花音伝説
第四部-豊紳殷徳外伝 壱

第二十二回-豊紳殷徳外伝-1 

 阿井一矢  


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18歳未満の方は速やかに退室をお願いします。

  富察花音(ファーインHuā yīn

康熙五十二年十一月十八日(171414日)癸巳-誕生。

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 公主館00-3-01-gurunigungju 

        

十公主が誕生した。

母親・惇妃(ドゥンフェイ)-汪氏(ワン)満州正白旗

乾隆四十年一月三日(177522日)乙未-後の固倫和孝公主だ。

乾隆四十五年ロサンペルテン=イェーシェー・パンチェン=ラマ六世は都へ呼ばれ滞在中、十公主(固倫和孝公主)は吉祥天母の生まれ変わりだとフォンシャン(皇上)へ言上した。
有る説にはダキニ天の化身として特別に扱いリソナム・ペルキ・ドルジと言う名を授けたという。

 

和珅(ヘシェン)の子に豊紳殷徳が誕生した。

この名は五歳の時(乾隆四十五年四月-1780年)にフォンシャンが与えたもので元の名は和孝(ヘシィアォHé Xiào)号天爵。

だが正史と言える物には和孝の名は伝わっていない。

固倫和孝公主の名も正史に伝わっていない。

乾隆四十年一月十九日(1775218日)乙未-和孝(ヘシィアォ)誕生。

乾隆四十五年三月(1780年)庚子

和孝(ヘシィアォ)六才、十公主六歳と婚約。

フンリは二人を寶月楼で合わせることにした。

和珅(ヘシェン)に馮霽雯(ファンツマン)は興奮で顔が真っ赤だ。

弘暦(フンリ)の嬉しそうな顔に比べ、母親の惇妃(ドゥンフェイ)は複雑な顔だ。

十公主も小生意気な顔で此方を見ている。

「いやぁ容妃娘娘の若いときに似てますなぁ。信(シィアォ)もこんな美人の公主様と婚約で幸せだ」

ファティマはこの時四十六歳、信(シィアォ)は今でもこんなに美人なのにと十公主と交互に見て「まさか容妃娘娘と似ているなんて、爸爸(バァバ・パパ)もお世辞がうまい」と思っている。

 

乾隆五十三年一月一日(178827日)戊申

十四歳のフェンシェンインデに格格が二人付いた。

和珅(ヘシェン)の反対を押し切って、馮霽雯(ファンツマン)が選んできた。

緋衣十六歳、播漣十六歳の二人だ。

梁緋衣(リャンフェイイー)は二月二日にはるばる広州(クワンチョウ)からやってきた、フェイイーは船で天津まで来たそうだ。

少し丸顔で背はフェンシェンインデの耳までない、背は低い。

フェンシェンインデ、この当時の裁衣尺で47寸、少し大きめの子供と思えばいい。

お目見えの日、どちらも房事は初めてだ、この時代街場の男は妓楼の女に男にしてもらう者が多い。

床入りも二人は恥ずかしがって手も出せない。

それでも緋衣(フェイイー)は初夜の心得は教えられていて、自ら衣を脱いで恥ずかしさを我慢して布団へ入ってフェンシェンインデを待った

ませた従弟に「女のあそこはその気になると濡れるんだぜ」などと聞かされて興奮したものだ。

布団を退(ど)かせ、縮こまるフェイイーを抱きしめると抱き返してきた。

震えるフェイイーに「俺も初めてなんだ。二人で房事の事を覚えよう」と耳へ囁いた。

抱きしめる手が緩みフェンシェンインデは胸を揉み上げると、ツンと小さな乳首が持ち上がってくる。 

顔を下へ持ってゆくと、膝に力が入り、閉じてフェンシェンインデの顔を挟んだ。

フェイイーの身体から匂う湯あみの椿の花の匂いとは違うようだ、フェンシェンインデの珍宝は期待に痛いくらい張っている。

梁緋衣(リャンフェイイー)は恥ずかしそうに両の手で顔を隠している。

フェンシェンインデは我慢して左の小指でフェイイーの鼻を擽った。

この男先天的に房事に長けているようだ、我慢が出来る若い男など珍しい存在だ。

鼻の先がフェンシェンインデの乳首に触れると今更の様にフェンシェンインデの両の乳首が立ち上がった。

「痛くなかったか」

「いたい」

初めてなのにフェイイーは高みへ到達しそうだ。

三月の末に来た呂播漣(リュウボウリィエン)は前に逢ったことがある。

劉全は七歳のフェンシェンインデを連れて天津(ティェンジン)、青島(チンダオ)に出かけた。

天津(ティェンジン)から船で渡った青島(チンダオ)は小さな家が並ぶ魚村だった。

その中で一軒大きな屋敷があり手入れの良い庭と大きな煙突がめだった。

そこの家で醸造する酒の取引だった様だ。

その呂家の三人の姉妹の一番下の小姐(シャオジエ=お嬢様)播漣(ボウリィエン)はフェンシェンインデの手を引いて庭を案内してくれた。

多分醸造の酒の匂いに酔ったのを娘が遊び相手に連れ出したようだ。

その後もう一度会ったはずだ。

家に来た日も姐姐(チェチェ)ぶりを発揮して床入りの時にフェンシェンインデの衣類を脱がせ、布団へ先に寝かせると自分の服を脱いで入ってきた。

「初めてなんだから優しくしてね」

「もちろんさ」

口を吸うともう喘いでいる、服を脱ぐとき覗き見た乳房は、突っ張る様に上を向いていたが、寝床では左右に少し開いて盛り上がっている。

左手は下へ、背中から回した右手で乳首をつまんだ。

フェンシェンインデ観察して喜んでいる。

ボウリィエンは気持ちいいのか顔が緩んできた。

大分血が多いと手巾を見て心配した。

「痛かったか」

「良くなかったのね」

怒った顔が可愛い。

「気持ちが良すぎて精が漏れそうでやめたんだ」

「うそっ」

起き上がろうと体を持ち上げた。

「だめ、止めてっ」

「止められないよ」

ませた従弟は「女は最初行かないんだぜ」なんて言っていたが二人の格格は最初から上り詰めて気を遣った。

放心したボウリィエンの体を抱きしめて仰け反る首筋に舌を這わせると気が付いたボウリィエンがしがみ付いてきた。

「和孝(ヘシィア)、素敵よ」

「ほどほどにしないと二人は無理だ」

冷静に状況を見ている。

 

乾隆五十三年四月十九日(1788524日)戊申-容妃五十五歳死去。

フォンシャン(皇上)はファティマの遺物を十公主へ贈った。

 

豊紳殷徳(フェンシェンインデ)は播漣(ボウリィエン)より緋衣(フェイイー)のほうが好みに合う様だが、悟られない様に気を配っている。

同じように寝屋へ誘う順番を守ることにしている。

女特有の月の物が来て日にちがずれ、それからは月の物の五日後と決めて誘うことにした。

観察するのが好きなようだ。

播漣(ボウリィエン)は自分がこの家の主導権を握っていると思い込んでフェイイーを指図している。

使女たちにも軋轢は起きてこないので好きにさせているのは、フェイイーはフェンシェンインデが優しく声をかけるだけで満足しているからだ。

 

乾隆五十三年十月七日(1788114日)戊申

豊紳殷徳(フェンシェンインデ)十四歳が「結」の一員と認められた。

立会人が十枚の起請書を持ってフェンシェンインデの元へやってきた。

あらかじめ劉全からあらましは聞いていたが「父上への賄賂か。なら受け取らん」と言うのを「結」の成り立ちから話した。

「あなたを見込んだ十人がそれぞれ銀千両を預けますが、返済は必要ありません。あなたが見込んだ方から十人へ一人銀千両投資する。それだけです。あなたが損を仕様が使わずに置いておくかもあなた様次第です。銀(かね)がないときは次の十人に援助は強制されません」

このころ銀千両は金錠なら百両で、銀一両は銭八百銭見当。

立会人は二人。

一等侍衛-平儀藩(ピィンイーファン)「御秘官」重鎮四十歳。

平文炳(ピィンウェンピン)-「結」-結社の長四十四歳。

初めて会う男たちだ。

「なぜ私に」

「和珅(ヘシェン)殿とは関係ありません。私達が選んだのは馮英廉(ファンインリィェン)殿が亡くなる前、貴方が十三歳に為ったら資格があるか調べて「結」へ推薦してくれと頼まれました」

二人は「御秘官」や粘竿処(チャンガンチュ)はまだ教えないつもりだ。

「結」の方針を理解し使いこなせる様になり、学問、武術に研鑽するかを見てからと思っている。

「ご指南をお願いします」

「どういうことですか」

「自分には劉全のような商才も有りません。また劉全のような奴婢として仕える者もいません。半分を直ちに五人に投資しても良い物でしょうか。

二人は驚いた、感激するか有頂天になって浮足立つ男は見たが、こんな話は初めてだ、いくら和珅(ヘシェン)の息子でも銀(かね)を持って居る訳でもないはずだ。

「相手は結の元になる結社の者の一族からしか選べません。それでも宜しいのですか」

「噂話に聞いたところでは、蘇州、杭州にも大勢結社の人がいるとか」

「二百人は居るはず」

「その一族のうち二十歳未満で独立をしたいものから五人紹介してください」

「うむ、だが後九人も、その気になって呉れるだろうか」

「受け取るだけの資格があれば、結の有力者を紹介して頂ければ蘇州、寧波でも説得に出向きます。幸いまだお役に付くまで一年あります。時間は取れます。お願いできないでしょうか」

二人はまだ少年の此の男に惚れてしまった。

「分かった。わしが責任をもって人選しましょう。ただ年齢だけは特定できません」

フェンシェンインデは推薦をお願いしますと二人に告げた。

平文炳は「自分で出向いて良かった」と帰り道、平儀藩と其の話で意気投合し、応援を続ける事を誓った。

 

