対岸の火事、レイ・ダリオの警告、株式投資は
“正しさ”では勝てない、
ブロードリーフの業績下方修正、東証REIT指数の推移、見逃し三振のないゲーム、
拙著のKindle版、2006年のIPO、アップルの株価、日経によるFT買収、
15年で時価総額10倍、日本アクアの業績下方修正、大風呂敷を広げた丸亀製麺
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ショートコラム(2015年7月)
■大風呂敷を広げた丸亀製麺(2015年7月31日) |
ほら吹き3兄弟も顔負けの猛者が現れたようです。 丸亀製麺などを経営するトリドール(3397)の粟田社長は「2025年度に世界6,000店・売上高5,000億円を達成し、外食企業世界ランキングで世界のトップ10入りを目指す」というグローバル戦略を発表しました。 2015年3月期は950店・売上高873億円ですから、10年間で店舗数を6.3倍、売上高を5.7倍に増やす計算になります。しかも、現時点では、おまけ程度の海外事業が主力事業に躍り出る壮大なプランです。 意気込み自体は素晴らしいとはいえ、参入障壁が低く過当競争に陥りがちな外食産業にて、本当にこのような事業展開ができるのか、はなはだ疑問に思います。 というのは、経験則では、今のような好景気・株高局面にて強気の経営計画を発表した場合、未達に終わるケースが少なくないからです。 ただ、可能性はゼロではありません。もし粟田社長が加わり、ほら吹き4兄弟となれば、同社に長期投資を行った株主は莫大なリターンを手にしていることでしょう。 今後の経緯を見守りたいです。
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■日本アクアの業績下方修正(2015年7月29日) |
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一昨日、日本アクア(1429)が業績下方修正を発表しました。同社は、年初から株価が下がり続けており「何かあるに違いない」と勘繰っていたのですが、そういうことだったのですね。 【平成27年12月期 第2四半期 業績予想】
【平成27年12月期 通期 業績予想】
なお、修正の理由は次のとおりです。 ●断熱材の施工販売・商品販売における計画未達 要するに「急拡大するビジネスに対して、社内の管理体制が追いついていない」という、新興企業にありがちなパターンです。 事態の収拾を早期に図ることができれば、今回の業績下方修正で悪材料出尽くしとなるのですが、果たして上手くいくでしょうか。会社側のリリースを読む限り、かなりの重症に思えます。 |
■15年で時価総額10倍(2015年7月26日) |
四季報オンラインに15年で時価総額を10倍にした企業たち<44社リスト>という記事が掲載されています。 15年前といえば、世間がITバブルに沸いていた頃です。このような長期データを個人投資家が作成するのは難しいので、たいへん参考になります。 増加率上位では、ジェネリック大手の日医工(4541)と沢井製薬(4555)、医療機器メーカーのシスメックス(6869)と日本光電(6849)が印象に残りました。 ITバブルの最中、このような銘柄群の将来性を見抜き、じっくりとした投資を行えば、一財産築くことができたでしょう。 なお、記事には時価総額減少幅上位企業のライキングもあります。恥ずかしながら、当時の私は、この中の3銘柄に投資していました。 ローム(6963)、ジャフコ(8595)、日本テレビ(9404)という、本人は勝ち馬に乗ったつもりで悦に入っていましたが、今から振り返れば初心者丸出しの組み合わせでした。 一方、増加率上位で持っていたのはニトリ(9843)だけ。道理で、ITバブル崩壊に苦しめられたはずです。 |
■日経によるFT買収(2015年7月24日) |
日本経済新聞社が英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)を買収するそうです。 東洋経済によれば、買収額は営業利益の35年分相当、純利益ベースのPERに換算すれば50倍程度でしょうか。いつもながら「わざわざ、こんな株価の高いときにM&Aを行わなくても・・・」と思います。 これでまた、バブルのフラグがひとつ立ちました。参考までに、今年になってから乱立しているフラグをまとめておきます。 ■湾岸タワーマンションバブル(2015年5月18日) |
■アップルの株価(2015年7月22日) |
