草薫様の着物姿、シーンごとにとても素敵で楽しめた。
伊東四朗の師匠や八千草さん等"年配勢"の、江戸前らしいチャキチャキした喋りも気持ちいい。
日本って素敵だなぁ」と、素直に思う。その点だけでも『おくりびと』よりいいな。

「しゃべる」という事へのそれぞれの真摯な態度と、不器用な人達のぎこちない歩み寄りは、触れ合う事の感動を優しく浮き彫りにしてくれる。
派手さは無いが、堅実な成長物語として、押さえる所はシッカリ押さえ、笑いの要素もセンスが良くて、最後まで安心して見られた。
原作ファンとしては、主要キャラを一人バッサリ切ってしまうというのは驚いた(美形テニスコーチは絵的には見たかったし)けれど、小説一本を映画にする事を考え、映画の出来を見てみれば、英断だったと納得した。
同じ理由で、主人公自身の「喋る」事への職業的苦悩と成長が、ちょっと弱い気がしてしまったのは残念だったが、国分君は落語の語りでちゃんと成長を表現しており、映画的な解決だな、とも思った。

そんなこんな、映画としての出来は良いし、とても面白かったのだけれど、最後に個人的未練をひとつだけ。
原作小説の中で、今の私に、とても突き刺さった"三つ葉"の台詞がある。
「正しい落語なんて、誰が聴きたいものか」。
こんな言葉で泣いてしまうのは、全く私の個人的事情であるけれど。

シャレード(2002)

このところ、黒人系のイイ女が出てるな…と思うとこのタンディ・ニュートンだった。
みんなが大好きヘプバーンのリメイクで、その彼女がヒロインを演じる。
…それより監督が、あの『羊たちの沈黙』のジョナサン・デミ!
恥ずかしながら私、ヘプバーン版は観てないんですが。

まずね、"謎の男"ジョシュアを演じるマーク・ウォールバーグ君が、イケてない。
色々言いたい事はあるが、つまるところコレに尽きる、と思うの。
ハンサムなんだけどさ。どー見てもイイ人なんだもん、つまらん。ダークさが微塵も無い。

そしてヘンな音楽…。
普段あまりBGMは気にしない方だと思うんだけど、「ココでコレ!?」みたいな曲がとても気になった、いや気に障った。『かぐや姫の物語』レベルで変。
ラストに至っては、ヘンな歌流れてるな〜と思ったら、イキナリの歌い手登場、謎のカメラ目線で(笑)。
多分何やら、元ネタとかあるのかな?知らないから私。

女刑事役のクリスティーヌ・ボワッソンが、なかなか素敵。
フランス女優か、ふむ。(私にとってフランス映画の女優というのは特別な意味がある…ようです)
私は常々「嫌煙過激派」を自称しているのだが、このボワッソンさんとニュートンさんのイイ女二人が煙草をやり取りするシーンは絵になるな〜と見惚れてしまった。
まあコイツら歯の裏真っ黒だし口はヤニ臭いよって事で(笑)。

しかし良かったのはそれくらい。
音楽もそうだが、色々と狙い過ぎ?というわざとらしさが目に付いて、落ち着かない映画だった。
冒頭で自分を誘わない初対面の男を「いくじなし」呼ばわりするヒロインにドン引き
命を狙われてる緊張感の中、微妙な関係の男の前で大あくびしちゃうとか。
天真爛漫を表現したかったのだろうか…なんか、違うぞ。
ヒロインがそんな態度だから、狙われてると言われても全然ハラハラしないし、正直制作側が本気でサスペンスしてる感が無く、何か他の事に気を取られてる印象だった。

文句ナシの傑作『羊たちの沈黙』以来、あまり名前を聞かないと思ったデミ監督。
こういう方向に行きましたか、と、妙に納得の出来でありました。

ジャングル・ジョージ

ブレンダン・フレイザーに何の魅力も感じない、というのは大きいとは思うんだが。

通常ディズニーにはある種全幅の信頼を寄せているんだが、これはアカン。
子供向けだから?
…いやいや、それにしては子供に向けたサービスも少なく退屈な印象だし、話の中心が恋愛(性欲含む)モノだし。
それにしてもジョージはともかく、あのお嬢様がアホ過ぎて付いて行けない。フィアンセも。

ゴリラに恋愛指南を受ける辺りはバカバカし過ぎて笑ってしまったけれど、その他はほぼバカバカしくて笑えなかった。
幸か不幸かCGがまだまだ稚拙な頃なので、可愛い動物達(サルとかライオン、鳥)がちゃんと登場するのがせめてもの救いかな。
本物の動物が一番可愛いのは無論だが、個人的には無気質なCGよりも、安さ満載のキグルミの方がまだ可愛いと思ってしまう私。
ゴリラは別に可愛い要員じゃないから、まあどっちでもいいけど(笑)。ゴリラのサイズがちょっと小さかったのが残念。

原作?のアニメに思い入れでもあれば、また違う感想があったのかもしれないが…せっかくのジャングルの景色もそんなに楽しめず、都会へ出てからのギャップも殆どスルー。裸が通常営業のジョージが"文明人"の姿に変身しても、目を見張るような変化も無く相変わらずの野暮ったい兄ちゃんだし…ここ重要ポイントなのになぁ。(つくづく『グレイストーク』って美しい映画だったなと、すいません比べるモンじゃなかったね)

ディズニーへの幼少期より持ち続けた信頼が大きくゆらぎ、薄々気付いていた嘘寒さが肥大して見えた、本当に楽しめず辛くなってしまった映画だった。

ジャングル・ブック 

うーん、まあ、凄いやね
CG技術の発達のお陰で、どんな猛獣も自由自在に動かせる、子供と絡ませても安心安全。
でも、つまらない……。

子供向けの企画だろうから、いいんじゃないかな。
私が小さな子供だったら、素直に「わー、黒豹さんと仲良ししたい!」「クマさんモフモフ〜!」「狼の子供可愛い!」と、ワクワクしながら観たと思う。
元々ストーリーなんてあって無いようなモノで、メインは人間の少年と動物たちの触れ合いの描写だと思うので、思う存分触れ合えるという点で素晴らしい。
でも、致命的に、動物が可愛くないんだよね。
そして、「出来ない事をしちゃってる」ワクワク感が無い。
だって所詮はアニメなんだもの。

もしかしたら、物凄くセンスが良くて動物が心から好きな技術者が作れば、CGでも生の動物に負けず劣らずの可愛さを表現できるのかもしれない。
でも、少なくとも現状では全然、本物の足元にも及ばない、と私は思う。
動作や表情に"遊び"が無いんだもの。
ディズニーのクセなのか、動かし過ぎるのもよろしくない。時々気持ち悪い

モーグリ役の少年は、絵本にうまく寄せて来てると思うけど、特に可愛くない。
動物たちのキャラデザインはソコソコで、特に狼や蛇は綺麗で良く出来てるなと思ったけど、クマとトラはイマイチかな。像、特に子供はなかなか良かった。
特にトラは「赤い花で顔に怪我を負わされた」設定なのに、怪我が目立たなくて「どこが?」って感じだった。
トラや黒豹の、流れるような美しさも感じられず。まだまだです。
滝や川の描写は美しかった。こういうのはCGはお得意ね。

凶悪なトラのシア・カーンが、執拗にモーグリを狙うのも、なんだか違和感と言うか説得力に欠ける。
一つに顔の傷が目立たないというのもあったかも。これも何かの配慮か何かか?傷のある人を傷付けてはならない、とか(笑)。
子供向けだからかも知れないが、皆の感情が淡白で違和感。
群れの長を殺された狼達も嘆き悲しむ素振りも見せず(子供まで!)死んだシーンもフューチャーされず。
クマのバルーは気のいい奴だが嘘をついてモーグリを利用するシタタカさもあるのに、それがバレても何の反応も無し。
シア・カーンはいわば親の仇なんだけど、それを知ってもモーグリは無反応…。
いえ、多分いいのよ子供向けだし、そういう機微に関しては淡々と流してくれても、動物が生き生きと可愛ければ。

ちょっと前までは獣の毛がモフモフしてるだけで感動してたのだから、そう考えたらCGの発展は著しい。
それでもまだまだ、実物の愛らしさ美しさには遠く及ばない。
割り切ってCGを見れば凄いなと思えるし、動物モノを楽しみたいと思うなら全く残念な、そんな映画。

十三人の刺客

チャンバラ映画ですよ!キャッホー♪

小学校高学年〜中学校時代、実は私は東映時代劇マニアだった。思えば思春期ではないか!
昨今は「時代劇ブーム」なぞという声を聞くが、藤沢周平やら、山田洋次やら、家計簿やら一分やらは、『時代劇』ではあっても『チャンバラ映画』ではない。どんなに真田広之の殺陣がかっこよくても、違う。
そこら辺から行くと、久々のチャンバラ映画!胸躍る♪

オリジナルは未見。
三池さんはクセのある監督で、正直今回もいささかクドいしグロ描写とか下品なおふざけ等やり過ぎ感はあるんだが、それ差し引いても面白かった!ワクワクした。
単純明快なストーリー、勢いある味付け、私好みのキャストの面々。女がヘンに出張って来ない辺りも好みだ。決戦シーン50分は、いくら何でも長すぎで、数字にこだわったとしか思えない(笑)し、それよりはせっかくの13人をもうちょっと色付けして見せて欲しかったのが残念ではあったが。せっかく良い役者を揃えたのに、もったいない。
ついでに、あの"13人目の刺客"山の民のアイツは、蛇足と言うか邪魔以外の何者でも無かった。下品な絶倫描写(対一徳様含む)とか、意味不明の女性の一人二役、武士道批判、あげくは喉かっ切られてピンピンしてるとか(あそこはすでに『あなたの知らない世界』に突入している、と解釈)…いらない、何一つ。
三池さんらしいと言えばらしいのだが。あんな物に割く時間があるなら、六角さんや高岡、窪田あたりの影の薄かった刺客メンバーをフューチャーして欲しかったな。取りあえず13人揃えました感があって、終盤バタバタと倒れて行くのにこちらの気持ちが付いて行けなかったのは、一人一人の事情や個性が描写不足だったから。もったいない。

とは言え役所さんは安定のかっこよさだし(本当はこの役は、もう少しかっこよくない人の方が良いのかも…とは思ったけど)松方さんの殺陣は「お父様に似て来たねぇ…」とシミジミしてしまったし、古田さんも短時間で良い味見せてくれた。山田君も、もはや安心して見てしまうが、意外にサムライらしくて驚いた。
でもってやっぱり、稲垣吾郎君ですよ。よくぞこの役、引き受けてくれた!私は嬉しい。
おいしい役なのは無論だけど、なにしろちゃんと"殿"なんだよね。狂気を演じるのは比較的たやすくても、同時に貴人でいられるのは結構ハイクオリティだと思う。
TVでバカ殿コントを見ていたので、思い出して笑ってしまわないか心配だったけど、全然杞憂だった。
あの邪気の無さが凄い、気持ち悪い。つまらなさそうに散々殺戮をした挙げ句、自分が死ぬ時だけ生き生きと目を輝かせてしまう辺りの闇の深さも。箸を投げ捨てての蛇みたいなお食事シーンは、よくこんな描写を考えたものだと感心したんだが、海外版ではカットされたとか。なんでだろ???
もう後半は、彼の顔が映るだけで「次は何やらかしてくれるやら…」とドキドキしてしまう自分がいた。

あとはアレだ、実年齢は知らないが、役所広司と市村正親は同期には見えないな。二人の繋がりは大切なポイントなので、そこはちょいと残念。
牛のCGがショボいとか、綿密に作戦練った割には白兵戦に入るのが早過ぎるとか、色々不満もあるけれど。
あれだけの大人数の乱闘チャンバラシーンを、真正面大真面目に撮ってくれただけでも僥倖だし、単純明快な大筋にクセのある描写をスパイスにしたストーリーは見応えがあった。
勢いに溢れ、爽快感がある、上出来の娯楽大作だと思う。