フェンシェンインデは劉全に蘇州で菜店を開くにはどのくらいの銀(かね)が必要になるか聞き合わせてもらうのと、後は軍師になって呉れそうなものを探してもらった。

フェンシェンインデは「どうせ劉全が調べるだろうから、軍師から駄々洩れのほうが面倒なくていい」とこの話が来て直ぐに考え付いた。

気楽な男だ。

 

劉全は昂潘(アンパァン)という三十近い、いかつい男を紹介した。

まだ子供のフェンシェンインデに言うことか「この先生こう見えて瑠璃廠付近の胡同では有名人です。路地ごとに愛人がいると噂だ」何て売り込んだ。

邯鄲(ハンタン)の人、両親が亡くなり田舎でくすぶるよりと、京城(みやこ)へ上ったが、学問、棒術、どちらもここでは通用しない。

楼郭の用心棒くらいじゃ惜しいと劉全が連れて来た。

フェンシェンインデは拳を楊(イァン)先生、詩経を戴(ダァイ)先生に、従弟でふた月しか誕生の違わない良輔(リァンフゥ)と共に教わる日々だ。

良輔(リァンフゥ)は豊紳殷徳(フェンシェンインデ・インドゥ)と同じ時にフォンシャン(皇上)から豊紳宣綿(フェンシェンシュイーミェン・伊綿イーミェン)の名を賜った。

二人は昂先生に棒術も教わったが良輔は上達が早い。

和珅(ヘシェン)は二人に、剣を学ばせない、和琳と話し合ったか官学へも入れなかった。

どうやら「御秘官」に取り込まれるのを恐れたようだ。

 

乾隆五十三年十一月六日(1788123日)戊申

ひと月後、平文炳が外で会わせたい者が居ると言われたので月河胡同の飯店へ出向いた。

男と女を紹介された。

男は息子だという「平康演(クアンイェン)と申します」年は二十七歳だという。

蘇州城外西の山塘河近くに路西街という街がありそこで東源興という小間物の卸し小売りの店を持って居るという、平関元と言う息子が居て悪餓鬼で困る。

「もうクアンイェンの身の上話は好いよ。その人を結へということなのですか」

「これはいけない。つい身内の口が出てしまった。いえね此方の女を口開けの推薦でお伺いに参りました」

「潘寶絃(パァンパォイェン)と申します。今は主に上海(シャンハイ)と合肥(ハーフェイ)間の運漕船を商売にしております」

良い声だなぁと顔を見ると小さな顔に笑うと大きな前歯が目立つ。

歯は白くて目立つので一度見れば忘れない顔とはこういうのだろうと見つめていたようだ。

「あれいやですよ。穴が開いちまう」

「悪い悪い、歯があまりにも奇麗で羨ましいとつい見とれてしまった」

「いやですよ色黒だから歯が目立つと言われてばかりですよ」

どうやら平(ピィン)の親子にいつも揶揄われているようだ、二人で笑いを堪えて居る。

「こいつは私の長年の友達の娘で父親は結の仲間です。もう十人の約束は済んでいるのですが、夏に早打ち肩であっさり死んじまったんですが、こいつが後を遣りたいというんですよ」

茶を飲んで間合いを取っている「拳と同じだな」インドゥも今度は相手の出方を待っている。

「上海、蘇州で三人賛同してくれましたが、本拠の合肥(ハーフェイ)に影響力のある奴が悪あがきして。女に賛同できるかと他の者にも手を回してくるんですぜ」

平文炳、この間とちがいフェンシェンインデを友達扱いだ。

「私の役割は」

「その男、莞峰宣(グァンフェンシェン)というのですが。説得してくださいませんか」

この間の言った事をそのままやらせて観ようとしたようだ。

「それでその人は今どこに」

「最近は廊坊(ランファン)にいます。それで案内に息子を連れてきました」

「ああそれで」

どうやら話が見えて来た。

女は潘寶絃(パァンパォイェン)で三十二歳だという。

 

翌日、三人で大曲に停泊している潘の船で通惠河を廊坊(ランファン)へ向かった。

二刻半ほどで百五十里ほど運河を下ると栄えた街筋を抜けた。

フェンシェンインデを含めて七人乗って、帆を二人が操り、かじ取りがなぜか二人いる、大分早く進める船だ。

「いゃ、こりゃ早くて楽ですね。なん年か前に天津まで一昼夜掛かりました」

「こいつなら後三刻くらいもあれば着けますよ。客を乗せる船より倍は船足がありますから。ただ官船の通るときは停泊させられますのであてにしないでくださいな」

平康演(クアンイェン)が指示して港の奥へ停泊した。

小さな門構えの家だが奥は深い、話はついているらしく三人は大きな男に紹介された。

「話は親方から手紙が来た。だけどよこの女に親父の後を任せるのは感心しねえよ」

「どうしてですか大人」

潘寶絃の言葉が強い。

「そら、それだよ。見境なしに突っつかる。お袋が泣くぜ」

どうやら顔見知りではある様だ。

挨拶で名前は名乗ったが詳しい紹介もなしで話が進んでいる。

康演(クアンイェン)ときたら「俺は案内しただけ」のつもりで助けもしない。

「ところでその若いの。お前さん何の用だ」

散々愚痴って、こっちへやっと気が向かったようだ。

「実は先月、結へ参加させていただきました。それで最初の推薦をここちらのパォイェンチェチェを選ばせて頂くように推薦されました」

「なんだい、自分で投資か商売でも遣るんじゃねえのか」

「自分には商才なんて有りませんよ。それなら幾人かでも早く回した方が役立つと思いました」

「変わったやつだな。なんで俺んとこへ来た」

「平(ピィン)大人に頼まれましてね。来ればいくらかでも話が通るかもと、ついて来ました」

「聞いてやっていいが、このじゃじゃ馬乗りこなせるかい」

「莞(グァン)大人」

パォイェンが血相変えて詰め寄った。

「何いきってんだよ。だからおめえじゃだめだというんだ。エ、考えても見ろお前の親父が仕切っていたのは三十艘だ。口が悪い奴だって幾人もいらぁな。そのたんびにいきっていたら、どう仕切りを付けるんだ。親方だって結へ参加させるのは自分で面倒見るつもりだろうが。つきっきりじゃねえんだ」

この大人理屈は有っている、感心して聞き入った。

クアンイェンと来たら見物のつもりで面白そうに見ている。

フェンシェンインデ、間合いをはずす事にした。

「ところで」

「なんでぇ」

「いえ此方のパォイェンチェチェなんですがね。結の銀(かね)で船でも新しくするんですか」

これには周りの者も呆れている、いくら何でも推薦人だ。

「聞いてないのか」

「聞かされていません」

「聞かずに推薦するのか」

「平大人が連れて来たくらいだから、聞かなくても説明位するかと思ったら言わないので聞いていません」

「おめえ、すこし変な奴だと言われたことないか」

「いつも従弟に言われますよ。それと最近棒術を教えてくれる先生がね」

「なんで棒術の話に成るんだ」

「その先生が、形は好いが。申し合いが弱いというんですよ」

「何のことだ」

「私の形にこだわるのと、パォイェンチェチェがわざわざぞんざいに行動するのは根が同じ。だと思うんですよ。考えるより先に動いて後でこうやりゃよかったと反省するんじゃないですかね」

「おめえ、反省することなんて有ったか」

パォイェン真っ赤になっている。

莞(グァン)大人吃驚している。

「おうおう、なんだもう乗りこなされたんじゃあるまいな」

康演(クアンイェン)が「勝負ありですかね莞(グァン)大人」とようやく口を開いた。

「親方に言ってくれ。反対するやつは俺が張り倒すとな」

自分も相当な乱暴者の様だ、気のいい親父かもしれない。

簡単に合点がいけばもう親類扱いだ。

「ところで若いのお前さん幾つだ」

「十四です」

「酒は」

「最初の乾杯だけです。それよりパォイェンチェチェ使い道の説明してくれませんか。急に気になりだしましたよ」

袖から巻紙を出して莞(グァン)大人に差し出した、誰が最初か礼儀は心得ているようだ。

それを回し読みして「よく出来た計画ですね。これなら出したい人は大勢いますよ」と言って用意してきた信用状をクアンイェンに渡した。

莞(グァン)大人がきれいな字で書いてやはりクアンイェンへ預けた。

宴席が開かれて乾杯だけのつもりのフェンシェンインデに、献杯が続いてもう真っ赤だ。

飯店を紹介してもらってフェンシェンインデはそこへ泊まることにした。

クアンイェンは引き留められて泊まる様に言われた、まだ宴席を続けるつもりだ。

表がやけに賑やかだと二階から下を見るとパォイェンチェチェたち一行だ。

案内してきた男もふらふらと帰って行って、ようやく静かになった。

パォイェンチェチェが部屋に来てくどくどと礼を言う。

いきなり服を脱ぐには驚いた「寒いですよ」この期に及んでやっぱり変な奴だ。

「こんなおばあちゃんじゃいやでしょうが、つきあって下さいな」

服を脱がされ手を引かれ寝床へ押し倒された。

相当酔っているようだ、フェンシェンインデの手は自然と秘所を弄っている。

酒が入ったせいかフェンシェンインデなかなか行かない。

上にチェチェを乗せると激しく動かれてフェンシェンインデは気が高ぶってきた。

姐姐(チェチェ)は声を出すのを我慢しているようで顔が引きつっている。

二度三度とチェチェは軽く行ってしまったようで、息が上がりだした。

到上面来(ダオシャンミエンライ)」

姐姐(チェチェ)が要求する。

姐姐(チェチェ)は顔が行くのを耐える様に時々厳しい顔になる。

それでも強情に「歓喜」とも「喜歓」とも善がり声も出していない。

「よかったよ。すごい」

「はじめてよこんなの」

二人は抱きあってそんな言葉を交わした。

「死んだ亭主じゃこんなに良くなかったわ」

寡婦だったんだと初めて気が付いた。

「姐姐(チェチェ)が教えてあげる」

酔った勢いでそんなつもりで押しかけてきたようだ、十四で格格が二人もいるなんて教えられなきゃ分からない。

平文炳の親子も口は堅い、そんな事教えるはずもない。

一年の内に四人紹介が来て、フェンシェンインデはすべて認めて信用状を書いて渡した。

この頃には遊び友達の拳の仲間も昂(アン)先生に棒術(棍)を習う者が多くなった。


 