アップル(AAPL)の株価について、少し前から疑問を持っていました。 それは「猫も杓子もiPhoneを持っているこのご時世、アップル株にどれだけの上昇余地があるのだろうか」ということです。 【アップル 株価チャート】 この件については、前例があります。マイクロソフト(MSFT)です。高値をつけたのは、誰しもがウィンドウズPCを持ち、ワードやエクセルを使い始めた時期でした。 【マイクロソフト 株価チャート】 アップル株に対する懸念は、株価インデックスに占める割合が突出している点です。もし同社が投資家の期待を裏切れば、直ちにFRBバブル崩壊のトリガーとなる可能性を否定できません。 【S&P500】 【NASDAQ】 |
■2006年のIPO(2015年7月19日) |
前回、IPOが活況だったのは2006年です。当時は一大投資ブームで、個人投資家の熱気も凄まじかった記憶があります。 それでは、この年の新規公開株を初値で買い付け、今日(2015年7月16日)まで保有していればどうなったでしょうか。投資期間が長期に渡るため、株価には業績が反映されていると考えられます。 3日ほど費やして追跡調査を行ったところ、株価が初値を上回っているのは、188銘柄中たった31銘柄でした。うち10倍株(テンバーガー)が3銘柄、株価2倍以上が14銘柄です。 株式投資のリスクを考慮すると、最低でも10年で2倍(7%複利)のリターンが欲しいところですが、そのラインに達したのは全体の2割にもならなかった計算です。 一方で、110銘柄は初値を下回っています。うち株価1/2未満が60銘柄、1/10未満が10銘柄でした。10年近くも持ち続けた挙句、塩漬けのままでは、泣くに泣けません。 ちなみに、47銘柄はすでに上場廃止となっており、パフォーマンスを計測できませんでした。経営が順調なら上場廃止にならないわけですから、株価が堅調に推移した銘柄はごく一部のはずです。リーマンショック後の世界同時不況に耐えられず、株券が紙切れになってしまった銘柄も少なくないでしょう。 以上より、巷で指摘されているとおり、IPOはまさに玉石混交といえます。銘柄選びに関しても、相応の“目利き力”が要求されそうですね。 なお、調査結果の詳細については、次回(東京8月29日、大阪7月26日)のバリュー投資塾で公表します。 |
■拙著のKindle版(2015年7月18日) |
時代の流れなのか、拙著のKindle版も出揃ってきました。簡単に紹介しておきます。 『バリュー投資の教科書』は、私の自信作です。出版当時は、兜町の書店でもベストセラーになったそうです。長らく絶版でしたが、Kindle版として復活。価格的にもお求め安くなりました。なお、Kindle化に伴い、書籍タイトルが『バリュー投資の強化書』から『バリュー投資の教科書』に変更されています。 『角山智の銘柄分析力強化トレーニング−決算短信表紙、セグメント情報、損益計算書編』は、実際の決算書を教材としたドリル集です。決算書に苦手意識をお持ちの方におすすめします。 『角山智の銘柄分析力強化トレーニング−貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書編資法』は、決算書の中でも難しいとされている貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書を取り上げています。決算短信表紙や損益計算書を読めるようになれば、この本に取り組んでみてください。 『今なら間に合う!出遅れ大化け割安株投資法』は、割安株(バリュー株)を探し出す5つのやり方を紹介しています。雑誌の推奨銘柄やネット上の情報に頼らず、自分で銘柄を見つけたい方のために書きました。 |
■見逃し三振のないゲーム(2015年7月17日) |
もし皆さんが「外角低め、見逃せばボールかもしれない変化球」をスタンドまで持っていけるような強打者なら、初球から積極的に振っていくのもありでしょう。しかし、大半のバッターは、ど真ん中のストレートをヒットにするのがやっとのはずです。 以前の私も「非力なくせに、どんな球でも強振する」タイプのバッターでした。結果は言わずもがなで、凡打の山を築きました。今では「絶好球だけを軽打する」ことを心掛けています。 私たちがプレーしているのは、見逃し三振のない特別ルールのゲームです。にもかかわらず「来る球すべてをホームランにしてやろう」と力んでいるバッターが多すぎます。 相手ピッチャーのマーケット氏からすれば、これほど楽な試合はないでしょう。ボール球さえ放っておけば、いとも簡単に引っかけてくれるのですから。 |
■東証REIT指数の推移(2015年7月13日) |
