か・きで始まるタイトルの映画

カーズ

大好きpixar作品ではあるが、車が主役、カーレースが題材と聞いて敬遠していた。
案の定と言うか、冒頭のレースシーンの長さ、主人公ライトニングの傲慢さにウンザリしかけたが…いやいや、このクソ生意気な小僧が成長するのだ、と自分に言い聞かせてやり過ごす。と、やはり思った以上の感動がその先に待っていた。

田舎町に取り残されてからの展開はもう、車とかどうかなんて全然気にならなくなる。
毎度の事ながら、愛すべき脇役達の輝きたるや。脇役好きの私には本当に、たまらない。
おトボケで純粋な人懐こい親友、人見知りでお花が大好きな消防車、隠遁する老カーレーサー(声:ポール・ニューマンでっせ!)、色っぽくて気のいいカフェのママ。そして超絶愉快で陽気なフェラーリ好きのイタリア男(フィアット!)とその相棒の可愛らしいフォークリフト。
恋愛要素も程良く無理が無くて、ヒロインも車である事を忘れてしまう程に可愛くて存在感がある。
二人の"ツンデレ"からのデートシーンは、文句ナシの青春映画。ライトニング目線になり切って、サリーの流し目にドキドキした(笑)。
レースに戻れば、トラックのマックに泣かされ、ライバルでもある大先輩のキングに胸打たれる。

私は車に興味が無いので良くは分からないが、車好きにはコタエられないマニアックなこだわりが詰め込まれているであろう事は、想像に難くない。
ボディのツヤや映り込み、デフォルメされているのに力学に忠実な車体の浮き沈み、それぞれ個性的な排気音。キャラクターの性格と車種のイメージも、おそらく考え抜かれているのだろう。
具体的には分からなくても、ディテールを大切にしてるのは伝わって来るし、そういった丁寧で愛情深い描写こそが、作品世界のスケールに繋がるのだ、と思う。

とてもアメリカ映画らしい、お手本通りの展開なので、優勝して万々歳だと思って見ていたら、意外なラストシーン。
でも、テーマに添う事を思えばベストな、そして勇敢な選択だと思った。
こういうのって、湿っぽくやると最悪なんだけど(邦画に良くあるね)あくまでカラリと爽やかで、それまでの経過を共に過ごした上で見ると、本当に自然でストンと納得できる。
またキングとその奥さんがね、いいのよ。泣けたわ。
"親友"との約束を果たすところも、寂れた田舎町を再生させたいという選択も、本当に心から嬉しかった。
これも毎度ながら、車だけでなく、背景の美しさにも説得力があり、同じ空間を共有したかのような思いに浸れるのが素晴らしい。

この『カーズ』には続編『カーズ2』、スピンオフの飛行機版『プレーンズ』というのもあるそうで、さらにその続編の制作も決まっているんだとか。
特に急いで見たいとは思わないけれど、機会があれば逃すまい、とは思う。絶対水準はクリアしてるもん。

カーズ2

Pixarの大ファンだし、『カーズ』が思いの外面白かったので、安心して臨んだ本作。
うーん。私史上初のPixar駄作に遭遇してしまった…。

あ、駄作というのは違うのかな。
元々車に興味の無い私は、そもそもこのシリーズの客ではないという事でしかないのかも。
前作が青春ロードムービーだったのに対して、続編をスパイアクション設定にしてしまうという大胆さは評価したい。
この、いちいち車で再現されるスパイアクションの数々や、日本やイタリアを舞台に繰り広げられるカルチャーショックをも車で丁寧にやってみせる辺り、ハマる人なら大受けなのかも。
私は…ひたすら退屈してしまって、早く終わる事を祈ってしまった。Pixarなのに!信じられない。

主役が前回のライトニングから親友・メーターに代わったのだが、こいつが激烈にウザい
前作では間抜けだが純朴で心の綺麗な田舎者、という立ち位置を見事にこなして過不足なしだったが、今回は世界中を移動しながらどこにいても馴染めない邪魔者のうすらバカでしかなかった(泣)。殆ど知恵遅れレベルで見るのが辛くなって来る。
007ばりのスパイも女性の同僚も、特に魅力的な性格付けも無く、なにしろ車だしアニメだからハードなアクションも「かっこいい〜!」とはならず。

絵だけ見てれば楽しい部分もあった。
日本の雑踏、歌舞伎に相撲にカプセルホテル、ロリキャラに過剰サービスのトイレ(こんなのはお目に掛かった事が無いけど)をやっぱり車で再現。
イタリアの…シエナかな?古い町並みも、海沿いの優雅な街も、ロンドンの景色も美しく堪能できる。ただし道ゆくのは車ばかりだけど。

あ、でも、女王が徐ろにアンテナを伸ばして何するの?と思ったら「騎士の称号を授ける」ってトコは笑った。
よかった、褒める所があって。

まあ、考えようによっては、コレがOKなら映画のジャンルの数だけシリーズ作品が作れるワケで、『カーズ ホラー編』『SF編』『パニック編』『難病編』『戦争編』etc.etc…
私はもう、付き合わないと思うけど。

ガープの世界 

あれれ?
公開当時、とても印象的な映画だったのに、見返してみたら、そんなでもなかったな。ふーん?
まあ、20年以上前の映画になってしまったのだから、無理もないけれど。
確かに当時は、*ロビン・ウィリアムズも*グレン・クローズもまだ新鮮だったし、確信犯的シングルマザーも、過激なフェミニスト団体(含むレズ)も、女装で生活する男性も、目新しく感じられた。実写映画にアニメーションが組み込まれるのも斬新に見えた。

アーヴィングと言えば、『ホテル ニューハンプシャー』や『サイダー ハウス ルール』の原作者でもある。
起こっている出来事は、けっこう悲惨で乱暴なのに、何となくユーモラスで淡々とした展開、神ならぬ身である不完全な人間に対する大様で暖かな視線、という点で共通部分は多い。
後はどこまでそれぞれのシチュエーションや登場人物に近寄れるか、という事なんだけど。
主人公のガープ、強烈な過激思想家のママ、ガープの妻、と、主要人物のありようが、いずれもあまり好きになれない。
むしろわき役に愛すべき人々は多く見られて(女になった元フットボール選手とか、ガープ出生の秘密に怒っちゃう牧師とか)、それが独特の暖かいムードを維持しているようでもあるが。
それと全く個人的に、いわゆるブスな女の子に対する扱いが辛くて、スルーしたくなったな。

あまりにも普通に見えてしまうあたり、実は時代の先を読んでいたのかな、という気もする、そういう意味では価値ある映画だったのかも知れない。

 

*参照:『フィッシャー・キング』『ステップフォード・ワイフ』『クッキー・フォーチューン

カーリー・スー 12/3

うわー。
他愛のないコメディとして笑って見てればいいんだろうけど、なんかずっとムカついてたわ(笑)。

まず私、こましゃくれた小さい女の子が嫌い、というのがあるんだけど。
それにしても、この子は幼いから仕方ないにしても、父親のベルーシがクズofクズ過ぎて。
あの女弁護士もなんなんだか。
全然気持ちが分からなかった…。

車に接触したからと言って、臭い浮浪者を自宅に泊めますか???
はぁ!?
危ないじゃん!!!
それに、いくら高給取りでも、あんな二人を養う?服まで買ってやって。
彼氏も全然魅力的じゃないけど、言い分は100%正しいわ。
またあの女優さんが中途半端な美人でな。
もう見てるだけで幸せってくらい美しければファンタジーとして眺めて楽しむけど、そこまでではないし。
いっそもっと年かさのオバサンとか、思い切って醜女だったら、孤独で寂しい女性がフラフラと、ってのも説得力が無くはない。
美人で、高級稼げる職があって豪邸住まい、(全然セクシーじゃなくても)4年も続いた彼氏がいて。
仕事ぶりからはお人よしにも見えないし。
もう最初の一歩が受け入れられず、更にどこかでひっくり返る程のエピソードも無く。

え、仕事辞めちゃった?
のこのこ戻って来るか親父!?
えーそこでキスしますかー???
The end.
あー。

レストランの「嫌味な」案内係にリベンジするのとかも、不快感ばかりで全く笑えない。
臭い客なんか入れられないでしょ。
他人の結婚式に潜り込んで(このシチュエーション、洋画で時々見るけど、割とありがちな事なのか?)ただ飯食べて調子に乗ってスピーチまで。何が面白いのか

致命的なのは娘が全然可愛く見えて来ないこと。
ブスでも可愛い子っているじゃん。別に綺麗でもいいんだけどさ。
ベルーシも全く魅力的に見えなかった。キモ。

けっこう評判のいい映画なのに、ダメでしたねー。
こういうのでホッコリできると、お手軽でいいのにね。

GIRL ガール

え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っとぉ。
奥田英朗原作だよね?????
大好きなんだけど奥田英朗。こういうタイトルの本も読んだ覚えがあるんだけれど。

要潤は面白かった。
向井理も、こういう軽い演技は好きだな。
でも肝腎の女性陣は……………いやいや、問題は脚本と演出だよね。
なんでしょうかこの、ステレオタイプの"女性讃歌"
思わず顔を覆いたくなるようなクサい台詞のオンパレード。頑張ってるからといって異様に硬い女性達の台詞回し。男性を「女の敵」と「女の味方」に分かり易く二分割する安直さ。最初から可愛いくてスタイルのいいのが丸分かりの加藤ローサちゃんをかわいく演出したいだけの素人ファッションショー企画………。
ローサちゃんがピンクのミニドレスを着こなしたからといって、いったい何%の女性が(男性は元より)「そうだよ女の子は皆お姫様なんだ!」と納得するだろうか???バカバカしい
大好きな麻生久美子も吉瀬美智子も、どうにも安っぽく薄っぺら。
香里奈に至ってはもう、褒めようにもガチャピンに似てるねとしか。『しゃべれどもしゃべれども』の彼女は本当に良かったのにな。

正直、なぜあそこまで"女の子"に固執するのか、気持ちが分からない。
「いつでも女の子でいたいの」って、そんなに素敵な事?

 

追記:どうにも納得がいかないので、奥田英朗作『GIRL』読み直してみた。
うわ〜最悪!もちろん映画が。
この原作のナニをどう歪曲したら、こんな脚本&演出になるのだろう????
一冊に納まる個々の短編を繋ぎ合わせて1本の映画にしたのは良い。
最も最悪なのは檀れいの"お光"(彼女がお光だとは夢にも思わなかった!)で、若作りが痛々しいが憎めない仕事の出来る女、のはずが、なぜココにいるのか分からない、仕事すらしてない!タダのタカラヅカになっちゃってる。
どうにもこうにも、「若くいたい女は絶対正義でナニも弱味は無い」という事にしたいのか。
信じてもいない事を無理に主張しようとするから、こういう人をバカにした真似ができるのだと思う(怒り心頭である)。

カイジ ファイナルゲーム

大人気シリーズなのは知っていたけど、どうにも見る気になれずにずっとスルーしていた。
ちょっと事情が重なって、これを最初に見る羽目に。
すでに出がらし状態のようなので、これで評価するのは申し訳ないんだけど。
でも多分、だいたいの傾向は掴めたと思う。

そもそも私はギャンブルが嫌いだ。
これで話は終わってしまうんだけど(笑)。
こういうの好きな人が一定数いるのは、分かる。
底辺の暮らし、恵まれた人への不公平感、殺伐とした世界観にえげつない勝負事。

藤原竜也は程よいクズっぷりが非常に板について、流石の主演ぶり。
だらしないのに賢い、クズなのに行動力がある。
他のキャストは…伊武雅刀は良い事するように見えないし(笑)女の子はうるさいし、天海祐希は大根だし。
いやご免、大根なら福士蒼汰君が圧倒的だったわ!やっぱり下手だったわ!でもスラッとして見た目は素敵。惜しい!

"勝負"には色々工夫を凝らして二転三転、騙し騙され出し抜き蹴落とし、と色々やってくれるんだけど、結局全部セリフで後出し説明しちゃう。
多分コレが好きな人には水戸黄門的に良いのだろうとは思う。
そしてラストも、どうにも理不尽ではあるが、多分カイジ君本人も、本当はお金なんて欲しがってないんだよね…と、妙に納得してしまう。

なるほど世界観は確率していると思う。
どうせならシリーズの搾りカス状態の本作よりも、香川照之とかが活躍するヤツを見たかったな(しかしこれ以上観る気は無い)。

怪盗グルーの月泥棒

"ミニヨン"だけは何となく知っていたものの、殆ど予備知識も無く観始めて、まず主人公"グルー"の造形デザインの気持ち悪さと、吹き替え版の鶴瓶の台詞の硬さにゲンナリしたんだが、話が進むにつれて引き込まれて、なかなか楽しめた。
ミニヨン達はとっても可愛い。

「月を盗む」って何よ???
と、思ったら、なんだかドラえもん的発想で、光線銃で小さくして持ち帰る、と。
ちょっと欲しくなった、掌に乗る月。
敵と言うかライバル役がショボ過ぎて、ちょっといじめっぽかったな。
まあ、子供向けらしく、むごい事は慎重に回避してはいたけれど。

3人の少女達が、それぞれ個性的で魅力的。
優等生の"長女"に、ヤサグレた"次女"もいいが、特に"末っ子"が天真爛漫で可愛くて、(絵的にはあまり好みでないにもかかわらず)目が離せなかった。
施設の偽善的なおばさんも気持ち悪くて良かったし、グルーのお母さんのキャラクターも強烈で面白かった。
犬の造形も凄かった…犬に見えないけど。深海魚か何かかと思った(笑)。

子供達と馴染むのが簡単過ぎたのが物足りなかったが、多分「子供は可愛いもの」というのが大前提なんでしょう。実際この子達は可愛いし。
「お父さんと認めたワケじゃない」とかね、誰もお父さんになろうなんて思ってないのに、いじらしいったら。
でも後半は、本当に見事なお父さんっぷりで、それもまた微笑ましかった。
お休みのキスに列をなすミニヨン達も可愛かった。
…でも施設育ちで半ば虐待されてる少女達が、バレエのレッスンに通わせてもらっていたとは…ちょっと驚いた。しかも発表会て。おまけに白鳥の湖て…(上級)。レッスン代はドコから???
学校の学芸会とかじゃダメだったんでしょうかね?

アニメーションらしい、ピラミッドや宇宙や、ミニヨンや、楽しい絵柄がいっぱい見られた。
キャラクターはクセが強すぎて(デフォルメが好みじゃなくて)グルーもグルーママも最後まで抵抗が残ったけれど、それなりに生き生きと動いていて楽しかった。
天井閉め忘れて飛び出しちゃったミニヨンが、その後も何度も出て来たりといった"ねちっこさ"が、とっても私好みだ。

しかし奴らの前身がバナナだったとは……(汗)。

海底47m

マシュー・モディーン!?

舐めてかかったら意外と面白かった。怖かったし。
オープンウォーター』ほどのモヤモヤ感は無く、そこそこエンタメ的サービスもありつつの、けっこう真面目に頑張ってる感に好感を持ちました。

"美人姉妹"は確かに美人だし、キャラ設定も対照的で良いのだが、あのダイビング装備ではどっちがどうやら(笑)
せっかくの美人さんを揃えたのに冒頭以外ほぼ顔が見えないのは残念だが仕方ない。
水中で喋らせようと思ったらあれしか手が無いよね。
代わりにとばかり脚は丸出しだけど。

ダイビングやってたから、こういうのはリアルに怖い。
水中でふっと見たら隣の人の目がイッちゃってる、なんて経験もしたので。タンクのエア切れも講習で体験した。
サメは確かに、まれに事故の話も聞くので侮ってはいけないが、普通はそこまで血に飢えている訳じゃないので、危機をサメだけに絞らなかったのも良かった。
そういう点でも『オープン〜』もそうなんだけど、あちらは水面だったから殆ど動きが作れなかったのに対し、こちらの美人姉妹はなかなかアクティブで、裏目裏目に出るにせよ退屈しないし手に汗握った。

ラストの三段落ち?は、そんなワケでだいたい予想が付いてしまったけど、見応えはあった。
女性二人、バカンス、海、と来たら、いくらでも低俗路線に行けるのに、全くそういう気配が見えない。
意外と真面目に作ってる映画だし、それで十分楽しませてくれました。

CHAOS カオス

うわ。
本当にカオス(笑)

うん、真犯人はいいんだけどね。
けっこう丁寧に組んであって、ストーリーとしてなかなか面白かったし(一部難しかった…)いいと思う。
…でもなぁ。
私は堅苦しく考え過ぎなのかな、やはり悪い事をしたら報いを受けて欲しいのよ。
あそこで終わって「若いうちに良い勉強をしたな」で納得はできない…むしろ納得してしまう程の説得力があったら、傑作になったと思うけれど、残念ながらそこまでではなかった。

ライアン・フィリップ良いね。
クラッシュ』でも『クルーエル・インテンションズ』でもいいなと思ったのに、顔と名前が覚えられない(笑)。
普通にハンサム君だからかな?
でも今回も、事件によってドンドン表情が変わって行く様子がシッカリ見える、良い演技だったと思う。
なんか中盤「あれ?」と思うくらい、人が変わったよ。

ジェイソン・ステイサムも好きな部類の俳優さんなんだが、何と言うか、この役をやるにはスター過ぎたと言うか。
だってあのまま退場と思わないもん。
ぶっちゃけ、あそこで真相に確信を持ってしまった。その前から「だったら面白いな〜」と思って観ていたんだけど。
そう、ジェイソンは後からちゃんと言い訳できる、良い芝居をしていたのよ。
でも『エグゼクティブ・デシジョン』のセガールじゃあるまいし(笑)。
(ちなみに、あのセガールを見ても「また復活するさ!」と信じていた人を、私は複数知っている)