17歳の肖像

これ、実は別の映画(『17歳のカルテ』)と間違えて見ちゃって、全く予備知識も無く、「ウィノナ・ライダーは?」なんて思ってたんだけど(笑)。
良かったです。
ちょっとした拾い物だった。

イギリス映画という事で、見慣れない顔が多く落ち着かない気分でいたら、エマ・トンプソンの校長先生にホッとしたという。
あ、でも、おっさん『フライトプラン』ですか。なるほどね。
あの時は甘い顔だけど締まりの無い青年、という印象だったけど、今回はその締まらなさがイイ感じに作用して、色気のあるおっさんになってる。
公開年の開きはたった3年。役者さんって凄いと言うのか、老けるの早いのか(笑)。
とりあえず今回の彼はとても存在にリアリティがあって素敵(クズな部分も含め)でした。
主演のキャリー・マリガンも綺麗で生意気でとても良かった。
イギリス女子高生のファッションも可愛いし、おっさんと付き合って大人っぽくおめかしする姿もサマになってる。
『華麗なるギャツビー』でデイジーを演ったのね。ミア・ファローよりは綺麗でしょうね。

全て見終わってから自叙伝と知った。『ラマン』といい、よく書くわこんなモン(笑)。
それはともかく、ヒロインのジェニーのような早熟で頭の良い女の子が、ともすれば陥りがちな事態ではある。その娘がマリガンばりの美貌ならば尚のこと。
無責任で中身はペラッペラでも、狡い大人は経験豊富な分、そういう娘に付け入る術を知っている。
それに多分おっさんも、最初から女子高生と深みにハマる気ではなかったような。
雨の街での二人の出会いのシーンはちょっと、きゅんと来てしまった。
まあ妻子ありながら親に堂々と会ったり結婚申し込んだり、蓋開けてみれば浮気の常習犯だったりで、このオッサンがどこで何を考えていたか(いなかったか)は良く分からないようになってるんですが。
恋に落ちた、という点だけは本当だったんだと思うのよ。
いや思いたい作家の気持ちに引っ張られてるのかも。

ちょっと面白かったのは、オッサンの友人の彼女でツルんで遊ぶ、ヘレンの存在。
ロザムンド・パイクが演じるのだから、もちろん物凄い美女で、毎回華やかに着飾って美貌とスタイルを見せ付けているんだが、おツムを使うのは嫌いなタイプ。
ジェニーに対して"女"の先輩として、オシャレの仕方を教えてくれたり色々面倒を見てくれるが、男連中とジェニーが文学や哲学の話題に熱中し出すと蚊帳の外で退屈してしまう。
"彼氏"もオッサンも分かっていながら無視するが、なにせ美女なので手放す気配は無い。
こういう関係は何だかありそうで、リアルだった。
そしてちょっと、美女がもったいないな、と思った。
豪華な店や社交場も、つつましい家の室内も、ゴージャスなホテルも、背景がとても綺麗で見応えがあった。

男がインチキ野郎と知って怒って帰ろうとするけど、説得されてしまう辺りも、あーバカだなーと思いつつ、けっこうきゅんとなってしまった。
恋ってバカでないとできないのかも、そういう意味では優等生のこの子には、本当に新鮮で得難い体験だったのかもしれない。

"マトモな大人"との関係も面白くリアリティがあった。
善良な両親を騙してオッサンとイチャイチャ旅行は、胸が痛んだ。浅い嘘吐きやがってオッサンが。
ジェニーは賢くても子供だし、恋は盲目の言葉通りなのだが、こんな嘘を本当に口に出してしまうような男はダメさ。
妻子の存在以前に気付くべきだった、けどそこが、優等生の限界だったのでしょうね。
そう言えば17歳にやたらこだわっていたけど、イギリスでの淫行制限年齢なのかな?そういうところがまた小賢しいと言うか。
金持ちのオッサンと結婚するのを当てにして校長先生に啖呵を切って、と言うか演説をぶって退学を決めるジェニー。
「この国に未来の希望なんか無い」みたいな事を言ってたのが印象的だったんだけど、正確な言い回しが思い出せない。
そういう閉塞感みたいな物は、特に賢い若い娘は持ちがちだし(ハリウッド映画ではまず聞けないセリフだが)、権威ある大人を理屈で言い負かして意気を上げるのもありがちな事。
そして理屈で勝っても現実に押し潰されて逃げ帰って来る事も。
担任の先生も良かった。絶妙なダサさだった。

うるさい大人、厳しい大人、ダサい大人。若者は傲慢で大人を見下すけれど、たいがいの場合それが自分の見解の浅さだったと気付かされる事になる。自分が複雑なのと同様に、他人も複雑なのだと知る事になる。
優等生でも美人でもなかったが、私もあったよね、と、赤面しながら観た。
今となってはちょっと、くすぐったい。

12人の優しい日本人 

昔観た時は、ものすご〜く面白いと感じたんだが、最近見返したらそうでもなくて、途中で飽きてしまった。
…いえ、つまらなくはないんだけど。
どうも私の中で、三谷幸喜は容量オーバー、お腹一杯状態になっちゃってるのかも。昔は好きだったんだけどなぁ。くどいんだよね。いつも同じだし。

言わずと知れた、と言うかそのまんま『十二人の怒れる男』のパクりいやパロディいやオマージュ?なんだが。元ネタが傑作すぎるんですが。
しかしそこは腐っても三谷って言うか別に腐ってないけど、タイトル通り、いかにもな日本人の特徴"和をもって尊しと成す""長い物には巻かれろ""触らぬ神に祟り無し"なんて辺りをうまい事取り入れて、軽妙な会話劇に仕上げている。
笑の大学』なんかと同様、映画よりも舞台の方が向く内容ではあると思うんだけど、公開当時はその舞台っぽさも新鮮に感じた。

梶原善、上田耕一、近藤芳正等の"いかにも舞台勢"に混じって、トヨエツのチンピラっぷりがとても光って見えたな。

ジュエルに気をつけろ!

リヴ・タイラー、なかなか綺麗。そしてカワイイ。
極端なコメディなので、「そこまで色っぽい!?」と、思う部分もあるにはあったが、目に楽しく心にイタい、いい感じにイカレた女を好演。
翻弄される男達も、マット・ディロンにジョン・グッドマンと楽しい面子。ポール・ライザーも好きだ。いつもはあまり好きじゃないマイケル・ダグラスも、ある意味イメージを棄てての大熱演。
単純なお笑い路線かと思いきや、意外に凝った『藪の中』構成だったり、悪女ジョエルが異様に家にこだわったりと、薄笑いしながらもいい感じに引き込まれる。

前半の男達の証言を聞いていると、いかに男性(いや、人一般?)が女性(異性)に対して自分の理想を当てはめて熱を上げるか、というのが良く見えて微笑ましい。
ですよねー。なかなか「ありのまま」なんて見えやしないし、当の本人だって相手によって態度(=性格)が変わって当たり前。
突拍子も無いストーリーだし、「そこまでイイ女?」という点も無くはないけど、それでもバカバカしいという思いよりも楽しく見てしまえるのは、この辺りの描写が丁寧で、役者がいちいち名演技だからか。

リヴ・タイラーは確かに綺麗だけど、ハリウッドで屈指という程のレベルではないと思うし、むしろお色気方面では弱いタイプだと思うんだけど。
だからこそ、女性が見ても不快にならない悪女役になれたのかも、とも思う。
何と言うか、色っぽいより先に元気いっぱいでパワフルで、己の欲望のために全力で突っ走る姿がサワヤカですらある。ヘンに女っぽくない彼女だからこそ、の印象だと思う。
とはいえヒロインとして充分な美貌ではあるから、取っ替え引っ替えのセクシー衣装も良く似合ってるし、心底「バカか!?」と呟いてしまった洗車のシーンなんかもカラリと笑って見逃せる、いや楽しめる。

実はけっこう人死にが出たりして物騒な内容なんだが、それを感じさせず楽しく観られるのは凄い。
大きな事は何も無いが、脚本・演出・演者がそれぞれイイ仕事してて、それらがカチリと噛み合ってる感じが心地良い。
クライマックスのYMCAも秀逸だ。

守護神

いやぁ。
感動シーン、いっぱいあるんだけど。
それぞれは良いのに、総合すると退屈。何度も気が散ってしまって挫折しようかと思ったけど、頑張って見たら良い話でした、でもねぇ。という。

ケヴィン・コスナー、相変わらずかっこいいですねー(全然褒めてませんから!)悪いけどもう、この路線はいいよ…いつも一人かっこよくて、マッチョ成分を薄めたスタローンみたい。
アシュトン・カッチャーも面白くない。
バタフライ・エフェクト』は本当に傑作だったんだなと再認識した、一応彼も魅力的に見えた。それくらい興味が持てない俳優の一人だ。
これがもう少し、渋くて不器用そうな教官と、ヤンチャで精悍な実習生だったら、かなり好みの映画だったかも。
でもなぁ。なんか全体に気の抜けたサイダーみたいな印象でね。

アシュトン君とナンパした学校の先生の間柄とか、本当にどうでもよく感じちゃったし。なんで別れなきゃいけないかも分からず、なんで戻るのかも分からず。迎えに来てもふーんって。
教官と元妻の関係も、だから何?だったし。
まとめて言うと、この映画に女性は不要だったように思う。
命がけの仕事、そのための厳しい訓練、生々しい現場と、見所はいっぱいあるのだから、何も仕事に関係無い女なんか出して尺を稼ぐ必要性なんて全然無い。

コスナーさんはやはり、かなり水泳がお得意
水中での動作がとてもキマるんだよね、この人。
そう言えば顔もイルカ系…ってのは冗談として。
もっと普通にベン鬼教官と生意気なジェイク訓練生でやったら良かったのにと、繰り返し思う。
それと、私としてはどうしても気になるのだが、途中でベンからジェイクに視点が代わるよね。
交代しないワケにいかないんだけど、それなら最初からジェイク目線でやったら良かったのに、と思ってしまう。
そしてますますベンの別れた女房の話、本当に不要だったというか、最終的に何が目的だったの?という印象で終わってしまった。

もちろん『海猿』みたいに、全く理由も提示せず無茶な状況から生還してめでたし、みたいな話を見たいワケでは無いし、"守護神"というヒロイックなテーマはむしろ好みではある。
だからこそ、好みの要素(水、師弟、命賭けの職業)が多く盛り込まれているからこそ、もっとちゃんとマッスグに作って欲しかったと、残念でならない。

JUNO/ジュノ

シチュエーションを聞いて、面白そうだなと思って観たんだが、うーん。
悪くはないんだけど、まあ、ファンタジーですわな。
あまりに皆さんアッケラカンとしていて、彼の国ではこんな認識なのか???と、いやいやありえないから。
登場人物がほぼ全員、あまり好きになれなくて、まあ人間臭いと言えばそうなのだが、皆が自分勝手でいい加減で。
それを、あたかもエエ話みたいにまとめちゃってる辺りがどうにも居心地が悪くてね。

基本中絶はしないが良いに決まっている。
事情が許さず泣く泣く中絶した経験のある人や、ジュノと同世代(16歳)の物を良く知らない少女達が見る事を想像するとね。誰も絶対に傷付けない表現なんて実践不可能だけれど、こういった偏りに私はモゾモゾしてしまうのよ。
特に酷いと思ったのが、超音波検診で技師の女性に対する継母の対応。失礼にも程がある。
これをまたエエ話みたいに溜飲下げちゃうのがもう、嫌らしいったら。
全く何もしなかった父親の少年とヨリを戻すラストもゲンナリした。どういう神経してるんだか。