乾隆五十四年一月一日(1789126日)己酉

フェンシェンインデは二人の格格を比べるでもなく愛した。

房事は自ら十日に一度までと制限し、更に欲求を抑え、二人をそれぞれ月に一度寝床へ誘うに留(とど)めた。

二人にも話をして我慢をしてもらった。

 

時々パォイェンチェチェが京城(みやこ)へ来ると、朝に通惠河大曲近くの月河胡同の飯店から呼び出しが来る。

のこのこ出かけて昼間に愛し合う、姐姐(チェチェ)はだいぶフェンシェンインデに入れ込んでいるようだ。

確か揚子江の奥が本拠のように言っていた、それをわざわざ仕事を作って京城(みやこ)へ来るなら付き合わなきゃ、ということの様だ。

前と違って大きな声で善がるのでフェンシェンインデのほうが周りに気を遣う。

「喜歓、喜歓(シーファン)」

「我喜歓、我喜歓(ウォシーファン)」

そう繰り返し、繰り返し言って到達していく。

時々「不行、不行(プゥーシィン・駄目)」と言うときは「まだまだよ」くらいの時だ。

泣き顔が嬉しそうな顔に代わりチェチェは気が遠くなる。

フェンシェンインデは終わるとせっせと濡らした手巾で体を拭いてあげる、これをしないと終わった気がしない様だ。

有るとき普段の「姐姐(チェチェ)」ではなく「小姐(シャオジエ=お嬢様)」と飯店の主が声をかけていた。

此の飯店となにかゆかりでもある様だ。

道理で昼間から男を呼びつけて平気な顔のチェチェだ、前門前の胡同なら昼間からあの事に夢中の男女は普通だという。

豊紳府の近くの胡同は妓楼の数が少ない、瑠璃廠、前門とは大違いだ。

 

フェンシェンインデは姐姐(チェチェ)から覚えた床技を二人の格格に試している。

フェイイーを上にさせると姐姐(チェチェ)の時より気持ちがいいことに気づいた。

考えてみてフェイイーの尻のほうが柔らかいことが原因だと判断して二人でいろいろ工夫して営みを楽しんだ。

ボウリィエンは上に乗るのは嫌がり背中から胸を押さえられて、自分の足は後ろへそらして突きあげられるのが一番だと分かった。

和国渡りの色刷り絵の体位を見せてこれを遣ろうというのは怖い顔で断られた。

フェイイーには絵の事は内緒で色々試してみた。

フォンシャン(皇上)はフェンシェンインデと公主の大婚の前に位階を与えた。

乾隆五十四年(1789年)七月-御前行走。

十公主は固倫和孝公主と皇后の娘並みの称号も与えられた。

 

乾隆五十四年十一月二十七日(1790112日)己酉

十公主(十五歳)が豊紳殷徳(フェンシェンインデ十五歳)に降嫁した。

 

大婚は乾清宮(正大光明の額がある)で行われ、永寿宮(ヨンショウゴン)で筵宴が開かれた。

豊紳府へ戻ったのは酉の正刻を過ぎている。

形式ばった儀式も終わり、フェンシェンインデは公主の母親のような満州族特有の顔を思い浮かべながら顔の布を持ち上げた。

輝くばかりの初々しい公主がそこにいた。

フォンシャン(皇上)と狩りへ行く時の勇ましい公主、フォンシャン(皇上)に平気で打ち解ける傲慢とさえいえる公主、母親の前で取り澄ました公主、様々な公主を見て今日の支度も悪戯を仕掛けるような、お道化た公主を見てきたが、信じられないくらいうぶな可愛げに溢れた公主を見たのは初めての事だ。

初夜の寝床でフェンシェンインデも輝くばかりの肢体に手が震えた。

大婚の時や永寿宮では化粧が濃くて「こんな人だったっけ」と思っていた。

婚約した時、寶月楼での生意気そうな顔とは大違いだ。

紫禁城の作法で裸の公主を目の当たりにすると、小さな胸も、まだ小さく堅い乳頭も、格格たちと違う美しさに、気持ちが昂るのを抑えて「初夜の作法は習った」ときいた。

小さくうなずく公主の胸を優しくなでると桃色の乳首が堅くピクッと突きあがった。

公主はちからが入って膝をそろえて足を閉じたので、フェンシェンインデは自分の子供の時の名前を教えると「えっ」と小さく声を上げた。

気持がそちらへ向いている間に足の間に自分の膝を割りいれた。

和毛は柔らかくまだ疎らだ、上から見下ろすと公主は恥ずかし気に手で顔を覆った。

「聞いていたより気が弱いのか」フェンシェンインデは安心して胸から腹へ撫で下ろした手に、公主は思わず膝を引き寄せ閉じようとした。

フェンシェンインデは高まる気持ちを抑え秘所が潤うまで、和毛を撫でてはまた胸をさすった。

乳房というにはまだ発達しきっていない、手で覆うと指の間から可愛い乳首がのぞいてぴくぴくと動く感触が伝わってきた。

若いフェンシェンインデは年に似合わぬ技巧者だ。

胸が張れたように膨らんで乳首が反るようにぴくぴく蠢く。

体を離すとき教わっていた様に手巾を当てると、自分の精と一緒に血が流れ出た。

少し血が多いかと「痛みはないかい」と優しく聞いた。

「うれしい」

それが答えだった。

 

次の日二人でお茶を飲んで雑談をしていて思いついた。

「そうか去年のうちに格格を入れたのは初夜でまごつかない様にとウーニャンが仕込んだな」

フェンシェンインデ今更のように想い当たる事が多いので茶にむせた。

公主が驚いて自分の手巾で拭いてくれた。

見たことがある手巾だ。

「それは自分で刺繍したの。汚してごめんね」

「いいのですわ。洗えばまだ十分使えます。これは容妃(ロォンフェイ)娘娘のおさがり」

そうかその時見たのだと思い出した。

「私にはこれだけの刺繍は出来ません」

そう老爺(へシェンの愛称)に娘娘が話して居た。

「これは有る妃嬪にお仕えした宮人が宿下がりした後、思い出に刺繍したものを下げ渡したのを回りまわってやってきたの」

あの時見た芙蓉の花の刺繍だ、見せて貰うと端に「李」と縫い取りがある。

「間違いない」

「どうしたの」

「貴方と初めて会った日に娘娘が自慢していたものだ」

公主はその日を覚えていてくれたのは、自分を気にして呉れていたと思い違いをして嬉しくなった。

フェンシェンインデは次から次と、劉全が連れて行った家の娘を思い出している。

あの頃婚約が決まり、婚礼前に格格を入れようと、劉全がお膳立てをしたのかと深慮遠謀に「まさかね」と否定している。

 

街の噂では大袈裟に嫁入り支度が噂だ。

「百万両以上もする品物が贈られたそうよ」

「あらあら、私は銀三十万両と聞いたわ」

城内の奴婢から漏れ出した様だ。

豊紳府には納めきれず分散して保管して貰うほど多くの物が送られたのは確かだ。

公主府をフォンシャン(皇上)はそのままにと思っていたようだが、固倫和敬公主の娘たちが先を争うように陳情してフォンシャン(皇上)は孫可愛さに許してしまった。

フェンシェンインデは梁緋衣(リャンフェイイー)と呂播漣(リュウボウリィエン)二人に、大金を積んで嫁に出すほど公主に溺れこんだ。

自分で一人銀千両用意した。

それまでしなくてもと馮霽雯(ファンツマン)は云うが和珅(ヘシェン)は大賛成で、一人持参金に銀千両に嫁ぎ先付近の田地まで買って二人の名義でフェンシェンインデの出す銀(かね)に上乗せをして贈った。

格格の使女たちは此処へ仕えるか嫁入りを望むなら支度するとフェンシェンインデが言うと四人共に此処へ残りたいというので、実家へ銀百両をこれまでの報償として届けさせた。

馮霽雯(ファンツマン)が豊紳府へ来たときの世話係と、普段はこれまでのようにフェンシェンインデの世話をさせた。

格格だったふたりは、嫁ぎ先でも大事にされていると、劉全はフェンシェンインデに教えてくれた。

普段から優しい夫に媽の馮氏(ファン)が尽くしてくれ、紫禁城とは違う自由に、固倫和孝公主は嫁いでよかったと幸せを感じた。

市へ二人で出れば二人を知らない街の者も若い二人に親切に対応してくれる。

貧乏人も金持ちも行きかう街の人々はこの若い二人を好意的に迎えてくれる。

街へ出るとき義母の馮霽雯(ファンツマン)は雅よりも清楚な街着を用意してくれる。

その心使いが嬉しい公主だ。

紫禁城から付いてきた使女も町育ちで、こういう時は便利に動いて案内してくれる。

使女たちも翊坤宮(イークゥンゴン)や公主府にいたときより生き生きとしている、二人を案内しながら楽しい時間を過ごしていた。

馮霽雯(ファンツマン)は孝養を尽くしてくれる公主に大喜びだ。

フェンシェンインデの二人の妹も豊紳府へよく遊びに来てくれるようになった。

 

 

乾隆五十五年一月一日(1790214日)庚戌

 