まあ、世の中には『守護神』みたいなヘンな映画もあるワケで、メインと思ってた一人称のキャラが途中退場して他の人物が突如一人称になるような事もあるワケなんだが。
アレをやるなら、やはり最初からライアン君演ずるデッカー刑事目線で通すべきだった、と思うんだよね。
…誰目線とか、一人称とか、そういうのって職業病の一種?普通は気にしないモンなのかな???
その点と"カオス理論"がこじ付けっぽい事を除けば、けっこう楽しく観られる映画だった。
ただラストがカオスだからな(笑)。

鍵泥棒のメソッド

とても評判の良い映画なので期待して見たら、期待通りとても面白かった。
いつもこうあって欲しいものだ(笑)。

堺雅人、香川照之は、安定の巧さだが、苦手だった広末涼子がいつの間にかすっかり女優さんらしくなっていて感無量。
ちょっと頓珍漢で堅物な女性像にはリアリティがありチャーミング。「あなたなら、誰でも結婚したがります」と言う香川の台詞にも、本人の主観込みである事を含め、深く頷いた。
荒川良々もイイ感じで気持ち悪くて良かったし、なにしろ私は森口瑶子さんが大好きだ(笑)。

ミステリー自体が調度いい加減にリアリティの範疇にある上に、ミステリーと恋愛の比重が絶妙で、とかく安っぽくなりがちな"記憶喪失"ネタでも、こんなに面白く出来るんだと嬉しくなった。
大家さん、良々の子分、ヒロスエの家族、アパートの住人等々、脇役端役までが、いちいちちゃんと面白い。
大きくなりそうでならないストーリーも、邦画というスケールにはピッタリで、無理無く見られた。
「代わりに人生もらうぞ」なんて台詞も、とてもいい。
脚本が緻密で、細かな伏線も綺麗に張られていて、車の警報がグッドタイミングで鳴り響くラストシーンは最高。
蛇足になりがちな"おまけ"シーンも、ちょうど欲しかったタイミングで簡潔に見せてくれて(猫可愛い!)、本当にいい気分でエンドマークを迎えられた。
キューンキューンキューン!(浮かれてます)

隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS 

まあ意外と、ソコソコ面白かったけど。
えーと、隠し砦ってドコだっけ?三悪人て誰とダレとだれ???
ってくらいには集中力を欠く内容でした(笑)。
劇団☆新感線ガラミのよしみで、けっこう楽しめたんだけどさ。

めちゃくそ強くて濃い阿部ちゃんは良かった。
松潤は、元々はあまり好みじゃないんだけど、顔がずっと黒かったせいか、いつもの暑苦しさを逆に感じさせなくて、意外に好演。(その後、いくつかTVドラマを真面目に見てみたら、けっこう良かった、今までゴメン松潤。顔が好みじゃないのよ)
そして宮川大輔は、実は観終わって人に指摘されるまで分からなかった!どこぞの劇団の俳優さんかと思った。すごく自然で軽妙だった。
松潤共々終始顔が黒くて、山の民とか言うよりサル二匹、って感じだったけど、サルは二匹とも良かった。
つまりアレだ。
姫だよねorz

まあ、それ以前に世界観の甘さと言うか幼稚さがね、真面目に考えると受け付けない部分はあるのだが。戦後教育は失敗だったね、みたいなヌルさがね。
なんか急に口説いちゃってるし。
でもダースベイダーとか出て来て(違う)楽しかったしさ。いいシーンもいくつかあった。
祭りの場面なんかモロ劇団☆新感線テイストだし。あ、古田さんの鬼畜っぷりも良かった。

チャン・ツィイーの姫も気品が無いと思ったけど、コレに比べりゃ全然姫だわ。
黒沢版の雪姫も、すごい棒読み台詞で無表情だったけど、かえって姫っぽい近寄りがたさがあった。
長澤さんは…う〜この人本当に、面白くない
顔も立ち姿も平凡過ぎて。何度か良いシーンになりそうなのに、姫が喋ると現世に引き戻されてしまう…。なんか団地サイズ。いや背は高そうなんだけどね、存在感とか芝居とか。顔立ちとか。
山ザルに簡単に呼び捨てされちゃっても文句は言えないわ。
台詞回しはもう期待しないとしても、表情もボンヤリしてて『プライド』のステファニーを思い出しちゃった(ステちゃんはキライじゃないよ、ちゃんと姫だし)。怒ってんだか喜んでんだか見ただけじゃ分からない(笑)。いや状況で何とか判断したけどさ。

全体的な軽さやユルさは欠点でもあり長所でもあると思う、見易かったし分かり易くて楽しかった。
姫だよ……残念。

かぐや姫の物語

長いよ!!!!

昔話なんてモノは、おおまかな骨格みたいなモンであって、そこに肉付けして一つのストーリーにするというのは分かるんだけど……肉、付け過ぎ。

押さえた色合いの絵は綺麗で見やすくて良かった。
背景は(高畑勲の)いつもより薄い色合いでも相変わらず美しい。和紙に描いたみたいな印象で内容にも合ってたと思う。
単純化され平面的な人物も、絵巻物的で雰囲気があったし、落ち着いて見られた。その分、いつも通りマンガ的な表情は動き過ぎな気はしたが。
『日本むかしばなし』でも時々、こんな絵柄があったけど、背景にちゃんと合った人物造形をしてたと思う。まあそれじゃありきたりなんでしょうけど。

…けどなぁ。
長い。
そしてキャラクターに魅力が無い。物語は物心付いた頃から知ってる。肉付けはいっぱいしてあるけど、そんなに美しいお肉じゃなかった。普通。ってか俗っぽい
俗っぽいなりに、姫の美貌が出世に繋がると目の色変える爺さん(養父)とか、それに逆らわないまでも一環して態度を変えない婆さん(養母)の対比は面白かったが。
求婚者に無理難題を要求する件も、姫は性悪で無いという印象操作がキッチリ成されていて苦労の跡が伺える。これは良いのかどうか微妙なところだが。

あとアレだ、姫がとっても庶民的で、変な仇名で呼ばれたり(当時の女性は基本仇名呼びのようだけど)地域の子供達と野山駆け回ったり、ミョーに大衆的でな。
まあ育ちから言ったら庶民的で正解なんだろうけど、月出身と気付いた後まで庶民感。
幼馴染みの男なんていらなかったと思うな…「俺はオマエと逃げたいんだ」「あたしも走る!」とかね。あーあ。
でもって月の件思い出してからがまた長い!

と、思って困ってるとミョーに陽気な脳天気な音楽に乗って、ペロッと雲に乗っちゃってる姫。
この後に及んで地上讃歌。
と、思たらまた、あの脳天気な音楽……あれはなんだ、あれでいいのか???
うーん。
絵は綺麗なんだけどな。

ぶっちゃけ、贅肉は多かったけど毒にも薬にもならない内容で、そういう意味では逸脱が無くて見易かった。吹き替えも特に不満は無し。
何も知らない幼子に見せても、特に問題は無さそう。
…ただあの音楽は……あのポッポコピロピロな音楽は………(当惑)。

崖の上のポニョ 

♪ぽ〜にょぽにょぽにょ♪」というインパクト絶大な歌くらいしか予備知識が無く見て、ビックリした。
ポニョって金魚じゃなかったんだ…………(汗)。

のっけから海の魚を水道水に放り込むし、まあ魔法が介在すれば何でもアリなんでしょうけど。
冒頭の、クラゲの幼生が成体に変わるところとか、とても綺麗で良かった。
地獄の黙示録』さながらに魚型の波を駆けるポニョ人間バージョンのシーンも面白かった。
金魚じゃなかったけど、魚バージョンのポニョは、なかなか可愛らしい。

人間がね……やっぱりダメだ、私。
宗介君は無色透明な印象だけど、両親?を名前で呼び捨て。なんかいかにも、団塊世代が好きそうな胸クソ悪い親子関係だ。
母親の"リサ"も本当にヤな女。いくら田舎者とはいえ、見知らぬ人にいきなり「除草剤撒くな!」と怒鳴りつけ、誤解と分かっても謝りもしない。しかも子供の前で。
保育園の女の子も気持ち悪かった。なにあのリボン(笑)そして憎まれ役とはいえ、見てて不快な程可愛くない。
そしてフジモト…あ、やっぱり声、所ジョージか。下手だよねこの人。タレントとしては好きだけど。『トイ・ストーリー』でも彼の吹き替えが唯一の不満だったわ。
それもあるけど、私は宮崎作品のこういうキャラが大嫌い。なんなんだこの中途半端なナルシーぶり。
声で言うと、リサの山口智子もね。
元々私この人のこと「サッパリを気取った粘着のイタい女」と感じてて、ドラマ『王様のレストラン』なんかはそのイタさがウマイ事機能してたんだけど。やっぱ辛い、見てて(いや聞いてて)恥ずかし過ぎる…このいい加減で年甲斐も母の自覚も無いクセに自分を正当化して胸を張る女、を見事に演じているんだが。
だってさ、嵐が来てるのに、海の近くの家に幼い子供だけ残して外出するか???犯罪でしょ。

ポニョの"妹たち"は綺麗で可愛かったな。
あの巨大な女神みたいな…グランマンマーレ?あれ?なんか絵柄違わない???いきなり手塚アニメのキャラクターみたいになってるんですけど、どうしたんだろ。
話の内容は、盛り上がりに欠ける分いつもの嫌味も少な目で、見易いと言えばそうだったが、リサとフジモトは大嫌い。
そして結末だけど、幼いとは言えポニョと宗介の惹かれ合う過程が見えないので、「あら終わり?」だったな。両親、そんなに大らかに魚を受け入れていいのか。どうするんだこの先…。

ところでこの作品のテーマは、自然なんか破壊しちゃえ!ってこと???
まさかねぇ…でもなんか、そんな風に感じてしまったんだけど。
そりゃあ狂信的な自然保護団体とか、困った人達は現実にいるけれど。

カサンドラ・クロス

公開当時、凄く話題になってたのを覚えてる。
今観ると流石に、合成画面のチャチっぽさや模型丸出しの列車等、気を削がれる部分はあるし、実はけっこう地味な造りだったりするのだが、飽きずに観通せる脚本の巧みさ豪華キャストの好演は充分鑑賞に堪えるレベルだ。

『ポセイドン・アドベンチャー』が1972年、『タワーリング・インフェルノ』が1974年、そしてコレは1976年公開だそうで、何となくこの流れは理解できる。
残念ながら劇場では観そびれたが、かなり昔にTV放送で観て、終盤の列車事故シーンに衝撃を受けた事を覚えている。
(ヒーローが)切り離すか!というのと、ここの描写をこんなにやるのか!!という驚き。
老夫婦や子供や若いカップルが、何も知らぬまま、それこそ情け容赦無く巻き込まれる地獄絵図。
列車というのは(豪華客船等と違い)日常普通に乗っているという事もあって身近な分だけリアルに怖かったのかもしれない。

ソフィア・ローレンは円熟の極みの美しさと艶っぽさだが、もう一人やたらに華やかで色っぽいオバサマがおられる…と、思ったらエヴァ・ガードナー様でした!お見それしました。
そんなワケで列車内のセクシー容量は恐ろしく高いが、悪巧み本部の医師イングリッド・チューリンも恐ろしく美しい。金髪の夜会巻きというのもグッと来る。
なんか熟女万歳みたいになって来た(笑)。
主人公がマッチョなヒーロータイプではなく、線の細いインテリタイプのリチャード・ハリスなのも新鮮(髪型ヘンだけど)。ちょっと面倒臭そうにヒーロー活動をしてる姿はなかなかチャーミングだ。
マーティン・シーンが若い!そして息子にソックリ。リー・ストラスバーグの時計売りの爺さんも哀愁溢れて素晴らしい。バート・ランカスターの悪党ぶりも渋くて見応えアリ。そして若く美しいレイモンド・ラブロック…。

ソフィア・ローレンとリチャード・ハリスの熟年倦怠期夫婦の、知的で洒脱なやり取りが面白く、中盤まで(起承転結の起と承部分ね)の意外と動きのないシーンを飽きさせない。
今でこそ日本でも熟年夫婦の愛情物語が持てはやされるが、公開当時は「外人は凄いなぁ…」的な感想を持った気がする。それくらい、この夫婦は恋人感が強く、それに無理が無かった。
ハッピーエンドも良かったが、あの少女が二人に挟まれてニコニコしてるのは大丈夫かこの子と思ってしまった…多分今後、手厚く守られて行くのでしょうけれど。
70年代のアメリカというのは、やたらとこういう政府謀略物語が多かった(アポロは月に行かなかったとかね…)が、やはり泥沼化したベトナム戦争のせいなんでしょうね。
その中でもこれは、「あるかも!」という程良いスケール感で、列車の路線変更というのもミスで押し通せそうな、そういうリアル感がとても怖い。
全てを取り仕切った大佐も実は哀れなサラリーマン、というオチも味わい深く秀逸だった。

今知ったけど、伊・英・西独制作だったのね。
言われてみれば、ヨーロッパ映画的香り高さがある、かも。哀愁溢れる音楽も素敵。

 

追記 えっちょっと今気付いたけど伊・英・西独制作ってベトナム戦争関係無いじゃん(笑)。
まあ全く無関係ではなく世界中にそういう気分が拡がってたというのはあると思うけど「70年代のアメリカというのは」ってどキッパリ言っちゃってるし…。
知ったかぶり、お恥ずかしい。

風立ちぬ

これで本当に引退してくださるなら万々歳だわ。

何度見ても好きになれないんだけど、毎回評判は良いのでつい見てしまうジブリ作品。
もういい加減、私にとっては見るだけ無駄と分かりつつ。
そして祝福すべきラスト作品は…うん。ある意味集大成的な、退屈さとイヤらしいナルシシズムと、豪華声優陣無駄遣いの通常営業。

何とも無味乾燥な、魅力の無いヒロインは、劇中で「風のよう」と言われるがむしろ空気だった。
それもそのはず、実は恋愛なんかに全然心は置かれてなくて、飛行機マニアの自慰的独り言だから。
「美しい飛行機を作る」とかって、私が好きになりそうな要素なんだけど、ね。
悲惨な戦争をこれでもかと全面に打ち出した『火垂るの墓』が好きなワケでは全くないけど、ここまで綺麗事に終始されるとゲンナリしてしまう。
相変わらず背景は素晴らしく、古い日本家屋や緑溢れる田舎の風景は美しかった。
でも飛行機が主役の割には…飛行シーンには魅力が無いのは何故だろう?

そう言えば私、ジブリ作品の中でもダントツで『紅の豚』が嫌いだったけど、飛行機が絡むとマニア心が暴れて自制が利かなくなるのか、ナルシーっぷりではいい勝負だな。

風と共に去りぬ 


総天然色の大画面にこれでもかと繰り広げられるゴージャスな時代絵巻。情熱的な美男美女、優雅な南部農園生活から南北戦争、火事に殺人に3度の結婚にお産に乗馬事故。ああ、なんてドラマティック。
3時間52分の上映時間が、「えっ、そんなモンなの!?」と感じられる程、この映画は濃厚でギッシリ詰まってて、でも決して飽きさせない、退屈しない。文句無しの大作であり、傑作だろう。
長篇小説である原作を読んでしまうと、各所の説明不足や心理の薄さは目に付いてしまうものの、原作を手引書にしてより深く味わうという楽しみ方もアリである。逆にスカーレットの美しさや数々の豪華な衣装、調度品等は、とても想像力で補えるシロモノではなく、映像というものの迫力は偉大だと痛感させられる。基本的に映画は原作に忠実であり、映画も小説も出来が良いのだから。

最初に観たのは、まだ思春期に差し掛かった頃。
ヴィヴィアン・リーの美しさにひたすら心惹かれ、波瀾の人生に手に汗握った。気の強い女をヒロインにしたがる傾向は、ここで養われたに違い無い。
以来何度もくり返し観ては、そのたび面白く、また新しい発見もあって、まさに私のスタンダードの1本になっている。
そして、最近、つまり中年になって、また久しぶりに観返して、つくづく思った事がある。
なんとまあ、幼稚な二人だろう。

子供の頃には、「なんでスカーレットはあんな軟弱者のアシュレなんか好きなんだろう、レットの方がかっこいいし、お金持ちなのに」と思っていたが。
生きる力はあっても、精神的には子供のままのスカーレット。その魅力と生活能力のおかげで、心の成長無しに何とかやって来れちゃったからだろう。幼い頃に刷り込まれた「王子様」アシュレへの想いを消化不良のまま抱え込んでしまっている。
片や、大人らしく一見クールにスカーレットを支えるレットも、本人も言うように「似た物同志」なのだから、あんなにスカーレットに愛されているのに嫉妬してスネて、娘なんぞを愛情の対象に摺り替えてしまう。
そう。大人になって見返すと、あんなに愛し合っているのに、お互い愛されてる自信が持てない、寂しい子供のような二人、なのであった。
そして幼心にはサエないお坊っちゃまとばかり思っていたアシュレは、どうしてナカナカ、妻子持ちの不倫男の常套手段を駆使してスカーレットを繋ぎ止めてる。時代が厳しかったから、肉体的不倫は無理だったに過ぎない。
さらに、アシュレの天使のような妻、メラニー。
聖女であるという点では今も異論は無い。恋敵があんな清らかな女だったら、さぞや辛い事だろう。
でも、子供の頃は「本当に人がいいんだから、大丈夫か、この人」と思っていたところが、今見ると「きっとみんな分かってたんだろうなあ」に変わっていた。
スカーレットの想いにも、アシュレのだらしなさにも気付いていても、レットとスカーレットが愛し合っているのを知っていたから、メラニーは心安らかでいられたんじゃないだろうか。