"貰い手"夫婦も、最初から危ない感じだしねぇ。
ぶっちゃけ誰一人、生まれて来る子供の事考えてないよね。
あの奥さん苦手。神経質で完璧主義、理想主義のエコ大好き。子供を完全支配するタイプ。
旦那の方は職業柄もあり、全く大人気ないし、案の定貰い手夫婦は破堤。
彼の国の法律にはうといが、シングルで養子縁組ってアリなんでしょうか???
彼女は一人で生活どうするんですかね…その辺も日本より整っているのかな。
夫に去られた妻にジュノは「それでも貴女にあげるから」と、まるで善意を施すように伝えるけれど(妻もそのように受け取るけど)養子話がポシャッて一番困るのはジュノだよね。(子供の先行きとか考えずに)引き取っていただいた、が正解だと思うんだが。

勢いで悪く書いてしまったが、ジュノのメゲない性格や行動力は、見ている間は悪く無いと思い、それなりに楽しく見る事ができた。どこか冷めてるのも家庭の事情とか色々あるかなとも。
大人気ない旦那とのロック談義も楽しかったし、ティーンエイジャーらしいマタニティファッションは可愛かった。
一人中絶反対デモをやってるクラスメイトのメガネっ子は好き。あの子にもっと活躍して欲しかった。

重いテーマを軽く表現、と言えば聞こえは良いが、実際には良い方にばかり捻じ曲げて見せている印象で、そこまで私は楽天的になれないな、というのが正直な感想。
つまらなくはなかったよ。

JUNO/ジュノ(byココアちゃん)

随分前にレンタルで見ました。当時、この映画の影響でアメリカの高校(多分地方?)で
妊娠するのが流行った(!)そうな。
「若くて素敵なママ」に憧れたらしい。
他でも題材にしたドラマによると、どうもこの手のママには生活保護費が出るらしいの。
もしくは里子欲しいカップルはたくさんいるらしい。
(しかも白人の赤ちゃんだし)
州によっては中絶が難しかったりするみたいだし。
主演のエレン・ペイジが可愛いかったね。美人でもセクシーでもないのに
アメリカでも結構人気あって実力派、のくくりね。
ロリコン男に報復する「ハード・キャンディ」とか
性格異常の里親母に虐待死させられる(実話!)「ガール・ネクスト・ドア」などの
衝撃作で、生々しい役柄で評価されてた。
アメリカの大竹しのぶ?笑。顔似てるし。

>

<管理人からお返事>

エレン・ペイジいいですよね。
他の映画も観てみたくなりました。
表情が豊かで凄くいい。生意気言われても憎めない感じ。
まだ若いので、セクシーにはこの先なるかも…メイクと演技力で何とかなりそう(笑)。

"できちゃった"子を産めるなら産んだ方がいいし、そういう世の中になって行くのは望ましい事、とは思いつつ、手当を当てにしたシングルマザーが働きもせず血税使って何不自由ない暮らしを享受するのが良い世界なのか、と思ってしまう私は心が狭いかしらね…。

 

ジュピター

殆ど予備知識無しで観始めて、何となくタイトルからSFかな?と思っていたので冒頭こそ「あれ、何観てるんだっけ」となったものの、すぐに摩訶不思議な世界が広がって、「あ、好き!」ってなった。
なんと言うか、古き良き円谷怪獣映画的な懐かしさと、キューブリック的なイカレ具合が妙に心地良くて、好き。
残念ながらCG多用し過ぎて宇宙空間のシーンとかはTVゲームみたいになっちゃってるけど、それもまあご愛嬌かな。
他のセットがなかなか美しいので、もったいない気はする。
蜂が群がるシーンとかは綺麗で素敵だった。

目力強いヒロイン"ジュピター"はミラ・クニス。
ブラック・スワン』でナタリー・ポートマンを向こうに回して大健闘だった。
この人やっぱりイイね。ちょっとメイク濃過ぎるけど。顔立ちが濃いんだからもっとナチュラルにした方が可愛いのにね。
SFパートに入ってからのゴシック調?の衣装がとても良く似合ってた。結婚式の衣装も素敵。
狼男のチャニング・テイタムもかっこいいんだけど、上司役のショーン・ビーンがあまりにかっこよ過ぎて霞んでたわ(笑)私なら絶対コッチ狙うわジュピター!
でもってなんかミッチーみたいな人出て来た!アカラサマに悪役だけど、コイツも好き。
と、思ったらエディ・レッドメイン。え?『ファンタスティックビースト』?
見た目は美しいけど大根君と思ったのに。『マリリン』も。意外と言うかハマり役?別人のように生き生きして見える。
ああ楽しい。

物語は単純な割にやたら設定が込み入ってて面倒臭いし、細部はけっこう雑なんだが(笑)あまり気にしなくてもいいんだな、と、このユルいムードに告げられてる気がする。
ただ近頃のハリウッド映画では必ず思う事なんだけど、ヒロイン強過ぎ
普通に生活した来て掃除婦やってる女の子が、あんなに他人を殴ったり蹴ったり(そしてダメージ与えたり)できるもの?って。

"アブラサクス"って、Hヘッセの『デミアン』を思い出したのだけど、あれは"アブラクサス"だったよね…ヘッセにも元ネタはあるけれど、私はヘッセリスペクトのネーミングだと思う。
そういう意味でも、この映画、好き。
『デミアン』は高校時代の私のバイブルだった。どう繋がるのかは、良く分からないけれど。

クレジット見たらテリー・ギリアムがシレッと出演してるんですけど!?(笑)
そう言えば好きそう、この世界観。
ウォシャウスキー姉弟と仲良しなのかな?気は合いそうだね。

ジュマンジ

双六の結果がそのまま現実に起こったら、という、思い付いても普通は却下するような設定からして全くの子供向けではあるが、シッカリ作られていて面白い。充分に楽しめた。
なんだかんだ言ってもロビン・ウイリアムズは名優だし、日常の中に次々異物が出現する様子はシュールで刺激的。

サルのデザインがあまりにヌイグルミっぽかったのは、わざとかな?コウモリ、ライオン、ワニ、象と、殆ど期待通りに登場してくれて、見応えは充分。
過剰な残酷描写も無く、難しい理屈は無いけどちゃんとストーリーが組んであって、最後はちょっと感動もできる。そして、ワクワクする。
親子の確執や、淡い初恋、年齢を超えた友情と、人間関係の扱い方も丁寧で爽やか、ホロリとさせられる。
ロビン演じるアランの現実世界の父親と、ゲーム世界での宿敵が同じ役者というのも面白く、この辺りは大人がちゃんと楽しめるようにできている。
要所を占めるギャグも素直に笑えるし、子供の心のオッサンを演じるロビンはやはり凄いと思う。警官の被害者っぷりも面白かった。子供が過剰にうるさくないのもマル。
キルスティン・ダンストも、この頃はちゃんと可愛かった(笑)。
長い年月を重ねたハズが文字通り"振り出しに戻り"、大人の感覚が消えて行く前に…という辺りも甘酸っぱくて胸熱。
そしてやり直した長い年月の先に、感動の再会。タイムスリップ物としても、なかなか出来が良い。

二番煎じはロクな事が無いのは世の常だけど、それにしても10年後の『ザスーラ』の惨憺ぶりには目を見張ってしまった。

ジュラシック・パーク1、2、3

最初に宣言しておこう、私は恐竜ファンだ。
夏休み、クソ暑い中一人で「大恐竜展」に出かけて行って、汗臭い小学生に混じって「恐竜の骨を触ろうコーナー」の列に並び、証明書まで発行してもらう程の、そして会場の売店で「恐竜マップ下敷き」を購入してしまう程の、かなりのオタク度なんである。
だから、この映画は、存在だけでもはや福音だ。
ストーリーがくだらなかろーが、CGファンに言わせると稚拙なCGだろーが、とにかく、撮ってくれてありがとう!っていう、感謝の気持ちで一杯だ。

そんな私なので、原作なんかも読んじゃっていたりする。
かなり、原作はオモシロイ。
正直言えば、もう少しオトナなセンスの別の人に撮って欲しかった、という気はする。
特に『2』だっけ、TレックスのNY上陸って、あー、やっちゃったー、だったけどね。
でもね、恐竜が動くのよ、走るのよ、吠えるのよ!
トリケラトプスを抱き締めながら、女学者が泣くじゃない?「一番好きな恐竜よ、まさか触れるなんて…」って。私マジでもらい泣きしたもん、あそこ。

だから、映画としての悪口は今回はいいの。
好きなシーンは、他にもいっぱい。
ライトが当たってTレックスの瞳孔がキューッて縮まるシーン。生きてるっぽい!
恐竜の大群が草原を走るシーン、草食恐竜が長〜い首を伸ばして木の葉を食べるシーン、クシャミしてハナミズがとぶシーン。
『2』でも、冒頭で小さいのがキキキッて集まって来るでしょ、最後は恐い事になっちゃうけど、恐竜の餌付けなんてたまらんっす。
翼竜が飛ぶのも嬉しかったし、ヴェロキラプトルが目が合うと小首を傾げるのも、なんかリアル(かどうか本当は分からないんだけど)だし、恐いラプトルが恐ーいレックスにパックリされちゃうのもキャーキャー!

さんざんCG批判をしてるんだけど、「見られるはずのない物を見せてくれる」という点においては、CGには感謝してる。例えばTVの科学番組なんかも、CG導入ですごく面白くなった。(あ、「ジュラシックパーク」って、そういう位置だったんだ、私には)
CGの悪口は言うけど、『ジュラシックパーク』と『T2』と『ゴーストバスターズ』は許す。
って言うか好きかも。

キャストの影は本当に薄い映画だけど、「ダミアン」と「ハエ男」の揃い踏みってのは笑えるよね。
ハエはけっこう好きなんだけど、この役はなあ。

ジュラシック・レイク

いや〜、冒頭で度肝抜かれましたわ。
ネッシー話は数あれど、こうまで凶暴な解釈は見た事も聞いた事もなかった。
探検隊が卵を発見し、親が追って来たのでそっと卵を返し…からの、まさかの大惨事!
びっくりしたなあ。
ちょっと前に『ウォーター・ホース』という、こちらは妙に格調高いネッシー映画を観たばかりだったもので、ギャップに笑ってしまうと共に、"ネッシー"というジャンルの裾野の広さに唸らされた。

しかしこの凶悪ネッシー映画、明らかにB級ではあるが、けっこう面白い。
まず冒頭の大虐殺ですっかりハートを捕まれて(笑)、お次は"UMA"(未確認生物)大好き爺さんの登場。イヤに色っぽい美人保安官に、その息子の苦学生は女の子を巡ってイケメンからプチいじめに合ってる。そこへ登場するインディ・ジョーンズみたいなUMAハンター!
いかにもマンガっぽいんだが、キャラクターがハッキリしてて、それぞれ愛嬌があって良い。
特にUMA爺さんは可愛かったし感情移入してたので、早めの退場は意外だし残念だった。
しかし、こういう人を情け容赦無くサクサク被害者にしてしまう辺りも面白いところ。
UMAハンターのジェームズが、冒頭の惨事の少年だったという辺りから、もうワクワクが止まらない。
なんかこのおっさん、ニヒルにキメてるんだと思うんだけど、どうも締まらないと言うかノホホンとした容姿で、実践でもそんなに頼りにならないし、でもそんなところも面白い。

恐竜の造形は、まあ怖いんだけど、動きがちょっとセコマカしていて残念だった。特に子供ね。
ネッシーは四肢がヒレ状の"首長竜"という説も多いが、この映画ではシッカリ脚がある恐竜タイプ。ズシンズシンと歩いて地上も水中も自在に動き回り、捕食者としてとっても怖いんだが、いかんせん歩く姿、脚の運びがマヌケでな。もうちょっと何とかならんかったかCG。
ジョシュ青年はとても良い子なのがすぐ分かるし、元カノのゾーイの新しいお相手ブロディ含むバカ若造達はとっととパックンされちまえ要員として申し分ナシ。しかしブロディ君はなかなかイケメンの上、意外に活躍してくれて、これもまた楽し。
てかゾーイってたいがいバカ女だよね…見ててかなりイライラしたわ。まあみんながお利口さんだったら見せ場(=残虐シーン)も作れないでしょうが。
ジェームズの持ち込む武器の数々や、地場の使い方なんかもそれなりに説得力があり、実際役に立ったり立たなかったりというのも面白かった。

