あ行  あで始まるタイトルの映画

アース

この手の自然観察映像、大好きなんだけど。
そして映像は本当に素晴らしかったんですけどね。
ちょと、飽きてしまいました、残念。
劇場の大画面で観れば、圧倒されたと思うんだけど、自宅の小さいTVでは、本当に制作サイドに申し訳ない。

とはいえ、やはり飽きるには理由があると言うか、言い訳をさせていただけば、散漫なんだもん。
元々BBCのTVドキュメンタリーのために撮った映像を編集したそうなので、要は編集時の志の問題だと思うのよ。
だってただ地球を縦断してるだけだもんねぇ。
多分元ネタの『プラネットアース』という番組は、どれを取っても本作よりずっと面白いんだと思う。
ダイジェスト版というのはだいたい面白くないものだが、素材の素晴らしさを思うと本当に残念な出来だ。
いえ、映像は本当に素晴らしいのよ。動物カワイイし。うん。

アイ アム サム


いや〜、スゴイのなんの!
演技派ショーン・ペンの、お見事すぎるノ−タリン芝居
フォレスト・ガンプ』なんてメじゃないって。
 
「知的障害のある男性」サムと、父に似ず賢い幼い娘ルーシーとの愛の物語。
娘役を天才子役ダコタ・ファニングちゃんがやっていて、こちらも感動モノの見事さ。
普通天才子役と呼ばれる子供って、顔イマイチだったりするんだけど、この子はちゃんと美少女。こまっちゃくれてはいるけどイヤ味が無くて、いじらしく、凛々しく、頑張るわけさ。
そんなモンが登場したら、全部持ってかれて当たり前。「子役と動物には食われる」とかって言うじゃない。
でも、ショーン・ペンは負けない。映画のタイトルはあくまでも、『アイ アム サム』だ。

7歳児程度の知能しか無いと言われるサム。善良で、無邪気で、人が好きで、とてもとても優しい男。
知的障害のある人が純粋で正直、とかいう考え方は好きじゃない。ただ「サムはいい奴」なんだとストレートに感じる。最愛の娘とブランコに二人乗りする顔を見よ!すごいから。
そうそう、『レインマン』もメじゃないな。

弁護士リタ役のミシェル・ファイファーも、とてもいい。
いきなり飛び込んで来たサムの存在にとまどいながらも、大切な物を見い出して行く姿は感動的だ。
サムとルーシーの親子愛の物語に、このリタの人生の物語がからむ2本立てだから、ひねくれ者の私でも素直に泣けたのかも知れない。
裁判でも活躍する、サムと似たり寄ったりの御近所さん達や、サムの職場(スタバだ!)の人々もいい。ルーシーの里親の女性もいい。みんな血の通った人間らしく、誰も完璧でなく、誰も悪人じゃない。

そしてもう一つ、全編を通じて流れるビートルズのカバ−曲の数々。
恥ずかしながら、初めてビートルズ、いいと思ったな。
ただのBGMではなく、サムがビートルズの大ファンという設定で、音楽はストーリーに、つまりは人生に食い込んで来る。
サムが赤ん坊の名を思い付く時。そのルーシーがカメラ目線で父への愛を宣言する時。
世界中の人々が、こんな風にビートルズと付き合って来たんだろうな、と思うと、それだけでハートウォーミング。作り手の敬愛の念が、ひしひしと伝わって来る。

きつくない人生なんて、きっとどこにも無い。
美しい音楽と、大好きな人々と、何よりも自分の魂を大切にしよう。
そうすればきっと、きつい事も幸せな気持ちで乗り越えてゆける。
…なんて素敵なメッセージ。
天才役者ペンと天才少女ダコタちゃんのガチンコ勝負に、ミもフタもないヤサグレっぷりがいかすファイファーが参戦。
感動ドラマとしても、達者な演技を拝見するにも、またとない映画だ。
 
 

アイ・アム・レジェンド 

犬〜犬ぅう〜〜〜〜。

開始直後からワンコに釘付け
犬犬思いながら見ていたら、ああ、やな展開だな、これは私の大嫌いな…と、思ったら案の定。
終盤3分の1を残して、著しく視聴意欲を削がれた……ううう、犬ぅ。サムぅ〜。
女子供で犬の代わりが務まると思うなよ!(怒)

真面目な話、「犬死亡注意マーク」とか付けておいてほしいわ。
公開時のポスターだって犬と二人連れだし、このコンビの話だと思うじゃん。
死に別れにしても、ラストまで引っ張ってほしかった。
あーあ、と思ったけど泣く気にもなれず、意外にもボブ・マーリーのくだりで涙ぐんでしまったけれど。

あまりに極端な設定で、しかも妙に凝った時系列で進むから、前半は何か見逃したかと何度も思った。
"ダーク・シーカーズ"のデザインも動きも、あまりにもゾンビ過ぎて興醒め。殆どシューティングゲーム感覚じゃん。
前半の孤独な生活描写がなかなか面白かった(犬の魅力によるところ大だが)ので、ますます残念だ。
…けど普通に電気、使ってたよね?ガソリンも使い放題。お湯で犬まで洗っちゃう。コレで「生存者なんていないんだ」と決め付ける"科学者"って、どういう……???
それと、キリスト教圏ではどうか知らないが、神様の話題が唐突に過ぎて、安っぽく感じた。出てもいいけど、それなりの下準備はしてほしい…って、キリスト教の人は常時準備OKなのか、どうなんでしょ。
サムはオトコノコだと思い込んで見てたから、危篤状態になって初めて「サマンサ」だったんだ!『奥さまは魔女』ですかいっ!?って、無駄なところで驚いたわ(笑)。

ウィル・スミスは背中が綺麗で、大型犬との列びがとても絵になる。廃墟と化した大都会のモノクロ世界に好く映える。
重ねて詰めの甘さが残念な映画だった。

アイアンマン 

もうこの手のアメリカ版ドンパチ映画はダメなのかも、私。
本当に最初から最後までイライラと脱力の繰り返し。

富豪の二代目で武器を売って自己弁護に胸を張り、自分に被害が及んだらその武器でもってまた相手を潰しにかかり。
美人の女子大生のインタビューにセクハラ発言で対応し、てっきり美女の華麗な回し蹴りでも見せてもらえるかと思いきや、まんまとベッドに連れ込んだ挙げ句、女性秘書に無礼な態度で追い払わせる。
やっとマトモそうな人が出て来て、ああここに感情移入したらいいのかと思った矢先退場〜その後一切振り返られる事すらない、インセン。
グウィネス・パルトロウ、ジェフ・ブリッジスと、私好みの名優を揃えておきながら魅力と演技力の無駄使い(グウィネスのお尻は素敵でしたが)って言うか私、R.D.Jrの良さが全然分からない………orz

しまいには「私がアイアンマンです」と満面の笑顔。
ストイシズムのカケラもない、「だってオレサマがやりたいんだもん♪金持ちで強いんだから文句無いよね?」という。アメリカ、という国がすでにもう、そういう存在なのかも知れない。低脳なまま腕力と財力だけで自己肯定を続けて、もう言い訳するのさえ面倒臭くなってる。精神年齢は小学校低学年、男子限定。
うら寂しい話ではある。

愛がこわれるとき

チョビ髭こえぇ〜(笑)

サイコな侵入者をブチ殺す、の変形パターン。
DV夫から死を偽装工作してまで逃げ出した妻、しぶとく追って来るチョビ髭(夫)。
新しいBFは、殆どオニギヤカシ程度で活躍はせず、正直予想通りのパターン展開でしかなかったんだが。
夫のDVっぷりの小出し具合が面白くて、前半はかなり楽しめた。
海辺の異様に美しいガラス張りの豪邸も素敵。でも素敵過ぎて、多分暮らすには疲れそうで、そんな所も象徴的に良く出来ていると思った。
そのガラスの中で鍛えまくるチョビ髭のマッチョな身体は、とても怖い。女なんて所詮、こんなのに本気出されたらどうしようもないのよ、とヒシヒシと実感する。
逃げて以降の中盤の、まだ来ない夫の影に怯える描写も緊張感があった。

かの『プリティ・ウーマン』の翌年の公開という事で、ジュリア・ロバーツはなるほど若くて美しい。
でもこういうしおらしいシリアスな役は、彼女の魅力を存分に引き出すとは言い難い、かな。
結局は"侵入者"を一人で始末してしまうワケだが、映画の殆どの部分を怯えたり泣いたり悩んだりしていて、この後の活躍の方向性、(『プリティ・ウーマン』にも片鱗はあったが)強くて強引で下品で大口開けて笑う、というイメージとはかなり違う。
この方向ではタダの脚の綺麗な女優で終わってたでしょうね。

しかしDV夫が裕福設定のせいか、ヒロインの着るドレスがどれも素敵でした。
月700ドルで借りられる一軒家も素敵。
大筋は薄いのだが、映像が美しく、細部の不安描写がうまくて、意外に見応えがあった。

アイデンティティー

うーん、面白いっちゃあ、そうなんだけど。
ジョン・キューザックって、ビミョ〜にキモいでしょ。
そういう意味では、ハマリ役かも。

「ビリー・ミリガン」の本なんか夢中で読んだし、TVドラマ『ヤヌスの鏡』も面白かった。
興味深いテーマではあるし、なかなか真面目に丁寧に作ってあるとは思うんですよ。
けっこうハラハラしたし、ビックリもさせられた。
謎解きやドンデン返しが一杯あって、そういう点でサービスは上々だったし。
救いが無さ過ぎるのと、ちょっとやり過ぎであざとい感じがするのが、イマイチこの映画を好きになれない理由かな。

モーテルでの連続殺人事件を真剣に追っていたので、ちょっと肩すかしを食った気はしたな。
未だにあのキイはなんだったのか?
映画的に怖がらせるためだけの手段にしか見えなくて、そういうのってあまり好かんのだけど。
まあ、登場人物が多いので、整理券みたいなモンかしら。
モーテルの展開は、けっこう面白くて、脅かし方、怖がらせ方はイケてた、上着を脱いだ警官の背中に血がベットリとか、そういうの、わりと好き。
でもまあ、ビックリって点では、いいのかも、1本くらいああいう映画があっても。
最後の最後のオチも、イヤ〜な話になっちゃったけど、なんか分かる気もするし。

一緒に観た友人が、「あの(売春婦の)女の人が鏡見ちゃったら、ジョン・キューザックのショックどころじゃないですよね」と言ったのには笑ったな。

アイランド 

またしても、古色蒼然たるSFの映像化。
まあ、CG技術の進歩で、「もはや不可能は無い」時代なので、往年のSFファンなら実際に目で見たい、と思うかも知れず、古臭いストーリーをなんで今更……とは、言うまい。
実際、バカみたいに真面目に作ってるクローン牧場のセットとか、それなりに面白かった。製造過程の絵とか、影で吐きそうなブシェミとか(笑)。
このご時世に、あえてCGに頼らず、セットにロケにスタントで、すごい頑張ってる感は伝わって来て、そういう態度は評価したい、のは山々だし。

でも、なにしろ、長い
136分は上映時間としても長いけど、それ以上に話の焦点がズレまくりで飽きてしまう。(多分お得意なんだろう)カーアクションも長過ぎるし派手過ぎてかえって単調に感じてしまう。あそこにそこまで力(金も)使う必要あるか?無い

スカーレット・ヨハンソンって、やっぱりカワイイな。
かなり走ったり飛んだり銃扱ったり、可愛らしい顔のイメージに反して動きもキレイ。金髪も、良く似合って素敵。
ブシェミ、唯一の人間臭いキャラで、ちょっと救われた……もう少し頑張って欲しかった(笑)。

アウト・オブ・サイト

まあ軽いロマコメと言いましょうか。
ただ主演が天下の伊達男ジョージ・クルーニーと超セクシーボディのジェニファー・ロペスという事で、目には楽しい映画でしたわ。

しかし内容は…と、言うとまあ、「くだらない」の一言だな、と。
まあアクティブ版ロミオとジュリエットと言えなくも無いけど。
いい大人だからねー。
シチュエーションに障害があればある程盛り上がるものだけど、ハードルが高過ぎるとバカバカしくなってしまう、その失敗例だと思うんだけど。
コメディだからまあいいや、と言う程には笑えなかったし。
金魚のシーンでドン引きして笑う気分じゃなくなったのもあるかな。

ところで娘の誕生日祝いにパパが銃をプレゼントするって、アチラでは普通の感覚なのかな?
まあ違法ではないんでしょうし、娘の職業柄使ってて当たり前のモノではあるんだけど。
あのパパの存在も、何だか良く分からなかったな。
ロペスには恋人がいたはずなんだけど、その辺も適当に流されちゃったし。
葛藤も、驚きも罪悪感も無く、ふざけた犯罪を繰り返す男と恋に落ちる女警官。
この盛り上がり無さ、感情の平坦さが、観る人によってはオシャレに感じるのだろうか。
どうもそんな気がする(笑)。

オシャレと言えば、冒頭の銀行強盗シーンはなかなかオシャレで面白かったかも。
ハンサムなジョージ・クルーニーの本領発揮という感じだった。
でもずーっとあのテイストが続くとなるとねぇ…はあ。
多分この、ジャックという男の本気出したとこが全然見えないのがダメなのかな?
深刻なシーンでも余裕を見せるのは粋とも言うが、コイツはチャランポランにしか見えない。
女口説く時だけ真剣な顔されてもねぇ。

えっナンシー・アレン出てたの!?
って、あれか!
びっくり。言われてみれば。
そういえばあの、のこのこ助けに戻るとこは良かったな。危ないと分かってて留まるリプリーさんも男前。
そもそもリプリーさんとこでありがたく働いてりゃいのに、ってのはあるけど(笑)。