ヴィヴィアン・リーの美しさは言うに及ばず(私の中の「美人」の原形かも知れない)、おヒゲのクラーク・ゲイブルおじさまも本当に魅力的。
階段下からスカーレットを(なめ回すように!)見つめる初登場シーンは、目が合ったら妊娠しそう(笑)。
原作者のM・ミッチェルのお名指しというのも頷けるセクシーぶりだ。でも私はレットはもっとゴツイ感じがいいけどな。
戦争前と戦争後で、スカーレットのドレスのニュアンスが違うのも、楽しい見どころのひとつ。でも、終戦直後の泥だらけで髪振り乱した姿もまた、なおさら美貌が際立ってしまうのだから、本物の美人ってスゴイわね。

ハッピ−エンド好きの私としては、あのラストはうーん…、なんだが。
でもスカーレットは、どうせ強く生きて行くんでしょうね、レットが戻ろうが消えようが。

風とライオン

ごめん。
もうね、コネリーがかっこよくてだな。
他の事は取りあえず置いといて、という気持ちになってしまいますわ。

なんか70年代少女漫画のような手触りの、ロマンティックでダイナミック(いい加減とも言う・笑)な冒険活劇+禁断のロマンス。
恋と言ってもキスはおろか手さえ繋がないストイックぶりだし、男は一夫多妻上等、女は寡婦、そういう点では全然禁忌でもないのだが。
ジョン・ミリアスは大時代的大上段の作風で、今時の人達にはあまりウケないのかもしれないが、私は大好き、こういう映画映画した映画

なにしろコネリー演じるアラブの首長、"ライズリ"が魅力的。
男臭くかっこいい上に、オチャメで可愛いところもあり、(白人サイドから見ると)粗野だったり男尊女卑だったり、短慮だったりするのだが、そこも含めてマッスグで正しい、頼もしい、しかし終わってゆくであろう文化を背負った、美しい存在である。
コネリーの仕草や表情が、もう恐ろしくキマっていてセクシーで、チャーミング。
かねがね中東風衣装は男性を三割増しに見せると思っている私だが、コネリーはこちらの血が混じってるとかで(だから白人役だととても胡散臭くそれも魅力的なんだが)本当に良く似合って無理が無い。
お相手を務めるキャンディス・バーゲンも、子供の頃は地味な顔の女優だと思って魅力が分からなかったけれど、凜とした気品と快活なヤンチャさが良いバランスで同居して、とても良い。派手過ぎない顔立ちは、むしろ涼やかで清潔に感じた。

物語は、ライズリと彼が"誘拐"した大使未亡人との心の交流と、世界制覇へ猛進中のアメリカ大統領ルーズベルトと中東との関係の二本の柱で立っている。
ルーズベルトパートは正直、アメリカ人でない私には我田引水に思えて、ちょっと鼻白んでしまったが、相まみえる事は無くとも敵同士お互いを認め合い慕い合う、という構図は、分からなくはないし、ある種ロマンティックだとは思う。
ただルーズベルトがかっこよすぎるし、アメリカの侵略行為が神の摂理のごとく描かれるのは、生理的に受け付けない、と言うか。
ルーズベルトの娘が小生意気で悪そうで、そこがちょっと良かったな。
だらしなく流されるままの王様とか、西郷さんみたいな日本人(意外に良い扱い)とか、顔見ただけで絶対ドイツ兵!なドイツ将校とかも面白かった。
夫人の子供達も、出しゃばり過ぎずいい感じでキッチリ役割を果たしていて良かった。
特に父と早く死に別れた男の子のライズリを見る眼差しは、語り過ぎない分余計に胸を熱くする。

何をどう言い繕っても婦女子を誘拐するという行為は最低だし、その過程で勇敢な友人や罪も無い使用人やらを大量虐殺しているワケで、ここら辺は考えたら負け、かもしれない。
とは言え、冒頭の夫人襲撃のクソ真面目なアクションシーンは本当に見入ってしまった。スタントマンさんグッジョブ!
「女の小指を切って」の件も戦慄した。女はその後手厚くされるのかもしれないが怖すぎる…こういうのを目にしていながら、「殺す気は無いのね」と泣き出す夫人もどうかと思うけど(笑)。
終盤のライズリ救出劇に関しても、あまりに無責任に子供っぽいと言うか作り事過ぎる感はあるものの、まあ楽しかったからいいや、と大目に見る気持ちになる。なにせドイツ将校がアノ顔だし(笑)。
二人が別れる前に、お互いのファーストネームを教え合うシーンがとても良かった。あれはラブシーンだよね。あれだけがラブシーンなのも、この映画の良いところ。周囲は皆分かり切ってるのにね。

『風とライオン』というタイトルはキャッチーだが、その言葉を含む手紙の内容は、正直良く分からなかった。
実際未だに、中東はゴタゴタ続きだし。
それはそれとして、もちろん娯楽作品として、映画自体も大好きなんだけどね。
この年頃のコネリーにあの扮装をさせ、あの役柄を演じさせてくれた、というだけでも、私は生涯ミリアムさんを支持したいわ。

風の谷のナウシカ

名作の誉れ高いのは重々承知しているんだが………何度見ても、つまらん。
面白さが分からない。公開以来ずっと、こんな人気作に乗れないのは、なんか悔しいんだけど、途中で視聴を止めてしまう事も複数回(何回tryしてるんだか…笑)。
どうにも相性が良くないようです、宮崎巨匠。

まずヒロインが好きになれない。
なんでだろう、可愛気が無い
子供達が「姫ねえさまぁ〜」とか言うたびに虫唾が走るんですけど、何故そこまで激烈なのかは自分でも良く分からない。
痩せたピカチュウみたいな動物は可愛かったな。
でもアレ一匹では補いきれない程、王虫キモチワルイ。他の虫もキモチワルイ。カビやコケを拡大したみたいな植物もキモチワルイ。
キリストの復活をなぞったみたいなラストシーンも、とってもキモチワルイ。実は2度目以降(途中で飽きてしまうので)なかなかソコまで行き着けないんだけど。
公開当時であれば、映像的に最先端だったりしたのかもしれないけど、当時感動した記憶も無いんだよなぁ…。

私の宮崎アニメはギリギリ『カリオストロ』までだな。
つくづく相性が悪いんでしょうね。

風の谷のナウシカ(byココアちゃん)

杉本さん昔からそう言ってるよね。「姫姉さま〜〜」、のくだり、おかげで見るたび
(何十回だ・・・)
「ああ、杉本さんこれキライだったなあ」と私の心に刷り込まれています。
なぜこんなにナウシカが好きになれないのか・・・私の場合は、「誰からも愛される正しい存在」なんてのがウソ臭さで満ちている、と思うからかな。「絶対正しい」なんて、まるでカルトみたいでグロテスク。
せめて生き返らなかったら納得できたのに。
でも構図は大好きです。特にラストの、茫然とするクシャナと敵将の上に雪みたいなのが降ってくる「絵」はシンプルでほんとに美しい。あの表情。
空中シーンも世界一だと思うな。
それにしても、何回見てもナウシカの肌色のタイツが気になります・・・。
一瞬、ノーパンに見えちゃう。絶対確信犯だよ。あのヘンタイ巨匠。
ま、巨匠なんてのはたいていヘンタイですけどね。

>

管理人のお返事:ええっ、すいません(笑)そんなに昔から言ってたか、私。

ナウシカのタイツなぁ…昔『スーパーガール』で、空から降り立つヒロインのミニスカートの中身が衣装と同じブルーでちゃんと仕立ててあって、周囲の男性陣が激怒してたわ。曰く「パンツは白だろ!」って(笑)。


家族はつらいよ

山田洋次監督は尊敬しているが、新作が出ても特に見たいとは思わない。
機会があれば、という程度の熱量なのだが、観れば多分確実に、面白い
凄いなぁと、毎回思い、そして毎回忘れる、と言うか、学ばない(笑)。

こんなタイトルだけれど、言う程家族の誰もつらくないであろう事は、観る前から容易に想像できるし、そこを裏切られたいとも思わない。
そして予想通り、どこか呑気でノホホンとした人々が、ちょっと泣いたり怒ったり迷ったりする様を安心して見届けて、そして毎回予想を大きく上回る感動に驚かされてしまうのだ。
それでいいのだ。(突然のバカボンパパ降臨)

何と言っても、キャストの誰一人として好演でない人がいない。
出る人出る人、愛らしく親しみやすく嫌味が無くて、そのくせ個々のキャラはシッカリ立って生き生きしてる。
その最たるモノが"寅さん"なのだが、あんな困った迷惑な人でも愛さずにいられない。
役者の力量は無論の事だが、やはり脚本の精度の高さ、演出の品の良さが最大の理由だと思う。
だって他の出演作では、そうでもない芝居してる人もいるもの(笑)。

吉行和子さん可愛い。

カットスロート・アイランド

好きなんですが、海賊モノ。
なんかちょっと、退屈なんだよね、残念ながら。

戦うヒロイン・女海賊のジーナ・デイビスは、かなりお気に入りの女優さん。
なんたって本気で喧嘩強そうなトコがいいやね!
普通とは別の意味で"いいカラダ"してるのよ、とっても。
相手役のマシュー・モディンも、適度に抜け感があって、女海賊に振り回されるインテリチンピラを好演、なんだけど。
セットも豪華だしアクションは凄い頑張ってるし。本当にカラダ張ってる感がある(主にスタントマンが?)。
でもなぁ。いかんせん、面白く無い

一つには脚本かな。あまりにも普通
それからジーナ演じるモーガンが、弱味が無さすぎてつまらない、かも。
アクションも頑張りすぎて慣れてしまうと言うか、そもそもキャラクターに思い入れが無いとハラハラもドキドキも薄味になってしまうのに、主役も悪役も通り一遍な表現ばかりで。
ジーナさんもマシュー君も深い演技を全然させてもらえてない、非常にもったいない。
個人的にはムサ苦しい海賊仲間に金髪美少年が一人入ってて、女船長の側近みたいにしてるのが好みだったけど(笑)あの子もたいして活躍しないし。
ついでに猿(これまたお決まりなのだが)も、あまり活躍しないしな。

船に関しても、出番はけっこうあるし派手にぶっ壊したりしてくれるんだけど、うーん。
なんと言うか、あまり「船に乗ってる感」が無かった。海賊達の船に対する執着心とかも見えないし、船での生活感みたいなモノも漂って来ないし…つ、つまんない。
もうジーナとマシューが顔合わせた時点で「この二人は恋に堕ちるのね」と納得して観てしまったが、良く考えるとどうして互いに恋したのか分からない…まあ、一目惚れではあったでしょうが。もう少しなんか欲しいよね。
そういう意味では話の本筋なはずの宝探しも、わりと簡単に見つかってしまってアラあっけない。
泳いで渡らなきゃならない所に山積みの宝(コインも宝石も金も重いよ)を、優男のマシューが一人でサクサク運んじゃうのもなんだかなぁ。
勢いを削がれるのを恐れる余りか、色んな細部が適当過ぎて、結局退屈にしてしまってる印象。

あまり言いたくはないんだけど。
パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズは軽くてお気楽なエンタメ映画だが、例えばスパローの帽子へのこだわりとか、バルボッサのリンゴ好きとか、両者の船への愛着心とか。
そういうのが上手い具合にスパイスになってて、多少(かなり)冗長なシーンも付き合ってやるか、という気になれた。
昔通ったシナリオスクールで、最初に習ったのが「魅力とは欲望である」という言葉。
宝が欲しいとか、恋を成就させたいとか、そういう大味な欲ではなくて。リンゴの味を感じたいとかさ。
そういう事だと思う、特に海賊好きの私としては、「海じゃなくてもいいじゃん」と感じてしまった。

監督は『ロング・キス・グッドナイト』(かなりお気に入り)の人で、おまけに当時ジーナさんの夫だったのだとか。
…色ボケ?いやいやいや。

お金も労力も、すごく掛かっていそうなのに、雑な造りと一本調子なイマジネーションが、本当に残念な映画。

仮面の男 12/3

絵面が汚い…。

俳優もキャラクターも豪華キャストなのに!
ジェレミー・アイアンズ(アラミス)、ジョン・マルコヴィッチ(アトス)、ジェラール・ドパルデュー(ポルトス)、ガブリエル・バーン(ダルタニアン)の四銃士ですよ!
凄くない?
私はキャスト表だけでワクワクしたよ。
名だたる名優、と言うかクセ強めの俳優陣も、こんな脚本&演出&美術では形無しだわ…。

まず、年老いて隠居中の三銃士+現役一銃士なので、おっさん祭りなのは仕方ない。
体制としては、そこに花を添えるべきは、若いディカプリオなんだが。
レオはそこまで美形じゃないんで(あくまで当社比)。頭のハチの形とかぶっさいく(笑)。
こういうコスチューム物って形の美醜がハッキリ見え易いし、一人二役で双方向から見ちゃうから、尚の事。
せっかくの一人二役の演技も、唸らされる程の見どころは無し。
これはレオの演技力と言うよりは、脚本や演出の失態が大きいと思う。こんなに分かり易い対比の二役なのに!
ベビーフェイス過ぎて、大人顔のヒロイン(ジュディット・ゴドレーシュ。実際のヒロインはアンヌ王妃かも)と並ぶと姉と弟どころか叔母と甥みたいで、全く絵にならない。
女優さんもドレスの似合わない地味顔の上に、黄色って西洋ではイイ色なのか?『美女と野獣』(エマワトソン版)もそうだけど、素敵に着こなすのは難しい色だと思うんだけど。
レオの子供っぽさのお陰でゴツさが際立って、女装の男性みたいだった。お気の毒。

まず唖然としたのが、事の発端となる、アトスの息子の戦場シーンのショボさ
公園で突撃ゴッコしてるのかと思ったら戦死の知らせ(笑)。
フランス宮廷内のシーンが多いのだから、豪華絢爛キンキラキンのはずが、衣装も背景もなんだか貧乏臭い、偽物臭い。
画面全体が黄ばんで(茶色掛かって)いるのは当時の灯りの再現か(でも昼間の野外もそんな感じ)色合いが沈んでて、美しいシーンがほぼ見当たらなかった。

一番ガッカリしたのは、監獄から救出された"王の双子の弟"フィリップが、鉄の仮面を外して素顔が顕になるシーン。
なるほど7年間も被りっぱなしだったなら、ヒゲも伸びれば髪もグシャグシャで当然。
私も骨折で一月ばかりギプスしてたら、皮がウロコみたいになってたもんな。
でもそれを、フツーにモシャモシャの顔を見せて、「風呂入れてもらえ」と言われて場面が変わるとフツーにこざっぱりした王の顔の男が出て来る。って。
観客はほぼ皆、ドラマティックな登場を期待して待ってたと思うんだけど。
例えば目だけは印象的に見えるとか。って程、レオの目って綺麗でもないか。
この目もね、確か他の映画では、レオの瞳はブルー(か緑)だったように思うんだが、先の色褪せ画面のせいか、茶色に見える。
ドロドロの土色の顔の中で青い瞳が宝石のように輝けば、それだけで印象が随分違うのに。

ちゃんと原作があり、それ以前に伝承があったりという話らしいので、まあ大筋は仕方ないのかもしれないが。
良く考えたら私、元々四銃士って好きじゃなかったんだわ。
王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』くらい見栄え良く歌舞いてくれれば、楽しめるんだけど。
隠居爺共がもうデザイン変更されてる銃士隊の古い制服を引っ張り出した時は、カッコ悪さに目眩がしたわ…ここら辺、ファンならたまらん展開なんでしょうかね。
クライマックスの銃撃シーンも、うん…。
ここで「かぁーっこいいっ!」って言える人が、この映画のお客ですね。あと「レオ様美しい〜」の人。

で、"太陽王"ルイ14世が、偽物だったのみならず、それどころか元々托卵だったという!!!
それをまた美しい事のように終わらせてしまう、なんじゃあそりゃあ。
根強くある伝承だと言うから驚くわ。
フランス人は怒らないのか。首斬っちゃった人のご先祖なんぞ、どうでもいいのか?
って言うか王妃はお咎め無しなの?根性悪の息子を見舞ってる場合か?
フランス人は不貞に寛容なんだろうか、意味が分からないわ。

カリートの道 

うーん、サスガ、なのかな。
正直、ヤクザ映画(和洋問わず)ってあまり好きじゃないし、観るたび思うけど、アル・パチーノとか個人的にはもういいし。
でも、いきなり結末を見せてしまう冒頭から、ずるずると底無し沼に引き込まれるように逃げ場を無くして行く主人公、手に汗握るラストまで、かなり引き込まれてしまった。
重苦しくもスタイリッシュな画面展開、ミョ〜にリアリティを感じてしまうマフィア達のやり取り。鮮やか過ぎる残酷描写。
主役食いの常習犯・ショーン・ペンを早めに始末した後は、アルおじさんの独壇場(だからさー、『リクルート』とかさ、『ディアボロス』とかさー)で、本来なら鼻白むとこなんだけど。主演男優が好きじゃなくても、結果が分かってても、こんなに盛り上がれるんだー、と、むしろ新鮮に感じてしまう程。
ラスト前の追跡〜銃撃シーンは、白眉だ。

とは言え、ショーン・ペン。凄いです。
あの髪型は殆どギャグなんだけど……笑えないキャラクターを迫力タップリに演じてる。この方向に怖い人って本当にイヤだ、っていうヤツ。
ただ、あまりに怪し過ぎて、いくら恩義があっても、あんな男を信用するカリートって本当はアホなのか?と疑いたくはなるが。
まあ、その律儀さが魅力と言うか、思い入れできる部分なんだろうけれど。