最後はお決まりのハッピーエンディングだが、いつの間にか美人保安官とUMAハンターがイイ感じになってて笑ったわ。
ジョシュ君にはあんなバカ女は似合わないと思うんだが、この先付き合うなら美人で聡明なママにしごかれて、鍛え直してもらえるんじゃないかな?
てな事まで考えてしまうところを見ると、キャラに愛着が湧いてしまったんであった。

シュリ

まだあの醜悪な韓流ブームなるモノも見る以前の事。
とても評判の良い映画だったので、現代韓国には全然ロマンを感じない私でも、かなり期待はあった。
壮大なスケールのスパイアクション大作で、心理面をも深く追っている、との噂。
結果は、派手なドンパチが入った古臭いメロドラマ、だった。

良く言えば純情、ありていに言えば幼稚な映画。
韓国は国の分断という特種事情があるため、こんな素晴らしい映画ができた、なんて言う人もいたが、確かにドラマティックな舞台設定はソソられるものがある。
かなり強引な整形手術ネタも、『フェイス/オフ』の無理矢理さに比べたら可愛いモンだ(おまけにあの映画は面白かった)。むしろ女優二人が似た印象で、少し戸惑ってしまったくらい。これは、本国の観客は女優の顔を知っていたりして、問題は無いのかも知れない。
徴兵制度があるおかげで、男優の殆どは兵役経験があり、銃器類の扱いが板に付いている、とも聞いた。
正直、私は軍事関係に目が利く方ではないので、あまり良く分からないんだけど、前半の爆発シーンや銃撃戦の生々しい印象は、悪く無い。
どう見ても二枚目とは言い難いジャガイモ系の主演男優からエキストラに至るまで、韓国の男性はスタイルがいいな、というのは正直な感想。骨格も、鍛え方も、邦画とはえらい違いだ。
だから(扱い等の知識は無くても)戦闘シーンが絵になるのはうなずける。

で、あの湿っぽいスト−リ−展開(うんざり)。
演歌の世界と言ってしまえば納得もするが、なんざんしょ、あの被害者意識に終止するメンタリティは。
それはまあ好みの問題と目をつぶっても(つぶらないけど)、あの「最終兵器」!!
笑ったよ、あたしゃあ。
笑うとこじゃないんだよね!?
あの銃撃戦をする人達が、大真面目にあの最終兵器!?
なんの必然性があって、あんな不安定でアテにならない物を。まあ、知らない人が見たら、まさか兵器とは思わないだろうと言う点では成功?なのかなあー。
透明な水槽の中で赤い玉がプワプワ…赤い玉…赤丸…日の………あばばばば。
まさかね。

てなワケで、ベタベタした幼稚な人間関係がお好きな人には好ましい映画なのは分かるけど、デザイン関係だけでもなんとかしろよ、ってトコでしょうか。
とは言っても、映画の出来が悪い訳では決して無く、映画の内容だけではなく製作サイドの純情ぶりをも伺える、新鮮な印象がありました(まだこの頃は)。

ジュリア 

けっこう古典の名作、という位置付けだと思っていたんだけど、公開1977年より37年遅れて初見、と思ったら、多分昔々TVで見てたわ。
うーんんん…。
引き込まれハラハラしたけど、好きかと言うとそうでもない。
"一生続く女の友情物語"みたいに聞いていたが、当時はそういうテーマ自体が物珍しかったのかもしれず、しかし友情云々以前にナチが怖いぞという。

主演のジェーン・フォンダの顔がね、イヤでイヤで
有名な女優さんだし綺麗な人だと思っていたのに、この時代の服装も大好きなのに、なんだか下品で浅ましい顔に見えてしまって。
『バーバレラ』なんて最高にキュートだったのに、10年間で何が起こったんだ…ワークアウトで名を馳せただけあって、タイトスカートのお尻は綺麗だったけど。

出番は意外に少ないが、"ジュリア"役のヴァネッサ・レッドグレーヴは素敵だった。
深窓に生まれ理想のために全てをなげうつ愛と信念の人。ウザいところも含めて、意志の強そうな顔立ちと真摯な瞳がピッタリ。
リリアンに嫌われるチャラいお嬢様役は若かりしメリル・ストリープ!綺麗だけど中の方が腐ってる女を一瞬で印象付けた。どうやらコレが映画デビュー作だったらしい。にしては初々しさが無い(褒めてます)。
リリアンの彼氏の文豪ハメットを演じるジェイソン・ロバーズも素敵。賢くてスマートで、大人な対応、程良い距離感、頼れる才能…こんな男に見込まれたリリアン自身も秀でていたんでしょうが、ちょっと嫉妬してしまった。

画面は終始美しく、でもどこか陰鬱で、そうでもないモノさえいちいち疑惑の目を向けたくなる。
列車のくだりや東欧のナチ遺産の景色をはじめ、少女時代のジュリアの家での食事シーンや、ハメットとの海辺での美しい生活も、パリでの華やかで虚しい暮らしも、なんだか危うく不吉で気が抜けず、軽く胃痛を感じる程だった。

彼氏の名がハメットなので、これは、と思ったら、やはり"実話"という装丁のようだ。
ご免なさい、リリアン・ヘルマンって知らなかった。
実話だから、と言われれば、最後のジュリアの娘が見付からずに終わるのも、致し方無い、としか言いようがないんだが。
それ以前、ジュリアの死に関しても、その前の負傷にしても、結局全てが伝聞と想像で、何とも食い足りない思いをした。
一口に実話と言っても、当事者が中心でもなければ、広く取材して調べたのでもない、「(滅多に会わない)友達が見たジュリア」でしかない。
リリアンにもっと感情移入ができたら、あるいはリリアン・ヘルマンという作家に何らかの思いが最初からあれば、また感想は違っていたのかもしれないが、どちらでもない私には映画を1本作るには資料的に寂しいと感じた。
結果、なんか格調高っぽいんだけどモヤモヤとした後味のボンヤリした印象の映画、になってしまった、私にとっては。

しかしこの頃の人達、本当〜に煙草吸うよね。もう吸い放題、って言うか完全に中毒患者。
主役のリリアン始め、人々のチェーンスモーキングぶりを見せ続けられるだけで不快感がこみ上げて、辛かった。今がこんな時代じゃなくて、本当に良かった。
電車内でも当然のように吸ってるし、歩き煙草も当たり前。タイプライター叩きながらウイスキーと煙草は通常装備、それにサンドイッチが加わったのを見た時には本当に吐き気がしたわ。
ヘビースモーカーと言うより、単にだらしない人って気もしますが。

あとあの帽子、アレは無いよねぇ〜。
「注目してください」って言ってるみたいな浮いたデザイン(笑)。ちっとも似合ってなかったし。

ジョイフル♪ノイズ

タイトルも工夫が無いが、内容も定型通りの音楽映画。
田舎のゴスペル合唱団、太った黒人のおばさんにケバい金髪の白人おばさん、町一番の美人の娘と他所から来た不良少年の恋。頭の固い牧師。最近の流行らしく、美人の弟は気のいい弱アスペ。
と、散々見て来た構図でもって、「新しい事」を始めた合唱隊がコンテストで「優勝」!(笑)

しかし音楽のクオリティが高く、歌も素晴らしいが演技が皆好演で、美少女は本当に可愛いしメインのおばさん二人の突っ張り合いはユーモラスで見応えがあり、終盤は感動的。
コンテストでの他チームの歌も、それぞれ素晴らしくて、こういうイベント見学に行きたくなった。

本番で掌を返したようにノリノリな牧師にはちょっと納得できない点もあったが、そこはそれ、予定調和という事で。
むしろストーリーはあまり掘り下げない方が、音楽の邪魔にならなくて良いのかも。
単純にこういう、老若男女で協力し合って何事か成し遂げる、というのはカタルシスがあるものだし。
田舎町から皆でバスに乗って行くとかさ。学園祭気分でワクワクする。
大会のシーンも、歌はもちろん各チーム衣装や演出も華やかで楽しく、一緒に手拍子したくなる。
特に黒人おばさんの歌は本当に凄かった。
大会での美少女のピンクのワンピ姿も本当に可愛かった。

この手の音楽がお好みなら(私は好き)楽しめると思う。

将軍家光の乱心 激突 12/3

なんじゃこの節操の無い時代劇(笑)。
公開は1989年、バブル真っ只中の浮かれた時代ならではの、軽薄さ無駄な豪華さと、思想性の無さよ。
今となっては懐かしくもあるが、好きかと言われればそうでもない(笑)。
キャッチコピーは「命がけだからおもしれぇ」(爆笑)!

千葉ちゃんが絡んでるから、当然のごとくアクションは凄い。
景気の良かった頃ならではの、大掛かりな爆破やら、大人数の合戦、それにJackの皆さんのヤバい身体能力
なんか馬の物凄いの見ちゃった気がするんだけど…………大丈夫だったのかあの子は。
今ほど色々厳しくなかった時代なので、考えると怖くなる。
そして火薬ハンパねー!
自爆はまだしも、火だるまはどうなんだろ、あまり殺傷力高くなさそうな。
とにかく見た目の派手さを追求しまくりの、それはそれで良い時代だった。

しかし、お万の方様が元妻だったとは。
え、あれ?アベじゃなかったの?
なんだか凄い脚本だなぁ。
しかも、元夫が死守した若君を、その元妻が毒殺しようという、何と言う巡り合わせか。

緒形拳は無論かっこいいし、千葉ちゃんの寡黙な悪役も(台詞が少ない分)良かったけど。
松方さんの時代劇芝居は流石ですわ。
そして、京本政樹のキレッキレぶり(笑)凄いわ!
子役の若君も、眠ったような目が得体が知れない感じで、なかなか良かった。
雪を滑るシーンはちゃんと可愛かったし。
緒方さんは本当に、こういう一徹な人物が似合うね。

結局、一足先に逝った刑部(緒方)の小刀が、息の根を止めたのね。
あれを無駄にはしないとは思ったけど、まさかのお万の方様ご乱心とは…やはり笑ってしまう、色々と。本人達は大真面目なんだけど。
でも最後に刑部の託した小刀が引き金となったのは良かったな。

なかなかのオールスターキャストで、大仰なアクションシーンや爆破シーンといい『柳生一族の陰謀』をちょっと思い出したが、やはりそれをもう一度、という企画だったらしい。
でも、形は似てるけど、内容はかなり薄い、よりお調子に乗っちゃってる感がアリアリで、出来としては残念かも。

で、この音楽、何とかならんのか…さらば恋人よってアナタ……ALFEEでしたか。
いっそ殿役を高見沢さんに演ってもらえば良かったのに(いえ京本さんに不服は無いですが)。

ショーシャンクの空に 

原作は、スティーブン・キングの短編の佳作。
たまたま読んでいた私は、「あの短くて完成度の高い原作を、どうやって映画にするのだろう!?」と、ちょっと驚いた。(後で知ったが上映時間は2時間30分!)
でも結果は、短編をふくらませつつ、原作の味わいをちっとも損なわない、世にも稀な見事な映画化になっていて、正直大筋を知って観るのが損したような気分になってしまった。
S・キングは映画と相性が良いのか、『キャリー』『シャイニング』『ミザリー』そして『スタンド・バイ・ミー』と傑作が多いが、その中でも私は、この『ショーシャンクの空に』がイチオシ!だ。