七日の夜、昼の務めから戻ると公主はいそいそと夕餉の膳の支度をして機嫌が良い。

先に湯殿で湯を浴び、二人で食事をとると、久しぶりに囲碁の盤を持ち出してきた。

黒を持った公主は強い、あっさりと勝ちを収め、湯殿へ姑姑花琳(ファリン)と使女夢麗(モンリー)を連れて向かった。

『西遊真詮』の第五回、乱蟠桃大聖偸丹 反天宮諸神捉怪の巻を読みだした。

機嫌よく戻った公主は読んでくれと強請(ねだ)った。

少し講釈師よろしく調子をつけて読み進める。

蟠桃会での大暴れや、斉天大聖が分身の術で毛を引き抜いて「變(ピェン)」と叫ぶと如意金箍棒を持った分身が幾千も現れ、哪吒太子が負けて逃げ出す処では大はしゃぎして喜んだ。

後はまたのお楽しみと二人は寝屋へ入った。

その晩の公主は椿を入れた湯で体を洗いシィァンヅァォで秘所も丁寧に洗ったようで、あそこからは薔薇の匂いがした。

胸は少しだが大きくなったように思った。

胸を揉まれて気が行くのか懸命に耐える様子が愛おしくつい力が入ったようで「お願い」と小さな声で訴えた。

今度は調子も合いふたりは徐々に高まりを迎える準備にはいった。

湯で温めた布で身体を拭いていると気が付いた公主がフェンシェンインデの体を拭いてくれた。

二人の夢は、筋斗雲と如意金箍棒で活躍する孫悟空だ。

公主は筋斗雲へ寝転がっている夢のようだ。

 

雪が解け、運河に氷もなくなるとパォイェンチェチェから呼び出しが来た。

今回は天津(ティェンジン)と京城(みやこ)へ雑穀など様々な荷で船団を組んで運んできたそうだ。

戻りの荷はあと五日しないと載せられないという。

船頭は前門あたりになじみが居ると銀をもらって勇んで出かけたそうだ。

さすがに冬は日焼けしていない、浅黒い引き締まった顔は天性の様だ。

荷の積み下ろしで腹筋が付いてしまったとフェンシェンインデより堅い腹を見せてくる。

抱き寄せると大きな乳房が押しつぶれるほど強く抱けと迫る。

「男にゃ分からん」

フェンシェンインデは抱くより顔をうずめたい欲求にかられる。

恥ずかしいので気が行った後、わざと倒れる様に顔をうずめる、すると乳房事チェチェは抱き返してくる。

それはチェチェには相当いい気持のようで、口付けする振りでフェンシェンインデを誘い、体をずらして抱え込まれる。

本気で腕相撲したらフェンシェンインデはものの数では無さそうだ。

不思議なのは良く「女に精を吸われて腰がふらふらだ」なんて宴席で老爺たちが言っているが、豊紳府にいた格格たちと比べたら幾倍も激しいはずが、終わると精気がみなぎる気がする。

それで呼ばれるとつい来てしまう。

笑ったり泣いたり一人で何人分も楽しめる年上の女だ。

おねだりもしないので「櫛に簪を買おうと思うのだけど、どのようなものが好きなの」というと「無駄だから買わないで」と怖い顔で睨む。

 

フェンシェンインデの位階が上がり豊紳府はお祝いだ。

 

乾隆五十五年(1790年)-散秩大臣行走

名前の示すように要は雑用係だが同僚の受けはよい。

徒党を組むことを極端に嫌うフォンシャン(皇上)でも奏上すれば宴席を鷹揚に許してくれる。

「様は許可を得るか、勝手にやってしまうかの差ですよ」

昂先生はフェンシェンインデにそう教えた。

月一度は場所を替えながら宴席が設けられた、珍しいことに奢りも奢られも嫌がるフェンシェンインデは、粘竿処(チャンガンチュ)からフォンシャンへ報告が行くことを知らないし、同僚が密かに誰かの指示を受けて試していることも気が付かない。

「御秘官」たちは危ないとみれば太監が連絡を取り、侍衛も動いて、事が起きないうちにフェンシェンインデに仕事を与えて回避させている。

フォンシャンは見て見ぬふりで、徒党を組みたがらないフェンシェンインデを信用している。

噂好きが公主の事に水を向けても上手くかわされている、聞いた方も話がそれたと気が付くのはフェンシェンインデと別れた後だ。

最近よく話しをするのは綿恩の次子奕紹(イーシァオ)に十一阿哥第三子綿聰(ミェンツォン)第四子綿偲(ミェンスー)の兄弟だ、同年代で話も合う。

弓の稽古に誘われる、それも軍機処を通じてフォンシャン(皇上)の許可も取ってくるので侍衛の弓の達者が教授する。

奕紹(イーシァオ)は「爸爸(バァバ・パパ)は百のうち外すのは一つとまでと言われるのだが俺は半分も当たらない」と嘆くがフェンシェンインデといい勝負だ。

綿偲(ミェンスー)は無口で黙々と鍛錬に励んでいる。

平儀藩(ピィンイーファン)が教授に呼ばれることが多いが、フェンシェンインデは格別知り合いとは思えないような、あっさりした受け答えに終始している。

フェンシェンインデ、武術は並以下と本人も自覚している。

先生に受けは好い、形は奇麗だそうだが剣を持たせたら奕紹(イーシァオ)に遠く及ばない。

棒術も昂先生が嘆くほど従弟に及ばない。

書は人目に出せるぎりぎりと和珅(ヘシェン)に報告が上がる。

中には老爺(ヘシェン)の夕食会へ招待を頼む者もいるので一度は紹介しても二度目は丁寧に断ってしまう。

機会は挙げた、後は自分の才覚でが、昂先生の教えだ。


 

臘月に入ると変な男と変わり者の男女が続けてフェンシェンインデの前にやってきた。

男のほうから言うとフェンシェンインデも相当変な男らしい。

「儲からない仕事ですが資金を出しませんか」

「自分の銀(かね)か親の銀(かね)でも出て来るのかい」

空手でやってきて資金を出せは変わっていると思った。

 

もう一組は可哀そうなのか馬鹿な奴なのか訳の分からない二人だ。

男の親は蘇州で手広く商売をしていると、連れて来た平文炳の息子が言う。

男親は絹の取引をしながら飯店を持って居るそうだ、女親は妓楼の主、早く言えば妾の子だ。

飯店で料理を任されていたようだ。

女の親は上海へ行く途中の村で五十人ほど使って、搾菜やらピータンを造って料理屋、飯店へ卸すそうだ。

どちらの親も婚姻は許さないと強気が悪く、子供を孕んで故郷を捨てた。

まぁ、駆け落ちだと平康演(クアンイェン)が言う。

運がいいのか悪いのか友達が金を集めて銀六十両持たせた。

それで女の伯母を頼って京城(みやこ)へ来た、当てにしていた伯母はふた月前に亡くなっていて、妾が子供を抱いてふんぞり返って、門前払いされたそうだ。

そうだ、そうだが続くが平康演が代わりに話すのでそうなる。

刺繍をしながら聞いていた公主が女に「今何か月」と聞いてしまった。

「五か月に為ります」

女も必死な眼で公主にすがる。

「梁緋衣(リャンフェイイー)の部屋がそのままですから、子供が生まれるまで置いてあげたらいかが」

公主ひと月前に使女の夢麗(モンリー)を嫁に出したので、話し相手に欲しそうな顔でフェンシェンインデを見た。

昂(アン)先生が「若、男のほうは此処から孜漢(ズハァン)の界峰興(ヂィエファンシィン)か安聘(アンピン)菜館へ働きに出せばいいですよ」と二人に助け舟を漕ぎ出した。

平康演(クアンイェン)はもう決まりだという顔だ。

「親に此処にいると手紙を出すなら置いてやる」

「ね、貴方たち、手紙を書いて出しなさい、私も添え書きをするから」

ふたりは拝礼した。

「おい、康演(クアンイェン)哥哥。若しかして俺たちの事教えたか」

「いや、駄目だった時の為、話していませんよ」

「どういう繋がりだ」

今更聞いているフェンシェンインデやっぱり変な男だ。

「蘇州の東源興の前がこの男の家です」

「金を出したくちかよ」

「私は十二両」

「半端だな」

「急いでいたのでその時は其れしか持ってなかったんですよ。店の銀(かね)に手は付けていませんよ」

こんなところで言い訳している。

「康演(クアンイェン)哥哥、話が変よ」

「何処がですか。娘娘」

「蘇州を出る前に銀(かね)を集めて渡した貴方が、どうして此処にいるの」

耳の後ろをかきながら「金を工面した後、合肥(ハーフェイ)へ仕事で出て、その後京城(みやこ)で老椴盃に泊まったんですよ」と話し出した。

合肥(ハーフェイ)は南京(ナンジン)から四百里ほど西へ行く、パォイェンチェチェの本拠地だ。

南に巣湖(チャオフゥ)、流れは裕渓河(ユィシーフゥ)で長江(チァンヂィァン)へ繋がり、鎮江で大運河へ入り蘇州への運糟船の流通が盛んだ。

「それで」

「飯を食いに出たら、とぼとぼこの二人が歩いているとこに出くわしましてね。それで老椴盃か安宿をと思ったんですが」

「じれったいわね。結論は」

「ついでだと、とりあえず身ぎれいにして」

公主が可愛く笑い出した。

「なんだ軍師が付いているのね」

昂(アン)先生のほうを見て「なんで今日いるのかと思っていたのよ」とまた笑う。

「旦那様を巻き込めば成功すると思ったのね」

「さよう。公主の添え書きがあれば親も許さにゃ仕様がないでしょう。此処においてくださるというのは予想していませんでした」

昂先生が書いた筋書きだった、道理で焦って孜漢(ズハァン)の界峰興(ヂィエファンシィン)か安聘(アンピン)菜館へなど云いだした様だ。

フェンシェンインデは昂(アン)先生と康演(クアンイェン)が一緒の時に出会ったんだろうと思った。

男は阮奕辰(ルァンイーチェン)、女が苑芳(ユエンファン)。

「イーチェンは昂先生が勤めを世話してね。ファンは此処で子供が生まれるまで面倒見るわ。二人で同じ部屋でもいいのかしら、ねぇ昂先生」

「ついでです。わしと姑姑の花琳(ファリン)が親代わりで一緒にさせましょう」

昂先生よりがっしりした阮奕辰(ルァンイーチェン)と可愛い妊婦の苑芳(ユエンファン)が住みついた。

男は二十二歳。女は十七歳と知れた。

 