ラストシーンも思わせぶりで、まあ好きにやってろや、という感じではあったけど。
後味が悪くないのはいいけど、あまり祝福したい気持ちにもならない。
どこまでも主役の二人が遠い映画だった。

やっぱりソダーバーグさんは苦手、って言うか、面白さが分からないわ。
『トラフィック』ってのが評判いいようだから、今度見てみたいな。
あ、『エリン・ブロコビッチ』は好き。なんでだろ。

アウトレイジ

いやぁ。
濃いです、クドいです。
さながら「殺し方カタログ」みたいに、まあ簡単にアノ手コノ手で人が死ぬ死ぬ。
しかし、殺伐とした中にも笑いどころが散りばめられて、思わず吹き出しては反省?してしまう、「こんなトコで笑っちゃうワタシって…」と。
かつて『毒ガス』と呼ばれたタケシの真骨頂なのか?実はワタシ、タケちゃんの漫才は殆ど見た事が無いので、良く分からない。

このところ、映画監督・北野武は、ちょっと迷走していたように思う。
全部観てるワケじゃないが、初期の数作はかなり好みで、尊敬する監督の一人でもある。
しかし今回は、迷走からは脱した感があるものの、以前とは全く違うタイプの造りになっていて、"ファン"としてはいささか戸惑いもあった。
何と言うか、分かり易い…易過ぎて。
ヒネッたモノを造っていたのが、もう一ヒネりしてみたら反対向きでマッスグになっちゃった、みたいな(笑)???
何度か見たら、また違うのかも知れず、再会が楽しみでもあるけれど。

しかし、面白いのは間違い無い。
サクサクと無情に進むテンポの良い殺戮。思わず生唾飲み込む、かっこいい絵ズラ。微妙にズレて行く会話の楽しさは相変わらずだが、なにしろ皆すぐ死んじゃうのであっけない(笑)。
それにしても、"いつものメンバー"をほぼ一掃した出演陣〜TVで見慣れた人も無名の人も〜俳優さん達の、誰も彼もの素敵な事!
キャッチコピー『全員悪人』は看板に偽り無し。とにかく皆が腹黒くドライで悪いんだが、『ワル』というのは男性の細胞を活性化するんだろうか、ってくらい、皆生き生きとワルい。
まず北村総一朗おじさまにビックリ!意外性と言えば三浦友和も凄い、加瀬亮も良い。苦手だった椎名桔平も初めていいなと思えたし、何と言っても石橋蓮司が!!!(笑)かわいそうで……(爆笑)ああ、ひどい。
どう見てもサラリーマンにしか見えない組員の人も良かったな。あれは騙されるわ。そして小日向さん、塚本君も、ハイクオリティ。
"役者"タケシに関しては、まあ毎回必ず出なくてもいいとは思うんだけど、今回は良かった。
あの棄てられた犬みたいな目がね。殺伐とした中で非情になり切れない半端ぶりに説得力があったな。
そう言えば私がこの人に注目したのって、『戦場のメリークリスマス』が最初だったっけ。私にとっては役者が馴れ初めだったんだな。

続編の制作も進んでいるようで、楽しみなんだけど、メンバーは大半が死んでしまったので大幅入れ替えで、発表を見た限りではちょっとレベルダウンかな?という印象なんだけど。
次回もまた"北野マジック"で、ベテラン俳優さんの思わぬ顔を見せてもらえる事に期待したい。

アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事! 

うーん。狙い過ぎ、なのかな?
笑える所はすごく笑えるんだけど、途中ダレてしまって眠くなる事数回。
小ネタはパンチが効いてるが、大筋がつまらない、という事か。
主演の二人、ウィル・フェレルとマーク・ウォールバーグというのも、嫌いじゃないけど華は無い
サミュエル・L・ジャクソンとドウェイン・ジョンソンの豪華コンビの無駄使いとか、相変わらず超ホットなエヴァ・メンデスのバカッぷりに、マイケル・キートンもイイ感じで、なかなかキャストに力入ってるんだけど。

エロゲーの音声の流れるタイミングとか、"賄賂"の件とか、"ムチとムチ"のシーン、お婆ちゃんの伝言とか呼び子とか、大笑いしたんだけどなぁ。
カーチェイスや銃撃戦等、アクション面では相当派手にお金と手間暇掛けてる感があるし、「脇役の人生」という素敵なテーマも好みであるにはあれど。
独特のユルいタイミングの演出がハマれば面白いのかもしれない、私はちょっと、テンポ悪く感じてしまった。
コメディと言えども、サエないはずの二人が突如として大活躍してしまうのも、リアリティが無さ過ぎて引いてしまった。そんなモン求めるなと言われても、ソレは私(=観客)が決める事。

しかし、上記のようにギャグは面白いし、二人のキャラ造形も笑える。
サエないのに女にやたらモテる、クソ真面目でオットリかと思えば突如凶暴性を爆発させるギャンブル(フェレル)と、タフな刑事に憧れるかと思えば「近所のゲイをからかうため」に超絶スピンをマスターし、ハープを練習して結婚式で演奏するホイツ(ウォールバーグ)。
何と言っても、この二人(特にフェレルだけど、ウォールバーグも『テッド』だからね…)が主演なのに下ネタが控え目なのが意外、と言うか好印象だった。
何が良くないのかイマイチ分からないんだが、敵サイドが見えにくい、というのが一因だとは思う。
それとやっぱり、ギャグとギャグを繋ぐ間のテンポかな。

嫌いじゃないんだけど、無駄な邦題のおかげで、かの大爆笑だった『俺たちフィギュアスケーター』と比べてしまったのも敗因だったかも。

アザーズ

面白かったんですけどね…。
子供達の病気が理由で、カーテンを張り巡らした豪邸。
建築や家具が美しい程、不吉な印象がつのる、そのイメ−ジ造りは大成功だと思う。
ニコール・キッドマンの神経質なヒステリックぶりもピッタリで迫力があった。
子供達も、ビミョーにコワイ顔で、存在感があり、見応えがあった。
そして、これはホラーなんだけど、恐いよりも悲しい物語。

…なんだけど、んー、ちょっとタルイ、かな。
いわゆるミスリードになっている、3人の使用人の描き方が、なんだか中途半端で。
でも、降霊術のくだりとか、戦死したはずの夫の急な帰宅と別れとか、娘の「友達」とか、じわりじわりと真相が臭って来る過程はとてもデリケイトで楽しめた。
ホラーは絶対、絵が美しくないとダメ、と私は決めているんだけれど(単なる趣味)、その点でも文句無く合格。

言いたかないんだけど、どうしても『シックス・センス』を引き合いに出さずにはいられない気分な訳で、やっぱり後から出た分お気の毒、って部分もあるなあ。
ニコールよりブルースが好き、というのも無くはないけど(笑)。
話の面白さと、設定の無理さ加減で『シックス センス』に軍配、だな。
ニコールは熱演だったけど印象が良くなくて、思い入れできるキャラクターがいなかったのも残念。

あしたのジョー

「この前『あしたのジョー』見ちゃってさぁ…」と言いかけたら、知り合いの漫画家さんに「それは貴女が悪いわ」と断じられた。
納得した。

私は特別原作のファンでもないし(むしろ梶原作品は苦手だ)山Pは顔が可愛いから好きだ。香里奈も『しゃべれどもしゃべれども』なんか、とても良かった。アニメ版にも思い入れは無い。
とか、そういう問題じゃないんだよっ!!!
まず台詞が聞き取れなくてイライラした。1/3は余裕で何言ってるか分からない。山PのTVドラマは何度か見てるけど、こんな酷いの初めて。
"ジョー"をクールなキャラクター、って事にしたのか???
終始虚ろな目をした山Pがうつむき加減でボソボソ言ってて、そんなに無愛想じゃアナタ、可愛い顔が台無しよ。せっかく身体も綺麗に鍛えたのに、勿体ない。
スローモーションで倒れ込む恍惚の表情が色っぽかったとか(書いてて自分でキモイっす)、それくらいしか褒めるとこ無いから!
もう。

矢吹ジョーは孤独な青年だし、ボクシングはストイックなスポーツだとは思う。思うけど、だからこそ昭和的な(精神的)逞しさとか、だからこそのヒョウキンさとか、あるじゃない。無いと耐えられないの。
令嬢・葉子さんを香里奈が…と、最初から思ってはいたが、余計な設定を付け足して、これまた興醒め。でも設定変えたって言い訳にはならないからね、お嬢様に見えない。
山Pだけでなく、この香里奈も力石も、台詞が聞き取り辛く、一人丹下のおっさんだけが異様に滑舌が良くて説明係になってたけど、うるさい。あの扮装そのまま実写にするセンスもどうかと思うし。

そして肝心要の力石徹ね。
う〜……なんかね、邦画だと、役者を名指しでけなすのって、なんだか気が引けるんだけど……私、この人キライ。モデルとしてはいいセンな容姿なのかもしれないけど…芝居の仕方が、どうにも好みじゃないみたいで。せっかく激痩せして頑張ったのに、本当に申し訳無いんだけど。
嫌われ松子の一生』も『十三人の刺客』も、『CASSHERN』でさえも、「コイツでなきゃなぁ…」と、思って見た。今回はまあ、マズイのは一人だけじゃないけどさ。

あ、こんな映画に長々と語ってしまった。
私的には漫画原作の映画では『デビルマン』に次ぐ駄作でした。

アジャストメント 8/26

うーんと。
マット・デイモンもエミリー・ブラントも、とてもチャーミングなんだけど。元々好きだし。
むしろそれが無かったらアホらしくて最後まで観てられなかったかも。
何と言うか、抽象的と言うか言い訳がましい部分が多くて本当に面倒臭く、盛り上がらない。

単純に終盤の「どこでもドア」シーンは楽しくて、ちょっと目が覚めた。
"帽子"の使い方も好き。
ブラントがいつもセクシーな露出多めの服を着ていて、ダンサーってそういうイメージなのかな…と思った。
まあ美しいからいいか(笑)。

新進気鋭の政治家が同窓会でお尻出して写真載せられちゃうのもどうかと思うけど、けっこういい大人であろうダンサーが結婚式に忍び込んで追い回されて男子トイレに隠れるってどうなの?
どちらもロクなモンじゃない、と言うか、意味が無さ過ぎて、冒頭から視聴意欲ダダ下がり。
でもブラントのドレス姿は素敵だった。
あんなおめかしして、行く所が他人の結婚式って。どんだけ寂しい女だよ。
まあ、そういうオツム足りない系の二人だから、あの短い時間で「運命的に」惹かれ合ってしまうんだろうけど。

"運命"について。
もしかしたら、キリスト教に詳しいと印象が違うのかも知れず、悲しいかな異教徒である私には理解できない部分があるのかも知れない。
その上で言わせていただくが、神様(と呼んでしまおう、作中では「議長」だったが…何か共産主義っぽくてキモい)間抜け過ぎ、仕事出来な過ぎ
こんな神様を支持したくない、邪教徒の私は正解だわ(笑)。
こんな行き当たりばったりに運命書き直してていいの?しかも消しても消し切れないって。部下にも軽々と離反されるし(それも無理無いが)決めた事をなあなあで翻すし…。
そもそも二人を引き裂く理由に全然説得力が無いしね。
そして"調整者"もまあ、天使が平気で嘘をつく!悪質な嘘を。

運命か、自由意志か、みたいな流れになっているけど、結局は"上"の決め(て訂正)た相手と惹かれ合い、ゴネた上で"上"の手下に導かれ、"上"が訂正の訂正をした事で我を通す、と。
なんか『マトリックス』並みにどうでもいい(笑)。
個人的に私は、"運命"は結果論だと思っているからかな。

その昔『ベルリン天使の歌』という美しい映画があったっけ。
あれくらいのストイシズムと美意識が、私は好き。

アナコンダ 

のっけから、私の好きな怖い顔のおじさん(ダニー・トレホ)登場ですよ!
アッという間に退場ですよ!!
でも、「ツカミはOK!」の、イカすシーンだった。かっこよかった。

よくある動物パニック映画と、殆どナメで掛かっていたんだが、蓋を開けてみれば結構な豪華キャスト。
ジェニファー・ロペスのヒロインに、まー憎たらしいジョン・ヴォイトの悪役。アイス・キューブも大活躍。
もう一人の女優さんも綺麗。って言うかこの撮影隊美人率高過ぎ(笑)。
パニックものだから仕方無いけど、ジョナサン・ハイドは助かってほしかったかな。クセのある役を好演、目が離せなかった。
チームリーダーにしてヒロインの恋人であるケイル博士、中盤から眠り姫になったと思ったら突如活躍してまた眠る(笑)。でもコイツもけっこうヤなヤツだったような…。

普通に動物パニック物を期待すると、蛇の出番は意外に少ないし、蛇よりサローン@ボイトの方がずっと悪いし手強いしで肩すかしかもしれないけど。
私としてはドラマ的にも面白く見られたし、なにしろジョン・ボイトが憎らしく嫌らしく、でもジェニファーの色香にはヤラれちゃうとかで(笑)本当に飽きずに楽しめた。
頼りの現地ガイドが真っ先に殺され、かろうじて現地知識のある頼れるはずのケイルが昏睡状態、残るはアマゾン素人ばかり。という状況がまず面白くて、期待が高まる。
普通だとジャングルでイチャ付き出したカップルは真っ先に餌食になるんだが、後まで残したのも良かった。男の方は途中でサローンに寝返って女に幻滅されて、からの彼女を救うために…って流れもドラマティック。そして結局キッチリ二人とも本来のヤラレ役を果たすワケだが。