ヒロイン役のペネロープ・アン・ミラー、『レナードの朝』では可愛らしかったのに、たった3年であんなに老けるか!?ちょっと驚いてしまった。
しかしデ・パルマ監督は、得意の映り込みを駆使して印象的なシーンを撮っている。ちょっと笑っちゃったけどね。

そして毎度の事ながら、暴力シーンや殺害方法は手を変え品を替えアイディア満載だし、生々しく、妙に美的でもある。
大興奮だった『アンタッチャブル』と違い、端正なケビン・コスナーも、キュートなアンディ・ガルシアも、スーパーセクシーなショーン・コネリーもいない。でも、アイドル不在でもやっぱりエキサイティングだった。ショーン・ペンの怪演はデ・ニーロのカポネに対抗できるけど(笑)。
ラスト直前は、分かっちゃいたけど…と、やっぱりショッキングで、ドッキリさせられた。
駅のホームで待つ恋人を見付けて笑いかけるカリートの顔が(そう言えばあまり笑わなかった、今まで)悲しくて。
ああ、逃げ切れなかったんだね、運命から。
切ないです。

歓喜の歌

立川志の輔と第九???
と、ちょっと目に止まったので見てみた。
第九は合唱で参加した事もあるので、興味を惹かれたし。
原作は創作落語だそうだが、映画はダメでしたね。キャストはけっこう豪華なのに。

歌に関しては、鉄壁の由紀さおり様の歌声が聞けた時点でかなり高ポイント。コーラスの中にシレッとお姉様が混じってるのも嬉しかった。
知らなかったけど、平澤由美という人の歌もすごく良かった。なんか歌上手そうな顔じゃない(笑)ので、意外性も含めて、あのソロシーンは感動的。
それにしても、「日本三大音痴女優」である安田成美と浅田美代子を歌わない役で使うとはシャレが効いてる(笑)。ちなみにあと一人は今や名女優の吹雪ジュンね。

小林薫は好演(この人の"ロクデナシ"芝居は日本一だ!)だったし、伊藤淳史もショボさが板に付く通常営業。コーラスのママさん達も概ね好演。
だけど滑るギャグが痛い、と言うか不快。
ランチュウ(ウチ昔飼ってたの)の件とか笑えませんって。泥棒虐待惨殺だよ?ラストのオチにまで引っ張ったけど、笑えない。
工務店を説得する手口もご都合主義だし不快。着物の袖を適当に切り詰めちゃう辺りもウンザリだった。
何より、せっかくの『第九』が取りあえず歌った、って感じでダメ。ココさえ押さえれば、色々大目に見られたと思うんだけど。
まず女性だけでの『歓喜の歌』はサエないな、というのが致命的(爆)。どこからともなく流れて来るオーケストラ風の伴奏はナニ?カラオケ?そして、歌わないから救われたものの、あの場面で安田成美が指揮するのはおかしい(実力が上な由紀さんチームから出すでしょ)上に、指揮姿だけで音楽センス皆無なのがバレバレの安田さん、よろしくない。
普通に撮れば面白くなりそうなのに、やってはいけない事をやっちゃって、やらなきゃならない事が成されてない、何とも歯痒い出来だった。

追記:原作の落語、聞いてみました。予想はしてたけど、ちゃんと面白かった。
袖を切り詰めるくだりもあったけど、落語だと笑えるから不思議。

GANTZ 

まるっきりナメ切って観たんだけど、意外やけっこう面白くて、嬉しいサプライズ。
ニノ、こういう役がいいよね。『プラチナデータ』とは別人、いい意味で。
マツケンも良かった。二人ともSFに全然馴染まない日常感タップリの"普通の子"で。

設定を聞いた時は「くだらな〜」と思ったのに、いざ始まってみたらそのチープさが妙にツボッてしまった。そう言えば私こういうミスマッチ感好きだわ昔から。ちゃぶ台で議論するメトロン星人とか、『ゼブラーマン』とかさ。
ゲーム感覚と言うかゲームそのままのプロットは全く好みじゃないんだけど、特に主演二人のバトルスーツの似合わなさと、生活臭溢れる住居や服装(及び容姿)が、こちらと地続きであるという感覚を持続させてくれてる。
反面、せっかくの格闘場面はタルくて長く感じた。
千手観音動かす(参照『ナイトミュージアム』)のなんて長年の私の夢なのに、全然おもろなかった…まあ予算とか技術とか、色々あるのでしょうが、でも特撮(あえてこの言葉を使う)で一番大切なのは、絶対にイマジネーション、センスだよね。ついでにそれがアクションシーンなら、どんなに撮影技術が進んでも役者がちゃんと動けなきゃ。
他にも、クロノ君が突然勇敢になってしまって、あれ?どんなキャラ?と、ちょっと置いてきぼりになったりした。

主演だけでなく、存在感無いサラリーマンはすごい存在感だったし、本郷奏多君の屈折具合もとても良かった。婆さんと幼児とか、戦力外分かり切ってるのまで連れて来ちゃうのはちょっと不快感あったけど。
吉高さんの微妙なダサさも可愛かったな。アレが世間一般的なマンガ少女のイメージか…(笑)。
そしてあのGANTZメンバーのお姉ちゃんのおっぱいは、いったいどういう事なの……???(汗)

とにもかくにも、ラストで「続きが観たい!」と思わせてくれた、これはつまり、かなり面白かった、と言っていいと思う。

GANTZ2 

綾野剛、イイネイイネ!
↑コレ冒頭に書きたいがためだけに『』と『2』の感想を分けて書いたという(笑)
だって全くの続きで一つの話だし、極論すれば1本の映画で充分な内容だったと思うんだけど。
なんでしょうかあの、特にスタイル良いでもないのに顔も映らぬ前から「おっ、キタ!」ってなる、あの感じ。
ニノやマツケンが"その辺の子"感がピタリとハマってるのに対して、"タダモンじゃない"感ハンパない。
殺陣も綺麗だよね。その辺もニノとは大違い(笑)いやニノは可愛いよ(笑)

殺陣と言えば、女の子が上手かった。嬉しい驚き。
あとモデルの子が美人だったな。ジーパンのお尻に見とれました。
二部では敵か味方か!?みたいな所でかき混ぜて来たけど、うーん、まあこれもゲーム展開の定型と言えば仕方無いのかな。
マツケンが二人になっても、私はそんなに面白いと思えないし。たいして演じ分けもしてなかったし。
結局GANTZの正体とか仕組みとか全然明かされないし、まあなんたら星人の言い分も尤もだったりするしで、原作未読ながらいかにも長期連載漫画的と言うか、そうだろうなとは思っていたけれど。
特に、恋人未満の女の子(=人間)をターゲットにするとか、その辺りからもう嫌気が差してしまって、そう言えば私、生き返りネタも嫌いだったよな、とかどんどん距離が開いてしまった。
それでも、不満足ながらラストはなるようになって、冒頭のモノローグにシッカリと繋げてくれたし、ヒロインは記憶を消されたにもかかわらず涙を流し、カトウ君もウッスラ思い出し…「今日もどこかでGANTZ」感は、悪くなかった、と思う。

あ、山田君ももうちょっと活躍して欲しかったな。

監督・ばんざい!

うー。
色々とね。
考え過ぎてしまうんでしょうかね、世界の北野監督。

と、言うか、考えてみたら私、タケちゃんの漫才時代って殆ど知らなかったりする。『ひょうきん族』とかは笑って見てたけど。
もしかしたらユーモアセンス、合わないのかも……と、思う程、笑えなかった。
各々のギャグ自体もそうだし、監督がアレもダメ、コレもダメと試行錯誤?していくという設定自体も、同人誌的と言うか潔くない感じがして、ダメだ。そんなネタでお金取りますか、って思っちゃう。
笑いというよりは所々シュールな絵があって、それはちょっと面白かったけど、内容の面白さに繋がらないと言うか。ちょっと辛くなってしまった。

一応ファンなんだけどなぁ。
お笑い路線じゃない『アウトレイジ』とかの方が、ずっと笑えたのは私だけ???

ガントレット

イーストウッドって、基本下品なんだよね………。
等と心中悪態つきつつ観始めたものの、あらら、面白い。
いや、本質的に下品で大衆向けである事を素直に出している初期だからこそ、"大物"になった後の嫌らしさが無いという事か。

ソンドラ・ロックがとても良い。
『ダーティーハリー4』でしたか、この二人のカップリングに物凄くゲンナリした記憶があるのだが。
どうやらこの撮影時期は二人の蜜月期、それはイイ感じに映るのは当然と言えば当然かも。
彼女の演じるマリーは売春婦だが、物凄く頭の切れる女性。
最初はヒステリックで被害妄想?と思うが、彼女の主張が事実と分かるにつれ、どんどん魅力的に、そしていじらしくさえ見えて来る。
対するイーストウッドのショックリー刑事も、うーん悔しい(笑)チャーミング。
二人の距離が縮まる過程に、何度もキュンキュンさせられてしまった。
いきなり差し出されるバラの花とか、いつまでもそれを持ち歩く女とかね。胸打たれましたよ。

元々70年代シネマが苦手で、これも例にもれず「権力側の陰謀」「えげつない暴力」「踏み躙られる下層市民」に満ち満ちているんだが、主役二人の行動力と純情ぶりに相殺されて嫌な思いしないで済んだ。
もちろん、ラストの銃の乱射シーンとか、何もそこまで、とは思うし、それで生きてるどころか血も流さない二人って人間なの!?とか、そういうのは当然あるんだが。
…まあ、いいか。と思えるくらい、ラブ要素が良かったので。
でもってやっぱり、イーストウッドって所詮は下品なんだよな、と、冒頭と同じ事を違う思いで思ったラストシーンでありました。

きかんしゃトーマス劇場版1 魔法の線路

えーと、思ってたのと違った!!!
って言うか、普通にあのトーマスを劇場映画にしてくれて良かったと思うんだけど。

なんでこんな映画にピーター・フォンダが出演するのだ???
孫がトーマスの大ファンだったりとか(笑)そういうのあるかも、だけど。
加えてアレック・ボールドウィン。こちらもちゃんとした俳優さんなのになぁ…。
とはいえ実は、歌のお兄さんみたいなサロペットジーンズに帽子姿のボールドゥインは、なかなかチャーミングではあった。フォンダさんも相変わらずハンサム。

元々のTVシリーズは、1回5分のショート・ショート。
それを子供向けとはいえ、劇場用のストーリー仕立てにしようと思ったら、やはりそのままでは困難というのは分かる気はする。
機関車逹は愛嬌タップリだし、すでに性格付けはキッチリ確立してはいるものの、あくまで"機関車"を逸脱してはならず、感情表現できるのは顔面のみ。
腕も手も無ければ背中を丸める事も無く、首すら傾げられないんだもの。それを始めたら機関車じゃなくなっちゃう。
だから長編で、ある程度まとまったドラマを、となれば、人間のキャストを出そうという発想は分かる。分かるが安易
結果的に機関車があまり活躍しない印象になってるし、魔法の粉だのと言われてもナニソレ!?状態だし。
序盤で、可愛らしい犬がこれまた可愛らしい女の子 をミスリードして間違った電車に乗せる辺りでもう、「こりゃエー加減にも程がある…」と、視聴意欲を無くした気がする。
つまらない作品の多くに見られる「ローカルルールがやたら多い」「辻褄合わせに困ったらその都度ルール設定追加で乗り切る」というのが露骨でな…。
あと、瞬間移動が多過ぎて誰がどこにいたんだか混乱した(多分何回かは移動場所違ってたような)。
なぜ"レディ"がソドー島の運命を握っているのか、なぜ"粉"の補充の仕方も知らずにドンドン振りまいていたのか、なぜフォンダさんは洞窟に籠っているだけなのか………???

それと、ディーゼルが悪者過ぎてドン引いた。
長編という事で、少し刺激的な悪役が欲しかったのは分かるんだけど、のどかで平和なイメージを大事にして欲しかったな。
どうしても悪どい悪役を出したいなら、それこそ人間のキャストで、金に目が眩んだ余所者とかの方が見やすかった。
ソドー島もだが魔法の入り口のあるシャイニングタイムの景色や、魔法のシーンとか、以外にも実写キャストと機関車の相性とかが良くて、絵的には楽しい映画だっただけに、支離滅裂なストーリー部分が残念。

と、思ったけどこのシリーズ、すごい続いてるのね???
16年間で12本!すごい。
子供達が楽しんでるなら、もはや私が文句言う筋合いも無いわな。

きかんしゃトーマス11 探せ!!謎の海賊船と失われた宝物

最初に見た第一弾『魔法の線路』が、恐ろしく難解(笑)だったので、コレを観てなんだかホッとした。
この感想はどうやら私以外の皆様も同様だったようで、2作目発表まで5年掛かって、3作目はその3年後で、その後はキチンと毎年新作映画が公開されている模様。
やっぱりこのノリだよね、という気持ちと、でもちょっと、トーマスと有名俳優の共演は見たいよね、という気持ちがせめぎ合っている。

トーマスは冒頭からフルスロットル!
こんなにおバカだったっけ…???と、思ったけど、そう言えばそうだったかも、と途中で思い直した。
バカというよりお調子乗りで、よく言えばポジティブシンキング。そして行動力ハンパない。
主人公向きのキャラクターだし、機関車としても実年齢は知らないが、良くも悪くも"少年"なんでしょうね。

あのショベルカー?の女、気持ち悪かったなぁ(笑)。
海賊も海賊らしく、悪くてずる賢くセコい奴で良かった。
ボートの気弱で良心的な性格も、とても応援したくなる。
海賊は最初からイヤな奴だと丸分かりの作りなんだが、それでも"左遷"されてションボリしているトーマスが必要とされ頼られ(利用され)てワクワクする気持ちにはスンナリと乗れた。

失敗するたびに人のせいにしていたトーマスが、最後に自分の非を認め(と、言うより罪を被って)謝罪するシーンは、
うん。
分かっちゃいたけど、やっぱり感動的。
でも財宝は…これまた定石ではあるが、博物館に収まって欲しかったな。
できればコッソリ、おこぼれもいただいたりして。

きかんしゃトーマス12 走れ!世界のなかまたち

とっても平常運転の『トーマス』と言うか、トーマスらしいトーマス。

トーマスって性格子供だよね。
自己顕示欲が強く妙に頑固で、鼻っ柱は強いけどおちょくられがち。謎の自信はあるがだいたい失敗してオロオロ。
でも悪気は無いしすぐに反省して立ち直り、怒ってない時はだいたい楽しそう。

今回は機関車のコンテスト「グレート・レイルウェイ・ショー」で、世界中からいろんな機関車が大集合してる。
中でも大活躍するインドの女の子機関車"アシマ"が、本当にインド美人そのままのお顔ですこぶる色っぽい。
でも、鑑賞要員と決め付けていたら実は別の実力もちゃんとあって、という、フェミニストに配慮した内容?でした。
美人が頭も性格も良く仕事もできたらかなわんわ(笑)。

トーマスは例によって、選ばれもしないのにショーに出場する気満々で、しょーもない画策をめぐらしたりして、本来の仕事をおろそかにしたり、本当にしょーもないガキなんだけど。
浅知恵でもとにかく一生懸命でパワフルだし、失敗してしょげ返ったりする時のアップダウンが激しくて、ついつい応援してしまう。
それに鬱々としていても、いざトラブルとなればゴードンを救うために全力で駆け付ける単純さと素直さが愛おしい。
うん、本当に元気な少年を見守る気分。
変にいじらずに、ずっとこういうのやっていてほしいわ。

キサラギ 

『一二人の怒れる男』と言うよりは『12人の優しい日本人』と言うか。
初見ではバタバタとやかましくて集中できなかったせいか、あまり楽しめなかったんだが、各キャラクターの正体と結末を知って二度目を観たら印象が変わった。
人は死んでオシマイじゃないんだよね…と、思ったら切なくなった。
エンドクレジットのC級アイドルと喪服オッサン軍団の応援ダンスはいい感じ。こんなモノを見ながら涙ぐめるのは、本編が良かったからに違いない。

男達は5人と少な目でシンプルだし、こういう企画は役者の実力を問われるという点で、そんなでもない人も混じっているような気もするが(いえ、皆さん悪くはないよ)じっくり聞いてみるとやり取りが二転三転、面白かった。
5人全員の正体が「まさか!」の展開で笑えたし、パッとしないアイドルの追悼会という、ちょっと特殊な設定がちゃんと生かされていたと思う。
最後のダンス(ヲタ芸?)は良かったと書いたが、アイドル本体はあそこまで見せない方が良かったのでは?音痴な歌声やダサい衣装まではいいが、顔はハッキリ見えない方が各々想像が膨らんで楽しそう。
あの子自体は見事にC級アイドルレベルの容姿で、悪くは無かったんだけど。

スケールは小さいし、どうでもいい謎解きを一晩かけて繰り返すだけの小さい話だけど、色んな意味合いでの"愛"が一つ一つ包装を解かれていくのを見るのは、それなりに面白いし新鮮だった。

キス&キル

コメディなんでしょうけど…笑えない
人死に過ぎだし家族持ち込んでハッピーエンドは、ないわー。
多分もっと私の機嫌の良い時に初見だったら違ってたのかもしれないけど、ハラハラドキドキよりイライラの方が勝ってしまった。

藁の楯』という邦画の駄作をちょっと思い出したんだが、大金もらえるからって銃持って"プロの殺し屋"を狙うか?
銃社会のアメリカだから、まだしも多少の説得力はあるんだろうか。
誤解だったとはいえ自分に賞金掛けて命狙った男と仲良く義親子関係続けるか???