乾隆五十六年一月一日(179123日)辛亥

 

変な男は十五日にまたフェンシェンインデの前に現れた。

この前はほんの立ち話、今度は買范(マァイファン)と名乗った。

それで話を聞いてみた。

面白そうなので連れ立って安聘(アンピン)菜館で酒を飲みながら孜漢(ズハァン)を呼び出した。

面白いと孜漢も言うので千両出して老椴盃「ラォダンペィ」を好きなように改装させて任せた。

それまで任せていた洪老爺には隠居銀二百五十両与え、小店を買い与えて菜店を開かせた。

買范(マァイファン)の他に男五人、女六人が働いている。

拭き掃除は毎日大仕事だという、長逗留の客のほうが遠慮して、その時間街を見物に出ると昂先生が笑い話に報告する。

千両はあっという間に使い切ったようだが、千両抜きなら会計は黒字だと孜漢(ズハァン)が言うので勝手にさせている。

時々公主と街歩きの途中で茶をご馳走になる為による。

豊紳府にない高級品を時々劉全から買い入れているそうだ。

 

桜が散って河路がさみしいとパォイェンチェチェが椅子に座るフェンシェンインデにのしかかって言っている。

運河沿いに二百艘、米を運んで来たという大船団を観に行って捕まった。

帰りの荷を分配するのに三日掛かってようやく船が戻りだした、その喧騒を見物していた。

差配が籤で荷を振り分けている。

姐姐(チェチェ)は銀(かね)になる小間物を引き当てたが、三日後にならないと全部そろわないそうだ。

早く帰りたい、三艘参加していた二十人の船頭に一人銀五両も奮発して不平を抑えた。

姐姐(チェチェ)は天秤で百両より哥哥との逢瀬の方が重い、いいやごねれば倍は出したかもしれない、儲けがフイになっても逢瀬のほうへ自分が乗っても重くするだろう。

姐姐(チェチェ)は最近フェンシェンインデを哥哥と呼ぶようになった。

フェンシェンインデは最初嫌がったが、いつのまにかそれが広まりもうあきらめたようだ。

もう半時ほどそうやって纏わりついている。

今回は運河の米河岸へ付けた船を大曲まで、係留の為、綱で引っ張ってきたようだ。

フェンシェンインデ、強く出る女に弱い、と言うより自分からまだ一回も口説いた事がない。

格格(嫁に送り出した)に公主を寝屋に誘うのは口説くに入れないとしてだ。

もう三年、三十過ぎの姐姐(チェチェ)に振り回されている。

と言うより姐姐(チェチェ)が哥哥に首ったけなのは船頭たちの間に広まっている。

揶揄ったりしたら運河に叩(はた)き落とされかねない。

そのくらい力は並みの船頭では敵わない、風のない時に綱で船を引く力は随一だ。

見た目はそんなに大女でもない、腹筋はフェンシェンインデくらいしか見ていない。

その女が京城(みやこ)へ来ると目の色が変わった。

妊娠しているユエンファンの事がなぜか、フェンシェンインデが孕ませた子のように噂が耳に届いて、さぁもう大変だ。

何時も連絡に来る練燕(リェンイェン)が聞き間違えたようだ、宿事城内に引っ越したとき雇われて「月河胡同」が合言葉で誘われる。

「子供が欲しい」

そう言われても困るフェンシェンインデだ。

皇后に皇貴妃が三十五過ぎて子供を産んだのは皆知っているので可能性は大きいと懸命に宥めている。

寝床へ姐姐(チェチェ)が誘わないのは、月の物がお出でになって二日目の為だ。

フェンシェンインデ、女を我慢しろと言われれば我慢できる男だ。

この日も纏わりつかれてもいつも手を出す秘所へ手は出していない。

姐姐(チェチェ)の方は「望まれれば応じても」なんて思っているようだが自ら誘うのは出来ない。

そんな事して「嫌われたら」のほうが怖い。

十七歳の哥哥に、三十五歳の姐姐(チェチェ)潘寶絃(パァンパォイェン)だ、仲がいいのを皆が不思議に思っている。

「さぁ行くぞ」

「どこへ」

「飯の約束に遅れる。来るか」

「もう昼の約束なら無理でしょうに」

「夕飯だよ。申に着くにはもう出なきゃ遅れる」

「そんだけ時間ありゃ。豊紳府へ着いちまう」

「其の豊紳府だ。腹ぼて女に紹介してやる」

今度は反対に豊紳府まで連れてこられてしまった。

それでも公主に会って舞い上がっていたが、挨拶をしたら公主に「我見到您很高興(ウォジェンダオニンヘンガオシン・お目にかかれて嬉しいわ)」と言われてまた跪こうとして「起来吧(チュラバ)と手を指し伸ばされた。

「謝娘娘」

苑芳(ユエンファン)もそばにいたので挨拶させた。

「イーチェンはどうした」

「今日は戌までが仕事なので泊まりです。何か用でも」

「この潘姐姐(チェチェ)を宿まで送るのに一緒に行かそうと思ったのさ」

「まさか船で寝泊まりを」

「通惠河の大曲と此処の間の胡同に宿があるそうだ」

「そんな、十里じゃきかないでしょうに。此処へ泊まっていただいたらいかが」

結局食事の後フェンシェンインデが送っていくことになってしまった。

 

四月二十八日、阮奕辰(ルァンイーチェン)と苑芳(ユエンファン)に女の子が生まれた、公主が頼まれ映鷺(インルゥー)と名前が付いた。

姑姑の花琳(ファリン)が、親代わりとして二人の父親に子供誕生の手紙を送った。

二人の親はまさか公主が添え書きした、など思わないらしくいまだに、無しの礫だ。

和珅(ヘシェン)の名は知っていても豊紳府は誰の家か知らないようだ。

公主は添え書きに「豊紳府和孝」と書いたそうだから「固倫和孝公主(グルニヘシィアォグンジョ)」とは結びつかない様だ。

ファンの叔母が居ればすぐわかるはずだったが、亡くなった経緯は知っているはずだ。

阮奕辰(ルァンイーチェン)は、客あしらいが上手いから、独立しても大丈夫と孜漢(ズハァン)から報告があった。

安聘(アンピン)菜館(ツァイグァン)の料理長もこの間、腕をほめて、味付けは高級店に負けていないと言っていた。

この料理長有名で引き抜きは激しい、フェンシェンインデと気が合うか「銀(かね)ではない、人義(レェンイー・仁義レェンイーらしい)だ」と大きく書いて貼っている。

フェンシェンインデは公主と乗り合いで蘇州に店を持たせようと考えている。

今蘇州には菜店と飯店を一軒ずつフェンシェンインデ直で出させている、大きな街だからもう一軒位大丈夫だろうと思う様だ。

二軒は京城(みやこ)で働いていたもの達を昂先生が連れて来た。

男たちを「蘇州なら店を任せる」それだけの約束だ。

儲けなど考えない、赤字なら閉めればいい、気楽な男だ

本当に前門、瑠璃廠付近の胡同に顔が利く先生は貴重な存在だ。

苑芳(ユエンファン)に公主は菜店のおかみさんでもいいか聞くと「やりたいです」とけなげな返事だ。

豊紳府も人が増えたので映鷺(インルゥー)に乳母を付けた。

蘇州の話は公主と銀五百両ずつ出すと決まったが、さて時期は何時にするかで悩んでいる。

昂先生が阮奕辰(ルァンイーチェン)と蘇州へ買うか借りるか、平康演(クアンイェン)に相談に出かけた。

先生がついて親へ平身低頭で詫びを入れるイーチェンにムゥチィンも飛んできて一緒に詫びを入れた。

其処は親だ、自分の飯店を譲ると言って地券を息子に渡して「早く孫を連れてこい。それまでここは預かってやる」と怒鳴った。

照れ隠しだ。

イーチェンの遊び仲間たちが集まって嫁取りと子供の誕生を祝ってくれた。

二人が戻る前に手紙が着いて、豊紳府は大忙しで旅立ちの支度と送り出すものの整理をしている。

乳母は子供と離れたくないから付いて行きたいと騒ぐ。

公主が折れて残る家族の足しにするように百両与えて許した。

九月に親子と乳母に荷物持ち、昂先生が付いて蘇州へ向かった。

親から飯店を任されると早速友達連中が家の改造を始めた。

その間に昂先生は乳母に子供を抱かせ、苑芳(ユエンファン)の実家に詫びを入れさせに出かけた。

門で掃除の女に来意を告げると、母親が飛び出してきて親子で抱き合って泣いている。

父親も皺い顔でやってきたが、孫を見ては許さないわけにいかない。

昂先生は「イーチェンが今手を離せない」と云う傍から後で平身低頭している男たちがいる。

イーチェン始め仲間たち全員、自分が悪いと言いだして、苑(ユエン)の老爺も大弱りで「好。好」と云うばかりだ。

ふんだんに銀(かね)をかけたようでも仲間内で回す仕事で奇麗な割に四百両で済んだ。

親父の時の安宿から高級な店を開くと思いきや、見かけは豪華でも今までの客に見合う値段で遣るんだと親父に請け合った。

小商人は恐る恐る「ここは阮繁老ですか」と聞いている、顔見知りの番頭が飛び出して「前と同じで泊まれます。息子のイーチェンの店で何も変わりませんよ。繁絃(ファンシェン)飯店と名前を変えただけです」と案内している。