それにしてもこういう映画の"善人"達は、なぜ悪党を「縛っておけば大丈夫」と思ってしまうのだろう???それもあんな、不安定な状況、いつどんなドサクサが起きるかも分からないのに。
人として殺すのは無理なのは理解できるが、せめて脚の1本も折っておくとか、薬があるなら打っておくとか、手足それぞれ1本ずつ縛って固定するとか、目隠しサルグツワとかとかとか。だって怖いじゃん。
もちろん、そうでないと話が盛り上がらないんだけどさ。今回もまんまとアレですよ。
それにしてもサローンの悪党っぷりは凄かった。ヤな奴を指して「蛇のような」って言うけど、まさしく。
最後のウィンクとかもうサービス過剰でしょ!(大笑い)

蛇はサローンに比べると憎たらしさは弱くなってしまうが、絵的なインパクトは抜群。
蛇が特に嫌いじゃない、というのも大きいと思うんだけど、水中で襲うけど陸上も可能とか、巻き付いて締め上げる攻撃法とか、大きさ具合とか、いい感じに怖くて強すぎないのがいいな。
先に小さな蛇をいっぱい出すとか、"本体"の前に抜け殻を見せるのも上手い手だと思う。大きさに信じ難い、という思いと、脱皮に対するなんだか薄気味悪い気持ち。観る側の期待は高まる。
攻撃も、水にも潜れば木にも登る、飛び降りても空中でからめ取られる、陸上でも移動も早いし適度に賢いし、でも問答無用に凶暴。
滝のシーンの動きも良かったが、最後の水中火達磨蛇の図は凄かった。ここまで魅せてくれるともう、大満足。

たまたま最近『大アマゾン展』というのに行ったばかりで、思い出しながら観た。
河やジャングルの景色は美しく臨場感があって、なんだかそれだけでも得した気分。
でも、学者で専門家のはずのケイルが「ピラニアさえいなけりゃ大丈夫っ!」とウカウカ水に潜って行くのはどうなのか(笑)。アイツやっぱりダメだわ、態度や発言がいちいち傲慢で信用できない。
ラストシーンは何だかイイ話風に締めて来て、幻の原住民が現れるシーンは幻想的で良かったんだが。
撮影許可も無く撮っちゃってましたね(笑)。
やっぱり問題アリだよ、あの博士。

色々面白いカットはあったが、最終的に一番ショッキングだったのは登場シーンのジェニファーの、スリップ越しの見事なヒップだったりするんだが…アレはいったい、どうなっているんだ…(汗)。

アナコンダ2 

人気映画の二作目の成功の秘訣は、前作より「予算増」「派手」「軽い内容」辺りではないかと思っているんだが、なかなか秀逸だった『アナコンダ』の二本目は、そうでもないのにそれでも面白かった。
まず前作の豪華キャストはすっぱりカット。見覚えのある顔は殆どいない。
タイトルロールの大蛇は、数こそ大量になったものの、個々は前作程の強さではなく、わりとアッサリやられていっちゃう。火達磨大蛇が水面を渡って襲いかかるというような派手な映像も見当たらなかった。
内容的にも「不死の蘭」を探して不老長寿薬を作る、という、メルヘンなんだか宗教だかな話だし。
「二匹目だからドジョウもそんな大きくなくていいや」みたいな慎みを感じる(笑)。

でも、観るとシッカリ楽しめるのは凄い。
キャラクターがそれぞれ印象的で、各々ちゃんと見せ場が用意されているのがいい。
しかもリーダーのバイロン博士がマッド化したり、クールな優等生のサムが女戦士だったり、嫌味かと思ったゲイルが意外に乙女だったりと、人間模様が面白い。
近頃の映画にはだいたい一人は出て来る「お喋り黒人」枠のコールも、うるさいなーと思いつつ見ていたらだんだんうるささがクセになって来て、やられた!と思った時は残念に感じてしまったし、さらにその後のしぶとさにも笑わせてもらった。
猿の適度な活躍ぶりも良い箸休め。
残念ながらヒーロー役のジョンはキャラが薄い印象だったが、なかなかオトコマエで目には楽しい。女性二人もとても美人。
私的には東洋系のトランが、もうちょっと頑張って欲しかったな。何か彼にしかできない活躍をしてから退場してほしかった。頼りになりそうだったのに。

でも蛇目的で観た人には不満かも、ってくらい、蛇の扱いは軽かった。
だってワニにヒルに毒蜘蛛だもん。怖さ分散し過ぎ。
そして「蛇も怖いけど一番怖いのは人間の欲ね」ってのも前作を踏襲しつつ、今回のバイロン君は、かのサローン程にはインパクトが無かったのは残念。
それでも、大量の巨大アナコンダの発生理由「爬虫類は生きてる限り成長する」のを「不死の蘭」に絡めて来たり、縄張り意識の強いアナコンダの大集結理由を発情期にしたりと、色々考えてるなーと。
ワニと格闘した後の「勝っちゃったよ…」とか、最後にラブラブのジョンとサムを横目に猿と満更でもないゲイル(初対面は最悪だったのに)とか、ユーモラスな場面も好印象。

これは完全に好みの問題だと思うけど、殺すより救う方が面白い場合もあるよね。と、コールのケースを見て思った。
グロシーンも少なく、助かる人数も意外と多く、ラストはミョーに明るい様子で幕となるが、まあこういうのも悪くない、と私は思うのよね。

アナコンダ3 

意外に豪華な『アナコンダ』、地味ながら秀逸な『アナコンダ2』と来て、なかなかの良シリーズと認識して観てしまったのだが。
…うーん、ココへ来て、タダのB級いやC級映画に降格。いやそれが本来の姿なのかもしれん。

異国のジャングルに終始した前回、前々回から一転、研究室から逃げ出した大蛇を(やっぱりジャングルで)殺す気満々で追い回す、というシチュエーションは、悪くはないな、と思った。
が、実は"女性科学者"が研究室でエアロビインストラクターみたいな衣装で登場した瞬間に、「この映画はダメだ」と確信してしまった…なんでしょうかあの、無駄な薄着
もう「この辺りでサービスしとけばいいよね?」みたいな投げやり感(笑)。
主演女優さんもソコソコ美人でスタイルもいいけど、あくまでもソコソコ。
結局最初から最後まで、張り出した胸をプルンプルンさせて走り回るばかりで、研究の指示を出してても、大蛇と対峙して震えてても、仲間を殺されて泣いても、悪党を(唐突に)やっつけても、ずっとプルンプルン。まるで内容のオソマツさから目を逸らそうとするかのように。

ヒロイン以外のキャラクターも、殆ど魅力が無くて数だけ集めた印象だし、唯一ちょっと毛色の違った会社の優男も、ただ普通に死んで行った。
ずっと「いやぁ〜、やめて!」とか言うばかりだったアマンダちゃんは終盤突然の武闘化。たとえ悪党でも人を殺すのにあのクールな落ち着きよう。どっかの映画のかっこいいシーンを切り貼りしてみました、な爆発を背に悠然と立ち去る姿もプルンプルン(笑)。
中盤で、せっかく泥を被って蛇に見付からなかった、と言ってるのに、『プレデター』のシュワちゃんみたいに全身泥塗りたくって蛇に備えると思ったのに、サッサと洗い流してキレイに戻っちゃう。
ラストは焚き火を放置のまま立ち去るとか…山火事出したらどうすんねん?

あ、カンジンの蛇ね。
すごくクッキリハッキリ登場させてしまってるので、ツクリモノ感が露骨なんだけど、それはまあ良しとしよう。
でもあのシッポを槍にして串刺し、ってのは、いかがなモノか。
ソレもはや蛇じゃないし。巻き付くより撮影は楽だったのかも知れないが。
火を噴く車に「おっ?」って感じで口開けて振り返るシーンが可愛かったな。

続く『4』も、生き残ったベビーアナコンダとアマンダちゃんが登場するようで、楽しみだ。
うん、もはや楽しみ。

アナコンダ4

はい、サクッと観てみました。
まあ、ほぼ予想通りと言うか…『1』『2』に繋がる世界になってはいるものの、正しく『3』の続編でした、ヒロインも同じアマンダちゃん。
ただし今回プリプリは控え目。撮影時の季節が寒かったのか(笑)。

まあ、内容的には、一通りやる事はやった、という感じでしょうか。
会長の始末も付いたし、取りあえずいっぱい人を殺して、ラストはホラーではお決まりのアレだし。
しかしドンドン殺伐として来るね。
私としては『2』くらいのユルさで続けて欲しかったんだけど…なんか悪党とかも悪党過ぎちゃって。
そしてアマンダちゃんが最後に武闘派に豹変するのも前回同様。
もしや解離性同一性障害…てくらい。

総括すれば、『1』『2』だけで良かったな、このシリーズ。
こんなモンか、という思いと共に、完走したランナーのような気分ではある。

アナライズ・ミー 

デ・ニーロにビリー・クリスタルと来たら、ちょいと洒脱な大人の映画、とかって期待しませんか?
私はしましたよ、ええ。
ごめんなさい。デ・ニーロって元々、仕事選ばない人だった。

精神分析医と、マフィアのドン。
一見面白くなりそうだけど、多分あまり面白くならない組み合わせ。そして案の定、全然面白くない
"大御所"デ・ニーロがメソメソ泣いたり子供のように取り乱したりするのが気に入れば、あるいは笑えるのかな?
医者のクリステルの方も、タダの精神科医が突然勇敢になったり大活躍で、こちらが多重人格なんじゃないかと(笑)。
婚約者→妻も、気持ちは分かるが可愛げが無くうるさいばかり。結局ナアナアなんだけど、全然その気持ちに乗れない。
笑わせたい意図は伝わるが全く笑いに繋がらず、うすら寒い思いで見た。
結婚式に上空からマフィアが降って来て死亡って、本当に笑える人いるのか…???

かろうじて、ジョー・ヴィテレッリ演じる子分が可愛かったかな。

 

これ、原題が『Analyze This』っていうのね。そして続編(あるんかい!)『アナライズ・ユー』が『Analyze That』そこはちょっと面白いね。

アナライズ・ユー 

前作『アナライズ・ミー』が呆れる程つまらなかったのに、ついつい続編まで観てしまった…だって、前回も書いたけど、マフィアと精神分析医とか、面白くなりそうじゃん。ならないけど(笑)。

デ・ニーロとビリー・クリステルを揃えて、今回も呆れた盛り上がらなさ。
ベン(クリスタル)と彼女の結婚生活は続いている模様、と言うか、結婚して達観したのか彼女、前作のようにヒステリックではなく、ちょっと綺麗に見えた。その分活躍しないけど。
そして何を思ったか、今回は唐突なミュージカル仕立て!?ハァ???

マフィアのママ役のキャシー・モリアーティがかっこいい。
この人『グロリア』(ストーン版)でも似た様な役やってたな。良く似合う、美しいし胆がすわってそうで。
内容は、前作よりさらに薄く、最早精神分析医は殆ど用を為していない。
マフィアのドタバタに一般人が巻き込まれるという、普通の話で、途中やたらと下ネタが多いのにも、いい加減閉口した。
トラウマ話で泣いた後、急にベンがキレて暴力的になり、滅茶苦茶に強い、というのもポカ〜ン…だった。

それでも本音を言うと、デ・ニーロとクリステルがいかつい顔を付き合わせて言い争ううちに抱き合って泣き出すシーンは、ちょっと笑ってしまった。
それに続くブチキレシーンは無理があっても、殴り倒した後でもまだベンの目元に涙が残ってる辺りも微笑ましい。
ラストのお別れシーンで、また思い出したように(不必要に)歌い出すのも、太った子分のおじさんも加わって、可愛かった。
あのおじさん(ジョー・ヴィテレッリ)、何気にお気に入り。
2本観てみて、映画は好みじゃないけど、デ・ニーロとクリステルは気が合うのかもな、なんて思ってちょっとホッコリした。

アパートの鍵貸します

この時代('50年代)のコメディ映画って、なんでこんなに面白いんだろう!?私のツボにバッチリなのよ。
7年目の浮気』『お熱いのがお好き』そしてこの『アパートの鍵貸します』。
…てな事を思っていたら、みんなビリー・ワイルダー監督でした。
私、ビリー・ワイルダーのファンだったんかい。

なにしろ楽しい、これはコメディの必須条件。だけどこれすら満たしてなくてコメディを名乗るヤカラは多数。マンガ家も自戒せねば。軽くて内容の薄いだけの恋愛モノをラブコメと呼ぶなかれ!
そして明るい、これもコメディなら当然と思いがちだけど、さにあらず。ダークサイドに訴えて笑いを取るのって、わりと楽なのだ、ただし印象も、感動も薄い(と、思う)けど。
その上何より、古臭くないのがスゴイ。
『お熱いのがお好き』でも書いたけど、そこに流れる意識は、むしろ現代でも進歩的かも知れない。
平たく言ってしまえば、クールで、知的なのだ、知性無くして笑いは創れない(はずよ)。
そして本質的な部分では、種の進化などというものは、とても歩みがのろいのだろう。
ただし、とても品がよろしい。この上品さはやはり、旧き良き時代ならではか、とも思うが、どうなんでしょう。この時代にも下品な物は山程作られていたんだろうしね。

と、長々とクダを巻いてしまったけど、ホント面白いのよ、これ。
シャーリー・マクレーンも可愛いし(第三次接近以前!?)、ジャック・レモンはサエないけど清潔で、いいかんじ。設定も展開も、本当に今日公開でもおかしくないくらい、説得力もキッチリ。
ありそうで、なかなか無いけど、でもやっぱり現実感タップリの、口当たりも後味もとってもいい、気持ち良く笑えてほんのりハートがあったかくなる、ザ・コメディ。
職人芸って美しい。