アシュトン・カッチャーは今まで良さが分からなかったが、今回はなかなかチャーミング。
あまり凄腕には見えないのは残念だが、アイドル性はあるんでしょうね。可愛かった。
水着姿の彼にエレベーターで乗り合わせてうろたえる気持ちは、ちょっと分かる。
キャサリン・ハイグルは…『幸せになるための27のドレス』の女優さんなのね…あの時はスタンダードな美人さんだと思ったけど、今回はお多福ちゃんに見えた。タレ目メイクが似合わないせい?
胸が大きいのはいいけど全体にダレダレの身体も気になったし。
せっかく金持ちお嬢さん→上流奥様の、素敵な衣装と髪型がもったいない。服はとても綺麗だった。

寄生獣

一番の心得違いは、"ミギー"を「可愛いお友達」にしたがってる所だな。
原作の大ファンなので、かなり覚悟して観たが、思った程には酷くなかった。
何より役者陣が真剣に取り組んで見えて、原作へのリスペクトが感じられたのが嬉しかった。
かなり端折った印象は否めないものの、脚本もウマイ事まとめ上げてる感じだし。
…けどまあ、その程度だよね。

アベサダ好きなんだけど、やっぱりミギーの声とはイメージが違い過ぎる。
原作に思い入れがあると、どうあがいても自分の勝手なイメージが固まってしまって、なかなか実写が受け入れられない、というのはあるけれど、それ以上に今回は、上記の「可愛いお友達」路線がよろしくない、のだと思う。
ミギーはそもそも人間ではない上に、知的でクール、合理的で哲学的思考の持ち主。そして元々怖い"寄生獣"なんだよ。
私的には甘みのある渋い声が良かったな。志賀廣太郎さんとか、故・細川俊之さんとかとか。

そういう心得違いがあったにせよ、なにしろ原作の力が強いので、映画としてソコソコ観られるモノにはなってしまう。
主演の染谷君はクセのある顔立ちで、新一君よりはパラサイトサイドの方が似合うんじゃないの、と思ってたが、蓋を開けてみればなかなか初々しくて良かった。
ただ、演技と言うより演出上の問題と思うが、"平凡な高校生"がいきなりあんなこんなエグい目に会いグロい物を見せられる割に、反応がニブいような。これは新一のみならず、村野ちゃんもだが。
その辺りも原作の優れた点で、怯えたりショックを受けるシーンがとても印象的で秀逸だったんで、とにかく課題をこなす、みたいな急ぎ足の展開が残念だ。
中盤新一はミギーの体組織を吸収し、パラサイトの能力をも譲り受けるワケだが、その変貌ぶりもちょっと、ヌルく感じた。マンガと違って顔の造りまでは変えられないにしても、ねぇ。

あとはパラサイトの暴れっぷりが、CGは頑張ってくれてるんだが、ちょっと一本調子だったかな、と。
せっかく動く絵で見せられるのだから、もっと気持ち悪い動きとかできそうなのに。
これはまあ、後半戦に期待してもいいのかも。
ミギーが「興奮して凄い形になる」シーンもちゃんと撮ってくれてて嬉しかったけど(笑)。

実写化が実現するまでに、実に長い月日が経ってしまったワケだが。
当初はハリウッドが権利を買ってどうこうという噂を聞いた。
多くの原作ファンは、日本版で作られた事を歓迎しているように思う。まあそうでしょう。
でも私は、それでもハリウッド版が見たかったな。
たとえミギーの声が黒人ラッパーのマシンガントークになろうとも、村野里美が金髪グラマーのチアリーダーにされようとも。
今からでも遅くないから、作ってくれないかな、ハリウッドで。

鬼畜 

まさに、『鬼畜』。
それ以外の言葉が思い浮かばない。
私は特別子供好きではないが、これは見ていて大層キツかった。

散々評判は聞いていて、いつかは観たいと思っていたんだが。
たまたま、先にTV版のたけし主演の方を見てしまったので、大方の筋立ては知っていたし、あちらも中々のショッキング具合ではあったんだけど。
やはり映画は一味違います。
と、言うか、邦画の力が全集中したような、濃い〜映画だったわ。

幼い子供3人を、文字通り鬼畜の所業で見殺しにする、実の父親。
演じる緒形拳の、どこまでも「自分は本当は悪い人間ではないんだが」と言いたげな表情が、何とも言えず怖い。
実際、こういう事をしでかす人の多くは、どこか夢の中のような麻痺した気分でいるのかも、とも思った。
昭和の時代の、畳部屋に蚊帳、個人経営の印刷工場、クーラーも無く汗ばむ空気感、デパートのレストランや古いタイプの駅舎。あまり変わらない東京タワーや上野公園。
舞台設定が自分の子供の頃に近い時代なので、尚更にヒシヒシと迫る実感がある。

働き者で美人の妻がいながら、そして一緒に毎日働きながら、余所にも別所帯を持つ夫・宗吉。
ある日突然、見知らぬ女が3人もの子を連れて来て「アンタの夫の子よ」と言われる妻のショックたるや。
しかも彼女には、子がいない。7年間もの間欺かれて、汗まみれで家業に勤しんで来た。
愛人に子無しとマウント取られた上、いきなり3人の、夫の裏切りの結果である子供達を押し付けられて、そりゃ鬼にもなるわさ。
コンビニもケータリングも、全自動洗濯機も無い時代、家事の負担は今とは段違いで、しかも男は家事に関して全くの無能で許された時代。妻が放棄したら、子供達は生きる術を無くしてしまう。
が、妻を責める気にはならないわ、私は。
青酸カリを持ち出した時は流石に戦慄しましたが。

結果的には、自分の産んだ子供3人を捨てて雲隠れした愛人が、一番鬼畜なのかもしれないが。
いくら何でも自分の"旦那"がここまで情けない男とは思わず、甘く見ていたんだろうな。
夫は夫で、火事のせいで事業が傾くという不運に見舞われ、何とか二所帯養っていけるとの目論見が崩れてしまって、不運と言えばそうなのだが。
サッサと行政に頼るとか、時代的に難しかったんでしょうかねぇ。
引き金となった次男の死は、まだ過失と言って言えない事も無いが。
実際赤ん坊って、きっと本当にあっけなく死んでしまったりするんでしょう。
でもまあ、内心予想(期待もしくは殺意)はあったよね。
貧乏とか暑さとか、裏切られた憤りとか、慣れない子供のチョコマカうるさいのとか、思考停止に近くなるのも分かる。
でも、赤ん坊が死んだ時点で(本当なら体を壊した時点で、だけど)目が覚める人と、その流れに乗ってしまう人とはいるのかも。
夫婦はお互いのせいにし合い、お互いに慄きつつ、鬼畜の道へと流されて行ってしまった。

赤ん坊の口にご飯を詰め込むシーンはショッキングで、あの赤ちゃんはトラウマになってないかと心配になる。
後日談として、あの子は撮影について何も覚えていなかった、と言われているが、トラウマってそういうモンじゃないからね。
一番印象的だったのは女の子置き去りのシーンだった。
東京タワーの展望台で、幼い娘に望遠鏡を覗かせて、父親はエレベーターで逃げ去る。
(ここちょっと怖くて、望遠鏡を覗く娘に「何が見える?」と聞いていると、母親と一緒に暮らしてた家が見える、死んだはずの弟もいる、とか言い出すの。あれで決意が決まるのか?)
ドアが閉まる直前に、振り返った娘と目が合うのよ。可愛いワンピース着てたなぁ。
あの時も、宗吉は一瞬悔やみ、駆け戻りそうなフリを見せる。が、ドアの閉まったエレベーターに乗ったまま、また戻ろうとはしなかった。
妹の姿が消えて、長男は疑念が湧き上がる。そりゃそうだ。
ここで面白いのが、怒ってばかりの"おばさん"はともかく、いつもオロオロしている父親よりも、第三者の従業員(蟹江敬三、とてもイイ)にしつこく絡んで妹の行方を聞くところ。
薄々怪しんでいるだろうが、のんべんだらりとかわして主人夫婦にも尋ねない、従業員もまたリアルだ。

そして、1人残った長男との最後の旅。
この子はもう父の名も住所も分かっていて、捨てて帰るわけにはいかない。
と、いう事は、もう出掛けた時点で決意を固めているはずなのに、しかも毒薬まで持参して食べさせようとまでしているのに、宗吉はここでもギリギリまで迷う風を見せる。
電車の窓から見える東京タワーに顔を曇らせたりもする。
断崖に落ちるかと思った息子を一度は必死で庇ったり。
そして遊び疲れて眠ってしまった息子を、揺り起こして帰ろうと促しもする…。
最後も、殺してしまったと思ってた息子が生きてると知って、本当に嬉しそうな顔を真正面から見せるのよね。
その罪の無さそうな顔が、本当に怖い、怖いわ。

きっとこの人、妻を裏切ってはいても、お金さえ底を突かなければ、どちらに対しても優しい、善良な人で生き続けられたんだろうね。
自分でもムゴい事ができるなんて知る事も無く、想像もせず。
どこかで愛人がバレて修羅場になったかもしれないけど(笑)それでも自分がそんなに悪い奴だという認識はしなかったと思う。
実際、この人がもっと冷酷な気性だったら、こんなに自分に損なところに自分を追い込んだりせず、妻に責められるままにもならず、上手い事厄介払いができたのかもしれない。
この人が最後まで悪人の顔を見せないところが、一つ間違えば誰でも鬼畜に転がり落ちるかも、という、何とも言えない居心地の悪さに繋がるんだと思う。

それにしても緒形拳、妻が岩下志麻で愛人が小川真由美って、贅沢過ぎやしませんか!?
2人とも庶民的な役柄で、特に着飾りもしてないけど、本当に綺麗。
でも2人とも、気が強そうで、本当に怖いのよ(笑)。
こんな2人に挟まれて責められたら、そりゃ頭真っ白になりますわ。
賢そうな顔の長男も良かった。棒読みだけど、子役はあれくらいでいい気がする。

松本清張原作だが、ミステリーでもサスペンスでもなく、ただ人間が怖く悲しいドラマだった。

鬼畜 byココアちゃん 12/3

取り上げてくれてうれしい〜、なんか凄い映画だったよね。
これにくらべたら今どきの邦画なんてテレビの2時間ドラマだよ…なんて。
とにかく俳優さんに圧倒される。
ま、緒形拳、岩下志麻、小川真由美だからね。若いから彼らがきれいだなーと。
女優さんはもちろんだけど緒形拳が身体中がきれい。エネルギッシュというかセクシーというか。
美しい俳優さんは男でも女でもボロを着てると一層美貌が引き立つ気がします。
(戦争映画なんかでもそう感じるけどね)
さらに、美人ていうのは「般若顔」だなーとつくづく思うワ。
ラストの、あの男の子の「父ちゃんじゃない!」って叫ぶシーンね。
物語の中では父親をかばった、ってなっているけど、私はむしろ
「子供を殺そうとするなんて、そんな奴は父ちゃんじゃない!」って言ってるような
気もするの。どっちにしてもあの子にとってはとてつもなく悲しくて残酷な事実なんだけどね。

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管理人のお返事: 素晴らしい映画をご紹介くださり、ありがとうございました。
いや〜本当にビビッたわ、完成度高過ぎる!
出演者も皆熱演で、しかも美しい。緒形拳は本当にセクシーだし、女優二人は怖くて美しいし。
最後の息子の台詞は諸説あるそうですね。
私があの子なら、ただ「お父ちゃ〜ん」って泣いちゃうかも、バカだから(笑)。

一緒にご紹介いただいた『疑惑』も感想書きました。
あちらも凄かった…。

 

キック・アス

ニコラス・ケイジ!(爆笑)

いやぁ、全くのノーマークだったんだが、本当に面白かった。
「まーたオタク少年のヒーロー妄想かぁ」と、ウンザリしたのはほんの冒頭部分のみ。
立体構造的なプロットにすっかり引き込まれ、どんどん加速していく闘いにワクワクドキドキ、手に汗握った。
ヒーローって孤独だよね。
こんなマンガな展開なのに、後半は涙が流れてどうしようもなかった。

途中、あまりの悪党達の残虐ぶりに辟易したり、真面目に少女の人生を思って腹立たしくなったりしたものの、補って余りある面白さだった。
主人公のキック・アスことデイヴはひ弱なオタク青年だが、その辺りをさほど掘り下げてなくて見易い。『スパイダーマン』とか、えーかげんにせい、だったもん。
それにこの子、眼鏡を外すと(トビー・マグワイアと違って)意外に涼やかな美形で、鬱陶しさを感じない。弱いなりに「おまえらの暴力を皆が見てる、でも何もしない。それが耐えられない」と言う彼の叫びは、前半のハイライトだ。すっかりハートを捕まれた。
ケイジが娘の胸を撃つ登場シーンは「げげっ」と引いてしまったが、似た様な暴挙が積み重なるに連れ、どうでもいいような気になって来た。まあ酷い話なんだが、彼女は楽しそうだし。

"ヒット・ガール"の女の子が素晴らしい。
見ているうちに、どんどん好きになって、通常なら「どうせ子供は殺さないんでしょフンッ」とか思うひねくれ者の私が、力の限り応援してしまっていた。(もっとも、そういったタブーは平気で破って来そうな下品さが、この映画には漂っていて、そこもワクワクしたんだが。)
ヒーロースタイルでのアクロバティックなアクションも良かったが、スクールガール姿の大立ち回りは、かなり萌え。
クロエ・グレース・モレッツ。リメイク版『キャリー』を演ってるのね。ふむ。

父と子の関係が、デイヴと父、ビッグ・ダディとミンディ、そしてマフィアのダミーコ親子と、それぞれで面白い。
「女の子一人にバズーカ?」とオロオロする息子と、ヒット・ガールに「こんな息子が欲しかった」と漏らすパパ。いいなぁ、こういうの。
デイヴの彼女もヘンに出しゃばらず、必要な役割だけを果たしていて良かったし、二人の親友も脇に徹しながらもいい味出してて良かった。

ラストの赤影じゃなかったレッド・ミストは蛇足。ってかキャラ違うじゃん、と思ったけど、やっぱり続編を狙っての事ね。
あまり続けてほしくないんだけどなぁ。
でも多分、見ちゃう。

キッズ・リターン

私は映画監督・北野武を尊敬してるんだが、そのタケシ作品の中でも、一番好きなのがこの映画。
いつものような露骨なバッドエンドでない、というのが大きな要因だとは思うけど、そうでなくても多分好き。
なんだろう、青春の匂いがする。雨の後の夏の森みたいな。

そして青春は、儚く残酷で、ヒリヒリと痛い。
北野作品はどれを取っても痛みがダイレクトに来るんだが、登場人物へのアプローチはむしろ俯瞰的でドライですらある。なのにこのリアルな痛みはどうしたワケか、いつも不思議で引き込まれるんだけど。
今回も、落ちこぼれの高校生・マサルとシンジを中心に、漫才師を目指す同級生やら、行きつけの喫茶店の人々、ヤクザにボクシングジムと、かなり大人数の人生が淡々と、でも短時間で的確に浮かび上がる。

優位だったマサルがジムでシンジに打ち込まれるシーンは息を飲む。
マサルが校内から消えて甘く見てかかる同級生を黙らせるシンジも、弟分にわざわざマサルを殴らせる若頭も、根っこから腐ってる感じがリアルなボクサーのハヤシも、皆が皆、残酷で哀しい、そして多分、どうしようもない。
人間そうそう「目からウロコが落ちる」なんて事無いって。日々実感してはいるけれど、それを描くのはとても勇気と度胸がいる。
マサルもシンジも、平たく言ってしまえばダメな奴。早々にヤクザという分かり易い道を選んだマサルはもちろん、むしろシンジの方が重症かも。いつも傍に誰かいて、流される自分でないといられない。

これまたいつも思うんだけど、北野監督の映画に出ると見慣れた俳優さん達がとても良くて、印象が全然違う(『アウトレイジ』)。
マサル役の金子賢はTVでチラホラ見て、たいした興味も無かったが、もうもう本当にいい、このバカ加減、この哀しさ。とてもスタイルがいいのにも初めて気が付いた。シンジの安藤政信は初見だったが、こちらも本当に素晴らしかった。
嫌いな石橋凌も、適材適所でいい感じ、この程度だよねこの人(笑)。寺島進のチンピラぶりは言うまでもなし。モロ師岡は、いつでもイイ味出してるけど、また格別。生徒の中にクドカンがいたのにはビックリだ。
そうして、ダメな人も、ダメじゃない人も、結局ダメになってしまう、うまくいっちゃう奴もいる。そんなやり切れない世界観が、淡々と透明に、残酷に描かれる。
でも何故だろう、それを観るこちら側では、何か優しい、暖かいモノを感じて安堵する。
そう、多分許されたと感じるのかも。

なんと言っても素晴らしいのはラストシーン。
今更私ごときが何を言おう、という、振り出しの校庭に帰って来たマサルとシンジの二人乗り。
宝石のように美しく完結したこの物語に、それでも北野監督は続編の許可を出した。
何と言うか、過去は振り返らない人なのだろうか。天才にとっては宝石もガラス玉程度の価値なのか、まあ続編がどうだと言って本編にキズが付くワケではないんだが。
設定を聞いただけでもう、私は多分、続編は一生観ないと思う。