新店同様に洗い出した店は周りから浮き出る様に目立っている。

先生帰りは荷物持ちと二人で遊びながら戻ってきた。

公主がわざと「土産は無いの」に「土産話がたくさんあります」で済ませている。

   

乾隆五十七年一月一日(1792124日)壬子

 

一月五日、雪晴れの朝。

和珅(ヘシェン)の元へよれよれの老人がやってきた。

門番は和珅(ヘシェン)から道人が来たら、どんな格好をして居ても取り次ぐように普段からしつけられている。

淡い期待はいつも心にくすぶっている。

「昔の知り合いに頼まれましたんじゃ、活精丹を今でも必要ですかな」

「作り方を知っているのか」

性急に言葉が大きくなった。

「わしゃ知りませんのう。知り合いが言うには欲深の道人が金持ち相手に高貴薬を売りつけているのを教えてやれ。そういわれて道すがら寄ったまでじゃ」

少し反省して心を落ち着けた。

「すまんすまん、わしも欲しいが世話になっている人に差し上げたい」

「話じゃ南昌の朱耷(ジュダァ)の住まいがあった場所の近く、だそうですじゃがの。お分かりかの」

「八大山人の家なら近くへは何度か行ったことがある」

「棗の樹のある大きな屋敷の裏だそうじゃ。湛(ヂァン)から聞いたと言えば話は通じるじゃろうと言うとったわ」

「すまん、有難い、礼はいかほど差し上げればよい」

「何、もう昼じゃ肉なしの万頭に酒を此の瓢(ひさご)に入れて呉れれば十分じゃ」

万頭を三個包ませ瓢に酒を入れるとふらふらと出て行った。

後をつけさせた、百順胡同(バイシュンフートン)昔蘇家の有った跡の蘭湘という妓楼へ入った。

聞き込みをすると「十日ほど前にふらっと来てこれでひと月遊ばせてくれと百両ほどの銀を出したお大尽」と近所で話題だと聞きだしてきた。

 

すでに同じような秘薬は試したが「活精丹」ほどの効果はなかった。

フンリは「手に入れろ」と和珅(ヘシェン)に命じた。

八十一歳の弘暦(フンリ)に秘薬が必要か疑問だ。

弘暦(フンリ)よりも自分のためにもほしい和珅(ヘシェン)は弘暦(フンリ)に願ってフェンシェンインデを派遣させた。

十八歳のフェンシェンインデは呆れたが、フォンシャン(皇上)の命では従うしかない。

名目は「七ケ月の休暇と江南への旅」の許しが二十二日に出た。

遅れたのは公主が長い旅に出るのを嫌がったからだ。

フンリは公主を贈り物攻勢で宥めた。

父親は自分の年にはチンハイへ向かって旅をしたという。

子供の頃、劉全に連れられて天津(ティェンジン)に青島(チンダオ)までは行った事があるが、黄河を超えてさらに先の長江南岸の江南は初めてだ。

旅発つ前にフェンシェンインデは供の五人に銀(かね)の番が有るので三人は宿で留守居だと話して「賽で決めるか札で決めるようにしろ」と言った。

環芯(ファンシィン)という敏い手代は「昂先生はどうなります」そう聞いた。

「俺は若様の用心棒だ。宿にいればそこにいるのが仕事だ、それに俺に賽は勝てやしないぜ」

そう言って賽を持ってこさせると茶碗に入れて逆さにすると「好きな目を言えば出してやる」と五回続けていう通りに出して見せた。

「札じゃどうです」

札も新しい札で好きなものを置いた札から選びだした。

「透いて見えますか」

そうじゃない一度見た傷は忘れないだけだと言われても、信じられない様子ですんなりと先生の手に乗せられた。

 

京城(みやこ)からの旅立ちは乾隆五十七年一月二十五日(1792217日)壬子。

皆で背負う葛籠に平儀藩(ピィンイーファン)が届けた二種の護符、盗難除けだと言われて全部に分かりやすい処に張り付けて置いた。

 

フェンシェンインデに昂先生と五人の供、七人が徐州へたどり着くまで休暇らしく名所巡りなどして、六十五日掛かった。

気にもしていなかったが「閏二月二十九日だ」と昂先生が手控えを見て教えたのが明日は彭城という日だ。

京城(みやこ)では老爺(和珅)にフォンシャン(皇上)が一日千秋の思いで待ち焦がれているが、直接行くと勘ぐられて噂が出るのが怖い二人だ。

天津から徳州へ向かい、泰山の裾を抜けて銅山県の利国街道から彭城へ入った。

乾隆五十七年三月一日(1792421日)壬子

彭城(徐州府・スーヂョウ)では五泊、雲竜山の摩崖石刻を観に昂先生と二人で一日かけて古代の遺産を巡った。

山の桜は紅白入り乱れて満開だ、梅は咲いてはいるがまばらになっている。

蘇州の平文炳(ピィンウェンピン)の紹介状を持って、シャンハイから宿へ訪ねてきた男に「結」の約束により後援を約束して、手形を書いて渡した、あれから三人、都合八人目だ、約束は後二人。

京城(みやこ)へ来ていた平文炳に旅の話をしたので、この辺りと当たりを付けたようだ。

フェンシェンインデが初筆だという孟浩(モンハオ)という二十歳くらいの男は「こんなに簡単に信頼していただけるのですか。何を始めるか話もしていません」と不思議そうに聞いた。

「十年付き合っても腹のうちなぞ簡単に分かりゃしないさ。ずるく振舞うのは役に立つが、小狡くなりなさんなよ。それよりお前さん詩人の浩然と繋がりでもあるのかね」

「イャア、最近よく言われるんですがね、おかげで詩も覚えました。其の人とは繋がりなど母親も知りません。春眠不覺曉は何時もの事ですがね」

 

春眠不覺曉

春眠(しゅんみん) 

曉(あかつき)を 覺(おぼ)えず

處處聞啼鳥

處處(しょしょ) 

啼鳥(ていちょう)を 聞く

夜來風雨聲

夜來(やらい) 

風雨(ふうう)の聲(こえ)

花落知多少

花落(はなお)つること 

知(し)る 多少(たしょう)

 

この男和珅(ヘシェン)と劉全の噂を信じて「良くて一割、若しかして三割は賄賂に取られるか」と邪推していたのが、一遍でフェンシェンインデの虜になった。

蘇州の東源興(平康演(クアンイェン)の店)に行けば銀(かね)を出してもらえる。

平文炳の紹介は全て認めてきた、あっさりとしたものだ。

フェンシェンインデの蘇州の店は繁盛して四軒目の飯店を今年開いた。

そのうちの一軒は協力店だ。

東源興は資金を無利息だが預かってくれる。

火事を心配するものは此処へ保管してもらう。一度賄賂を要求した両江総督の書麟は免職されて手を付けるものは居なくなった。

其の書麟は昨年再任されている、どうやら本人ではなく下っ端に名前を使われたと助けが入ったと云う。

この地の「結」も仕事を回したり回して呉れたりと助け合う商売人は多い。

劉全の所で修業した孜漢(ズハァン)が商売は取り仕切ってくれる。

フェンシェンインデは自分勘定で品物を動かす事もなく、孜漢(ズハァン)が年二千両近い儲けを出している。

フェンシェンインデは月銀八十五両の手当てを出していても、この儲けを孜漢(ズハァン)が出せるのはすごいと思っている。

劉全が出しすぎだと何度も言って来る。

京城(みやこ)で儲からない店は、飯店(宿屋)を別の男にやらせているくらいだ、其の買范(マァイファン)は最初から「儲からない仕事があるのですが」と売り込む変な奴と資金を出して飯店(宿屋)を遣らせた。

 

蘇州へも回りたかったが其れだと南京へは遠回りで諦めた。

南京で三泊して「結」の男たちと街を歩き回りたいと手紙を出してある。

一人運漕業の男でフェンシェンインデが推薦した男がいる。

姐姐(チェチェ)が応援をしているからで、その男の友達との交流だ。

揚子江(長江)はこの辺り川幅が狭い、それでも船渡しの船頭は「そうさなぁ、四里ほどかいな」という、大人の歩幅で千二百歩有るということだ。

南京最初の日。

「昂(アン)先生、先生は色街お好きですか」

「好きでも今回は仕事がらみの旅ですから。妓楼遊びは止めておくよ」

「結」の男たちは仲間内で酒の勢いで妓楼へ連れ込んで散々あそばせ、後で笑いものに仕様と待っていたがあてが外れた。

歓迎の食事と誘われ、菜店で酒を飲みだしたが、一向に二人が酔わない、底なしだ。

二刻もたたずに一人倒れ、二人倒れと五人のうち最後まで残った一人は歩くのがやっとで押し車で運ばれていった。

昂先生事昂潘は本当に底なしだが、念のため二人で酔い止めの秘薬を予め服用して臨んだ、昂先生さすがフェンシェンインデの軍師だ。

「美味い酒ですな」

菜店の親父が腰を抜かすほど驚いた、酒豪と豪語していた街の兄貴が叶わない。

「これで足りるか」そう言って昂(アン)先生は二十両の銀を肩に引っ掛けていた袋から出した。

兄が飲みすぎて倒れたと聞いて妹の飛燕(フェイイェン)が番頭を連れてやってきた。

「飲みすぎてふらふらする」

などと言いながら公遜を担いで出てきたフェンシェンインデと鉢合わせだ。

 