アバウト・ア・ボーイ

ロクデナシで有名(らしいぞ)のヒュー・グラント。
面目躍如って感じの、楽しい映画でした。
ヒューちゃん本人は、「落ち着きたい…」とかって弱気な発言をしているらしいけど、このまま突っ走ってほしいなあ。
あのタレ目は、ぜったい落ち着いたりしないって。

ヘンな人が、いっぱい出て来る。
で、親の遺産を食い潰してヘロヘロやってるヒューちゃんが、ひょんな事からいじめられっ子の少年(小デブ)と出会い、絆が生まれていくんだけど、その過程がちっとも説教臭く無いと言うか、ヒューのタレ目や少年の体型同様、全然気張った所が無いのよ。なんか、そーかもねー、と思ってるうちに、出来上がってる。

で、少年には困ったちゃんのママがいて、フラワーチルドレンのなれの果てみたいな女で、母一人子一人の寂しい生活で、少年はママがヘンテコなので学校で笑い者になってたりする。
そして少年とヒュー演じるいい歳して独身、無職、お金アリの男が仲良くなって、となると、ありきたりなイヤ〜な展開、すなわち、改心したヒューが少年のママと恋に落ちて、仕事を始め、暖かな家庭を築くとか、そういうのを予想してウンザリしたんだけど、さにあらず。
ロクデナシはロクデナシのまま、少年とは家族のような絆を保ちつつ、ついでにフシギちゃんなママとも、恋や家庭などという横道に逸れる事無く同様のシンパシイを育てる。
たまに熱くなってギター抱えて熱唱しても、安手の邦画みたいに観客は感動したりしない。
本来のメンクイを貫いてお目当ての美女ともいい感じになって、みんなでなんとなくあったかい関係に流れ込んでしまうのよ。
いいなあ、まさにパラダイス。

それにしてもヒューちゃん、走る姿がかっこ悪すぎ。

アバター 

なんかもうねぇ、すっかりイヤになっちゃってるの、キャメロンさん。
タイタニック』辺りからかな。
でも、あまりの大騒ぎっぷりに、「もしかして…」と、観に行ってしまうワケですよ、ああ。

おや?双子の兄の代理……どっかで(まあ良くあるシチュエーションだな)…。
巷の評判の高さに「もしや…」と期待はしたものの、実はまず無理そうだとは思っていた。
もうあの異星人のビジュアルが受け付けない。青いだけならまだしも、顔も怖いし体つきも気持ち悪い。
それでも、ストーリーが感動的なら、そんな見た目を飛び越えて愛おしくなったりするモンなんだが、無理でした。ってか無理。この話無理
見た目ならもっとグロい『第9地区』のエビ星人は、思い切り思い入れしちゃったもんな、私。
形が気持ち悪いだけでなく、何かこの"ナヴィ"の人々、態度仕草も言動も、いちいちスカしてやがって、可愛げが無い。ついでに知性も感じない。
まあ、この内容で話を混ぜっ返す三枚目なんか出て来たら、イライラが募りそうなんだけど、そういう事じゃなくてさぁ。
なんか悪い意味で、アニメを観た、という印象。画面も内容も。キャラクターも。実在感が薄くて。
でもきっと、コレを絶賛する人々は、実在感とか手触りなんて問題外なんだろうな。だから楽しめるんだよね。
結末にしても、「何が悪いの?」と言われれば、ああ良かったねと言うしかないんだけど、つまらない思いは消えない。

"地球人"サイドの描き方もね、何と言うか幼稚でさ。あの上官とかキチ○イみたいに扱ってるけど、軍人としては至極真っ当な事してるじゃん。でもモチロン、全然思い入れできないけど。
そしてね、何をどう言い繕おうとも、白人はネイティヴを虐殺してアメリカ大陸を横取りしたんだよ、と。もういい加減ウンザリ、こういうの。
自然を愛し、生命を大切にするナヴィを戦いに「導く」という展開も安易で(無論、戦いありきの映画なんだから当然だけど)傷ましく、侵入者が引き上げて行ったからと言って全然解決になってないという後味の悪さ。
後味と言えば、別の身体に乗り換えてメデタシメデタシみたいな結末も気持ちが乗れない。
そして、巷で絶賛された"映像美"のデザイン、色感が、好みじゃなくて美しく感じない。

何より、映像新世紀だか何だか知らないが、ここから3D映像がやたら増えてしまって、眼鏡重いわ料金高いわ画面狭くて暗いわ…サービスデイに非対応なのだけでも、何とかして欲しい。
って言うか私は映画が3Dである必要性を全く感じていないので、やめて。お願い。一時の流行で終わるか、せめて眼鏡無しで楽しめるように改良されてからにして。

シガニー・ウィーバーが、相変わらずガンコ一徹闘う女を演ってて、ちょっと嬉しかったな。

追記先日TVで放映してたので見直してみた。映像は3Dでない分見易く感じたけど、やはり絶望的に話がつまらない…。

アバター (byココアちゃん)

うん、変な顔だよね。魚顔かな。
物語はジブリアニメっぽくて、「もののけ姫」っぽかったな。
舞台設定は「ラピュタ」だし。
植物的な力を借りて癒す、というのは萩尾望都の漫画で見たし。
(「ハーバル・ビューティー」っていうの)
だからよくも悪くもデジャビュ感が。
なじみやすい反面「なあんだ」感も否定できず。
夏八木勲、って俳優さんアバター顔。柔道の古賀俊彦も。
小林まことさんの漫画にも出てきそう。
ラストの甘さ・・・う〜ん、あそこは「もうもどれない身体、届かない記憶」的に
してくれてたら好みだったのに・・・。
ただラストカットのあのアバター眼がかちっと見開いてエンド、だけは
好き。そこまでの展開はバツ、だけど。(じゃほとんどバツかい)

アバリションー悪霊ー 

感想書くのもどうしようかと悩んだ程、つまらなかったんだけど。
取りあえず、ヒロインが美人でした。
ホラー映画のヒロインは美人に限る、という私の常々の主張はクリアしているので、一応残しておこうかと。

クロゼットのオブジェとか、自分で自分を閉じ込めて悲鳴を上げるヒロインに迫る"何か"とか、絡み付くシーツとか。良く分からないモノのデザインは、けっこう面白かった。
まず"悪霊"が世に放たれる過程が、何やら理屈はこねているけど意味不明だし、「一人の脳波が100人分に拡大」とか、全然説得力が無い。某カルト集団じゃあるまいし。
ここにリアリティが無いから、その上にドンドン積み重なるローカルルールにちっとも興味が湧かなくて、気持ちはドン引きであった。
最後までソレが何かは明かされもせず、姿も見せず…まあ下手なCGでデデーンと出て来られても笑ってしまいそうではあるが。
この手のホラーは首尾範囲外、という事なのかも。

追記:『ハリポタ』のドラコ君が出演してたそうだけど、どれだか分からなかった…かつての美少年(ハリポタ勢では1番の美少年だったと思う)も苦戦しているのかな。

アフターライフ

リーアム・ニーソン、怖っ!
…でももっと怖いのは、クリスティーナ・リッチのだ(爆)。

何の予備知識も無く見て、なんだこれは、なんなんだこれは、と、かなり楽しめた。
リーアム・ニーソンは、こういった不透明な役柄がとても良く見合う。
顔の怖いクリスティーナ・リッチも、時々凄く綺麗に見えたり、物凄くアンバランスに見えたりで、この役にはうってつけ。
と、言うかこの人はいつも役にピタリとハマるので、いわゆる演技力の賜物なのかもしれない。なにしろ迫力。
そしてキアヌ・リーブスをモッサリさせたような(『ダイ・ハード4.0』のハッカー君かい)恋人も、何と言うか報われ無さが似合ってて、普通っぽさがgoodでありました。

"死"って、結局何なんだろうか???
観る程に混乱し、日頃の認識に自信が持てなくなる。
こういう感覚が私は大好きだし、こんな気持ちにしてくれる映画こそが面白い映画だと思う。
まあ考えてみれば、この世の誰も本当には死を知らないんだけどさ。
梶井基次郎だっけか、女の子が死んでなお意識があって、というのを読んだ記憶があるんだが、イヤだよね〜死ぬの本当にイヤになるわ。元々イヤだけど。
漠然とだが、死んだら意識が消えるようにイメージしているし、もし意識は残っても身体が絶対動かないという気がする。だからこの状況は、本当にキツイ。
ましてや事故で、しかも若くて死んだ人にとっては、本当に受け容れ難く認め難い事でしょう。

でも葬儀屋を変態と思う所はちょっと新鮮だったな。
確かに、あの状況を(生きているとして)普通に解釈すると、変質者の誘拐監禁以外の何物でもない。服は切られるし、妙な薬も打たれるし。怖い。
それどころか、話が進むうち、もしや本当は死んでないのでは…???なんて気もしてきたり。
少なくとも、今まで思っていた"死"が、そういうモノとは限らない、という目を開かせられる。
さらに、思わせぶりな葬儀屋の態度や発言から、ひょっとしてソノ気になれば戻れるの???等とも思えたり、いやそもそも"死"というのは本当に取り返しの付かないモノなのか?と揺らいだり。
最後の最後に「行って来るといい」と死体置き場の扉を開け放たれて尻込みするヒロインの気持ちも分かるし、その後の「死んで良かったわ」という捨て台詞も分からなくもない。
そうやって人は、諦めて行くのだろうか。

クリスティーナ・リッチの真っ赤なスリップも全裸姿もある種とても美しく、目にも心にも残るものがある。
わりと最近観た『パッセンジャーズ』とも一味違った、面白い切り口、面白い表現の、意欲作だった。

アベンジャーズ

「日本よ、これが映画だ!」だったっけ?
アホこきなさんなって(笑いや)!!!

のっけから全然話に入って行けなくて、何度か巻き戻して冒頭部分を確認したものの、途中で諦めて流し見してしまった。
ヴァンヘルシング』の"ホラーオールスターズ"企画を聞いた時、「なんちゅー軽薄な!」と呆れたにもかかわらず、観てみたら意外にマトモな映画だった事もあり、今回のいわば"アメコミオールスターズ"企画も先入観で否定しないで観てみよう、と思って臨んだのだが。
真摯な私の気持ちは踏みにじられた模様(笑じゃなくてだってば)。

グダグダと仲間割れやら痴話喧嘩やらを繰り返すヒーロー達。兄弟喧嘩に明け暮れる悪役陣。
吹き替えが竹中直人のサミュエル・L・ジャクソン…は、まあいいとして。
これ、アメコミファンだったらタマラナイのかなぁ〜。
そう言えば私、『アイアンマン』観て怒っちゃったもんな。
相変わらずR.D.Jrの良さは全然分からなかったし、てんこ盛りのCGは使えば使う程画面が薄く軽くなる類のセンスの無い代物で、話はタルいし登場人物は皆アホッぽいしで応援する気になれないし。
なんかむしろ、「楽しめなくてご免なさい」って気分になったわ。

スカーレット・ヨハンソンは可愛かったし、『マイティ・ソー』はまだ観てないけどクリス・ヘムズワースはチャーミング。そしてロキ、強えぇ〜!!って、登場シーンだけはちょっと盛り上がったトム・ヒドルストンも良かった(後半グダグダだけど)。
けど真面目な話、こんなんが「映画」なら、もう映画ファンじゃなくてもいいや、私。

アポカリプト 

うう〜もう、相変わらずと言うか、ますますの、メル・ギブソン監督。味付け濃過ぎです。
R指定も激しく納得の残酷描写。これでもかこれでもかと繰り出されるサディスティックな攻撃。人の命を何とも思わない悪役達………ゲップ。いや失礼。
本当に長くてしつこくて、延々と続くので、正直途中から早回しにしたくなってしまった。しなかったのは、それでもとにかくクオリティが高いから。

近年には珍しく、CG臭のしない画面作りは大いに賛同したいところ。やっぱりホラ、全っ然違うじゃん!と、声を大にして言いたい。
問題は、そのCGに頼らないリアリティで何を語るか、という点なんだけどね、本当は。
俳優の全てが知らない顔で、聞き慣れないと思ったら言語は何と『マヤ語』ですって!そういうところ、エキゾチックな雰囲気はタップリだ。
…けど、え?マヤ???アステカと違う????と、すでに混乱。
そして、主人公達が『土人』過ぎやしないかい?マヤと言えば、すごい高度な文明だったはずで、その近辺で、同じ言葉喋ってて、あの野生生活……???なんだか頭が『?』だらけになる。(こうなると、いっそ英語でやってくれた方が良かったかも、なんて思ったりして)
300』も真っ青の裸祭りですから!でも『300』は腹筋だったけど、こちらは『』ですから。なんかアマゾンの裸族を取材、みたいな。
(あの悪役の、青っパナ垂れてるみたいな顔は笑えたな。)

まあ、設定はいいよ、取りあえずそういう架空の世界だと受け入れても。
結局やってる事は、ジャングル使ってリアル鬼ごっこですから!
子供のできない仲間に対する皆の態度とか、レイプされて最後まで抵抗しなかったら地獄行きとか、この部族アホ過ぎで不快極まりない。(むしろキリスト教の悪しき特徴では?)
長丁場にもかかわらず、主人公に思い入れが全然できなかったせいか、力一杯の壮絶アクションシーンの連続も、TVゲームのような印象で見た。いや画面そのものは、とっても(過剰な程)生々しいんだけど、気持ちが付いて来ないのよ。
惜しいな〜、凄いよね、あの滝のシーンとか、ジャングルの景色、本物のジャガーとか、ピラミッドの生け贄シーン、死者累々の廃棄所とか。あ、ヤドクガエルのシーンはちょっと可愛かったな。でも素手で大丈夫なのか???