きみがぼくを見つけた日 

オーロラの彼方へ』や『バタフライ・エフェクト』といった出来の良いタイムワープ映画を先に観てしまってるんで、スケールの小ささにちょっとガッカリしてしまった。

時間移動モノは数あれど、本人が過去や未来の自分に直接コンタクトしてしまうというのは、わりと珍しいような気がする。タブーにしてる作品も多いし。
何だか色々と混乱しながら見たが、大筋はだいたい予想通りに進んでしまい、だからなんだったの…と。
結局過去も未来も変える事はかなわず、"飛行"をコントロールする事もできぬまま。
そりゃあ、死んでしまった大切な人が過去から会いに来てくれたら嬉しいし感動するけどさ…。
本当にタダのメロドラマで、どうにも好みじゃなかったのよ。

エリック・バナも悪くはないんだけど、それだけで楽しく見られる程チャーミングでもない。
クレア役の女優さんもちょっと品が無くてアレだったけど、このクレアという人の気持ちにあまり乗れなくて、そこも大きかった。
それにやっぱり私、タイムスリップがあるかと聞かれれば「ない。」と答えてしまうのよ。
だから、妊娠中の胎児が"飛んで"しまって流産しました、とか言われても、冗談にしか聞こえなくて。
勝手にパイプカットするヘンリーもどうかとは思うけど、だまし討ちみたいにして妊娠し続けるクレアがマジ怖い
そして生まれたのは女の子…やばくない!?(笑)
幸いと言うか、生まれた娘は進化形で"飛行"をコントロールできる、とか(笑)都合の良いニュールールも登場。
しかし時を選べると言っても全裸で飛ぶ事に変わりは無さそうだし、その光景を考えると笑ってしまうんですけど笑い事じゃないよね。女の子だし。
その辺りを作中で全然問題視してないのも不服だったな。どう考えても心配でしょ。

結婚式のバタバタとか、子供時代のクレアとのやり取りとか、面白くなりそうな場面もあったのに、いっそコメディ仕立てにしてくれたら楽しめたかも。
結局何も出来ず、何も役にも立たず、ただ抱き合って泣いて終わりでした。

きみに読む物語 4/15

いやぁ。
よくぞまあここまで、陳腐な内容を恥ずかし気も無く…。
と、思ってしまう私は、つくづく恋愛体質じゃないんでしょうね。
でも好きな恋愛ドラマだって、ちゃんとあるんですけどね。

開始早々悪い意味で最後まで予想が付いてしまう上に、それぞれのエピソードがちっとも新味も無ければ美しさも無い。
取り敢えず男女をくっつけて(この言い方嫌いだけど他に言い様が無い程この内容に似合ってるので使いました)、じゃあ次は波乱、盛り上げて、最後はさー泣け泣け!!!
どっかで見たようなやり取りが延々と続き、なんで?バカなの??の繰り返し。
唯一画面は綺麗で、この(回想場面)時代のアメリカの風景や衣装が好きなので、何とか最後まで観た(けど時間の無駄でした)。

回想中の若きヒロイン(レイチェル・マクアダムス…彼女が悪いんじゃないけど)の顔が、どうにも品が無くて、大口開けてガハハ笑いの表情ばかりが目に付いてウンザリ。
生き生きした純粋さを表現してるのかもだけど、まずお嬢様に全く見えない下品さだし、せっかくの上質のクラシカルな衣装もウエスト締めすぎであまり映えてるとは言い難い。
男の方もね…よくこういうのあるけど。出会った瞬間に付きまとって観覧車から落ちると脅迫したり。
私なら絶対ああいう男と付き合いたくない。「勝手に落ちろ!」と言ってやりたいわ(笑)。接近禁止命令取るわ。
ライアン・ゴズリングは超売れっ子のようだけど、それだけで許せる程の容姿ではない。
女の性格がまた、何かと言えばすぐ泣いたり喚いたり暴力振るったり、初めてのベッドで喋り倒して台無しにするとか、頭おかしいのかと。全く共感できない。お隣の国の人ですか。
そんな身勝手で自己中な性格のはずが、別場面では「自分がどうしたいか分からない」とか「誰かが傷付く」とか…もはや統合失調症レベル。
彼女については「とにかく一目惚れされる」という一点で、そういうの望む層には乗っかってもらえるんだろうか、分からない。私は嫌い。

年寄りパートも、そりゃ永遠に愛し合えたら素敵ではあるが、爺婆がヨタヨタしながらチュッチュしてる所見せられてもあまり…ゴメンちょっとキモい。
なんで一緒に死んでたの???
そんな事だろうと思ったけど、もう少し体裁繕って来てほしいものだわ。平たく言うと辻褄合わせてほしい。
二人の"身分"を乗り越えて、みたいに言われても、なんだか年老いた二人は(子供達含め)裕福そうだし、何が障害だったか全然分からない。引く手あまたの素敵な家に住んでね。
婚約者はハンサムでお金持ちで彼女に夢中で婚約中の浮気も責めない。
こんな「私お寿司も好きだけどステーキも大好きなの、でも毎日となるとどっちか選ぶなんて難しいわ」みたいな悩みを泣き喚きながら訴えられてもだな…。

サム・シェパード、ジェームズ・ガーナー、ジョアン・アレン、デイヴィッド・ソーントンと高齢組の安定した演技・姿と、いつも変わらぬジェームズ・マースデン(気の毒な婚約者)の能天気さに救われた。

君の膵臓が食べたい(アニメ版)

まあね、あんな風に話題になるモノにロクなモンは無いと、最初から構えて観てしまった部分はあるけれど。
疲れました

まず、ヒロインの女の子の性格が嫌い
最初から図書館で大声を出し注意を受けても改めないのを見てドン引きした。
病気で死期が迫ってても性格悪いとかマナー違反の免罪符になる訳じゃない。
その後も彼女の行動を見るに、終始うるさくて人の迷惑を顧みない無神経な子だった。

では男子の方はどうかと言うと、謎のテンションの低さで、結局なんだったんだこの子は、という印象。
いや、テンション異様に低いくらいじゃないと、もうすぐ死ぬ子にとことん付き合うなんてできないのかな。
その辺りは良く分からない。
こういう難病モノにお決まりの、泣いたりわめいたりが無かった分見やすかったかもしれないが。

ガムの奴はいい奴そうだったので、最後はちょっとホッコリしたけど。
怒ってばかりの"親友"は、"僕"とどうにかなるかと思ったけど違った。何しに出て来たんだか…うるさかったなぁあの子も。
まあね、"親友"に黙って死なれたら、荒れ狂う気持ちも分かるけど、でもうるさかったのは死ぬ前だしな。
本当に不思議なんだけど、今時の男子はこういう、うるさくて強引でワガママな女子が好きなの?
それとも、なんでもイニシアチブ取って引っ張ってもらわないと、女子と何の関係性も築けない子が多いのか。
そもそもコレを流行らせた層は、男子なのか女子なのか???
女子だとしたら、ボーッと無反応で誘えば着いて来る、自分に従う男子が好まれるのだろうか。

なぜ黙って死ぬことに拘ったのだろうか。
本当に親友だったのか???
そして、一方的に尾け回し振り回した"僕"に「私たちは恋なんかじゃない」と、わざわざの確認、それ受け入れて納得する男子も男子。
ラストに"僕"の名が明かされて、何か感動を促している様子だったが、それ以前の積み重なる感情が私の中に何も無いので、だから何?としか思えなかった。

CASSHERN(キャシャーン)

うーーーーーー。
気持ちは、分かる、のよね。
描き手ってのは、常にこういう欲求との闘いだ、と思うんだけど。

凝り凝りに凝りまくった画面。
意味深な台詞の数々に、いちいち真っ直ぐいかない手の込んだ演出。
反面ダイレクトに垂れ流される、作家の声らしきテーマ性の主張と。
マンガで言うと、時間無制限で描かれた同人誌なんかに載ってたりして、ものすご〜く全コマみっちり背景とか入っててトーンが重ね貼りしてあって、長い台詞が小さいフキダシにみっちりぎっしり入ってて人物にも影とかいちいち付けてあって、結果すごく画面が見辛くなってて、そして苦労して読破(なにしろ見辛いから)してみれば、どっかで聞いたような陳腐な事をキャラクターにただ喋らせてる。

と、いうような、印象でしたー。


追記
初回、TV放映を見て、あまりの退屈さに何度もウトウトしながらの鑑賞だったが、なんだか引っかかるモノはあったので、レンタルで再度観てみた。やはり眠くなるので、辛くなったらお休みして何度かに分けて、とにかく全部見た。

ごめんなさい。けっこう面白かった。
やはり内容は全然絞ってないタレ流し状態だし、観る側の根性も集中力も体力も慮って無いのは歴然としているが、CMを間に挟んで見て良いタイプの映画でなかった事は確かで、申し訳無く思った。
何度も中休みを経てやっと辿り着いたラストの回想シーンでは、図らずも涙ぐんでしまった。
寺島もいいパパだったのね…なんて思って、やっぱり戦争はイヤだなぁ、と、素直に思った。

映像も情報量が多過ぎてウンザリするが、樋口可南子の座る緑溢れる庭の美しさ等を見ると、映像センスは良いのだろうなと思う。
安っぽいCGはやっぱり好みじゃないけど、飛行艇で去るミッチーと下から睨む唐沢のシーン等は、恐ろしい程キマッていた。それが全然ストーリーに生かされて来ないあたりがまた、凡作たる所以だったりするんだが。
キャストは概ね美しく、むしろ真面目に内容を追わずボンヤリ美男美女を眺めるのが正解かも、とも思った。

クソ映画である事に変わりは無いが、それでもある種の"熱"がある、伝わって来る事は否めない。
そしてそれは、とても大切で尊い事だと思う。

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン


あらまあ。
面白いじゃないの。

ディカプリオ苦手、スピルバーグももういいや、って感じで、あまり期待してなかったんだけど。
さすが、腐ってもスピルバーグ、なんちゃって、腐ってないか。

詐欺師って、とっても興味深い。
そもそも物書きなんぞという者は、「どうやって人をだまくらかすか」に血道をあげてるヤカラなのだから、フィクションでだますか、実生活でだますかの違いだけ、かも。
残念ながら行動力も度胸も無く、頭脳の点でもかなり不足を感じるので、もし実行したら即オリの中だろうけど。
それではと、せめてマンガで描こうにも、法律面とか、 例えば小切手発行のシステムやら、パイロットの制服支給方法等の知識が無いと、こんな話は作れない、多分アイディアも出て来ない。
主人公のフランクは、体当たりで乗り切って行っちゃったんだけどね。
で、たまげた事には、これって実話、しかもフランクのモデルになった本人、つまり元詐欺師が、映画の監修に当たっているのよ(本名らしい!)。
すごい男がいたもんだ。

嫌いなレオ様主演でもノレたのは、話の面白さはモチロンだけど、恋愛のウェイトが低い事、子供役(高校生!)な事、そしてワキがしっかりしてる事。
タイタニック』なんて見ちゃいられなかったもんなあ。
恋愛中心のドラマで、主演男優が好みじゃないのって、キツイでしょ、感情移入できない。
それにレオって、良く見ればわりと背も高いんだけど、全然出来上がったオトナって感じがしなくって。
だから今回の「実は高校生」って役は、私的にはピタリとハマッたみたい。
そして、FBI捜査官トム・ハンクス、父親役のクリストファー・ウォーケン!
ハンクスは、まあいつも達者なので、今回の役なんか軽くこなしちゃってる感が無きにしもあらずだけど。
追う側と追われる側が惹かれ合うあたりの説得力は彼にかかっている。「子供だからだ」には、泣けた。
そしてパパ、詐欺師の素質はコイツ譲り、でも本人は事業に失敗して負け犬状態…、なんとまあ、負け犬の似合う男だろう、ウォーケン、健在。薄い水色の瞳が、いつ見ても、コワイんですけど。
こういうパパがいて、こんなママがいて、そして息子はこんなんで、という、とても分りやすい構図。
大感動はしないまでも、単純に楽しめる点でスピルバーグはサスガだ。

でもやっぱり、一番の主役は、数々の大胆不敵な詐欺の手口だろう。
パイロット、医者、弁護士と、一つでもなりすます事ができたら、どんなに面白い事か。
特に偽スチュワーデスを引き連れての空港のシーンは楽しい。
スッチーに弱いのは、日本の男性だけじゃないのね、なんて、私も空港でパイロットを眺めるのは大好きなので、あまり言えないんすけどね。

キャットウーマン 

まずはミシェル・ファイファーのキャットウーマンが好きすぎる。
だから、あれ以降多分誰が演じても私は「ダメだ」と感じてしまう、と思う。それくらい好き。

と、先にフォローしておきましたが。
退屈な映画でしたわ。
けっこう笑い所は押さえてると思うんだけど、なんか中途半端で笑い切れず。
化粧品で肌が大理石並みの固さになっちゃうとか最高なのに。しかもそれ演じてるのはシャロン@仕事選べよ・ストーン様ですよ(笑)。
ぶっちゃけ、シャロンさんが出てる間だけは目が覚めたんだけど。

ハル・ベリー、可愛いと思うし嫌いじゃないんだけど、だいたい感じるイマイチ感は何なんだろう?
今回に限らず、どうもガキっぽいと言うか成熟した女性という感じがしなくて、胸持ち上げて露出しても、お尻振って歩いても、全然色気が無いんだもん…と、ここまで書いてふと気になって調べたら、当時38歳!!!それは凄い。
むしろ少年のようだよね。
しなやかと言うよりは青くて硬い。猫より洋犬に近いイメージ。
それは得難い個性なのに、あまり生かされた映画は無いような…強いて挙げれば『X-MEN』シリーズくらいかな?いやオスカー女優に何をか言わんや、ではありますが。

アクションシーンもタルいし、CG丸分かりで取って付けたよう。猫っぽい動きも前述のようにしなやかな印象が無い。
ハルさんが「シャー!」とか「ミャオン♪」とかやっても寒いジョークにしか見えない。
猫ちゃん(本物)は激烈に綺麗で可愛かったけどさ…もうちょっと生かしてほしかった。
刑事とのアレコレも普通で退屈。ちょっと『キャッツ・アイ』でも観たんじゃないの、って思ったわ。

「硬くなった肌は痛みも感じないのよホーホホホ」なシャロンさんだけが、見所。
ラジー賞も納得の出来でした。

キャプテン・フィリップス

ああ、やはり実話ね(納得)。

正直あまり面白くはなかった。
臨場感や迫力は凄いし、安定のトムハンクスは大熱演なんですけど。
いや、だからこそ、かな?
もう最初からずっとギスギストゲトゲし続けてて、開始10分くらいで嫌になっちゃった…。

ソマリア海賊。
そうせざるを得ない、そんな環境、そんな国に生まれてしまった人々。
演者は皆見慣れぬ顔で、しかし皆痩せて小柄で弱そうな。
対する豊かなアメリカ、強大な海軍の軍事力、その割にモタモタしてるのも人質取られた弱みと言うより余裕に見えなくも無い、要は"弱いものいじめ"感が漂って、なんだか応援し切れない。

しかしソマリアからは来ないかもしれないが、日本近海だって隣国の怪しげな船が実はウヨウヨしているワケで、我が国はここまで守ってくれるのだろうか?
多分答えは、"否"だね。

9か月

今思えばすごい豪華キャスト。
これ全員にとって黒歴史ではないか?
全員が好演であるにもかかわらず。

ヒュー・グラントは大好きだし、こういったヘタレなロクデナシを演じたら右に出るハンサム俳優はいないと思っているのだが。
中途半端に"改心"してしまうし、改心してからが長くて退屈。
正直サミュエル(ヒュー)がレベッカ(ジュリアン・ムーア)に出て行かれた辺りから飽きて(茶番感満載)しまって、先の展開は見え見えで全く予想を裏切らないし視聴意欲はダダ下がり
妊婦二人が同時出産というのもジョーン・キューザックの妊娠発表の瞬間に予想が付いた。
破水して車に乗ってからは、さすがにこのままでは申し訳ないと思ったのか(笑)スラップスティック路線てんこ盛りだけど、全く笑えない。(やたら物を壊すの、好きだよね欧米人…全く無関係の他人様に迷惑掛ける様を笑うのも好みじゃない)
続く出産シーンもやたら長くて、なるようになってくだけ。

トム・アーノルドとジョーン・キューザックの夫婦が本当に無神経で失礼で、いくらヘタレなヒューと子供産みたい一心のムーアでも、よくまあ愛想笑いしてられるなと呆れた。
普通なら絶交モンだし元々友達でもないのにね。
姉一家にいきなり押し掛けられクズ呼ばわりの上臨終時の呪いまで掛けられ、親友には絵を貶められて「ゴッホの人生は嫌」と泣きを入れたゴールドブラムは何の救済措置も得られず終了。
子供を望まないというだけで!