噂でヘシェンの息子は「へなちょこの道楽息子」、そう言われて居たのとは大違いの美丈夫が兄に連れられ、昼に自分の飯店に入ってきたのを見て一目惚れしてしまった。

このころのフェンシェンインデは裁衣尺で五尺あった、当時の十八歳の男にしては背が高いほうだ。

公遜の琵琶街(ピィパァヂィエ)魁芯行(クイシィンハァン)へ担いで戻った、フェンシェンインデから店の番頭に渡され部屋まで運ばれた。

飛燕は女だてらに昨年「結」の資金で隣に源泰興(ユァンタァィコウ)、裏の回門巷(フィメンハァン)に辯門泰(ビァンメェンタァイ)という飯店を開いている。

店の裏は小道を挟んで向かい合っている、辯門泰は小商人、源泰興は「結」の紹介が大半の泊り客だ。

小商人の多くは薬の原料の買い出しで、京城(みやこ)や広州など広範囲に繋がりがあり「結」には認めてもらえないが、結社の繋がりを利用して商売をしている。

飛燕とは話が合い十六巻の「聊斎志異」に面白い本があれば帰りに寄るので買い入れておいてくれと銀を三十両渡して頼んだ。

特に板橋の出物があったら高くても買いたいと言い置いた。

何、薬に買い物で背の葛籠の銀(かね)が出て、軽くなれば其処へ入れて運ばせる気だ、共の者に楽をさせる気はない。

「シャンハイは此処から近いと聞いた」

「誰がそんなこと言ったの」

「俺のフーチンさ」

「結」の男の事は知らん顔だ。

「千里は有るわ。男の人でも十日掛かるわね。あんな漁村に何があるの」

父親が西蔵まで行くほどの男とは黙っていた、どうせ悪い噂しか伝わっていない。

最近南京にも蘇州から風呂屋が進出してきた。

道を挟んで男の湯屋、反対側は女だけの湯屋、湯船はない、蒸気の籠った部屋もあるそうだが利用しないものが多いという、洗い場で体を洗うだけで出る者が多いそれでも繁盛しているという。

近くに回族専門の蒸し風呂は随分と昔に商売を始めたそうだが、誰もがいつごろか知らない、それだけ古くからあるそうだ、噂では忽必烈が皇帝の頃だろうと聞いたと飛燕が話した。

昂(アン)先生が聞き集めた話では南京が建康と言う名前だったころだという。

回(フェイ)族専門と言っても男のほうは辮髪でも入れてくれる。

朝から開いているというので昨日の酒の気が抜ける様に蒸し風呂を選んだ。

二日酔いの兄いたちは置いてきぼりで供は銀(かね)の番に残し、昂先生、フェンシェンインデは案内の「結」の仲間の家で下働きしている老爺と街を巡った。

夫子廟(孔子廟・文廟)では案内の老爺の説明が面白く刻も見物してしまった。

先生が銀の小粒を渡したら黄色い歯を見せ「ニヒッ」と笑った。

城塞は厳めしい番兵が居て近寄りがたい、中の総督府へも傍へは寄らなかった、フォンシャン(皇上)の許し状など見せてもいいことは起きない。

妓楼は明かりが入るころ、通り抜けをして楽しんだ、揚がらなかったと聞いて飛燕は呆れていた。

 

明日は南昌へ発つという晩。

寝ているフェンシェンインデの元へ飛燕が忍んできた。

掛け布団の隙間から体を入れてくる気配で目を覚ますフェンシェンインデ。

鼻をくすぐる香は飛燕とすぐ気が付いても寝ているふりを続けた。

体を重ねて来たので背中へ手を遣ると裸だ。

飛燕がフェンシェンインデの着ている服を脱がすのに任せて秘所を弄(まさぐ)った。

「アッツゥ」

小さな声が漏れた、どうやら初めての様だ。

色街も近く耳年寄り、子供でも色気づくのが早い土地だ、処女が寝床へ忍び込むとは土地の妖力か。

懸命にフェンシェンインデにしがみ付く飛燕は小さく震えている。

止める事など無理で腰を使うとそれにこわごわと付いてくる。

「ホッ」

飛燕の声だ。

気をやって飛燕は「ニッ」口元に笑いが来たようだ。

「泣く」のは経験があるが笑うのは初めてのフェンシェンインデだ。

翌朝、飛燕(フェイイェン)はすましてフェンシェンインデの一行を送り出した。

 

南昌にようやくついた、それというのも景徳鎮のほうが近いと南京で聞いたから寄りたくなった。

一月二十五日京城を出て六十五日目に彭城(徐州府・スーヂョウ)。

南京には三月十八日に着いた。

南京から景徳鎮まで一日十時間、歩きに船、馬など使っても二十日掛かった。

窯元で身分は休暇許可状を出して確認させると二人の案内人を付けてくれた。

「回り切れませんぜ」

環芯(ファンシィン)は直ぐに音を上げた。

「今日は三軒だけだ。それにお前、なぜ宿で休まない」

「土産に買えばムーチンが喜びます」

昂先生に「誰のムーチンだ」と言われて四苦八苦している。

「一人で捏ねて仕上げているんじゃないんで」

案内人も毎度素人はこれだものという顔で説明している。

翌日は小売りもする民窯を教えてもらい売り物を聞いて買い入れた。

京城(みやこ)へは毎月一回荷が出るというので豊紳府へ届けてもらうことにした。

フーチンには五彩、ムーチンには闘彩と昔ながらの物。

公主に琺瑯の湯呑十椀の揃い、ムーチンお気に入りの翠凛(ツゥィリン)にも同じものを買い入れた。

白磁にコバルトで絵付けを施した「リンロン(玲瓏)」が気に入り百と纏まっても一緒に間に合わせるというので、二つずつの箱入りにしてもらうことにして、言い値で引き取った、すべてで金八十両掛かった。

京城(みやこ)に帰ればお土産もあちらこちら配る必要もある。

南昌の賢湖村まで歩きで三日掛かって四月十三日に着いた。

次の日紹介してもらった街中の飯店で聞くと、聞いたことがあると付近の様子を教えて呉れた。

南昌で三日掛かったが、家が見つかり昂先生と五人の供を外で待たせて話をすると「一粒金十両」と吹っ掛けてきた。

道々自分の商売にでもと金三百両を供に担がせ、父親の銀二両と合わせれば金錠換算五百両持って出た。

まだ金錠換算四百両手つかずである、全部使ってもと「幾つ譲り受けられる」と大束に出た。

「値切らず幾つと聞いてくる奴は初めてだ。今あるのは二十二粒、二つは残すので二十だけだ」

大事そうに一粒ごとに木の箱に入れてある。

「商売上手な奴だ、でも数を教えるのは正直なのか」

そう思いながらも「有難い、これでフーチンに顔向けできる」と二人の共を呼び入れ背の葛籠から金錠を出して渡した。

「一年以内に来ても無駄だよ。簡単に仙丹の材料は手に入らない」

そう言って「いつできるか約束はできないから来た時の運しだいだ」と送り出した。

昂潘はじめ共には延命薬「保精丹」と話はして有るがどうせ昂先生は知っていて知らんぷり何だろうとフェンシェンインデは思っている。

「保精丹」は供に任せず自分の葛籠へ着替えと入れ替えて持ち帰ることにした。

供の陪演(ペェイイェン)は重みの違う荷で嬉しそうだ。

空身で帰れると喜んでいる環芯(ファンシィン)は南京で重い本を背負わされるのをまだ知らない。

「何かあれば、人のせいにはできない」

フェンシェンインデ責任感が強い。

南昌を発ったのは、四月十八日、京城(みやこ)を出て百十五日目だ。

帰りも南京で源泰興に三泊した。

共には全員に妓楼で遊ぶのに一人銀十両渡して「此処からは遊びはなしだ、今晩は戻らなくても勝手だ」そう言って送り出した。

葛籠は全部フェンシェンインデが預かった。

「金瓶梅」十巻に「聊斎志異」二十四巻それと雑書二十巻が手に入った。

足りないはずだが請求がないので黙って受け取った。

飛燕が来るかと期待したが来ないので寝そびれ、欲しかった「聊斎志異」を読みふけった。

翌日の晩、飛燕は本を読んでいるフェンシェンインデにお茶を運んできた。

「昨晩は待ちくたびれた」

「都に素敵な奥様が居て、私のようなはねっ帰りはお気に召さないでしょう」

すねて見せるが体は期待しているように首筋に色気が滲んでいる。

片手で引き寄せると真っ赤になって縋ってきた。

寝床へ座らせて着ている物を脱がせた。

   

南京を出たのが五月十五日。

京城(みやこ)まで六十五日掛かった。

七月十九日

昼に京城(みやこ)の東直門から入り、豊紳府と和第へは帰着連絡だけで、紫禁城を右に見て半分回り朱家胡同に開かせている老椴盃(ラァオドァンペェイ)へ宿を取り着替えを届けさせた。

旅はまだ終わらない、品物を届けて任務完了だ。

不思議な名だが宿屋だ「ラォダンペィ」と土地では呼ぶ、一見はやんわりと断わられる、紹介した客次第で空けてある部屋を提供する。

気に食わなければ経営する安宿を紹介して案内までする。

なんとこの宿、食事は朝の粥だけ、それで銀三両も取る。

実は六部屋あるが普段は三部屋しか客を入れない。

お上りさんの金持ちの年寄りが目当てだ、有るときフェンシェンインデが居るとき、逗留している老年の女客が「あっしの本業はお乞食さんだ」なんて冗談で笑わせてくれた、二人の若い奴婢を連れての遊山旅だそうだ。

二部屋を十四日も使う豪勢な客だ、フェンシェンインデを湯番の一人と間違えたようだ、屏風の向こうで公主が笑い転げていた。

上手いものを食いたければ、孜漢(ズハァン)が個人的に開いた安聘(アンピン)菜館を勧める。

手一杯なら両の指に余るほど有る、知り合いの店へ連れてゆく。

 