例えるなら、店構えは立派で料理の素材も盛り付けも最高だけど、味付けが致命的に不味いレストランみたい。ついでにシェフはハンサムときたもんだ(笑)。
おまけに、またしても「家族さえ無事なら万々歳!」なエンディングで、本当にウンザリ。『2012』もそうだったが、結局そういう奴らだよ、と毒づきたくもなるわいな。

頭を空っぽにして残酷描写を楽しみたい方には、オススメの映画。

甘い生活

何となく苦手意識と言うか、小難しいイメージがあって、さりげにスルーしていた、フェリーニ監督。
機会があって見てみれば、別に面倒な事は何も無かった(笑)。

ただ、ストーリーを追うタイプの映画ではないので、若い頃に見てたら「なんじゃこりゃあ?」となってたかも。
マルチェロ・マストロヤンニ扮する伊達男の記者の、ひたすら自堕落な生活。浴びる程酒を飲み、女と見れば全力で口説き、夜を徹して徘徊し、同棲中の恋人を自殺未遂に追いやっても泣きはするけど反省しない。
ウンザリしても良さそうなロクデナシ男の日々を、淡々と追うばかりの内容だが、当時のセレブの生活の華麗さ、ローマの街の景色、次々現れるいずれ劣らぬ美女達に、目は釘付け。全然飽きる事無く3時間の長丁場を乗り切った。

モノクロ画面は人を美しく見せるけれど、それにしても女優達の綺麗な事、粋な事。黒いドレスひとつ取っても、どういうカットでどうなってんだ?という、魔法のようなシルエット。若きマルチェロの美男っぷりも半端でなく、漂う色香にむせそうだ。
ハンサムな彼は女性にモテる。彼もまた、女性と見れば情熱的に愛を囁き、それはどう見ても真剣に見える、けれども心のどこかはいつも空虚。対する女性達も、相手にはなっても決して恋の幸福に酔いはしない。乱痴気騒ぎの毎日は、繰り返すごとに倦怠と憎悪にまみれてエスカレートする…。
途中、田舎から父親が出て来るエピソードがあり、なんだかハラハラしながら見た。はしゃいでいた父親が急に我に返って家に帰って行った時は、なんだかホッとすると同時に悲しくもあった。
友人の死のエピソードがあった。なんだかとても、分かる気がして、怖くなった。

こんなに長い映画と知らず、劇場で観たので、そろそろトイレが心配だがどうやってこの状況を収束するのだと心配になって来た頃に、見事なラストシーンが用意されていた。
夜通し遊んだ夜明けの海岸、打ち上げられた腐った魚、対岸の少女の届かない声。
この甘い地獄から救われる手立てが、すぐそこにあるというのに、彼は諦め、背を向けて来た道を戻り始める。
きっと明日も明後日も、同じ日々は続く。徐々に煮詰まり発酵しながら。
ブラボォ!
公開当時の日本で、こんな気分が伝わっただろうか。現代の方がむしろ、共感を覚える向きは多いのでは、と感じた。

それにしてもまあ、男も女もやたら煙草吸うねぇ。
こんな時代に生まれなくて、本当に良かった。

アマデウス


光の洪水。
と、思ったら音楽だった。
みたいな、何がいいって、音楽がいい。
誰もが認める天才モーツァルトの、圧倒的、絶対的実力。
これが説得力を持って出せれば、この物語は大方完成なわけで、そして見事に成功している。

もちろんそれは、脚本も、美術も、役者も演出も、映画のいろんな要素がそれぞれとても完成度が高い事に支えられているのだけれど、それらの全てのベクトルが、「モーツァルトの音楽」に向かって綺麗に延びている。
だからこそ観客は、圧倒され嫉妬しながらも熱狂する、サリエリに自分を重ねざるを得ない。
日本の舞台でサリエリ役をやった俳優が、「私はいつもサリエリの苦悩を抱えている」みたいなコメントを出していた。
おそらくそれは、一度でも真剣に物を造ろうとした者なら誰もが感じる苦悩だろうと思う。
「サリエリ」は、みんなの心の中に住んでいる、だから、共感を得るのは、ある意味たやすい。
だからこそ、その共感がどこまで深く食い込むかは、作品の完成度にかかっているんだが、この映画の完成度は、ものすごーく、高い。

サリエリは言うまでもなく名演だったけど、アマデウスも良かったよね。
おサル顔で、アホそうで、でも可愛くて若々しい。
素晴らしい作品を造り出す事と、人格や知性とは別。
才能とは理不尽で暴力的な物であり、哀れサリエリはその暴力にボコボコにやられてしまうのであった。

アメイジング・スパイダーマン 

前『スパイダーマン』と言えばキモオタと尻軽バカ女のウザ恋物語なワケだが、なぜ新シリーズを、それも最初から…???
と、ちょっと不思議に思ってたんですが。まあ前シリーズ初回からだと10年か。
新シリーズはキモオタも尻軽も出て来ません(笑)。それどころかヒロインは美人!バカでもない!

そう言えばグウェン・ステイシーって前シリーズ『』にも出て来たな。金髪美女で警官の娘、ってのはきっと原作通りなんでしょう。
アメコミって原作も複数で作ったりするので、ヒロインが唐突に交代しちゃったり、って事も普通にあるらしい。そして尻軽M.Jと金髪グウェンは、どちらも『スパイダーマン』のヒロインという事のようだ。

…で、気付けば何やら、物足りない…ストレスが無さ過ぎるというのも良くないのか。
グウェンは美人で頭が良くて勇敢で、物わかりも良くて、そして物足りない。うーむ。
ぶっちゃけ、ビッチが恋しいです(爆)。
ピーター君は前作に比べかっこいいけど、こちらも癖が無くて印象が薄い。そして何より、ハンサムなハリー君がいないっ!(そこか、私!?)
大好きなメイおばさんが、普通のタダのおばさんになってしまったのも残念。

何を今更、だけど、やはり作り直すには時期が早すぎたよね。
キャスト変更して他のエピソードを、というワケにはいかないのかな???
主人公がイケメンになったせいばかりでなく、今回のは全体にサッパリした印象で、前作がいいかげんグダグダし過ぎと感じていた私には見やすくはあったけど、その分印象は薄い。
CGの技術は進歩してるのかもしれないが、もはや素人目には判断できない。
むしろ蜘蛛の糸でビルの谷間を駆け抜ける爽快感は、ライミ版のねちっこい演出の方がグッと来るモノがあったかも。("慣れた"とも言える)
橋のシーンなんかはとても印象深かったんだが、残念ながらその緊張感が私には最後まで保てなかった。
そして、あまりに簡単に正体をバラし、命を掛けた恋人の父親との約束を簡単に反故にするピーター…ハッピーエンドが大好きな私でも、それはちょっとぉ、と呆れてしまう。
ヒーローにはね、ストイシズムは必須項目

アメリカン アウトロー 

若者達が大活躍する西部劇、と言えば『ヤングガン』がすぐ頭に浮かぶが、(いやアレはいい映画だったんだけど)私的には主演男優の差でこっちに軍配上げちゃうな。コリン・ファレル、いいです。
南北戦争直後の南部の街が舞台で、主人公は実在とされる南部のヒーロー。とは言ってもやってる事は列車強盗団なんだけど(笑)それだけ体制側に反発があったって事でしょうね。
若くて向こう見ず、と言うか、良く分かってないんちゃうか?というヤンチャ坊主達のムードが良く伝わって来て、ウキウキしてしまいます。

悪役のおヒゲのおじさんが、渋いオトコマエ、と思ったらティモシー・ダルトンだった!ちょっと意外、でも良かった。
コリンが若々しいんでヒロインがちょっと年増に見えてしまって残念、かな。
手配書の扱いでモメるくだりや、ママ(ミザリー!…違うって)のキャラも傑作。
仲間達も、基本的に若々しく明るく素直で、程良いキャラの立ち具合でコリンをしっかり立てている。

ジェシー・ジェイムズは実際に民衆に人気の義賊的存在だったらしい。南北戦争の直後、という特殊な社会事情があったせいでしょうが、魅力的な存在ではあるね。
危険な闘いを目の前にすると笑い、呆れる程の大胆不敵さと冷静さを併せ持つ英雄的戦士。銀行強盗の犯行時には「紳士、紳士」と仲間に言い聞かせるスタイリストでもある。
反面、好きな女の子を前にすると「でかくて老けた」なんぞと口走り、口説き文句の一つも言えず友人に教わったりする純情さ。かと思えば負傷して追っ手に迫られる局面で、気を失ったふりをしながら彼女にちゃっかりタッチしていたりする。
友達思い、家族思いで、愛国(この場合南部)精神に溢れる愛情深い男。
物語は(人が死んだりする割に)終始明るいトーンで、青春映画然として犯罪や殺人のダークさを感じさせない。

あんなに楽しそうに人を殺しちゃイカンだろ、と思いつつも、カワイイ男の子の大活躍ぶりに頬がゆるんでしまう私であった。

アメリカン クリスマス・キャロル 1979年

かの有名な『クリスマス・キャロル』を大恐慌時代のアメリカに置き換え、プロットはほぼそのままに素直に撮った映画。
地味だが素直さが功を奏し、なかなかホッコリできる良い仕上がりになっている。うっかりクリスマスイヴに観てしまったせいもあるかも(笑)。
なにしろ、ストーリーの根幹がシッカリしているからね。
かなりの無茶をしない限り、面白く観られてありがたい気持ちになれるものになるはず。

ディケンズの原作同様、主人公は冷酷な金貸しで、クリスマスイヴに精霊達の説得で改心してしまうんだけど、その"過去・現在・未来の精霊"が、昼間家財道具を取り立てた相手の姿で現れる、というのが一工夫。
"スクルージ"に当たるスレード氏は、孤児院から金持ちに引き取られ、やがて大金持ちになる過程を恋物語もからめて"過去の精霊"に見せられる。
昔原作を読んだ時は、スクルージの反省の仕方がスンナリし過ぎて、「ふーん?」という印象だったが、このスレード君、何と言うか、悪気は無いのよね…でも、最初からナニか間違ってる。大切なモノが1本抜け落ちてる。
と、いうのがうまい事描写されていて、説得力に繋がっていたように思う。思い込んだら脇目も振らず、大切な人をも傷付けてしまうけど、配慮が足りないだけで悪意は無い、と。
だから、"現在の精霊"の導きで自分がクビにした男の家族の悲惨な状況を知ってオロオロしてしまうのも、何となくスンナリ受け入れられたし、"未来の精霊"に自分の墓が寂しい事になってるのを見せられて愕然とするのも、「何を今更」とはならず、ああまた考えてなかったんだね、と思える。
手作りの家具が機械による大量生産品に凌駕される事をストーリーに取り込んでいて、それが私にはけっこうツボだった。

結末まで分かってはいても、目覚めたクリスマスの朝の展開は爽快だし感動的だ。
ちょっと疲れて気持ちをフラットにしたい時なんかに観ると、とても良さそう。
それくらいスタンダードで普遍的な、おそらくは皆が本当は知っている事が、クリスマスという特別な日に真っ向から、けれど優しく語られる、これはやはり原作の力だろう。

…ところで、彼が「救われる」のに必要だったものは……実は、「お金」なんですけど………。
彼が金持ちでなかったら、クリスマスの朝に彼がやって、皆に感謝された事は、何一つできない。
……いや、いかん、いかん。

 

荒川アンダーザブリッジ 

キャラクター造形(主に外観)の面白さと、思いも寄らぬ豪華キャストの本気っぷりが嬉しくて、TVシリーズは楽しく観させてもらった。
映画化は……………うんまあ、しなくても良かった、かも。

林遣都君は…魅力を感じないなぁ。個人的好みですが。
このリクという男の子は面白いキャラクターだと思うし、設定もシッカリしてて良いのだけど、残念。
と言うか、もう他のキャストが皆ハマり過ぎてて、少なくとも見た目"普通"なリク君は不利と言えばそうなのかもな。
小栗@カッパ、山田@☆はモチロン、桐谷さんも(某化け猫ドラマでは一本調子の演技といちいちひっくり返る声が鼻に付いたが)この役はとてもチャーミングで、チラ見した原作カットにソックリで驚いた。マリアはかっこいいし、ステラも可愛い。リクパパの上川さんの安定感も良い。
でも1番のお気に入りは"シスター"の城田優だな。デカくてゴツくて美形。実はこの人の芝居も好き。これはもう本当に…良い!