語り部役の名優、モーガン・フリーマンも相変わらずの達者ぶりだし、なにしろ主役のティム・ロビンスが、とてもいい。(この人他に何かあったっけ?)
無実の罪で投獄された銀行員のアンディ(ロビンス)。入所初日は「誰が最初にへたばるか」の賭けにされる程の場違いぶりで、いかにもお育ちが良く苦労知らず、といった印象で憔悴し切っている。
彼にとっては刑務所の現実は地獄だったろうが、頭の良さと不屈の精神で、自分の生きる場所を確保していく。人としての品性を保ったまま、強くなっていく姿は秀逸で感動的だ。
ちょっとオボッチャマ風の平凡な容貌と、意外に鋭い綺麗な目が、この役にピッタリ。

看守の横暴さや受刑者達の粗暴さ、図書係の爺さんや気のいい証人の末路と、見るのが辛いシーンも多いんだけど、無機質で殺風景な刑務所が舞台の殆どを占めているにもかかわらず、爽快で美しい場面も多いのは不思議なくらいだ。
「フィガロの結婚」、屋根の上のビール、そしてラストの、あの海と言ったら!
原作ではリタ・ヘイワーズ一枚だったのが、映画では時代を経て代替わりの末マリリン・モンローで終わるのも、映画らしい味付けで微笑ましい。

ストーリーは、人間ドラマとしても、友情モノとしても出来が良く、アッと驚く仕掛けもあってミステリ−要素もクリアしている。泣けるし、ハラハラドキドキして、感動もする。なんたってカタルシス!
そしてこの全ての要素は、それぞれに支え合って成り立っている、このち密さ、丁寧さがたまらない。
人は厳しい環境に置かれた時に、本質があらわになるもの。
この世の地獄で自らの尊厳を守り通すアンディの姿が、感動と驚きの原点だ。

ジョー・ブラックをよろしく 

いや〜。
映画の内容は、ひとまず置いといて。
このブラピは、むっちゃカワイイ!
びっくりしまっせ。

名優アンソニー・ホプキンス演じる富豪を迎えにやって来る死神。
ブラット・ピットは、なんと言うか、エトランゼがとても似合う。
「人間に興味が沸いて来た」というワガママな理由から、連れて行く前に富豪の側で暮らして人間界を見物する、という設定だから、世間知らずで感情面も未発達。
キョトンとした無垢な表情の愛らしい事、たどたどしい仕草の愛おしい事。
ネクタイが結べず、スプーンでピーナツバターを舐め、女に脱がされながら「(袖から)手が抜けない…」うおぉ…卑怯だ…。
無精ヒゲ生やしたり、ムキムキ鍛えまくったりと、何かと「カワイイ」に抵抗を見せるブラピ君が、まだ若くて綺麗なこの時期に、この役をやってくれた幸福に乾杯したい。

で、映画の話ですが。
なかなかいいんだけど、長いわりに、最後の決着を付ける部分が抽象的過ぎてイマイチ盛り上がらない。
死神の仮の姿・ジョーと恋に落ちる富豪の娘スーザンが、ジョーとの別れを納得するシーン。
見つめ合って理解する、というのは現実的なんだろうけど、映画的ではないな。
ホプキンスの富豪は、とても魅力的。
娘を愛し、人生を愛し、毅然として誠実。不正と思えば死神にも詰め寄る勇敢さ。
この風格は、さすがだ。
スーザンの姉のダンナも良かったな。
ジョーが「君は僕のお気に入り」と言う相手。大物ではないが、気が良くて優しくて。すごくホッとさせてくれる存在。
それにしてもスーザンの(元)恋人はひどすぎる。アホちゃうかスーザン。
富豪の会社の乗っ取り劇なんかも入ってどうなる事かと思ったら、ちゃんとジョーがかかわって来て、その辺は面白かった。
でも私、とっても気がかりなのは、その後の事。
スーザンは、最初に恋を感じた青年と再び巡り会う形でハッピーエンド、なんだけど、本当?
ジョー・ブラックの世間知らずな純粋さを、本当は愛したのじゃなかったのかな?ジョーの正体を知るパパは、そうは思わなかったようだけど。
「付き合い出したらタダの人」ってな事になりかねない、と私は思うぞ。

最後にもう一度ブラピに戻って、もう一言。
最初と最後にチラッと出るだけの「人間の」青年と、彼の肉体を借りている「死神」の、いわば一人二役をブラピが演じている訳だけど、表情の違いはなかなか秀逸だ。
やっぱりカワイイだけじゃないんであった。

少林サッカー 

あーもう、やんなっちゃった

私はアクション映画が好きだし、コメディも大好き。バイオレンスに過敏ではないし、例えば「ポリスアカデミー」なんかも大笑いしてしまうので、下品な物もキライじゃない、と思う。
でも、この暴力シーンは堪え難い、すっかり気分悪くなった。
おまけに、さむ〜いギャグのオンパレードでさんざんウンザリさせられたし。
笑いのツボって、本当に人によってこんなに違うものなのかしら。
個々のネタの問題だけでなく、笑える気分を保てるか否か、も重要ポイントかもね。
差別ネタも、ブラックジョークも、笑えてナンボでしょ。

サイテー

ショコラ(2000)

おっさん貪り食ってるし……!(汗)
悪役、と言うか対抗馬のレノ伯爵、偏狭で勘違い男だけどナカナカの男前
どこかで見たと思ったら『スパイダーマン2』のタコ男か!
あのタコもあんなデザインの割に上品な紳士然としてて良かったよね。

チョコレートってやはり、魔法の食べ物かもしれない。
ダイエットの最中に観たもので、泣きながら貪り食う伯爵の気持ちに思い切りシンクロしてしまった(笑)。
それ以前にも、媚薬のように夫婦仲を取り持ったり、DV亭主から逃げる勇気を与えたり、一口食べると皆の顔がパアアッと明るくなる、そういう魔力が本当にあると思う。
劇中何度も出てくる鍋の中で溶けたチョコレートがもう、幸福の象徴のように美しく美味しそうで、甘い香りが脳内いっぱいに広がって目眩がした。

ジュリエット・ビノシュの存在感は抜群
ミステリアスで、鼻っ柱が強く、途方もなく優しい、勇敢な女。"風"に乗って世界を渡り歩くのが似合う。
大好きなジュディ・デンチも発する言葉一つ一つに説得力のある見事な適役。
ジョニー・デップの素顔が苦手なんだが、今回は出番も少なく素敵に見えた。
子供達も嫌味にならない程度に大活躍で可愛らしくいじらしい。
バタードワイフもデンチの娘もとっても美人で、それぞれの思いが薄味ながらクッキリと伝わって来る。
そして…え?レスリー・キャロン!?と、ビックリ、巻き戻して観ちゃった。
流石に踊りはしてくれなかったけど、可愛らしいお婆さんになっておられました。好き。

パーティも楽しそうだった。
チキンにチョコレートソースを掛けるアレ、『信長のシェフ』で見たぞ!?アチラでは一般的なのかな。
甘いチョコを溶かしてかける訳じゃないと思うので、美味しいんじゃないでしょうか、食べてみたいな。
食べてみたいと言えばチリパウダー入りのホットチョコレートも。きっと美味しいと思うんだ。
いやもう本当、全部美味しそうだったんだけど。

Shopgirl/恋の商品価値

クレア・デインズ、口デカいよね。
下品なおばさんに見える時と、アラけっこう綺麗じゃないの、と思う時とあって、今回は概ね後者だったけど、時々前者が顔を出す。
スティーブ・マーティンの名を見て、クレア・デインズがコメディのヒロインに?と思ったら、全然違った(笑)。

と、言うかよくもまあ、こんな緊張感の無いありきたりの恋愛話を真面目腐って撮ったものよ、と妙な感心をしてしまった。
最初からミラベルのお相手はジェレミーに落ち着くだろう事は予想が付き、そこに何のハラハラ感も無い。
田舎出のデパートガールが大金持ちに見初められても幸せなゴールは望み薄、ではあっても、破局するにしても色々見せ方はあると思うんですが。
一夜の浮気をわざわざ手紙にしたためて白状し、「君には知る権利があると思った」挙げ句「許してもらえると思った、僕は愚か者だ」ってオイオイ…(汗)。
まあ私がミラベルなら、裕福な彼氏を切り捨てられるかは分からないが、サエなかった元彼が出世して戻ったら話は別か(笑)。
いずれにせよ、このミラベルという女性は結局誰も愛してはいないんじゃないか、と、天の邪鬼な気持ちにさせられた。良く(経済面含め)してくれる男にくっついてるだけ、と。

色っぽい職場の同僚が突然"彼"を寝取るだの、全然イケてないバンドの全国ツアーに付いて廻ってCD聴いてて「成長した」だの、デパートやめたと思ったら個展開催だのだのだの。
そしてラストに長々と謎のナレーションが入り、ミラベルとレイの心情が説明されちゃうとか。
レイの心理は面白くなる要素はあると思うんだけど、あんな風に解説入れられちゃあ興醒めだわ。
レイの豪邸や、ミラベルのドレスの数々、夜景なんかはとても美しかった。
こんなつまらないプロットで、登場人物にも魅力を感じなくても、それなりに最後まで観てしまえた理由はその辺りか。

…と、こきおろした後で知った。スティーブ・マーティン原作でした!(爆笑)つまんない話を真面目に撮ってるのも、終盤のダラダラ続くモノローグも、ナルホド納得。

ジョンQ−最後の決断− 

狂ってる………。
何がってアナタ、みんなジョンQ好き過ぎでしょ!
まあね。
アメリカって国は実在の『シリアル・ママ』をアイドル扱いしたり、『タクシードライバー』をヒーロー視したりと、そそっかしいのが多いのかも知れないが。

親が子に先立たれるというのは、人生最大の不幸だと思う。
幸か不幸か(多分後者だな)私は子供を持たずに終わるから、その最大の不幸に当たる確立はゼロなんだが、しかしそれでも想像に難くない程、それはそれは辛い悲しい理不尽な出来事だろうと思う。
だから、ある日突然「貴方の幼い息子は病気で死にます、お金が足りなくて治療は無理だから諦めてね」と言い渡されたジョンQが無茶な行動に出るのは分からないではないし、その覚悟を支持したい気持ちも無くはない。うん、無くはないのよ。

でも、この映画では割と事件の始めのうちから、誰も彼もがジョンに肩入れし過ぎ。
いくら親切にされても、病院で拳銃突き付けられて人質にされて、「要求飲まないと人質を殺す」とか言ってる相手に「いい人」は無理でしょ。
DVカップルのお姉ちゃんも、流石に発砲はできなくても、あの場は彼氏に仕返しよりもまず自由の身になる方を優先すると思うぞ。筋肉質の脚は素敵でしたが。
そしてせっかくのチャンスに誰一人協力せず、ジョンが立ち直るのをジッと待ってる他の人質達……銃さえ拾えば事件解決だっちゅーの。
普段イヤな奴でも、普通ならヒーローになるはずのDV彼氏はバカ扱いだし(笑)まあバカではあるが。
そんなワケで、かなり冷めた目で見てしまったんだが、実は終了まで、「コレって実話ベース?」と思って観ていた。

主演のデンゼル・ワシントンは安定の濃さだし、脇役陣もとても良い。
病院長役のアン・ヘッシュ。いかにもなWASPで(特に主役一家の黒人目線だと)容姿だけでも憎たらしいんだが、それだけに中盤の涙は印象的だった。まあ前半振り回した"正論"はどうなってしまうんだ、という気はしたが。
あと、あんな若くて美人の病院長ってアリ?とも思ったけど、彼の国の事情は分からない。
ドクターのジェームズ・ウッズ。こちらも知的でパリッとしてて、最初は冷たい印象だけど、だんだんほだされてく感が自然で良かった。しかし災難でしたね。
担当刑事役のロバート・デュバルは最高。風格があって、あのお歳でも見目麗しい。
彼の出ているシーンはとても心地良かった。役割と人情のせめぎ合いも、彼が演じると無理無く見られる、流石。
対照的なレイ・リオッタの小物感と暑苦しさも、相変わらず秀逸だ。しかしハゲたな…似合うけど。