供は界峰興(ヂィエファンシィン)に向かわせ、孜漢(ズハァン)には前から言ってあるので三日の休みを与えた。

入れ違いに早耳の孜漢(ズハァン)が神武門腰牌を二人分届けに来た。

半刻ほど、買ったものなどの話をして銀(かね)の始末は明後日に店でと別れた。

「素早いですな、崇文門か前門に密偵でもうろついて居ますかね」

二人で笑って交代で垢を落としに湯殿へ向かった。

贅沢なもので、板場に湯口があるだけだが壁は此のために焼いた絵柄が入った陶器だ。

奥の小窓から小桶に湯が次々と渡されて湯殿は明り取り用に設けた瑠璃の小窓を開けないと蒸し風呂状態だ。

和国から来た甚兵衛と云う男がこれを造った、街では甚(シェン)と呼ばれているがフェンシェンインデが聞くと「ジンベェ」だと答えた。

豊紳府の湯殿もこの男が作った、小ぶりの湯舟もある。

老椴盃には湯舟は置かなかった。

寧波で作る香皂(シィァンヅァォ)で体を洗った、湯は板の隙間から下へ垢と一緒に流れてゆく。

此のシィァンヅァォ寧波から京城(みやこ)へ来ると、小売りで一つ銀一両で売れる、これも界峰興で扱う高級品だ。

此の楼では贅沢に一人一回一個使わせる、湯殿に何度入っても新品が出る。

使い捨てだが湯番はそれを百銭で妓楼に売る、持って帰るなんてケチな客は来ない。

役得で見逃していると言うより湯番なぞ普通仕事がない、湯殿の掃除と湯沸かしで一日百五十銭貰っているが、余禄のほうが多い、自然成り手が多いのだが譲る気が起きないほど楽な仕事だ。

それで湯殿を清潔に綺麗にして自分の名を客にも売り込む、むさい爺など雇わない、身ぎれいな若い衆はこの街には掃いて捨てるほどいる。

客が「あかすり」を頼むとやってくれる、これも甚が教えた、和国の「ナニワ」には幾つもあるそうだ。

若衆が遣るが、夫人には若い女がついて世話をする。

若衆に手を出した客は二度と泊まれない、断らない若衆は近所で仕事に雇われない、そう噂で流しておくと本当と思われて、いざこざは起きてこない。

若衆と遊びたければお好み次第で前門(チェンメン)付近にいくらでもいる。

 

旅では井戸端で体を拭うくらいの日が多かった。

京城(みやこ)では妓楼でもなかなかこれまでの湯殿はない。

豊紳府に有るのを贅沢にしたものだ。

初めて公主が使うとき怖がったほどで、当時家にいた格格がついて教えた。

宮女たちの前で裸になる時の抵抗なんか子供の頃からない、格格と付いてきた使女に平気で体を洗わせた。

公主は一度老椴盃で入って豊紳府の自分の湯殿を甚に改装させた。

紫禁城にもこの仕組みはないそうだ。

この男、十代にして銀(かね)使いは荒いが、贅沢は食い物や宝飾品より建物に気が行く。

甚は異国の面白話を能くしてくれる、向こうもフェンシェンインデを友達扱いで遠慮がない。

 

翌朝、威儀を正し昂潘(アンパァン)に葛籠を担がせて神武門から入った。

フェンシェンインデは十五の箱を持参していてそれを「休暇のお土産です」と旅の報告とともに渡した。

嘉淵(ジャユアン)は恭しく受け取り机の上に置いた。

二百三日目、仙丹を献上して役目は終わった。

「ひと払いを」

フォンシャン(皇上)は嘉淵(ジャユアン)に命じて下がらせ、フェンシェンインデを傍へ呼び寄せて「幾つある」とささやいた。

「二十しか手に入りません。それで今日は十五の仙丹をお持ちしました」

「全部は駄目か」

「五つは父に、銀(かね)も出しましたので手ぶらでは、申し訳ありません」

その申し訳ありませんはどっちへの申し訳なのだろう。

「仕方ないなぁ。次はいつ手に入る」

「一年後とは聞きましたが、さてどうなりますやら」

「急いで往復してどのくらいだ」

「歩きでは四月が限度でしょう、それと忘れぬうちに、向こうでは月一錠が使う限度と申しておりました」

「そちがまた行ってくれるか」

「公主が怒ります」

「そう言わずに頼む、年が明けたら出かけて呉れ。今度は七か月の視察と公主へ言ってくれ」

「視察ですか。道筋から言えば南京、景徳鎮、遠回りで蘇州、寧波でしょうか」

「旅の費用と公費が使えるようにする。今回のはいくらでよい」

貰いっぱなしは気が咎めるようだ、臣下と言えど娘婿だ、少しは気も使う。

「父から出た銀(かね)です。気にすることは有りません。そのための五錠のおすそ分けです」

「そうだ蘇州で商売でも始めたらどうだ。許し状を書いておく。ただし行きっぱなしは駄目だ」

この婿を何とか宥めて働かせようと利もちらつかせる、蘇州に飯店、菜店を持っていることも知っているぞということの様だ。

官職に望みがあればと旅の前に聞いたら「旅の前に出来れば離職を」などと言われ、引き留めるのに公主に贈り物を届けて回りくどく宥めるのに懸命だ。

フェンシェンインデの官職はまだ低い、十四の時婚姻の為の位階が付いた。

乾隆五十四年(1789年)七月-御前行走。

乾隆五十五年(1790年)-散秩大臣行走。

京城(みやこ)に戻ったフェンシェンインデの学問の師として載聯奎が選ばれた。

 

待ちかねたようにパォイェンチェチェからの呼び出しだ。

旅に出る前、半年帰れないと言ったら怒ると思ったら泣き出した。

「こんなに弱い女にしちまった」

フェンシェンインデは自分の責任のように感じた。

どうも豊紳府の誰かが買収されているようで、動向は飯店に掴まれているようだ。

フェンシェンインデがそう思うのは休みの日か前日しか呼び出しがない「百射必殺」とどこかで読んだ冊子に有った気がした。

小雨の中、訪れるとふて寝している。

懐から本を出して椅子を明かりのさす窓際へ置いて、読みふけった。

「何よ、私に飽きてもうお見限なの。さぞ旅で女にもてたのね」

南京(ナンジン)は合肥(ハーフェイ)と近い、飛燕(フェイイェン)の事がもうばれたかとドキドキした。

「何の焼きもちだ」

「こんなばあさんもう用は無いのね」

ああ、これが女の悋気か、悠長な男だ。

服をはぎ取って寝床へ押し倒した、期待のこもった眼で為すがままだ。

フェンシェンインデが自分の服を脱いで、押し被さるとこれでもかと抱きしめてくる。

大きな乳房が押されてくにゅと空気が脇から漏れた。

舌を入れてこそげたら梅の味がした、口を吸われるだけで気が行ったか腕の力が抜けた。

もう何度も軽く気が行ったチェチェは無我夢中で、フェンシェンインデを求めてくる。

何時ものようにチェチェの体を拭いていると、目を開けて抱きついて「すてちゃやだ」と泣き出した。

今日は良く泣く日だとフェンシェンインデは冷静だ。

「いつ別れると俺が言った。こんな素敵な女何処にもいない」

「だってあんなに可愛い奥様が居て、あたしなんか足元にも及ばない」

歳の差を考えて、そりゃ会ったらそうも為るかと、変に納得するフェンシェンインデだ。

どうやら飛燕(フェイイェン)の事は知らない様だ。

「結」の仲間だって姐姐(チェチェ)に喋つて睨まれるのはいやだ。

「そんなに自信がないのか」

「だって」

「お前の勝っているところはたくさんあるよ」

「どこ」 

   第二十二回-豊紳殷徳外伝-1  ・ 2021-07-21 ・
   
自主規制をかけています。
筋が飛ぶことも有りますので想像で補うことをお願いします。

   

功績を認められないと代替わりに位階がさがった。

・和碩親王(ホショイチンワン)

世子(シィズ)・妻-福晋(フージィン)。

・多羅郡王(ドロイグイワン)

長子(ジャンズ)・妻-福晋(フージィン)。

・多羅貝勒(ドロイベイレ)

・固山貝子(グサイベイセ)

・奉恩鎮國公

・奉恩輔國公

・不入八分鎮國公

・不入八分輔國公

・鎮國將軍

・輔國將軍    

・奉國將軍

・奉恩將軍    

・・・・・

固倫公主(グルニグンジョ)

和碩公主(ホショイグンジョ)

郡主・縣主

郡君・縣君・郷君

・・・・・

満州、蒙古、漢軍にそれぞれ八旗の計二十四旗。

・上三旗・皇帝直属

 正黄旗-黄色の旗(グル・スワヤン・グサ)

 鑲黄旗-黄色に赤い縁取りの旗(クブヘ・スワヤン・グサ)

 正白旗-白地(多爾袞により上三旗へ)(グル・シャンギャン・グサ)

 

・下五旗・貝勒(宗室)がトップ

 正紅旗-赤い旗(グル・フルギャン・グサ)

 正藍旗-藍色(正白旗と入れ替え)(グル・ラムン・グサ)

 鑲藍旗-藍地に赤い縁取りの旗(クブヘ・ラムン・グサ)

 鑲紅旗-赤地に白い縁取り(クブヘ・フルギャン・グサ)

 鑲白旗-白地に赤い縁取り(クブヘ・シャンギャン・グサ)

・・・・・

    

第二部-九尾狐(天狐)の妖力・第三部-魏桃華の霊・第四部豊紳殷徳外伝は性的描写を含んでいます。
18歳未満の方は入室しないでください。
 第一部-富察花音の霊  
 第二部-九尾狐(天狐)の妖力  
 第三部-魏桃華の霊  
 第四部-豊紳殷徳外伝  





カズパパの測定日記



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