と、せっかくの素敵なキャラクター陣で、ドラマはほぼ毎回楽しく見させていただいたんだが、映画版ではその楽しさが全然伝わって来なかった。
ストーリーを追っちゃったらダメでしょ、って思う。
このシリーズの良さはキャラクターの面白さと、その生活ぶりの魅力であって、リクの人生とか、村長の正体とか、ましてや金星人の真実とか、そんなもん別に。
劇場公開という事で、いらん力が入ってしまったのか、単に売り所を勘違いしたのか。

原作漫画は未読。アニメもやってたの?知らなかった。
でも私にとっては正直、漫画で見てもあまり意味が無い、という気がする。
ちゃんと芝居もできる有名どころが、大真面目に演じてるところが1番の見所だから。
ただし、シュールな世界観や時々ポロリとこぼれる含蓄ある台詞等は、原作の力が大きいのだろうとは思う。

それと全く個人的に、この河川敷での彼らの生活ぶりが、私の大学生活にカブるので(なんか雰囲気がとても近い)心地良いと言うかムズ痒いと言うか、懐かしくも愛おしい世界観ではあるのだけれど。

ロックかロックじゃないか、と聞かれれば、映画に関してはあまりロックじゃなかったかも。
残念。

嵐ケ丘(1939年版) 4/15

昔むかし、この映画を観た母が「映画ってやっぱり綺麗にまとめてしまうのねぇ」みたいな事を言っていて、子供の私は何の事やら、だったのだが。
少女期から何度も原作を読み、その年々の感慨を温めて来た今となっては、母の言葉の意味が痛いほど分かる。
タダのメロドラマやんけ〜!!!
ただし、とても格調高く重厚ではあるが。

ローレンス・オリヴィエの、ヒースクリフ。
ちょっと美男すぎやしませんか、とは思うものの、野性的で憂いを含んだ彫りの深い顔立ちは、私の妄想から生え出して来たみたい(笑)。
でも待てよ、意外とヒースクリフって令嬢キラーじゃね?
まあ、箱入りの令嬢というモノは、周囲に寄ってたかって守られるので、危険な人物を察知する能力が一般より劣っていても不思議は無いからな。
いずれにせよ、ト書きで「美男である」と明記されていなくても、魅力的な男性だったのは分かる。
ただ、マトモなセンサーの働く人にとっては、美醜よりも先に危なさを察知してしまう、という事だろう。

キャシーの女優さん(マール・オベロン)も見た目は悪くない、気の強そうな美人なんだけど、いかんせん表現が"いい子ちゃん"過ぎて、どうにも食い足りない
もっとこう、荒々しいと言うか、なぜキャシーのようなお嬢様が危ないヒースクリフとあんなにも惹かれ合ったのか、という(ヒースクリフの表現もたいがい甘いのだが)物語の骨子とも言える部分が抜け落ちている。
要するに、バカで愚かなだけじゃなくエゴイストで根性悪いんだが、後半部分を伏せられた結果、タダの世間知らずのおバカちゃんになってしまって。
あと残念だったのは、キャシーの容姿は原作イメージに近いのに、ヒースクリフの妻になるイザベラが、似たタイプの女優さんだったこと。
兄のリントンもそうだけど、もっと繊細で生っ白い人にして、対比させた方がいいのにね。金髪でピンク色の肌で。
あ、この映画はモノクロだけど(笑)。

物語としては、愛の無い結婚をしたヒースクリフが哀れな妻を散々虐待し辱めるところとか、屋敷を奪い取る悪どい手口とか、二世に対する歪んだ扱いとか、そういうダークな部分がほぼ切り捨てられているので、何をか言わんや。
単なる身分違いの美男美女の悲恋物語になってしまいましたとさ。
せっかくのウィリアム・ワイラー監督、格調高くはあったけど、あまりスケール感も感じなかったかな。

公開が1939年と、どえらい昔の映画なので、まあ色々と感覚が違うのは仕方ないのかもしれない。
(とはいえ『風と共に去りぬ』が1936年と先なので、あのスカーレット像を見てからこれを作ったと考えるとちょっとね。)
あれだけの迫力ある名作、もっと現代的なアレンジで見てみたいものだけど。
その後何度かリメイクされてるようだけど、と思ったら、1998版は邦画だった!
松田優作に田中裕子。
んー、あまり、見たくないかも。
そして1992年のイギリス映画は、レイフ・ファインズはともかくジュリエット・ピノシュ…うーん。

アラビアのロレンス 
 

最初に、この人かなり、キテるよねー。
と、思うんだけど、それはそれ。
 
このスケ−ル感、このカタルシスは、何回観てもスゴイ!
映画館の大スクリーンの、右と左に、砂漠の広がるのを感じた。(実際には巨大扇風機とかレフ版かかえたジーパン青年とかがいるんだろうけど…)
白い族長服を着たロレンスが両腕を広げると、まるで白い鳥のよう、古典悲劇の王のよう、神のよう。
列車の屋根を歩くシーン、迷子の手下を連れて戻るシーン、片手を振って戦闘命令を下すシーン。
ロレンス自身の傲慢なカン違いに、観客は(アラブ軍同様)ウカウカと乗せられてしまう。
砂漠の風や太陽。これまた壮大なBGM。ピーター・オトゥールの、どこか悲し気な青い瞳。
「スケールとは、気の遠くなるようなディティールの積み重ねだ」と言ったのは、私の嫌いな某監督だが、言葉そのものは素晴らしい。「アラビアのロレンス」は、まさしくその事を、これでもかと体現している傑作だ。

「なぜ砂漠が好きか?」と質問されて、ロレンスは答える、「清潔だから」と。
有名なセリフだが、「清潔」という事は、「生き物に厳しい」って事でもあるんだよね。
彼は「清潔」な砂漠で、「運命などない!」と言い放ち、それを体現して見せてヒーローになるが、アラブとのギャップは超えられず、母国イギリスには捨て駒にされて、己が神ではなかった事を思い知る(当たり前なんだけどなあ…)。高揚感の後の挫折、まるでキリストの苦悩だ。
彼は白人社会では、かなりの変わり者だったようで、だからこそ砂漠の民を率いて武勲を挙げたりできたんだが、結局は極めて白人的な部分を露呈して、逃げ帰ってしまう。
それでも。
あの高揚感、あの全能感。結末はどうあれ、一度味わった快感は、忘れられるものではない。

恐い野蛮人としてロレンスの前に登場し、友人となり、崇拝者になって、ずっと彼を見つめ続けるアラブの首長、アリ。こちらが色付き人種のせいか、彼の気持ちに乗り易い。
ありゃあもう恋だね。そしてゴミのよーに捨てられる。

アラブの衣装というのは、どうも男性を三割増し位に見せるみたい。
ロレンスにしてからが、英軍の軍服の時は貧相なのに白い族長服になった途端神掛かってしまうし、アリのみならずアラブ勢は風格があって、すこぶる男らしい、顔濃いけど。
思えば『風とライオン』のショーン・コネリーは、最高にセクシーだった。『レイダース』のハリソン・フォードにも、ドキドキしたなあ。
ラクダというのがまた、へんてこな生き物で、物語は佳境なのにふと目が行くと離せなくなっちゃう(笑)。
砂漠のテント生活も、観る分には魅力的だ。やるのはキツそうだけどね。

こんな壮大なスペクタクル映画が、大真面目に作られた時代、膨大な労力と金と知恵が惜しみ無くそそがれた時代。(意外と新しくて、1962年作だそうだが)
この頃、映画って、さぞやロマンティックなものだったんだろうな。

荒鷲の要塞

あらぁイーストウッド、若くて可愛い♪
1968公開ですか、そりゃ若いわな…。

当時はどうだったか知らないが、やはり映画には消費期限というモノがあるんだな、という思いを強くした。
特に感じるのが音楽の入れ方。盛り上がるシーンで盛大に流れるBGMが、今観るとむしろ気を散らせてしまうと言うか。明らかに昨今の音の入れ方と違うよね。
そして何だろう、話が入って来なくて最初苦労した。
若造のイーストウッドとヒーローのリチャード・バートン以外の俳優が知らない顔で見分けが付けにくいというのもあるのかな?
登場人物の数がのっけから多く、替え玉に二重スパイに裏切りにハッタリに…と人物関係も複雑で、キチンと把握して見ないと楽しめない造りなんだが。
21世紀のエメリッヒだのマイケル・ベイなんかの「バカ前提映画」に慣れ過ぎてしまったのか。そうかも。

賞味期限の問題は、クライマックスの合成丸出しのロープウェーのシーンでも痛感した。
物凄い死闘を繰り広げているんだけど…あまりに臨場感を感じなくて残念。
くそリアルなCG(それはそれで不満はあるが)を見慣れたせいで、こういう画面に想像力を寄せて見る能力も低下しているのかも。
多分当時はここが最大の見せ場だったのでしょうが。

それはそれとして、一番面白かったのはロープウェーを含むドンパチではなくて、バートンさんが言を左右にコロコロ身分を偽って周囲を翻弄するハッタリ部分だったりする。
こういう凝った脚本は、基本的に大好きなんだけど、先に書いたようにちょっと分かりにくかったのは残念。
あと、いくら悪玉とはいえ、ドイツ軍弱過ぎ(笑)で間抜け過ぎ(笑)!
こう言ってはナンだが、本当にドイツは映画界で気の毒な扱いだよね。まあハリウッドはユダヤの居城だから仕方ないんだけど、あまりにも貶められ過ぎ、という気がするわ。
エロイカより愛をこめて』をドイツ軍兵士達に見せたら大喜びで「ドイツの軍人が悪役じゃない!」「ホモでもロン毛でも大歓迎!」と盛り上がったという話を思い出して笑ってしまった。

女スパイが二人とも美人でセクシーで、ちゃんと活躍もしてて、そこはとても良かった。
二転三転どんでん返るプロットにバートンのクールなポーカーフェイスは良く似合うんだが、終始一貫カッコ良過ぎて思い入れができない、という辺りもイマドキの感想なのかな?
そう言えば昔の映画は問答無用のスーパーヒーローが多かった。泣き言をぼやきつつ瞬殺するマクレーン刑事が登場するのは80年代末だもの。
敵はバタバタ倒れるのにヒーローには弾が避けてくれるとか、そういうのはまあ、今でもある事だから。
肝心の"荒鷲の要塞"が全然難攻不落感が無いのは、かなり残念ではあった。
一応女スパイの活躍と、口八丁の少佐(バートン)の頭脳戦による勝利なのは分かるんだけど、それにしてもね。
しかし雪山ロケは凄い。大変だっただろうな…と、こういうのも映画を観る楽しみの一つだったな。

バートンは八面六臂の大活躍でなかなか素敵なんだが、イーストウッドの方はほぼいるだけ、本当に単なるハンサムな若造役で、キャラクターも完全に受け身一辺倒。
まあ見た目が本当に可愛いので、いわゆるイケメン枠だったのでしょうね。
アクションは頑張ってたが、割と誰でもできそうな役で、何しに出て来たの、とずっと思っていたんだが。
ラストのセリフには思わず拍手したくなった。
「次にやる時はイギリスだけにしてくれ」みたいなセリフ。あれは見た大半が同意したと思う(笑)。
英米合同制作だったのね。
イギリス人の面倒臭さが良いエッセンスになっているんでしょう。
賞味期限の件を思うと、もう少し…30年くらい早く観ておきたかったな。

アリス・イン・ワンダーランド 

「アリスが育っちゃってて、面白いの?」
と、いうのが、予告を見た感想だった。
やっぱりイマイチだった。

残念ながら3Dでは見られなかったので、そこは少し差し引いて考えるとしても。
何と言うか、セットとキャラクターがもったいない。
予告でとても期待したのだが、"アリス"の世界観をいい感じに再現した不思議の国の造形は、かなり好みだった。ディズニーアニメよりも原作本の挿絵に近いかな?
正直バートンは、もっとケバくするかと思っていたけど、かなり渋めの色調で、目に優しい奥行きがある。
カエルと犬は無茶苦茶可愛いし、赤の女王はおもろいし、白の女王は謎の黒さだし(笑)、ヤマネの騎士も愛らしい。
チェシャ猫は造形がイマイチだったな。動きとか演出は楽しかったけど。(猫という生き物は、そのままで完璧に美しく魅力的なのだから、妙なデフォルメは不要。と、いうのが、私の見解です。)
青虫もちょっと、人間臭さが足りない。トランプの兵隊は、私としてはペラペラの方が好みだったな。
兎が意外と無表情だったのは残念。あの怖い獣“バンダースナッチ”もだけど、やっぱりCGは毛皮系苦手だよね。カエルはあんなに可愛いのに(しつこい)。
でも一番不満なのは育ってしまったアリス…ではなくて、私的には帽子屋さんだな。
ジョニデ使う意味が無い、と言うよりジョニデなんかで見たくなかったわ。もっと身体も表情も動く人がいい。全然キチ○イに見えないし、そう扱ってもいないでしょ。
最期なんかまるでオトコマエみたいな態度で(に、しては色気も無かった)。その前の踊りも「な〜んだ」だったし。テンションだだ下がり

アリスは、登場時には「パッとしない娘だな」という印象だったけど、動き出したらなかなか良かった。これは映画的に狙い通りだったかも。
特にクライマックスの鎧姿がとても似合ってて、そこで選ばれたのかな、と思った程。
でもやっぱり、大人をあの世界に放り込む面白さが、私には分からない。
面白くない上に、例えば大きくなったり小さくなったりするお決まりのシーンも、昔見た「家から手脚が飛び出しちゃう」ようなバカバカしい見せ場が全然無い。
そして何より、ストーリーが退屈な上に説教臭い。バートンはいつも説教臭いけど、特に。
もったいないなぁ。
あの絵柄を使って、普通に素直に、原作に沿ったアリスを見たかった。

アリス方面はつまらないけど、女王姉妹はけっこう面白い。
デカい頭の"赤の女王"は、バートンの嫁さん、大熱演!この人が主役と言っても過言ではない。
片や善玉ポジの"白の女王"もまた、負けずに黒くて胡散臭いんですけど…なんなんだあの怪しい動き。メイクも怖い。やる事はえげつないし。
と、言うワケで、あの二人は所詮姉妹なんだなー、って、納得してしまったわ。
結局ストーリーは「お騒がせワガママ姉妹の兄弟喧嘩」であって、アリスが召喚された必然性も無いし、英雄になっちゃう理由もわからなけりゃ面白さも分からないので、いっそアリス無しで姉妹のガチバトルにしちゃった方が良かったのでは、なんてね。