ヒューの走り方は相変わらず笑えるし、若きジュリアン・ムーアは可愛らしいし、ロビン・ウィリアムスはトンチンカンな外国人に成り切ってるし、ゴールドブラムはエキゾチックでセクシー、トム・アーノルド&ジョーン・キューザックの熱演も素晴らしく下世話なバカ夫婦を見事演じている、にもかかわらず。
脚本や演出が根本的に不快なので、役者の熱演・好演が不快感を募らせるという珍しい映画。

キューティーブロンド/キューティーブロンド ハッピーMAX

「君はブロンドすぎる」とは、なかなかセンスの良い三くだり半(なんて言っても当人達には分からないだろうけど)。
で、フラれたブロンドのエルちゃんは奮起して名門大学に入学、絶対メゲない前向き思考と明るい笑顔で主席卒業を果たした上、顔と家柄は良くても頭の軽い元カレから、顔も頭も性格もステキな男性に乗り換えてのチョーハッピーエンド。
テンポが良く、エルことリース・ウェザースプーンの色とりどりのファッションも楽しくて、男を選ぶ目をも含めてヒロインの成長物語り&サクセスストーリーである。スカッとする、カワイイ映画。
…ところで、リースってどうなの!?
バービー人形を名乗るからには、もうちょっと整った美人でグラマーでなくちゃー。
なんて思った第一作。

そして続編、『ハッピーMAX』。
な、泣いちゃいました、ワタクシ。

卒業後弁護士になり、大学教授の彼との結婚も間近、幸せ絶頂のエル。
でも、愛犬(流行りのチワワ、こいつのファッションも取っ換え引っ換えで楽しめる)ブルーザーのママを結婚式に招待しようとしたら、ママ犬は化粧品会社の実験動物にされていた!
立ち上がるエル。間違った法律なら、変えればいいんだわ!
…私、犬ネタにはめっぽう弱いのよ。
南極物語で泣いたもんなあ。
だから、犬の出て来る映画で私が泣いても、いい映画とは限らないんだけどさあ。

泣けるかはともかく、社会人になったエルは前作よりパワーアップした感じ。
あの前向きさ、あの明るさには元気づけられる。
前回よりあか抜けて、ちょっとキレイになったみたい?だし。ファッションもますます楽しいし。
前作で射止めたダーリンは、今回あまり活躍しないけど、エルのボスになる議員のサリー・フィールドや、ライバルのグレース、同僚達、謎のドアマンと、脇にいい味の人々がいっぱい。
それぞれの事情にそれなりの説得力があって、楽しめる。
ライフル協会のコワモテのおじさんの「カミングアウト!」には、笑い&泣かされました。

話が大きくなった分、あまりにもハッピーエンド…ではあるけれど、いいよね、みんなでハッピーなんだから。

CUBE(キューブ)

んー、つまんない
だからなんだよ、ってのは置いといても、退屈したなあ。
たったの90分、命がけで脱出を図っている皆様には申し訳ないけど、眠かった。

面白かった『SOW-ソウ-』のコピーが、「『CUBE』meets 『セブン』」だとかで、良い評判を聞いてたし、期待し過ぎたかな。
ゲ−ム好きには楽しいんだろうか。
それ以外の何ものでもない気がする。
殆ど唯一の舞台である「キューブ」の中も、要するに四角だね、っていう、あと何だか意味不明の汚らしい装飾が施してあって、ただ不快な空間だから、ずっと見てるのイヤになっちゃうし。
脱出の手段が素数計算ってのも、面白いのか!?
盛り上がらないと思うけどなあ。
(恥ずかしながら私は、数字とキューブの移動がどう関係してるのか分からなかったんだけど、あれって常識範囲!?)
そして人物も、「極限状態で意外な本性が明らかに」を狙ってるんでしょうけど。
「意外」を狙うばかりで面白くもない上、誰にも思い入れできない、というか人間に見えない
どこまでもゲームの中、将棋の駒いやオセロかな(豹変するから・オヤジギャグでごめん)。

昔むかし、『トロン』っていうつまんな〜い映画(と私は思った)があって、ある種(どの種!?)の人々に大好評で不思議だったのを思い出した。

凶気の桜 

血気さかんな若者が大人の汚い手練手管に絡め取られる、というのはヤクザ映画のパターンだし、元々『不良』『ヤクザ』モノって好きじゃない。全然思い入れできないし、理不尽だし残酷だし。
この映画も例に漏れず、理不尽だし残酷。バカな主人公達に思い入れもできない。
それでも、最後まで緊張感が持続できたのは驚くべき事だ。
主演の窪塚&悪役の江口の"両洋介"のファンだから、というのももちろんあるが。

絵が美しいのが、まず良い。
気恥ずかしくなる程の「正義」を振りかざす"ネオ・トージョー"の若者三人組も、真っ白な特攻服姿はなかなか美的で、見苦しいファッションのヤンキー映画とは一線を画している。
結局なんで出て来たの?と、思わなくもないヒロインも、ビジュアルはとっても美人。
渋谷という舞台、雑踏、『アメぽん』と称するところの雑多さ。咲き誇る桜。日本刀。枯山水に血だまり。クライマックスシーンの窪塚の白と江口の黒に降りかかる、桜。
徹底して美的な、どこかナルシスティックなまでのこだわり画面は、そうそう、あの『キャシャーン』を彷彿とさせなくも、ない(笑)。
しかし決定的に違うところは、こちらはストーリーが分かり易く、中心がブレないところ。そして役者の演技が良いところ。脚本がちゃんとしてるし、人物もキッチリ色分けされている。なにより台詞がちゃんと聞き取れる(笑)。

「いつもイライラしてる」と言われる"武闘派右翼青年"の山口を、窪塚はまさしくイライラとカリカリと演じていて、いつもながら若さゆえの痛々しさがとても良い。TVではいい人役のイメージの強い江口洋介も、いつもの調子を逆手に取った底冷えのするようなワルぶりを見せてくれた。
この「いつも通り」な感じが、皆クセモノだ。

惜しむらくは、せっかくの桜がピンク過ぎた事。
まあ、好みと言ってしまえばそれまでだが、もっと清冽な、青味の入った桜色が良かったな。
それと、エンドロール後のシーンは全くの蛇足。
なんであんな余計な物を付け足してしまったのか、真剣に意味不明だわ。
それこそ狂気のごとく降り注ぐ桜で終われば、それで充分だったのに。
面白かっただけに、最後は本当に残念だ。

キラー・エリート

ジェイソン・ステイサム主演の映画にクライヴ・オーウェン、ロバート・デ・ニーロ御大まで!
と、ワクワクしたけど、映画自体はそれ程でも
アクションは凄いし、ステイサムのその種の魅力爆発だとは思うんだが、実話ベースのためかストーリーが単調でのめり込む要素が無かった。
それにステイサム強そう過ぎて、椅子に縛られても工事現場を落下してもあまりハラハラしない。

それでも、「ステイサムin脱B級」の心意気はヒシヒシと伝わって来た。
デニーロなんて渋くてかっこいいけど殆ど活躍せず、「ステイサム応援したいから出ちゃった」みたいな立ち位置だし。
クライヴ・オーウェンも地味ではあったが、そこはかと漂う哀愁が良い味でした。
冒頭の少年の瞳に硬直するシーンから、本命"暗殺"のくだりに至る流れは、至極"映画"らしい展開だし、薄味とはいえ恋人、友人、仲間への感情もそれなりに描かれていて、ステイサムもちゃんと演じていたと思う。
ただね、強そう過ぎるんだよね…負ける気がしないんだもん(笑)。

中盤までの、言っては何だが間抜けな程にうまくいかない暗殺計画。君達本当に「キラー・エリート」かい?
でもむしろリアリティはあるのかな?とも思った。
実践にアクシデントは付き物で、ちょっとしたタイミングで命を落とす仕事だというのは伝わって来る。
しかし公道で自殺偽装とか、ちょっと考えたらどんな邪魔が入るかと思いそうなものなのに。
新米の若造が敵と一緒に味方を撃ち抜いちゃうとか、間抜けだけどありそうだし、拘束されて逃げたら車に轢かれるとかも大いにありそう。
上述の二人は中ではキャラが立ってた(特に後者のドミニク・パーセルは存在感あった)事もあり、人の命がサクサク刈り取られる世界、という説得力はあった。
アラブの父子は絶妙に憎たらしくて不気味で、白人圏との絶望的な距離感を感じた。

後半戦で意外と人死にが少ないのは好印象。
アメリカ映画にありがちな「敵は全部潰したぜイェー!」みたいなノリじゃなくて、幕は降りてもまだまだ続くよ的な余韻が悪くない。
現実はそうなんだし。
単純に主要人物が生き残ってくれたのが嬉しいけど、この先も安泰とは限らないのよね。

女優さんは美人。ロシア系なのかな?
でもクセが無くて印象は薄い。
役柄的にも個性が薄く、むしろ誰でも当てはめられる線を狙ったのかな?と思う程。
そしてステイサムはハンサムで男前だけど恋愛は似合わない、と思わせるに十分な、二人の関係性に色気が全く漂わない(笑)。
まあ、幸せにやってくださいよ、というラストシーンでした。

嫌われ松子の一生

なんだこれ。
なんなんだ、私。
気付いたら泣きじゃくっていた。

松子はヘタクソな嘘をつく。他人に依存する。妬み、嫉む。攻撃さえする。愛に必ず見返りを求める。
なのに何だろう、この清々しさは。ボロクズのように落ちぶれた、晩年松子の清廉さは。
松子の解釈も判断も行動も、いちいちあまりに頓珍漢で責める気にもなれないせいか?
そしてここまでやっても少しのくすみも見せない、中谷美紀の透明感。
絵にも描けないテンコ盛り転落人生の、幕引き後に押し寄せるカタルシスは何事か???

過剰な色彩もオーバーアクトも、苦手なはずのミュージカル仕立てすらも、全てがカチリとあるべき所にハマッて心地良くエキサイティング。
ボニー・ピンクのソープ嬢も黒沢あすかのAV女優も最高!見事に最低男だらけの男性陣も良かった…だいたいは。
欲を言えば、"現代の若者"パートの瑛太とその彼女の役割がヌルかったと言うか、「人になにをしたかが大事」みたいな言葉はキーワードだと思うんだけど、内容的にシックリ来なかったかな、私としては。今に繋げる存在は絶対に必要なんだけど。
そして、どんなに言いつくろっても「自分はこんな人生はイヤだ」と思うのだけれど。
それでも、怒濤の展開の最後に松子が登る『階段』のシーンでは、本当に心を打ち抜かれた。納得してエンドマークを迎えられる、満足のラストシーンであった。涙で前が見えなかった。

しかし『レスラー』といい、こんな主人公にこんなに感情移入してしまう私、やばいかも。って言うかやってる事は全然違うのに他人事とは思えん部分が…ううう。
邦画も棄てたモンではないかも、と思わせてくれた、同監督の『下妻物語』を、軽く超えて彼方へ飛んで行ってしまった。

キリング・ミー・ソフトリー

まずね。
タイトルが、いいですネ〜♪
「優しく殺して」ですかね?それが邦題でも良かったと思うんだけど。
ヒロインのヘザー・グラハムも儚げで美しい。
相手役の疑惑の色男・ジョセフ・ファインズもミステリアスでセクシー。
…でも、こういうの、もういいやって。

悪くはないし、破綻も無いんだけど。
街の景色や室内の様子、時々雪山なんかも、絵がとても美しい。
おそらく呼び物であろう頻繁に出る濃厚なエロシーンも、無駄に美的
その美しさが内容の平凡さに呼応して、なんだか安っぽい。

まあ愛する夫はヘンタイとか、レイプの過去とかは、割と現実でもありそうな話ではあったが。
あまり心に迫らないのは、夫の設定が有名人とか、夫婦揃って美男美女過ぎるからか…???
何と言うか、あまり感情移入できない二人が、感情移入できない生活環境で困ってても、こちらとしては対処の仕様が無いと言いますか。
あの"被害者"女性も、最初から胡散臭かったしな。
レイプ証言でも怪しさダメ出ししてたし。
あと、ヘザーさんは美人なんだけど、脱ぐと痩せ過ぎてて痛々しいと言うか、私の好みではないと言うか。
(ちなみに私の好みはモニカ・ベルッチです)

ハラハラもドキドキも無い、ビックリも無い小綺麗なサスペンス、を装ったソフトポルノ
なんてこき下ろしてますが、実は嫌いじゃないの、この雰囲気。

キリング・ミー・ソフトリー (byココアちゃん)

これねー、期待して見た割にはさほどおもしろくも
サスペンス的でもなかったわね。
監督は中国の大巨匠のチェン・カイコー、
一番有名なのは「覇王別姫」だっけかな。
何でも、中国を離れて初めて外国で撮った作品でさ。
中国でない、ということは
「ヤッター!ハダカ撮れるぞー!エロだ!よっしゃー!」
ってわけさ。
さすがの巨匠も慣れてないもんだから景気よくやったつもりが
世界レベルから見れば凡庸、と。
それにオチの弟がらみ?のサスペンスは少々シラケて。
このへん家族愛が強いアジアテイストかな、と思ったんでした。

>

管理人のお返事:あー、監督、なんか中国名だと思ったら、ココアちゃんオススメの『北京ヴァイオリン』の人でしたか!
…そ、それは確かに、相当な開きがある………ははは。
金髪美人のヌードの前にテンパッちゃって実力出し切れなかったんでしょうか(笑)

面白くなりそうだったので残念だけど、あの雰囲気は嫌いじゃないんだよね、私。
エロ部分でなく絵面がとても美しかった。

美しく撮るとエロから離れる感じしない?
いわゆる「抜けない」ってやつ…あ、はしたなくて
ごめんなさい。
全然いやらしくなかった…って何を期待して見たんだか!苦笑。
ほら、「金瓶梅」とか「カーマスートラ」とかさあ。
ああいうのかな、って。笑。

麒麟の翼〜劇場版・新参者〜

途中経過は悪くなかったんだけど、結末の方向が見えて来たら視聴意欲がダダ下がり、被害者の死亡直前の事情が判明すると、「時間もったいなかったかも…」と、項垂れてしまった。
こういう無理矢理人情と言うか泣け泣け攻撃みたいなの、本当に苦手。

音楽がうるさい。
阿部ちゃんは相変わらずだが、相方役の若いのがイマイチだし、ガッキーも徹底して地味で、絵的に楽しくなかった。
劇団ひとりはいい感じで気持ち悪くて良かったが、水泳部顧問は似合わなすぎて最初から怪しんでしまった。
あと、細かい事だが水泳のフォームが酷くて笑ってしまった。
派遣を切られて意識不明重体の青年が、捜査線上で犯人と決め付けられそうになる流れや、下町の地の利に精通した主人公刑事と地元の人々とのやり取り等は面白かった。
TVドラマは未見だが、きっとけっこう面白かったんじゃないかな、と思ったし、普段TVドラマの映画化はロクなモンじゃないと思っているんだが、こういう良さはあるのだな、と考えを新たにした。

ナイフが腹にザックリ食い込んでいるのに助けも呼ばずに歩くとかワケ分からん。最期のメッセージも暗号過ぎで無理でしょ。
後味の悪さ、動機や心理の強引さは東野圭吾らしいと言えばそうだが、映像にされるとギャグすれすれのバカバカしさになってしまう。
本来、麒麟には翼は無い、という話が作中で語られるが、まさしく蛇足が目障りな凡作。
主演が船越さんなら2時間サスペンスだわ。

余談ながら、三浦友和&百恵夫妻の息子さんを初めて見た。
うん、その境遇でパッとしない理由が分かった気がするよ。

キル・ビル

ユマ・サーマン、本当は運動神経ニブイだろ。

タランティーノは日本のヤクザ映画のドマニアだって噂だから、あれは本気じゃなくてギャグなのかも知れん。あまり笑えんかった。
ルーシー・リューの姐さんは、悪くなかったけど。でも日本人としては、なんで中国人!?っていうのがどうしても残ってしまう訳で。日本には女優がいないんかい、コラッ、スピルバーグ!って、これは別の話か(笑)。
それにあの殺し屋達、今時あんな海賊みたいな目パッチして歩いてる奴いないって、しかも女。しかもTVシリーズで話題になった『ツインピークス』にもそういうキャラ出てたし。
それよかゴーゴーちゃんてネーミングはどーなのさ。気になってしょーがなかったわ。
あと、ユマ・サーマン、外反母子。治した方がいいって。
ヴァン・ヘルシング』のお姉ちゃんもそうだけど、いくら撮影技術が進んだって、アクションをやるにはある程度の資質がいると思うの。ドン臭い女がドタドタ走る映画はキライ。

あ、音楽はカッコ良かった。
大階段の下は血の海、って舞台設定も面白くはあった。
出演者達のつたない日本語に膝カックンを食わされるのも、たまたま日本人に生まれてしまってツイてなかっただけで、日本語分からなかったら緊迫して見えたのかも…うーん。

完結してなくて、『2』も出てるんだけど、観るのめんどくさいなあ。

疑惑 12/3

「女の戦い」なんて、割と軽率に使われる言葉ではあるが。
その最高峰を見せていただきました!
桃井かおりvs.岩下志麻ですよ!凄すぎる。

原作は松本清張。
流石です。
そして「鬼塚球磨子(おにづかくまこ)」という名を思い付いた時点で、清張先生は「勝った」と思ったんじゃなかろうか。
更に、シッカリした原作があるにも関わらず、クマ子役の桃井かおりが、まるで当て書きのように役にドンピシャ。
あの支離滅裂の暴走特急みたいな女、心が何処にあるのか分からない、多分自分でも分かってない女、並の頭脳では想像も付かないような破滅的・破壊的な女を、ちゃんと一個の人格として成り立たせてしまってる。
迎え撃つは岩下志麻姐さん、弁護士の佐原律子(こっちは普通の名前笑)。
『極道の妻たち』よりこちらが数年先だが、もうすでに萌芽はアリアリと見える。
氷の美貌にドスの効いた声、いつも端正な佇まいを崩さず、おそらく 高学歴で高収入。
クマ子と対照的に理路整然とし過ぎてて、誤解を受け易そうなタイプだが、まあ強い強い!絶対に折れない女。
こんな熊と虎みたいな女二人の対決の前では、鹿賀丈史やら小林稔侍なんて子リスかウサギちゃんみたい(笑)。
しかもその女二人が、立場上は被告と弁護人、という、いわば共闘体制に放り込まれる。
クマ子の人間性の異様さが目立つし、それが面白味でもあるのだが、実はこの佐原律子さんも相当変な人だよね。
彼女以前のおじさん弁護士達のように、逃げ出す気配すら見せない。あんな滅茶苦茶な被疑者なのに。