冒頭の事故シーンがどこへ行くのかと思ったが、途中また差し込まれた時には「まさか!?」と思ったら本当にそうだった(笑)なんという節操の無いプロット!
まあ、ハッピーエンド好きの私だから、許したよ、ギリギリ。うん。
節操無いと言えばどうでしょう、あの医師の対応…摘出手術に同意するまでは仕方無かったにしても、拳銃の弾が一つだけだと知った時点でできる事はあったのでは?
いずれにしても自殺幇助はモヤモヤするし、今時「不発」って落ちはちょっと都合が良すぎ…。
そんな強引さは目障りではあったものの、手術が決まって息子に語りかけるジョンの言葉には思わずもらい泣きしてしまった。今思い出してもちょっと…グスグス。
だって切ないじゃない、子供の成長を見届けられないなんて。けどどっちに転んでも成長は見られないんだよね(と、この時点では思ってた)。そんな中で、息子に託す思いの数々が本当に素朴な愛に溢れていて、もう許す。展開が強引でも我田引水でも、このシーンだけで私は認めるよ。

実話かも、と思って観ていたくらいなので、人質解放から後は蛇足に思えた。
よくある実話モノのように、逮捕シーンからのスチールか何かで各人のその後をテロップで流す程度の方が、感動の「送る言葉」シーンの余韻が残って良かったような。
身代わり逮捕劇とデュバル刑事の反応はとても良かったのだが。
例えば手術シーンで心臓丸出しは…どうなの???
続く裁判シーンも大した事やってるワケじゃないし…かなり平板な印象になってしまって残念。
結局この映画は実話でも何でも無かったようだが、アメリカの医療保険制度はかなりヤバい事になっているらしく、そういう意味でのリアルさはあったみたい。
日本はまだ、ここまで露骨じゃないにせよ、いつまでも対岸の火事とはいかないような。

社会派と言うにはあまりに甘いストーリーだが、それなりの熱意は感じる、そして出演者のほぼ全てが好演の、ウッカリ真に受け過ぎなければ良い映画。

白雪姫と鏡の女王

ま、眉毛!?
開始から終盤まで、姫の眉毛の太さと黒さが気になってしまって話に集中できなかった。
まあ、その程度のストーリー展開でもあったワケですが。
何かこの"異様な太眉"に、話の伏線でもあるのかと、そんな勘ぐりまでしてしまう程のヘンな眉毛
と、思ったけど『ミッシングID』の娘か。そしてフィル・コリンズの二世様ね。
可愛いと言えば可愛い顔なんだけど、眉毛以外の印象が無い、多分眉毛細くしたらもう顔覚えられない、そんな顔。
だから眉毛は正解なのかも…そうか???
「真っ白な肌、漆黒の髪、赤い唇」という"白雪姫"の定義にも、別にイメージ合わないような。髪と眉毛は真っ黒だけど。
皮膚が薄くて血の色が透けて見えるような、繊細な透明感が無いんだもの。

違った事をやりたいのは分かるんだけど…私は面白いと思わなかった。
小人達が竹馬で巨人化してたり、女王は悪い奴なので身障者を村から追い出したとか、姫は短期間で強くなり過ぎ(王子と女王のやり取りからすると時系列が変だし)、役立たずの王子にキスをするのは姫から…。
なんかね、改変がいちいち、ひっくり返してるだけじゃなくて説教臭いんだよね…。
そしてコメディ仕様なのは分かるけど、笑えない。そんな気分になれないもの。
女王が鏡と対話する時にいちいち水を潜って謎の別荘へ行くのも意味不明、CGの無駄遣い。

そもそもディズニーはハリウッドに何か恨まれるような事をしたんだろうか?
このところ、古き良きディズニーのアンチのような映画が多発されててもう食傷気味なんだけど。
(でもオリジナルに思い入れがあると気になって観てしまう…アニメ原作のファンみたいな心境?)
エバー・アフター』くらいなら楽しく観ていられたけど。
(そもそもあの映画はドリュー・バリモアが滅茶苦茶キュートだし。)
あとディズニーヴィランズっていうの?悪役の魔女やら継母を大女優が競うように演じてる。
ケイト・ブランシェット、シャーリーズ・セロン、アンジェリーナ・ジョリー…本作のジュリア・ロバーツも負けず劣らずの有名女優なんだが、この人何だか貧乏臭いんだよね…orz
それが功を奏した『エリン・ブロコビッチ』なんかは大好きなんだけど。
冒頭で「これは私の物語」と女王が宣言するから、本気にしてたら見事に肩透かしだったし。
少しでも女王の気持ちに寄ってくれたら、まだ面白くなったかもしれないのに、最後までタダのおバカさんだった。
「魔法の代償」の件も、そろそろ撤収〜、みたいな感じで話の繋がりとか見せ場にもなってないし。
まあ、コメディとしてなら女王はピエロ役という事で、この程度でいいのかも知れんが、いかんせん笑えない。

ピエロと言えば王子ね。
なかなかハンサム君(アーミー・ハマー)だけど、最初から最後までただただ間抜けで使えない奴。
これ性別が逆だったら差別問題にされそうな勢いで無能。
「配偶者は容姿が美しくてお金持ってればOK」みたいな?だよね?
失礼な話だわ。
絵的には王子と、出番少ないけど王様のショーン・ビーンが素敵だったけど、こちらも全くの役立たず。

衣装はとても良かった。
衣装担当は日本人なのね。石岡瑛子さん、1938年生まれでこの映画の公開年に亡くなってる。
姫の「始めてのお出掛け」の黄色いフード付きコート(赤ずきん風)も、森へ放逐される時の真っ白なドレスも、盗賊団に加わってからの青い衣装も可愛くて良く似合ってたし、女王のゴールドの巨大ドレス(小林幸子かと…)や臙脂のツートンドレス、花嫁衣装もロマンティックで素敵だった。
良い仕事をなさいました。

白いカラス 

まずね、邦題が、ダメダメ
勝手にネタバラしてどーすんねん、て意味でも、これってとても問題な言い回し、って意味でも、イカン。よく本国からOKが出たな…???
レンタル屋には「日本公開版」「全米公開版」が並んでて、悩んだ末日本版を選んだ。噂では米版はキッドマンの裸が多いとかなんとか、そんなモンどーでもいいんだが、違うバージョンがあるなら特典映像で入れてよー!と言いたいわ。

正直言って、アンソニー・ホプキンス爺さん、どうもね。
名優だしサーだしレクター博士なんだけどなぁ。ゾロはイマイチだったが笑えたし。『アレクサンダー』でもサエなかったけど、今回もバイアグラの助力で若い女と×××三昧で天国って………とほほ。
相手役のニコール・キッドマンもなぁ。なんか良く分からない女だった。カラスと喋ってるし…トラウマ、とか、ついてない女、とか、似合わないっつーか、捨てきってないっつーか、いっぺんミシェル・ファイファーくらいヤサグレて見せろって(笑)。
青春期のシルクを演じるウェントワース・ミラーという青年は、適役だったと思う。納得のいく容貌の上に、とてもチャーミング。
置かれた状況や、受けた傷(原題はこれに近い)を思えば、彼の残酷な決断も理解できなくはないし、切なかった。
それが歳を取ったら、あれですよ、ホプキンス爺やの「バイアグラ万歳!」。
ミラー君とホップ爺やが全然繋がらないからか、傷を負った青年シルクとバイアグラ三昧で浮かれる老シルクが繋がらない。
上手に回想シーンを挟んで種明かしがゆっくり進むので、観ている間はそれ程感じなかったが、終わってしまうと「なんだかなぁ」と納得がいかなかった。

ホプキンスにゲイリー・シニーズと来れば、ドロドロの心理劇か、ゲロゲロのホラーか?と思ったが、予想は大きく外れて、夜のデッキでの爺さんとおじさんのダンスシーンを見るハメになってしまった…。
とは言えこのシーンは美しくユーモラスで、ちょっと悲しく、とても良かった。
でもこれ、主題にあまり繋がってない。印象的なシーンだけに残念だ。

絵も音も美しく、あちこちに印象的な会話もあり、老年期と青年期を交互に見せる手法も、雰囲気を盛り上げている。
シルクの人生を思うと、切ないし、様々な問題を孕んでいるとも思う。
良い要素の多い映画なのに、なにか釈然としない印象で終わってしまった。

白い肌の異常な夜

まず邦題が(笑)
原題は『The Beguiled』beguilは惑わす、騙す。だそうで、まあそうかなぁ…。

昔々友人からイーストウッド主演の凄い変な映画があると聞かされて、ふーんと思って忘れていたけれど、どうやらコレの事らしい。
なんかね、確かに"異常"なんだよね、諸々。
登場人物全員がちょっとずつヘンで極端で、現実の出来事と言うよりも、モテない君が楽しい妄想してたらウトウトしちゃって悪夢になっちゃった、みたいな。
戦争も絡むけど、どんな状況でも男女比があまり極端なのは不健全、というのはあるかもしれないな

当時のイーストウッドは本当に甘いハンサムで、背も高くていかにもモテそうではある。
最初は弱ってるから分からなくて、段々と本性表して来たらまあ酷いこと(笑)。
正直、怖い怖いと言いつつ階段転げ落ちた時はザマアと思ったわ。
しかし、その後の展開が思いもよらず…(汗)。
まあ、南北戦争当時なんて、壊疽だの手脚切断なんてのも今よりずっと身近だったのでしょうが。
せめてマーサ校長、医者設定にしてあげて…強い意思だけで出来るモンなの!?とは思ったな。

でも酷いけど、まあ少し気持ちは分かる、やらないけど。
自分で色目使っておいて被害者ぶる女生徒の気持ちも、あの環境では分かる。ハブにされたら生死に関わるもん。
気絶してるうちに足切り落とされて荒れちゃうジョン君も、気持ちは分かるけど、荒れ方が最悪過ぎて、こういう時に人間性って出るんだよねと。
だからラストも、まあいいや、と思ってしまった。
"清純"なエドウィナ先生はかなり怖い。
殺す勢いでの階段落ち後も罵って雄叫って、切断も強くは止めないくせして、ジョンが孤立したとなると「愛してる」で「結婚するの♪」そして一人死なせてからは、犯人一味と共に隠蔽工作…これも、生きていくためには他の選択肢は無いのでしょうが。
この先マーサとエドウィナの関係祭はどうなってしまうのか、想像するだに恐ろしい…。
ジョンを発見して助け、マーサの指示とはいえ自らの手を汚した少女エイミー。
あの若さであの十字架はきつい…けど、彼女の気持ちが一番分かるかも、亀殺されたら殺意沸くわ〜。
「私を好きだと思ったのに!」は一番ビックリしたけど。言うたらオッサンよ、大丈夫!?(笑)。
結局一番、と言うか唯一マトモだったのは黒人の彼女だったという。
いや私にはあんな啖呵切る度胸は無いな…。

でもなんだかんだ、飽きずに見られてしまったのは凄いと思う(笑)。

「白い肌の異常な夜」byココアちゃん 

…異常な、というよりは大雑把で適当な夜、だね。笑。
監督がドン・シーゲル!で納得ですよ。だって「ダーティー・ハリー」他、だもん。
多分ろくに脚本も練らず、キャラも浅いわ大雑把だわ…。
大方、クリントだけいればOK!だったんだろうな。
だいたいが、イーストウッドを撮る監督さんって彼を痛めつけてとことん苦しめてから
銃ぶっぱなしてグッジョブ!!、だからね。笑。血のメイク♪
まるでSMだよ。多分イーストウッドを愛してるんだろうね。
問答無用で男は彼が好き!本能なんだろうね…。男は永遠に中3で。
で、女どもの深みのなさときたら。
みーんな、ババアも淑女もメスガキも彼にメロメロ!男も男で全方位にテキトーな事言って…。
で、結局足切断されちゃうじゃない?
スタッフのこの映画がいかにばかばかしいか話したのよ。
「でね、男が寝てる間に足切られちゃって、で、男は怒ったのね」
「そりゃ怒るでしょ…」
「で、怒っておまえらみんな俺の奴隷だ!逆らう奴は犯して殺してやる!!ってどなるんだけど
 松葉杖ついてんのよ。一本足で何言ってんだか。でも女たちは恐れて従うの。」
説明してギャグかと思ったわ。
こんな映画の企画製作自体が異常というか。笑。
ま、イーストウッドが傷痍軍人で目の前に現れたらみんなナイチンゲール症候群に
陥って恋しちゃうかもね。あ、そういう映画だったんだ。
クリント無敵!マンセイ!笑。