『アリス』の最大の売りって、"シュールさ"だと思うんだけど、そう言えばバートンさんてファンタジックでもシュールじゃない。説教臭いし。
もっとイカレたスマートな監督に、現代のCG技術を駆使して撮ってほしいな、原作に忠実なアリスを。

 
おまけ:私は『アリス』の大ファンという程ではないんだけど、実はちょっと想い出がありまして。
幼少のみぎり、多分幼稚園のイベントで、大勢で『アリス』の舞台を観に行って、芝居に飛び入り参加した事があるのよ。それもかなり、強引に(笑)。裁判のシーンでね。
その時は物凄い入り込んでて、本気でアリスちゃんを救おうと思ったんだよね…。

あるスキャンダルの覚え書き

運び自体は地味と言えば地味なのだが、ジュディ・デンチvs. ケイト・ブランシェットという、見た目も演技も強烈な二大女優のガチ主演とあって、それはそれは見応えのある映画だった。
ついでのように言っては申し訳ないが、もちろん脚本も緻密でとても良い。

ジュディ・デンチの顔が異様に好きなんだが、今回は本当〜に、ほしいままに堪能できた。
欲を言えば、彼女の貌は今回のような「潔癖なオールドミス」なんかではなく、酸いも甘いも噛み分けた姐さんが似合うとは思うんだけど、鬼気迫る演技と風貌は本当に他の追随を許さず、次第に明らかになる病的要素も胸ときめかせつつスンナリと受け入れられる説得力がある。
対するケイト・ブランシェットは、もちろん押しも押されぬ演技派女優だが、今回はとにかく、美しい。無邪気で優しく天使のように美しいが、反面とんでもなくだらしなくて何か大切なモノがスコンと抜け落ちている、そういう女をリアルに見せてくれる。
服装も、仕草や表情も、彼女がよく演じるデキる女とは一線を画していて、しかもすごい実在感。凄いなぁ、この女優。

しかしね、映画の内容は、なんともやるせなく情けない。
ブランシェット演じるシーバという女はバカそうだけど本当にバカで、だって夫(ビル・ナイおじさまですよ!)があんなに愛してくれてるのに、あんなそこら辺の若いだけの男に。
あんな良い家庭なのに。その良い家庭が微妙に居心地悪そうなのも見えて面白いんだけど。
しかしバーバラさんが怒るのは無論ソコではなくて、それがまた怖いワケですが。
でもこの壊れ方はとてもリアル。孤独で、醜女で、老人。だから友情には異常に期待をしてしまう…あ、私、危ないかも。
ジュディ・デンチは入浴シーンなぞも披露して、本当に捨て身の大熱演だ。
映画でのモノローグは善し悪しだと思うが、本作のバーバラのモノローグは本当に聞き応えがあって面白い。聡明で辛辣、でも自分勝手で、だんだん破堤して行く様が、何とも気持ち悪くて素敵。

惜しむらくは、全てが終わってのラストシーン。
ちょっと安っぽいホラー仕立てになってしまいましたね、残念。
そこまでは本当に、息もつかせぬサスペンスドラマだったのに。

アルマゲドン

悪い意味でマンガ。ええ、悪い方で。
なんでしょうかこの、ザツな感じは。

ベン・アフレック、魅力無いなぁ。俳優的にも、役柄的にも。頭悪そう
しかしリブ・タイラーというのは遺伝子の奇跡だね。あんなに美人なのにお父さんにソックリという(笑)綺麗でしたが、どうなんでしょう、あの娘も。
なんだか終始モダモダバタバタしてて、せっかくのブルースも生彩が無く、いくら急を要したとはいえNASA無能過ぎ!計画荒すぎ!とイライラしながら見てて、サスガにラストの展開はちょっとホロリ…と、思ったら、帰還した恋人を出迎えるグレースちゃんの満面の笑顔!父ちゃんと涙のお別れしたばっかじゃんアナタ。切り替え早過ぎますって。
離婚した夫が国家の英雄になると知った途端に「あれはパパよ」と掌返すのは、まあそんなモノかな、とも思ったが、子連れで出迎えてすっかり元のサヤに収まったようなアレはちょっと…。
と、いうような、これでいいんかい?と言いたくなる節操の無い演出&演技が多数。
せっかくの名曲も、使い所を間違うとこんなにも安っぽく聞こえるものかと、むしろ感心したわ。

全編通しての頭の悪さではピカイチだけど、おバカ映画として愛でるのには可愛気が無いという。
お金いっぱいかけて、豪華キャストで、面白くなりそうな題材で、なんとももったいない造り。
「なるほど・ザ・アメリカ映画」だった、悪い方の意味で。『2012』とか『アイアンマン』の方向ね。
なんかかっこよく揃いのオレンジ衣装で横並びでスローモーションだったけど、宇宙に出てみたら予想を上回るドジっ子ぶりを発揮する皆さん。そもそも13人も必要だったのか。
引率の先生みたいになっちゃってるNASAの人が気の毒で…なかなか好演でしたが。
あと核爆弾計画の総指揮者がトルーマン(彼も好演)って、何の嫌がらせだよ?
他にはロシアの宇宙飛行士が良かった。ブシェミはブシェミであるだけで面白い…彼のもはや芸術的な歯並びを堪能できただけでも、まあいいか。

で、聖子ちゃんてドコに出てたの?

アレキサンダー 

いや〜、こんなホモホモ映画とは。
それで評価が変わったりはしないけどさ。どうせそんなモンて気もするし、あのへんの(アバウト…)時代。監督オリバー・ストーンだし。
でも、母親の「若い男同士なんだから当然よ」発言には軽く後ずさった(笑)。
主演のアレキサンダー大王役は、このところすっかりお気に入りのコリン・ファレル君。八の字眉毛が可愛いのよ。
痛々しいような若さと、確かな演技力。適役でした。

合戦シーンはとっても痛そうで迫力あるんだけど、正直いきなり始まってしまった感じで、こちらが人物に思い入れが整う前にどんどん進んでしまって、ちょっと引いた。痛いシーンも長すぎると疲れるし退屈しちゃう。
後半部分のゾウとか出てくるあたりは気持ちも追い付いて来て、しっかり観られたけど。
遠征する先々での衣装や調度品等も様々に豪華で見応えがある。
嬉しそうに現地の服装で登場するアレキサンダーも、ちょっとしたお楽しみだ。

母親役のアンジェリーナ・ジョリー。きついっす。
嫌いじゃないんだけどこの人、コスプレ似合わねー。『ポワゾン』でも思ったけど、やっぱり時代物は端正な美女がいいな、私。
父親役のヴァル・キルマーは、粗野だけど熱い王を熱演。しばらく誰だか分からなかった!

物語は世紀の偉業を成し遂げた若き王の、英雄的な面よりも苦悩を中心に据えて展開される。
平たく言えばこの英雄、ホモでマザコンでヒステリーである。
コリン・ファレルは英雄の苦悩をしっかりと演じているけれど、あまりに暗い面ばかりが強調されて、かえって薄い印象になってしまっているのは残念だ。
戦争は憎いかも知れないけど、人にやれない事をやった人物を描くのに、トラウマの一枚岩では納得いかない。
人に真似できない、おおらかさや剛胆さ、かっとんだ部分が、きっとあったはず。
コリンは笑顔だってカワイイんだからさ。

アンソニー・ホプキンス演じるじじいが回想する形式で、気持ちは分かるんだけど、成功してないと思うな。このシーンに戻って来ると緊張感が途切れちゃうし、たださえ長いんだからやめて欲しかった。
結局、最後にこのじじいが主題らしき事を語って幕、なんだけど、うん?これって内容と合っているのか?
結構面白いのに、最後に取って付けたようにどっかで聞いたような事言ってまとめるの、悪い癖だと思うんだけどな。

暗殺者

ジュリアン・ムーア、あほかいな
スタローンより断然バンデラスでしょ(笑)

と、戯れ言を言いたくもなる、相変わらずのスタローン映画
設定は最高に面白くなりそうだったし、なにせバンデラスに若かりしムーアだし、老境に差し掛かった殺し屋の最後の仕事に、若き後続者が挑む、という。ホラ、面白そう。
ただ一つ違っていたのは、主人公の殺し屋はスタローンだったんです。
本当にねぇ……『ロッキー』だけは好きなんだけど。

ストーリー的な事は、スタローン主演の時点で半ば諦めていた節があり、そういう目で見ればまあ、面白い部分はあった。
まず、前代未聞の暑苦しさ!
"イタリアの種馬"vs."スパニッシュ・セクシー"ですからね。濃い濃い
おまけに終盤のクライマックス前は、灼熱の待ち時間に延々とバンデラスの滴る汗を拝まされるという(笑)。なんか部屋中ムスクの匂いが充満しそう。
ムーアは公開当時、私はまだそんなに意識してなくて、本当に「若い子」の印象だったけど、猫だけを溺愛するハッカー、という役どころは面白い。"エレクトラ"と名乗るイカレぶりも良い。恐ろしく色白なのが、狙ってるかどうかは知らんがキャラに合ってた。
けど何だかあまりお利口そうに見えないのが残念だし、彼女が「私は幽霊のようなもの」と語るシーンは、お、と思ったのに、これまたスルー。本当に素材がもったいない。
残念の極みは、せっかくのミゲル(バンデラス)をタダの狂人として葬ってしまったところなんだけど。

このシチュエーションだったらさ、主人公と挑戦者に何らかの心の繋がりが生まれるとか、老いた主人公が策を弄して若手に華を持たせて、死んだふりしてチャッカリ引退するとか、あるいは若い彼女を庇って死ぬとかさ。色々ドラマにする手はあるじゃないさ。
でもスタローンは、どこまで行っても「かっこいいオレサマ」を捨てないからさ。殺し屋でも正義。動作がノロノロでも凄腕。老いても若い美人とラブラブ(ショーン・コネリーなら許すけど)。
おまけに最後はショボいラスボス登場で、狙撃しといて死んでないって責めたりして(爆笑)しかもせっかくのミゲルの活躍を、これまた次の展開に繋げない。
そしてラストシーンは、死体の山を背に若い女とキャッキャウフフなリタイア生活を語り合う老スタローンの背中、と。

もちろん、これは私の好みの問題であって、こういう「かっこいいスタローン」がお好きな向きもいらはるでしょうが。
でもさ、せっかく大スターになって、こんな仕事(参照『シェイド』)ばかりで終わってしまうなんて、役者として残念だと思うんだけどなぁ。
あ、バンデラスの『スパイキッズ2』にもスタローン出てたっけ。あのスタローンは、けっこう好き。

アンダー・サスピション 

ちょっと舞台劇みたいな(元は舞台劇らしい)、ほぼ取り調べで進む地味な道具立ての映画だけど、なかなかに引き込まれた。
しかしモニカ・ベルッチは美しい

ただ、ここまでやっちゃうと逆にハックマンは無実だろうなと、確信して観てしまったので、そこは残念だったな。
見て楽しい内容ではないし、見終わって特にカタルシスも無いのだけれど、見ている間の緊張感は心地良かった。
ジーン・ハックマンにモーガン・フリーマンと、名優同士がガップリ4つに組む、という言葉がピッタリの掛け合いに、麗しのモニカがこれ以上無い華を添える。

土地の名士、成功者で金持ちで尊敬される紳士が、妻に寝室を追い出され、幼児性愛者で売春婦に「早い」と評判でしかもハゲまで暴かれて、とうとう妻にもハメられて、あーいいよもーいいよオレなんかよぉ〜!!!
っていう話だよね……自業自得な部分もあるけれど、それにしても可哀想過ぎる。
冤罪はこうして生み出されるのだ。
と、いうのはちょっと違うとは思うけど、あのように知られたくない私生活をほじくり返され、知りたくもない憎しみを目の当たりにされて、心が折れてしまう気持ちは良く分かる。

扱う事件が幼女強姦殺人と、それだけで生臭い目を背けたくなるモノな上、ハックマン演じるハースト氏はホンマモンの変態だし、フリーマンのベネゼット警部は最初から決め付け過ぎてて「ハーストさんに恨みでも?」とさえ思う程だし、モニカのシャンタルは終始ふてくされててそれでも美しいヤな女。
決して見ていて気持ちの良い状況ではないし、おまけにラストはモヤモヤとやるせない、冤罪は免れても人生は滅茶苦茶で、もう取り戻せないよね…人間不信にもなるし。
本来ならハッピーエンド大好きの私には厳しい内容なんだが。
脚本の緻密さ、演出の巧みさ、主演二人の安定の名演技と女優の圧倒的美貌と、どれを取っても出来が良すぎて、なんだかキモチイイんである。
若い刑事がひとり軽いノリで、適度なオアシスになっているのも良い。

心が元気な時に、また見返してみたい。
きっと何度見ても、何かしら思わせてくれるであろう、そういう力のある映画だ。

アンダーワールド

面白くなりそうな世界観ではあるんだけど、うーん。
一向に盛り上がらないんだよね…。

公開は2003年。
CG技術は、かつて『狼男アメリカン』なんぞで大騒ぎした我々世代には覚醒の感があり、人間→狼をバッチリ見せてくれたりはするんだけど、うん。
宝の持ち腐れ