少し、気になっているデータがあります。東証REIT指数です。今年1月に高値をつけた後、軟調に推移し、7月に入ってから急落しています。 前回、相場を天井を打った2007年においても、東証REIT指数は5月に高値をつけて反落しています。日経平均の高値は7月ですから、2カ月ほど先行していたわけです。 また、アベノミクス相場で最初のミニクラッシュが起こった2013年5月も、この指数は4月が高値でした。 ひょっとすると「炭鉱のカナリア」的な存在になるかもしれません。今後の値動きにも注目したいです。 |
■ブロードリーフの業績下方修正(2015年7月9日) |
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本日、ブロードリーフ(3673)が業績下方修正を発表しました。同社は、自動車アフターマーケットという非効率な市場向けの業務用ソフトで高シェアを取っていることから、個人的に注目していた会社です。 しかし、投信の持株比率が高く(四季報夏号では23.0%)、投資には二の足を踏んでいました。機関投資家は横並びの行動を取りがちであり、悪材料が発生した場合、一気に売ってくるからです。 その「恐れていたこと」が現に起こってしまいました。4月に発表された第1四半期決算の進捗状況より、ある程度は想定できたはずですが、まだ同社株を保有している投信は投げ売りを迫られるでしょう。 【平成27年12月期 第2四半期 業績予想】
【平成27年12月期 通期 業績予想】
さらに、修正の理由も気がかりです。 当第2四半期累計期間において、システム開発における品質面での課題が顕在化したことを背景に、新規商 材の市場投入や既存商材の改良等において出荷遅延が発生したことなどから、システム販売分野での業績が当初計画を下回る見込みとなりました。 今後についても、システム開発における品質面での課題解消までには相応の時間を要することから、売上高の減少が見込まれ、通期の業績予想についても上記のとおり修正いたします。 元SE(システム・エンジニア)の私には、読んでいて胃の痛くなる文面です。状況は相当に悪化している恐れがあります。 同社のビジネスモデルを評価している長期投資家にとっては投資チャンスかもしれませんが、すぐに買いを入れるのではなく、経過を観察してからの方が良さそうですね。 |
■株式投資は “正しさ”では勝てない(2015年7月8日) |
ダイヤモンドオンラインの新コラム「もしオバ(もしもオバハンが、ファンドマネジャーになったら)」が興味深いです。とりわけ、第4回の中国株も“馬鹿な理由”で乱高下 株式投資は “正しさ”では勝てない!?には「うんうん」とうなづいてしまいました。 ファンダメンタル分析は必要ですが、それだけでは勝てないのも事実です。かといって、株価チャートの細かい値動きをきにしすぎれば、ダマシに合ってしまいます。 個人的には“株価は所詮のところ需給で決まり、様々な短期・長期の需給要因の中、ファンダメンタルズは判断材料の一部に過ぎない”というミスター・サスペンダー氏の持論に、やや同意しかねます。ただ、バリュー投資といえども、ファンダメンタルと中長期的な需給の双方に目を配っておく必要はあるでしょう。 |
■レイ・ダリオの警告(2015年7月5日) |
以前のショートコラムでも取り上げた、ヘッジファンドマネジャーのレイ・ダリオが警告を発しています。 こちらで紹介されているとおり「FRBの利上げペースが早過ぎれば、株式市場は1937年と同じように急落する」といった内容です。 多少、ポジショントークも含まれているでしょうが、頭に片隅に入れておいた方がいいかもしれません。 私自身も、マーケットについて、次のような認識を持っています。 ●人間の悲しい性からして、景気や株価のサイクルはなくならない ●株式市場にて、みんなハッピーな状況は長続きしない レイ・ダリオの警告は、大筋では合っているように思えてならないのですが。 |
■対岸の火事(2015年7月4日) |
下のチャートは「経済がダメなら、せめて株式市場だけでも」と国家を挙げて株価の吊り上げにかかったものの、その目論見がもろくも崩れつつある社会主義国の株価指数です。 その近くに、中央銀行が買い支えを行っているところに、逃げ足の速い外国人が便乗している、社会主義とも資本主義ともいえない国の株式市場があります。 こちらのマーケットは比較的堅調のようですが、隣国での出来事を「対岸の火事」で済ますことができるのでしょうか。 |
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by 角山智