長くなっちゃった。最近はダニエル・クレイグあたりがやたら痛めつけられて逆転うおー!系ですかな。
007でもボンドガールより裸多いんだもん。笑。夏子

白と黒のナイフ

二転三転の裁判モノ、とか、本格サスペンスと言う程でもないんだけど、主演のグレン・クローズの存在感が重厚で、なんだかありがたく見える映画。
筋立ては極めて単純だし、ささやかなミスリードはあるものの、多分誰も本気で引っかからない。
でも、クローズの鬼気迫る演技と、若きジェフ・ブリッジスの見事なエリート色男ぶり(ここがダメだと台無し)で、充分に楽しめるから凄い。

殺人事件の犯人当ては別として、法廷シーンは見応えがあった。不正判事の嫌味さとか、テニスプロのゲスっぷり、振られた腹いせを裁判に持ち込む女と、いそうな人がいい具合に出て来て面白かった。ロッカー番号の記憶違いもリアルで、あのおじさんもいい味出してたな。
現在進行形の殺人事件の裁判と同時進行で、過去の判事ガラミの苦い経験に決着を付けるやり方も見応えがあり、それなりに感動的。ここで目くらましされる客も多かったかも。
クローズさんは悪女役が断然輝いて見えるんだけど、こういうシリアスな役でもサスガの演技力。
意外と見せ場が無くて残念だったが、父親のようにヒロインを見守るサムも良かった。
ラストシーンは、手短に終わらせたのは良かったと思う、あそこでグダグダ長引かれてもね。

でもなぁ。
あなたが犯人だったのね!?から、ピストル持ってベッドで待ち受ける、っていう発想が凄いよな。
邦画でやったら絶対笑われる。ギャングでも、警官ですらない彼女が、なぜ逃げ出すなり、応援を要請するなり、しないのか???そもそもノコノコ自宅戻って来るか?(って言うか電話で言っちゃうあたりがもうアレなんだけど)
んー、愛してたから、って事なのかなあ。分からない。
画面的にはスッキリ片付いていいけど、ドラマとしては、やっつけ感が否めない。

氷の微笑』男性版と聞いて、ナルホド納得。
同じくクローズ主演の『危険な情事』とかもそうだけど、イイ仲になったセクシーな異性が××だったらコワイよね〜、という、そういうジャンルね。
下世話ではあるが、そういう需要はアリだと思う。そしてコレは、その中でかなり、上出来な方だとも。

あと、文字に不具合のあるタイプライター、どっかで読んだ覚えがあるんだけど…いえ、パクリだとか言う気は無いが、どうにも思い出せなくて、歯痒いんですよ。

白と黒のナイフ byココアちゃん

80年代っぽいタイトルで、中身もそれっぽい・・・。
グレン・クローズって、私最近のテレビシリーズの「ダメージ」で
おなじみだったのだけど結構昔は主役はってたのね。
「危険な情事」のキレ女だったんだー。
「入り」がバーサンだったので(しかもいじわる)昔の、全盛期を見ると
違和感ですね。ハリウッドも厳しくて、年取ると女優さんいい仕事がこないらしいの、
で、テレビシリーズに出たりする。最近は映画よりテレビシリーズの方が見る機会多いので、って
わけでもないけどつまらない2時間の映画よりテンポのいい45分のテレビドラマの
方が私は好きですね。
で、この白と黒の・・・。あ、こういう話だったんだ。
銃で決着つけるのがやっぱり好きなアメリカ人。
派手だしね。

白バラの祈り/ゾフィー・ショル、最期の日々

ナチスを扱った映画って、だいたい面白くないんだよね…。
興味はおおいにあるのですが。
何と言うか、「ナチス=悪」というのが不文律になってしまっていて、そこは絶対に崩せないというのがもう、面白くない主原因かと。
結果は歴史が決めてしまっていて、その範疇で何を言っても後出しジャンケンみたいなんだもん。

主演の女優さん、凄い緊張感で意思の強い眼差しが印象的なんだけど、いかんせん全く可愛くない
真面目な映画にこんな言い方は不謹慎かもしれないが(と、思わせる空気感が嫌い)場面転換も殆ど無くアクションも無く、ほぼ出ずっぱりのヒロインだから、少しは好感の持てる顔でないと私はきつい。
でも演技は素晴らしかったと思うんですけど、ええ。

そんな中、尋問官のオジサマと看守の女性は人間らしくて、砂漠の中の小さなオアシスでした。
だいたい裁判官のように描かれるよね。もちろん裁判官も大熱演で良かった。
あの後から捕まった仲間の人が可哀想だったな。
兄貴、何が「僕が責任を取る」だ!バーカ!!
こういうバカが私は嫌い。おまえが死んで済む問題かどうか考えろ。どう責任を取るというのだ。
信念のため、正義のため、人命のため。命を賭けた(捧げた)人々には申し訳ないが、甘い計画で国家に歯向かってしくじって、止めた同胞を巻き込むとか最低だわ。
当時ナチスの実態が、どこまで知られていたかは分からず、彼らも死刑までには猶予があると思っていたようなので、一概に責められないのは分かるけれど。
しかも戦局はドイツが不利、そろそろ連合軍が…と、当てにしていたのなら、なぜもう少し慎重になれなかったのか。
大学にビラを撒いてどうしようと言うのか。
兄妹に関しては、あまり同情も惜しむ気にもなれないのだが。
しかしなにしろ彼ら、あまりにも若いからね。

あ、両親との別れの後、廊下で佇む尋問官に泣き顔を見られて言い訳するところは良かった。
そんなプライド?とも思うけれど、あそこで初めて泣いたんだよね。まだハタチをちょっと出たばかりの小娘が、「親と別れるからよ」死ぬのが怖いんじゃない、後悔はしていない、と。
呆然と見送る尋問官も良かった。
どこまで記録に忠実かは分からないけど、あんなビラ撒いたところでどれ程の威力があったのか(むしろ実行者を死刑にした事で反対派に火を付けたような気もする)、裁判も弁護士は殆ど発言もせず、即日死刑執行って尋常じゃない。
非常時とはいえ、恐ろしい政府であった事だけは確かだ。
しかし昨今の我が国の状況を見ていると、あながち対岸の火事ではないと言うか、むしろよく似た状況に追い込まれつつあるのでは、と感じてしまう。
いざ対策を、となる事がもしあったら(もはや手遅れでなすがまま、かもしれないが)、私はどの立場に立つだろうか?

最後に、銃殺と思っていたらギロチンかい!?
と、そんなところに新鮮な驚きを感じてしまいました。
そりゃいちいち銃殺はしないかな。

シング・ストリート 未来へのうた

80年代アイルランドの青春音楽映画。
他愛ないと言えはそうなのだが、苦しい生活の中でバンドを始める主人公の少年達が初々しくいじらしく、なにより私の青春時代の空気感に重なるのが嬉しかった。
使われる楽曲もオリジナルだそうだが、当時のノリを守りつつ、なかなか良曲揃いで楽しい。

コナー少年の幼さに対して、わずか1歳上設定のヒロイン・ラフィーナは老け過ぎでちょっと興醒め。
最初は手の届かない大人びた美女でも、途中慣れ親しむうちに可愛らしく幼い横顔が垣間見えたりすると胸きゅんなのになぁ。
最初は化粧が濃いせいかと思ったけど、ナチュラルメイクになるとますますだもん。時々笑顔が可愛かったりするんだが、うん。
ずっと大人びて、と言うよりおばさんぽくて、もう少しピュアな印象が欲しかった。

コナー君や楽器万能のエイモンは、とてもチャーミング。
特にコナー君は場面によって顔の印象が全然違って見えて、まだ顔が固まってないお年頃なのか?何度も新鮮な驚きを感じた。
歌はイマイチだったかな…まあ、いいんだけど。
最初はクセが強かった小さいのや、アカラサマに人数合わせ(及びポリコレ対策)の黒人等、他のバンドメンバーをもうちょっとフューチャーして欲しかったな。
せっかく家族やバンドメンバーに個性派が揃ったのに、ほぼ恋愛物語で終始してしまったのは残念だ。

中盤の、体育館にダンサーを集めて歌うコナーの脳裏に浮かぶイメージ映像が、私的一番の盛り上がりシーン。
横暴な校長がトンボ返りでキメ、不仲な両親は満面の笑みで見つめ合い踊る。引き籠りのお兄ちゃんもかっこいい!
音楽や画面の質の高さに加え、そこに至るまでの彼の現実が寂しすぎるので、本当に胸が痛んだ。
本来なら終盤のライブシーンがハイライトになるべきなのだが。
確かに嫌われ者の校長のお面をバラ撒いて皆に被らせ、悪口を可視に乗せて歌うというのは盛り上がりそうで楽しそう。若い子なら一度はやってみたいかも。
それより恋愛要素に流れてしまったのも、ちょっと残念だ。

ラストは…私は『小さな恋のメロディ』だと思っている。
多分すれ違った客船に通報されてお縄かなと(笑)。
それでもいい、それでも彼らには未来がある、とも思っているけど。

それより心配なのはお兄ちゃん(ジャック・レイナー、なかなかハンサム)だよね…。
あんなに物知りで優しくて、色々才能もありそうなのに。
子供は親を選べないと言うけれど、離婚は仕方ないにしても、その後の子供の扱いが信じられない(日本ではちょっと考えられないよね?)。
お兄ちゃんの「お前が生まれるまで俺が一人であの親を引き受けてた」みたいな話は説得力があって悲しかった。
良くも悪くも、上の子は親の影響をダイレクトに受けるからね。その親がクズではね…それでも愛しているんだよね、子供は。
本当に選べるならあんな親は絶対に選ばないわ…。

シンクロナイズドモンスター 

タイトルと、アン・ハサウェイ主演という勝手なイメージで、他愛無いコメディ映画かと思って観たら全然違った。
他愛無くもなければコメディでもない、思わぬ不快指数の高さにとまどいつつ、途中ウトウトしてしまい、ますます意味不明に。巻き戻して観ましたよ。
巻き戻さなくても良かったかも…。
アン・ハサウェイは何故この映画に出たんだろう?