"ヴァンパイア"サイドと"人狼"サイドが同じファッションセンスなのがまず、いただけない。
って言うかどれが何だかまぎらわしい上に、唯一"人間"のマイケルも似たり寄ったりの印象で分かりにくい上に視覚的にも飽きてしまう。
ヴァンパイアが異様に色白なら人狼側は日焼けマッチョとかさ。人間は白Tジーンズに白い歯が眩しいカリフォルニア系イケメンとか。もちろん金髪ね♪
結局ルーツは一緒という設定だったけど、それならますます最初は水と油的な落差が欲しかったのに。
服装だけでなく両者とも、"能力"の表現が弱いと言うかヘタクソで、ほぼ名乗り合ってどっちの組か分かるレベル。
やたらドンパチやってるけど、人間が戦ってるのと内容的に大差無く、しかも一本調子。
せっかく美人が主人公なんだから、ちょっとドレス着せてアクションさせたりとかさ、考えたらいいのに。

その美人のケイト・ベッキンセール、たしかにお顔はとても綺麗だと思うし、あの衣装で細身の身体を包んだ姿はポスター映えは最高だと思うんだけど…動くとね、これまたいただけない。
黒い衣装に黒い髪、クールな美貌に白い肌蒼い(加工アリだけど)瞳と、3Dゲームから抜け出したみたいなビジュアルなんだけど、致命的に動きがニブい!
ヴァン・ヘルシング』でも思ったけど、映画マジックでそういうトコこそ何とかならないものかしら?
そして残念ながら、ちょっと品が無いんだよね。

大好きなビル・ナイおじさまが、後半意外と活躍してくれたので少し楽しかったけど、「おまえかいっ!」って展開に笑った。
なんじゃこいつら(笑)全然ダメじゃん?
裏切り者の指導者クレイヴンもナカナカの美形だったけど、本当に見所は顔だけだったし。
何度も続編が作られてるくらいだから、この世界観が好きな人も一定数いるんだろうけど、ずーっと暗い中暗い服装の人々が暗い顔してドタバタしてて、私はすっかり飽きてしまった。

アンタッチャブル

デ・パルマって、私が映画を見始めた頃周囲で凄く人気で、だから何本も観てるんだけど、自分でも好きなのかなんだか分からなかった。
絵は綺麗なのに、内容がエグイ。脅かしたり、怖がらせるのは巧みだけど、なんか小手先っぽい、嘘っぽい…。でも、気になる。
『アンタッチャブル』は、そんな私が初めて心から楽しめたデ・パルマ映画だ。
案の定、と言うか、やっぱり古くからのカルトなファンは「終わったな」とか言ってた。ふむ。

もの心付いた頃には、もう何となく聞き覚えのあったこのフレーズ、『ジ・アンタッチャブル』。そして「アル・カポネ」という名前。
禁酒法なぞという無茶な試みがあった時代。ファッションも、ダンスも、車や冷蔵庫なんかのデザインも、とってもオシャレで魅力的。
そんな舞台設定で、実在したギャングのアル・カポネと、彼を逮捕した捜査官の死闘を描く。って、んー、ワクワクする!
でも、シチュエーションの興味深さをしのぐ面白さが、この映画にはあった。
善玉悪玉共に魅力的なキャラクターが入り乱れ、キャストも豪華、 アクションも人情もてんこ盛り。多分お金もかかってる。
主人公の捜査官を演じたケビン・コスナー、良かったなあ、この頃は。
私はこの映画で初めてこの人を見た。スーツにソフト帽が良く似合う、端正でクラシックな容貌。ハンサム過ぎて今時あまりウケないかも…なんて思ったけど、さにあらず、案外押し出しの強い性格だったせいか?
アル・カポネはロバート・デニーロ。例によって、リキ入りまくりの飛ばしまくり。20kg太ったとかって、おかしいよ、アンタ!そうして作ったカポネの姿は、残っている本物のアル・カポネに笑っちゃう程良く似てる。オシャレでオトコマエで、とってもアブナイ親分でした。
そしてショーン・コネリー。ハゲてるじゃん!ハラ出てる(多分この時が一番太ってたんじゃないかな)じゃん!ジジイじゃん!なんでかっこいいんだよおー。

階段の乳母車のシーンはもちろん、コネリーの最期とか、その仇討ちとか、カポネがバット使ったりとか、見せ場も色々、元々絵はとても美しいのだから、ストーリーに安定感があれば落ち着いて楽しめたのは当然の事。

マニアには不評でも、この映画はウケたし、デ・パルマの代表作になった。
作家のワガママが押さえられた分、寂しい部分も分からないではないけれど、今までどこか「なんちゃってー」的な逃げがあったように感じていたのが、今回は真っ正面ド真ん中、剛速球ストレート。
私は支持します、でも、その後デ・パルマって、なに撮ったっけ?

追記:すみません、その後『カリートの道』撮ってました。名作。

アンタッチャブル(by hayakawa)

私も『アンタッチャブル』とか『ワンスアポイン以下略』好きなんです〜。何か好きって時代背景とケビンとショーン・コネリーっ。
ショーン・コネリー、老けてからの方がずっと色っぽいってどういう事よーーー♪♪

アントマン

設定を聞いて、てっきり爆笑コメディかと思いきや、意外と笑いどころが少なくて説明部分が長く、特に序盤は退屈してしまった。
でも、いざスーツを着てアントマン始動!となったら面白くて目が覚めた。
鍵穴抜けるのとか本当に爽快!
小さいヒーローは初めてじゃないけど、一瞬にしてヒュンッ!って変わるのは見ていて楽しいし、使い勝手が良さそう。
主演のポール・ラッドは嫌味が無くユーモラスな表情・仕草が上手で親しみが持てる。あまり強そうじゃない所もこの役にはいい。
マイケル・ダグラスはすっかりお爺ちゃんだがイイ味出してるし、スコットの小さい娘がメチャクチャ可愛い、これは守ってあげねば
ヒロインは娘でいいと思うんだけど、やはり大人の女性が必要な層が一定数いるのか、まあ美人ではあるんだけど、ホープさん。
アカラサマに続編狙いのラストシーンでは、次は彼女がスーツを着る予告をしてて、アントウーマン?登場させたいようだけど、本作に限ってはいる理由があまり見出せなかった。

"アント"の名は小さい事の比喩かと思ったら、ガチで蟻が多数登場、大活躍だった。
アリンコ、色んな種類でそれぞれ性格があり役割があり、大挙して迷い無く戦うアリンコ軍団は最強と言って良い。
考えようによっては、彼らの利益に何の関係も無い争いに巻き込んで、動物虐待と言えなくもないのだが。
考えなければとにかく強いし、かっこいいし、可愛いし!最高。
一匹でも楽しいし、大軍で走る様は見応えがあり、本当に良い時代になったものだと感動する。
ミクロキッズ』と並ぶ、アリンコ萌え映画でもある。

しかし最大の見せ場は、まさかの「きかんしゃトーマス」だった!
いやまさか、トーマスがあんな事に…と言うかまあ、そうだよね、と言うか、ああなると大きな丸い目がクルクル動くのがもはや怖い(笑)。
でもトーマスに乗って戦ってみたい!(笑)
いや〜、あのシーンは笑わせてもらいましたわ。

3D作品のようで、ちゃんと3Dで観たらまた印象は違ったのかもしれないが(蟻の大軍とトーマスは立体映像で観たい!)、序盤の工夫の無い解説パートが本当に残念だった。

アンドロメダ… 

ああ、この時代(1971年)の、宇宙関係政府の陰謀モノね…と、期待しないで観たが、意外に面白く、のめり込んで観てしまった。
宇宙とか陰謀が主流ではなく、科学者達の頑張りがメインだったせいかな。
またこの科学者メンバーが、皆いい味出してるのよ、イケメンヒーローとか持って来ない辺りの姿勢が好感が持てたな。
かろうじて看護婦さんが花を添えてはいたが、地味な絵ヅラだったなー。

甘く見ていたにもかかわらず、冒頭、一気に引き込まれた。
住民が皆、謎の死を遂げた街。完全防御服で調査に向かった二人は、即死したと見られる住民達の血が粉状になっているのを知る。そして唯一生き残った赤ん坊を発見…と、思いきやもう一人、言動の怪しいアル中爺さんが…!
まあ、どうせ結末は肩すかしだろうなと思って見ていたが、病気の実態はそれなりに面白かったし、それよりも発見するに至る過程が楽しめた。

眼鏡に小デブのおばさん科学者が、登場時より大好きになった。
嘘までついて調査に参加したがったくせに、消毒でお肌の心配をしたり、なんかカワイイのよ。
終盤彼女が倒れるのも、良いミスリードだった。
赤い鍵を持たされて自爆解除を一任される彼も大活躍だったが、存在感ではおばちゃんと、爺さん科学者が圧勝。
爺さんが危機に陥った時は、本当にハラハラしたし応援したわ、大変だったわー。

研究所のデザインは、遅れて来たサイケデリックと言いますか、いかにもあの時代の古臭さを感じたが、コンピュータとのやり取り等は、むしろパソコンが普及した現代の方が面白く見られたかもしれない。あの、融通の利かなさ加減を、我々は日々耐えて奴らと付き合っているのだ(笑)。
古さは感じても、あの物々しい"消毒"の模様や、地味に顕微鏡を見続ける学者達のやり取りは面白く見た。
実は"感染"の現場は映ってなかったり、問題の病原菌?は予想通り肩すかしな結末だったんだが(でも説得力はある)、会話劇としてかなり楽しめたし、おばちゃんの発作や自爆装置解除のシーンなんかはハラハラさせてもらった。結末もほぼ予想通りだったけど、それに不満も無し。
良い役者を揃えて舞台劇で見たいような、味のある小品だった。

 

追記:『ジュラシック・パーク』のマイケル・クライトン原作だそうで。ついでに監督はロバート・ワイズ。『サウンド・オブ・ミュージック』より全然好きだな。

アンノウン 

冒頭から引き込まれつつ、どうやって収束させるのか!?と、気が気でなかった。
かの『フォーガットン』みたいになっちゃったらどないしょう…(笑)
大丈夫、杞憂でした。
まあ、引きが強い分、蓋を開けてみれば「なーんだ」である事は否めないんですけどね。

ちょっと無理矢理と言うか、かなりと言うか、まあ孤独な主人公が心の奥に押し込めた願望が、事故によって浮上した、と言うか現実とすり替えられたと考えればいいのかな?
そう言えば思春期には、昨夜見た夢が現実だと思い込んでたり、という事が時々あった。人の記憶なんて危ういもの、というのは分かるんだが、特に頭打ったりした後はそうなのかな。

妻・エリザベスの、服と全く同じ緑の瞳に吸い寄せられた冒頭シーン。
ずっと引っかかってたけど、これは多分マーティンの記憶の中のシーンと思っていいんでしょうね。
絵に描いたような金髪美人で目の保養だったけど、美人の悪女っていいなぁ。
『トータル・リコール』のシャロン・ストーンとかさ…と、ここまで書いて、そう言えば似たコンセプトだなと思い至った。
もう一人の美女・不法移民のジーナことダイアン・クルーガーも文句無しの美人なんだけど、なんとなくゴツいと言うかドスドスした印象で、そこがまたこの役には良い。
最初の事故で車の窓破ってマーティンを救うシーンは凄い手際でかっこよかった!
態度の端々にマーティンへの想いが見えてて、奥さんいるし…と思ってたけど、最期までハッキリそちら方向にシフトしなかったのも好印象。

一応謎解きも面白かったし(石油王子のブラフとかもあって)そんなに不満は無いんだけど。
それよりも東ドイツのスパイの顛末とそれを讃える暗殺団員とか、怪しんだ看護婦を一撃必殺の手際からの脱出劇(ハサミのくだりは本当〜に手に汗握った!)とか、大筋と直接関係ない描写が妙に面白かった。
あの美人奥さんが事故後訪ねて行った時、本気で当惑していたのも納得だし、その後「殺されるわ!」からのチューとかもウンウンと頷きながら観た。
でもだから、奥さんの顛末は残念。って言うか「はぁ!?」だったな。
どうしてもあそこで爆発させたかったんでしょうけど、最期にキチッと向き合って罵り合うなり闘ってほしかった。そう、『トータル・リコール』のシャロン・ストーンのように。
…いやしかし、東側にもその名を轟かせていた暗殺団が、皆さんあまりにもドジッ子で…(笑)。

アンブレイカブル 

ええええええどうしよう。
ぜんっぜん面白くないっっっ!!!!!

秀逸だった『シックス・センス』の監督の二作目であり、主演も同じブルース・ウィリス。
と、いう事で、期待して観た向きも多いんじゃなかろうか。
ある意味芸術的な裏切りっぷりだったわな。
「マンガは真実を伝えている」って何だよ(爆)描いてる私が違うって言ってんだから違います、ええ。

音楽ばかりがサスペンスフルで、内容は何をハラハラして良いのかも分からない。
サミュエル・L・ジャクソンは元々素敵な方とは思ってなかったが(でも好きよ)、この映画での彼の醜さはコントレベルで、シリアスな話に集中できない。なんだあのナナメった髪型は。
髪と言えばブルース、『ダイ・ハード』に『アンブレイカブル』とはまあ、どんだけ丈夫なんだって(笑)。
「パパは死なないから撃ってもいいんだ!」って息子よ、ソレおかしくないか???

無名の作家がソコソコ受け狙いで作った作品が大ヒットして、そのヒットのおかげでワガママ言える立場になったんで次作は好き勝手やっちゃってマイナー路線…と、いうのはよくある話だが。
シャラマンさんの場合、それが次作に留まらず、次から次へとそういうの連発してくれて、結局「最初はマグレだったのか…」という結論に至る、というのが私の見解、かな。
ヴィレッジ』なんかは雰囲気は良いので、ついつい懲りずに何作も観てしまったんだけどね…。


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