夜の埠頭で車が海に突っ込んだ。
乗っていた女性は自力で脱出し、男性は死亡。事故か、事件か!?
ここで、助かったクマ子に対する扱いが最初から酷いのだが。実は彼女が閉鎖的な田舎町で有名な名家の、悪名高い余所者の後妻と明かされる。
なるほど、この女は嫌われるわ、と納得。名家の奥方にしては品が無いし、とにかく太々しくて可愛気が無い。
夫殺害を疑われ(と言うより決め付けられ)ても刑事に真っ向から毒付く始末。
しかもその憎まれ口が妙に的確で、頭いいのか悪いのか、と混乱するんだが、問題は頭の良し悪しよりも性格の異常さだったというね。
刑事は亡夫の葬式でクマ子に遺体を見せ、反応を見ようとする。結果は想像のはるか斜め上。夫の遺体を前に盛大にえずくクマ子。
反応が想定外過ぎて判断も付かない(笑)

一方の弁護士・律子は、離婚して一人娘を夫(と、その浮気相手だった現妻)に取り上げられ、離婚時の取り決めで、時々娘に会える事だけがオアシスの日々。
超問題児クマ子の弁護を押し付けられ、初対面から「アンタの顔嫌い」と毒付かれ侮辱されても、平然と切り返して一歩も引かず、シッカリ言い返しながらも淡々と憎たらしい依頼人の無実を証明する。
頑張って勝訴したのにゲス記者には罵倒され(まるで冤罪にすべきと言いたげに!)、元夫の妻(=寝取り女)から娘に会う事まで禁じられ、無実を証明した当の被疑者クマ子にまで「夫が自殺だとバレちゃって保険金が降りない」と恨み言を言われて、もう踏んだり蹴ったりもいいところ。
鬼畜スペシャルは元夫の妻だよねー。律子さん弁護士なんだから、あんな申し出は自力でボコボコにできると思うんだけど、「私は子供は作らない」の一言で引いてしまう(泣)。最愛の娘を、抱きしめる事もなく、振り向きもせず。
当時の社会が「女が子を産まない」事に対して今よりずっと重たく捉えていた事情もあろうが、それにしても、まあ。
子供に会わせるって取り決めを覆した女が、子供産まないなんて守るワケないと思うんだけどね。
でもまあ、律子というのは、額面通り受け取って引いてしまう、そういう女なのね。

正直、律子自ら運転する車のブレーキにトラブルが…の件りは、ちょっとご都合感があったけどね。
結局決め手となった、クマ子の夫の息子の証言も…まあ思春期の少年には酷ではあったね。
一人抱え込むのも厳しいが、綺麗なおばちゃんに攻め立てられて、事実上父を殺した女を救う証言をさせられた、というのも、きっと一生残る傷になる。
悪いのは律子でも、クマ子ですらなく、父親だと思うけどね、私は。

証人は皆、巧みで面白かったが、山田五十鈴のバーのママと、鹿賀丈史のチンピラは最高!
本物にしか見えない(笑)。
加賀が若くて可愛いのも相まって、彼の存在感と説得力は大きかった。
軽犯罪を重ねながらも、どこか気のいい男。クマ子の出所に迎えに来たり。その女が殺人を犯したと思うと(記者に誘導されてとはいえ)正義感発動(笑)。でも誤ちはアッサリ認める。
「またムショに逆戻りだー」と言いながらも彼の表情が明るかったのは、この映画で数少ない救いに思えた。

裁判が終わり、祝杯を挙げるクマ子と、おそらく呼び出されたであろう律子。
懲りないクマ子に言いたい事を言う律子、吹き荒れるブリザードにお店のお姉ちゃん達は逃げ出して二人きり。しまいにはワインをぶっかけ合う。真っ白な律子のスーツがデロデロに赤ワインに染まる。
…あれっ、娘に会うなと言われた時と同じスーツ?もしかしてこの2シーンは繋がってる?
いやー、泣きっ面に蜂とはこの事か。もちろん律子は泣かないけど。
「アンタ自分を好きだと言える?」クマ子は問うし、多分律子も「なんだってこう…」と、少しは思っているんだろう。
でも変わらない、変わる気も無い。
そして、どんな障害があろうとも、クマ子も変わらない。
女二人は本当に気が合わないし、お互いを嫌いだと思うけど、クマ子がまた必要になったら律子に弁護を依頼するだろうし、律子もそれを引き受けて全力で弁護するんでしょうね。
真っ白いスーツの半身を赤く染めて、立ち去る律子の背中は、やっぱり真っ直ぐで美しかった。

ラスト、町を離れるため電車に乗るクマ子に、周囲の好奇の目が集中する。
今だったら写メ攻撃、インスタの餌食だろうね。
走り出した電車の中で「ふっ」と微笑う、あの微笑みは何だったのだろうか。

色々考えさせられるような、でもこんな物凄い女達の事は考えても無駄なような。

キング・アーサー

う〜ん。地味
真面目に作った壮大な英雄冒険物語なんだけど、どうもパッとしない印象。

タイトルから知れる通り、かの有名なア−サ−王の伝説をベースに「新説・ア−サ−王」とでもいうあたりを狙ったんだろうけど、あまり的を射ているとは思えないんだよね。
まず時代が、通常語られる伝説よりずっと前、という設定(根拠はあるらしいが)なんで、衣装も小道具も、とっても原始的で、地味。
そして、『トロイ』もそうだったけど、神秘的要素を排除してリアルな解釈に終止していて、エクスカリバーのエピソードとか、せこいせこい。マーリンも妖術使いの噂こそあれ、普通のただのおじさんで、存在感は薄く、敵から味方に換わる動機もイマイチパッとしない。
おまけに円卓の騎士が、7人しかいない!
加えて致命的なのは、アーサーとランスロットの印象が似ていて、せっかくのストーリーに集中できなかった事。
他の騎士達も誰が誰やら、3種類位にしか分類できないうちにバタバタと倒されてしまった。

アーサーの王妃になるグウィネヴィアは、なかなか良かった。
このところお気に入りの美人、キーラ・ライトウェイ。
パイレーツ・オブ・カリビアン』をパワーアップしたみたいな「お転婆姫」。
でも一人だけ、寒そうだったんですけど(笑)。

戦闘シーンは、とても迫力があって、特に氷の上のシーンは圧巻。
だからこそ、誰が誰やら把握できないままにあそこへ突入してしまったのは惜しい。
ウィネヴィアと共に教会から救われた少年や、救出された偉いさんの坊っちゃん、子だくさんの騎士と妻、等など、面白くなりそうな関係がいっぱいあって、どれもイマイチ平易で残念。そもそもアーサーとウィネヴィアの関係が、何だか薄くて唐突なんだもの。
伝説では最も有名だろう、ウィネヴィアとランスロットの恋のエピソードも出て来ないわりに、ランスロットが倒れた時のウィネヴィアの様子は妙に思わせぶりで、ひょっとして編集上の理由?などと勘ぐりたくなる中途半端ぶりだ。
元々鎧姿の騎士が馬にまたがってるだけで大興奮のはずの私が、けっこう引いて観てしまったのだから。

お金もかけ、手間暇も惜しまず、魅力的な題材を扱って、なんとも惜しい出来上がり、というのが、正直な感想でした。

キング・コング 

「美女が野獣を殺したんだ」
ちがう。
殺したのは誰が見たってオマエだろーが。
美女が野獣を殺したんじゃない、ブタが サルを殺したんだ

なんだかなぁ。
こんなにお金使っちゃって、まあ。
ロード・オブ・ザ・リング』が全っ然ダメだった私なんで、ノレないかな、とは思っていたんだが。サルも嫌いだしさ。
本当に、この監督は汚い物、醜い物、グロい物が好きなんだね。
長い長い上映時間中、殆どそういう不快な物を見せられ続けて、唯一とも言える綺麗所がナオミ・ワッツじゃ地味過ぎてパワー不足。可愛いけどさ。全然ゴ〜ジャスじゃないんだもん。
純愛とか言うなよー気持ちが悪い。
ナオミちゃんはヘンタイかい。
長くて辛い退屈極まりない3時間余だったわ。

不快極まりない事に変わりは無いんだが、唯一興味をそそられたのは、あの映画監督。しかし見苦しい男だったな。
登場人物中唯一マトモな人間だが全く役に立たない(狂気の世界なのだから無理もない)エイドリアン・ブロディの「彼は周囲を破壊しつくす」ってセリフで、一瞬目が覚めた気分になった。いや、寝てませんけど。
観客の多くが、あのアホなサルに思い入れをして観てるらしい事を知ってビックリしてしまった。「カワイイ」とか言ってやんの……(脱力)。あるいはヒーローとかね。
基本的に、「サルが暴れて何が楽しいか」と思っているんで、私が楽しめないのは映画の出来の問題以前かもしれないな。『ロード…』は「コビトが旅して何が…(以下同文)」と思ってたし。

なんかナオミワッツ、手乗り文鳥みたいだったな……そう考えれば、文鳥の気持ちをいちいち量りかねて困っていた私のトンチンカンぶりが見えて来る。
上映中ずっと、「ナニ考えてんだこの女」とか、「こんなイカレたブ男に人が同調するのはナゼだ」とか、「道を歩いてただけで巨大サルに掴まれて投げ捨てられた金髪の皆さんのその後は」なんて考えちゃいけないんだ、と自分に言い聞かせるのに疲れてしまった。ああ、くだらない


キングダム・オブ・ヘブン  

オーランド・ブルーム。
綺麗だけどちょっと線が細くて、薄い感じでイマイチ…と、思っていたけど、かっこよくなって来ました。
いやいや、希代の男惚れ監督リドリー・スコットだからかも。
取りあえず、映画はシブくスケールは大きく、男優陣は素敵でした。
特に、騎士姿が異常に似合うリーアム・ニーソン父ちゃんと、サラディン役のハッサン・マスード(シリアの俳優!)はむっちゃかっこいい。
キャスト表を見てたらエドワード・ノートン…?おー!良かった。分からなかったけど、良かった。さすがだ。

絵が美しくて、例えば砂漠に一人ポツンとオーランドが立つシーンとか、森の中での騎馬シーンとか、何気無いシーンでも鮮やかに目に焼き付いた。
もちろん、合戦シーンは物凄いんだけど、これってもう、あちこちで観てしまってるしな………、まあ、重厚さで一歩リード、かな。
城壁の燃えるシーンも見応えタップリ。砂漠での騎馬軍団にも、胸が高鳴る。
オーランド演ずるバリアンは、(なんであんなに強いの!?という疑問は残るものの)父の手ほどきで会得した剣術で、ひらりと振りかぶる姿が美しく印象的。ごつい兵士達の中で細身の彼に良く似合う。

でもって、またまた「王女と恋」である。
この「恋」が、なんか良く分からなくて、あの王女がなぜバリアンに恋したのか、妻の自殺からバリアンがいつの間に立ち直ったのか、とか、けちを付ければきりがないんだが。
まあいいでしょ、この映画の本題は、やっぱり「意気に感じる」「侠気(おとこぎ)に惚れる」って世界、女の出る幕は少ないのね。
しかし王女の衣装は素晴らしく美しかった。それだけでも登場の価値はアリ。
そんな事より、死病に冒されながらも威厳を失わぬ王、敵ながらあっぱれの貫禄と風格のサラディン、そしてどこまでも勇敢で誠実、真摯なバリアンの、「男惚れキャラ」を堪能しよう。

キンダガートン・コップ 

ライトマンねぇ……シュワちゃん出演作だとコレといい『ジュニア』といい、コメディと呼ぶにはイマイチ笑えないんだよね。
つまらないワケでもないんだけど。
なんか設定がシュールな割に展開は予定調和と言うか…あ、設定も展開もシュールでは付いて来られる人が限られてしまうか(笑)。
いかにも無骨な大男のシュワちゃんが、子供達にモミクチャにされて悪戦苦闘する図は確かに面白かったし、馴染んで来て一緒に歌うシーンなんかも楽しかった。
でも、軍隊式に幼稚園児を訓練するのは(私が日本人だからか?)抵抗があったし、何より縦糸の「事件」との噛み合わせがイマイチ。

マフィアのママ役のキャロル・ベイカーがかっこいい!貫禄とエレガンス。ヤラレ方はショボくて気の毒だったが(笑)。
"ハリウッドの菅井きん"、リンダ・ハントの校長先生もハマり役。DV男の件では最高に可愛かった。
相棒役のパメラ・リードも良かった。面白くて元気で、ああいう人、いそう。
一応ヒロインのペネロープ・アン・ミラーは…、可愛いんだけどこの人、何となく印象が弱いと言うか、シュワのラブシーンが下手なのと相まって、「ちょっと憧れの生徒のママ(兼同僚)」から「ガチの恋愛相手」への移行が自然に感じられなかった。
「君を失いたくない」からのキスシーンは、何と言うか…はははは。私が照れてどうする。

大悪党でも所詮は人の子いや人の親、という所か、元嫁を血眼で探してたのは息子可愛さだったというオチも、弱いと言えば弱い。子供の母親を主役のお相手にしてしまったので、本当にネコババしてました、にはできないでしょうが。
それから、目撃者の女の子が殺されて「クソッ!」とか一言で終わりってのは無いでしょ。あんなに怖がってたのをストーカーまがいのしつこさで証言を強要しておいて、もう少し引きずるなり悔やむなりを見せてもらわないとモヤモヤする。
だって変わり果てたシンディの直後に学園祭で美人とはしゃぐ姿だよ?で「クソッ!」で終了。
そういう所が甘いと言うか雑な作りで、心から応援できないんだよね…。

でも、シュワと大量の子供を噛ませたのはグッジョブ。無駄なデカさと陽気な愛嬌が引き立つよね。いかにも不器用そうな身体の動きが、取り扱い注意の小さな身体に囲まれる図は面白い。
イタチの存在も良かった。ちょっと珍しくて、過剰に可愛すぎず、カンジンなところで大活躍してくれる!イタチ最高!(笑)

ターミネーター』で一躍世に躍り出た"元ビルダー"が、世界的アイドルスターになるためには、こういうユルい一面も必要だったのだろう。むしろシュワルツェネッガーという人の魅力の底力は、こういう間抜けな陽気さにこそある、と思う。
そういう意味では、ライトマンさんには感謝、である。

追記:ところで以前、「欧米では女性が別世界へ嫁ぐのが不文律か」と書いた。
移住するのは女性(『ニューヨークの恋人』『『カラー・オブ・ハート』)。もしくは切ないお別れ(『刑事ジョン・ブック 目撃者』)。それが定番だった。
でも、この映画の結末は刑事が幼稚園に転職し、別世界へ移り住む。
上記のように、いささか軽率で雑な造りのライトマンだから、過剰な評価は控えたいが(笑)、それでも「シュワルツェネッガーという企画」はやはり、面白いものだったな、と思う。

追記2:と、思ったら『スプラッシュ』がありました、男の方が海へ行っちゃうの。
『キンダー〜』は1990年、『スプラッシュ』は1984年公開だから、こっちが早かった。
ちょっとこじ付け過ぎだったかな?反省(笑)。

久しぶりに見返して、やっぱり校長先生のファイティングポーズが最強に可愛い

銀魂

これ原作ファンじゃないと入って行けないような…。
原作、アニメ共に殆ど未見の私には、けっこうキツかったわ。

和洋折衷、ギャグにアクション、濃いキャラ付け、登場人物多い、と、劇団☆新感線テイストを感じる楽しい設定。
「宇宙一バカな侍」は白の着流しをパンクに着崩し、二丁拳銃のスレンダー美女、ロン毛美形の剣豪、巨大な犬にオバQ(違うようだ)にと役者は揃い、お江戸の街並みの背後にはビル群。人を食い潰す妖刀に飛行船の上での大立ち回り。
若手の元気な人たちをいっぱい集めた豪華キャストで、好きな要素満載なんだけどな−なんだかなー。

まずギャグが寒過ぎて辛くなる。
橋本環奈ちゃんに鼻ほじらせんでも(泣)「下着のシミ」と連呼させたりとか…シレッとやってくれる環奈ちゃんは好きだけど。
でもCGで頬を真っ赤に染める菜々緒はちょっと可愛かった。
多分マンガでは笑えるものもあったんだろうけど、笑いってネタだけじゃないからね。絵面とか、タイミングとか。
もしかしたらマンガ向きのギャグと実写向きのギャグって違うのかもしれないな。

女性陣の衣装が皆朱赤系で、なぜ?と気になってしまった。
これも原画がそうなのかな…少しずつ色味は違えてるんでしょうが、ちょっとつまらない。
あと犬は本物を使ってほしいところ。眉毛だけ描いて拡大すればいいやん?虐待?

菅田君とヤスケンが良かった。環奈ちゃんと菜々緒のビジュアルも良い。岡田将生はヘンな髪型でも美形(笑)。柳楽優弥も存在感あったな。
小栗君もまあ…立ち姿はサマになってた。個人的好みで言うならバカさが足りない。ついでにシリアス時の迫力も。ギャップ大事!

全体的に、ちょっと豪華なコスプレ大会といった印象で、あまり本気の覚悟は見えない。
(監督はかの『変態仮面』と同じ人なのに、このガチ感の差は何だろう?ただの私の好みだったりして笑)
衣装や髪型も、室内の調度や船の甲板とかも、多分わざとなんでしょうが安っぽく薄っぺらで世界に入って行きにくかった。
あとキンキ剛が不細工過ぎ。
あ、あとあと、エリザベスが泣くとこ、超絶可愛かった

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