アイディアとしてはシュールで面白いと思ったんだけれど。
もうちょっと気持ちの良い展開にできなかったものか…。
自分探し系の物語の場合、冒頭では主人公は問題を抱えているのは当然と言えばそうなのだが、このヒロインはどうにも好きになれない、と言うか信用できなさ過ぎで引いてしまう。
ラストショットは何だか「全てお酒のせい」と言いたげな締め方で、そうじゃないでしょ、と。
結局幼少期からサイコパス気味だったオスカー君も、最初からなんだかキモくて(いやそれでいいんだが、イイ奴ポーズ期間が長過ぎてモヤモヤし通し)居心地が悪く、終盤までがとても長く感じた。
それにしてもグロリア、オスカーの母親が亡くなってる事を忘れてたのは…ヒドい……(泣)ずっとああやって傷付けて来たんじゃないかなと思ってしまう。

バーの模様替えの件も、いきなりやって来て口を挟んで昔の内装部分を復活させてたけど、アレは何の意味があったんだろう???
あっと言う間に花火で焼けちゃったし(笑)元カレに笑わせるため?
二人は合わないという描写にしては、元カレにくっついて帰ろうとするし。
本当に何を考えているのか分からない女だわ。
まあ何の確証も勝算も無いまま、単身ソウルに飛ぶ勇気と行動力は褒めてつかわす。

「貴方は貴方が嫌いなのね。私を自分のものにしたいのかと思ってた、でももっと単純だった」
え?そう???
むしろ複雑だと思うんですけど。深刻だし。
ラストでTVニュースに映ったソウル市街に立つグロリアを見て、イケメン君のジョエルは微笑む(ハート)が。
いっぺん寝た女に友達を夜空の彼方に投げ捨てられて、そのイイ笑顔ですか?
そもそも女の子が目の前で野郎にボコられてるのに黙って見てるだけだし、(顔は可愛いけど)なんなのこの子。
前夜公園で酔っ払ってたからと言って、すぐにソウルの怪獣と自分のシンクロを察してしまうのも物分かりが良過ぎるし。
かくこそかように、納得できないパーツが多過ぎてイライラした。

アン・ハサウェイは綺麗だけど、髪型がかなり鬱陶しい。
顔の余白ゼロ!(笑)ちょっと怖い
でも、あんな女が田舎町にやって来て、一人でやる事も無い、となったら、田舎の男どもが大騒ぎだろうな、とは思う。
もっと騒ぎになりそうだけど、その辺も狭い範囲しか見せない演出で期待はずれだった。
オスカーはイヤな役だったけど、演じるジェイソン・サダイキス君は好演だった。
アルコールで脳が溶けて来てるんだろうけど、素朴で親切な田舎青年と、タチの悪い凶暴な酔っ払いとの間を行き来する様子は私には痛ましく見えて、周囲の"友人"とか(イケメン君とかね)ももう少し何とか…と思ったし、だからこそラストでは、何らかの形で救って欲しかった。

多分予算もそんなに多くなさそうなので仕方無いが、怪獣シーンがほぼ暗くて見辛く、せっかくの怪獣vs.ロボットのシーンも良く見えないのが残念。
普通はこういう映画のヒロインは、名も無き顔と脚が綺麗なだけの駆け出し女優が演るモンだよね…。
本当に色々と、ただ残念な映画だった。

シンシナティ・キッド

基本的に、ギャンブルにもギャンブラーにも毛程も魅力を感じないので、なんとも。
古典の名作というのは聞いていたので観てはみたが、どうにもテンションが上がらないまま、ポーカーのルールにも詳しくはないし。

アン・マーグレットってこんなに美人だったんだ。
正直、悪女とは言っても定型通りで人物像は薄い印象だったけど、美人でグラマラスなので十二分に役割を果たしていると思う。
端正なお顔に悪そうな表情がとても良い。

ストーリーは本当に、思った以上にスタッド・ポーカーをやるだけの話
絵札が揃うと強いとか、エースはもっと強いとか(笑)その程度の知識では楽しみ切れなかったかも。
でも詳しかったとしても、どうなんだろ…スポーツ中継みたいなんだもん(スポーツ中継全般嫌い)。
そしてラストの、あの呆気なさ。
えっ、マジ、終わり!?
と、思ったところで畳み掛けて来る黒人少年。誰だおまえは(笑)。

スティーヴ・マックィーンはかっこいいのだが、いやむしろかっこよすぎて食い足りないと言うか。
ギャンブラーでもかっこいい、勝負に負けてもかっこいい、浮気がバレてもかっこいい。
こういう人なんだからしょうがないんだけど、あまりにずっと淡々と飄々とかっこよくて飽きてしまった、ご免なさい。

ディキシーランドジャズ溢れる街の様子とか、豪華なホテルの内装なんかはとても良かった。
親友のはずのシューターの扱いも雑に過ぎるし、どうなるんだろうあの人この後…。
ベテランディーラーと言うより賭け場の重鎮のようなレディ・フィンガーズと、不動のチャンピオン"ザ・マン"こと(本当に不動だった笑)ランシー・ハワードのシニア二人はとても素敵だった。

シンデレラ(2015)

まあなんと言うか、ほぼ予想通りの"21世紀版『シンデレラ』"だったわな(期待できなかったという意味で)。

予想を下回ってたのは、ヒロインの女優さんが美しくも可愛くもなかった点。
これは無論彼女だけのせいではなくて、演出や美術効果、脚本もよろしくなかった、という意味だけど。
一番ガッカリしたのは、どう考えてもこのストーリーでヒロイン一番の見どころであるはずの、舞踏会でのドレス姿
色がブルーというのは昔のアニメと同じで、何か決まりごとであるのか?という感じ(元々の「母の形見のドレス」はピンクだったし)なんだけど、デザインといい質感といい、すごく普通
その上髪をアップにすらしないで、殆ど普段着感覚で着せてしまってる。
おかしいよね〜お城の舞踏会に行くのにあんなカジュアルで。しかも「あの方はどちらのお姫様!?」と注目を浴びるはずなのに。って言うか魔法が介在しているのに、ちーともロマンティックじゃない
『シンデレラ』としては亜流と言うか邪道な内容だけど、『エバー・アフター』の舞踏会ドレスは素敵だった。もちろんドリューちゃんも最高にチャーミングで、まさに魔法が掛かっていた、あのシーン。
元々たいして面白い話でもない(笑)んだし、ココでキメなくてドコで引っ張るのよ!って思うんですけど。

反して、継母役のケイト・ブランシェットが恐ろしく美しくて、ドレスのセンスもとても良い。
根性悪の娘二人もたいした容姿ではなく安っぽい服を着せられて、これはシンデレラ含め若い娘は皆ケイト様の引き立て役ではないですか。
ユダヤの金貸目線の『ヴェニスの商人』が上演される世の中だから、継母が主演のシンデレラでもいいんだが、それにしては話の運びはシンデレラフューチャー。
きっとそうだろうと思ったけど、やはり継母は魔女設定を解除されていて、タダの勘定高い未亡人になっている。
あーあ、見たかったな〜ケイトブランシェットの魔女。
まあ小賢しい美人の年増をリアルに演じていて、それはそれで見応えはあったんだけど。
風と共に去りぬ』やら『赤毛のアン』なんかで、確か「ブロンドにグリーンは似合わない」という白人圏の常識?が出てくるんだけど、ブランシェットは素晴らしくグリーンが似合うよね?
ブロンドじゃなく赤毛???その辺りが良く分からない。

そして、近年のアメリカ映画の鉄則として、「一目惚れだけではNG」もキチンと厳守されている。
王子とエラ(=シンデレラ)は舞踏会以前に出会って(運命の出会いは自然に訪れる)おり、会話も交わして(恋は見た目だけじゃない)いる。しかもエラは王子の正体を知らず(身分・財産目当てではない)王子に対してキツい事も言う(もちろん女性は男性に従属しない)。そして馬を颯爽と駆って(女の子だからっておしとやかなばかりじゃないわ!)見せる………と。
いいのよ。どれを取っても全然悪くない。
でも、童話に現代的な価値観で味を付ければ付ける程、整合性や道徳観念を埋め込むほどに、ファンタスティックから遠ざかる
平たく言ってしまえば平凡な出来のロマンス小説に、どんどん近付いて行く。

まあ愚痴ばかり言ってても不毛なんで、褒めどころを。
そりゃあなんたって、魔法でカボチャが馬車に、ネズミが馬に変身するCGシーンはシンデレラ史上最高(当たり前だけど…)!戻るシーンも本当に楽しかった。
でも本当に、こういうモノを具体的にキッチリ見せてもらえるのは、素直に良い時代になったものだ、と思う。
最新のCG技術にディズニー映画らしいユーモアも交えて、こんな脇役でもちゃんとキャラクターが立っているのが楽しい。
馬車のデザインもとても綺麗で素敵だった。
舞踏会の大広間や群衆、シンデレラの家の外観や内装、庭の緑も美しい。
そしてやっぱりケイトさんの継母が美し過ぎて、悪代官みたいな人と追放されたけど、なんか一緒に逞しくやって行きそうで良かった。
まさか元話通り「真っ赤に焼けた鉄の靴を履かせて踊るのを見物」はしないと思ったけど、継母に追放を言い渡すエラの「貴女を許します」と言う顔がドヤッてて笑ったわ。

アニメ版と違い、良い魔女は一人きりだったので、ラストのドレスの色は変わらなくて残念。
あれCGで見たかったなぁ。

シンデレラマン

「ミルク代が…」と、言うインタビューでのラッセル・クロウの台詞が印象的で、家族愛の映画みたいに宣伝されていたけれど、違う。
そんな小さな話じゃーないの、だから良い。
人が人として生きるために必要なのは、パンやミルクだけじゃない。それすらも無ければ動物としても生きられないんだけれど。
その先へ命懸けで踏み出して行く、ボクサーの姿が美しい。

大恐慌時代、失業、貧困、飢え、家族崩壊の危機。
それにしてはレネー・ゼルウィガー演ずる奥さんや可愛らしい子供達は血色も良くプリプリしちゃってて、着てる物も小綺麗過ぎるんだけれど。
まあ、いいのかなぁ、映画だから。見た目良くした方がいいかしら?
とは言え、レネーの演技は相変わらず素敵。ラッセル・クロウは無論の事。そしてそして、意表を突かれて大感動、マネジャー役のおじさん、ポール・ジアマッティの、名演技!泣かされた〜。
私やっぱり、こういう正当派の映画って好き。地味かもしれないけど堅実でキッチリ作ってあって、奇をてらう事無く良心的にスッキリまとめてあって。(いや、おバカ映画も好きだけどさ…)
まあ、実話が元になってるって事で、そう無理矢理盛り上げる訳にいかない、ってのもあったんでしょうけれど。
それでも、シッカリしたテーマ性、奥行きある人物描写は、そこらの「実話」とは一線を画している、と思う。

ボクシングに関しては、元々興味が無いんで良く分からないんだけれど、ラッセル・クロウはけっこうサマになってるように見えた。
でも急にレントゲン写真みたいなのが出て興醒めだったな、『必殺』か『北斗の拳』だっての、今まで上品だったのに、いきなり少年ジャンプ的表現で「????」。
後に話の展開に関わる訳でもなく、ただハラハラさせるだけ?あれは、蛇足。
実話を謳いながら、対戦相手の表現がえげつないのもちょっと抵抗があったな。実在のベアさんがお気の毒。

個人的には「女房に出しゃばらせるのか」みたいな事を言って挑発する対戦相手に「すごい女だろ?」ってトコが好き。ラッセル・クロウの表情が色っぽいです(笑)。

新トレマーズ モンゴリアン・デス・ワームの巣窟 

あ、騙された(笑)。

大好きシリーズ『トレマーズ』とは別物の、どうやらTV放送用のドラマだったらしい。
かのレベルを期待すると肩すかしだが、まあそれなりに楽しめた。
"デス・ワーム"が小さい(最後に登場の"女王"はちょっとデカいが)のもあるが、それ以前に登場の仕方に"タメ"が無くて、ヒョロッと出て来てパックンしちゃう、何となくアッケラカンとして工夫が無いと言うか。
思えば『トレマーズ』は、その辺りの見せ方、見せなさ加減が、絶妙だったんであった。

主演のトレジャーハンターの兄ちゃんも、美人女医も、なかなか良かった。
工場長とか医者仲間、保安官なんかも、それぞれ頑張ってた。
話がちょっと(こういうモノとしては)込み入ってて、面倒だったかな?
デス・ワームと電気の関係も、言葉の説明だけでもったいなかった。
せっかくの"チンギス・ハーンの墓"設定も、蓋を開けてみれば金貨って…うーん。そりゃ金貨が降って来れば嬉しいけど。
もうちょっと主演がワームと闘ってくれたら盛り上がったのかな。

あと、冒頭の「山羊の事件」の真相が知りたくてならないんですけど、ワタシ。

「す、せ、そ」へ