へ・ほで始まるタイトルの映画

平成狸合戦ぽんぽこ

ふえぇ〜なんじゃこりゃ
タイトルからもっと楽しい映画を期待してしまった。
なんでしょうかこの、左翼学生の同人誌みたいな話(笑)。
と、ここまで書いて気が付いた。
なんだジブリって元々そうだよね。左翼学生の下手なアジ演説みたい。私は好きになれなくて当たり前だわ。

ジブリは元々苦手だが、絵だけはいつも小綺麗だったのに、今回は汚らしい
本作では最も大切なはずの背景(特に山の自然)も、いつも素晴らしいのにそうでもないし、キャラクターも無難にファンシー的にカワイイのが常なのに、汚らしくて表情が卑しく、ちっっとも可愛くない。
まあ人間を攻撃する側だから、という意図かもしれないが、あれじゃ思い入れなんできないよ。

ちょっと面白かったのは、タヌキにも化けられるのとそうでないのがいる、という辺り。
ここをどう決着を着けるのかな、と思って見ていたが、何の工夫も無く終わった印象。
目の付け所は良いし、見応えのあるものを作る芽はいっぱいあったと思うんだ。興味深いテーマではあるんだけど料理の仕方がマズ過ぎる。
多摩地区っていうのがいいよね、微妙な立地で。
実際、私の住んでる街では「そんなに建ててどうするの?」ってくらい高層マンションが建てられてて、ハクビシンが逃げ込んでた草地も掘り返されてしまった。実家の庭には夜タヌキが来てメダカを捕ると言うし、他人事では全然ない。
もっと素直に描けばいいのに。
普通に話せばいいのに妙な調子を付けて喋るから、何言ってるか分からなくなっちゃうアジ演説に、やっぱりソックリだ(笑)。

ベイブ

可愛い子豚奮戦記。
…と、いう触れ込みだけど、ご免。
豚も可愛いけど、やっぱり牧羊犬の方がダンゼン可愛い!!!
そしてストーリーも、「頑張れば叶う」を装いつつ、実は「豚は豚」と言ってるフシもあり。

なにしろヤンチャで愛らしい、牧羊犬の子犬達に、まずはノックアウトされた。
やはり雑食動物と肉食獣では、表情の豊かさが段違い
子犬も可愛いが、大人犬…母性溢れるフライと、頑固親爺のレックス。なんて顔をするんだ!!!
もうもう、犬の表情にキュンキュンしっぱなし。
「思い込みを棄てて話し合おう」という主張は正しいし美しいが、やはり豚より犬がお友達には望ましい、と認識を新たにしてしまった。

しかしそれでも、ストーリーは面白い。
素直で純粋で頑張り屋のベイブはとても可愛くて、羊や犬や人間が入れ込むのも良く分かる。
普通の豚として生まれ、運命のいたずらで単身羊牧場へやって来たベイブが、自分の居場所を見付け、やりたい事を見付けるまでの展開は、楽しくも感動的。
秩序を守ろうとするレックス、愛情あふれるフライ、前向きなフェルディナンド、面倒見の良いメェ。
動物達は無論大熱演だが、農場主の爺さんもとてもいい。何とも言えない哀愁ある表情、飄々とした中にも時折キラリと光る気付きの光。犬や豚に対する威厳ある、優しい顔。
傷付き弱ったベイブを看病しながら歌を歌うくだりはジーンと来てしまった。ダンスシーンも素敵だし、ラストのねぎらうところもとても良い。
太った奥さんも可愛らしくて良かった。こういう人いそう!
まさしく善良な田舎者夫婦という感じで、こんな生活素敵だな…と思うものの、放り込まれたら3日持たずに音を上げるだろうな、私(笑)。

全体に好感度が高いだけに、どうしても残念に思えてしまうのが、競技会のくだり。
ベイブ一人の実力でなくてもいいし、犬や羊の協力があってもいいんだけど、あんな"飛び道具"は出してほしくなかったな。
アレを出さなきゃ優勝させられないなら、競技会なんて出なくちゃならなかったんだろうか?そして出ても勝たなくちゃいけなかったのか???
別の落としどころはあったと思うし、別の盛り上げ方もあった気がする。

シーンの切れ間にネズミが歌ってサブタイトルが出たりして、パッケージはとても可愛いし楽しい。
動物達はモチロン、ドイツもコイツも大熱演、大好演で、文句の付けようがない。
だからこそ、スッキリ心から拍手を送れない、無理矢理な(テキトーな?)クライマックスが惜しい

「頑張れば叶う」ではなく、「愛されれば何とかなる」が、本当のテーマかもしれない。
まあそれも間違いではないし、悪くはないけれど。

ベイマックス

…これはちょっと…思ってたのと違いすぎる…………。

予告では少年と愛らしいロボットのウェットな愛情物語かと思いきや、蓋を開けたら戦隊モノだったでござる。
…いえね、いいのよ戦隊モノだって。面白ければ

なんと言うか、流石はアメリカだなと(悪い意味で)感心する事しきり。
兄の死の真相を探るんだといきなり武装し始める主人公少年。
天才とはいえガキの戦隊ゴッコに迷いも無く同調する理系大学生達。
ロボット大国という事で主人公兄弟が日本人設定なのが、むしろ違和感を強調する結果になってしまった。
そのロボット"ベイマックス"も、せっかくケアロボットという設定を付けておきながら、いとも簡単に戦闘用ロボに路線変更。そのカッコ悪い事と言ったら…(思い入れがあれば、そのカッコ悪さも愛おしくなるんでしょうが)。
要は"ケア"="気遣い助ける"が、="武装して守る"にすっ飛ばされてしまう、という事。さすがだ
チップ一つで大暴れする姿は"アトム"よりも"鉄人28号"寄りかな("マジンガーZ"も一部入ってるけど)。好みじゃないし、思い入れも生まれない、と思う。

だから、ラスト前の"感動のお別れ"シーンも、あまりに定型通りである事も含めてドン引いて見た。
ターミネーター2』では、あんなに泣かされたのに。全く同じ手口なんだけど、効果の程が天地の差なのは、それ以前の描写、そして設定のせい。
だって「これどうせまた再生させるよな」と思っちゃうもん。ヒロは天才だし。
チップに関してもさほどの重要性は無く、きっと兄のコンピュータに資料は残っているはずだから。
そしてなにより、「再生すればOK」と思わせてしまうのは、ベイマックスが別れの時点で"唯一無二"になっていないから。要するに愛してないのよ、私が。

まあ、子供向け、という事なんでしょうか。
映像的には凄そうで、劇場で見たら感動したかもしれない。
特に飛翔シーンは好物なので、ちょっと3D大画面で見てみたかった、けれど。
このお粗末な脚本で、サービスデーでも1800円取られる価格設定で観たのでは、感動よりも不服が優ってしまいそうだ。

けなしてばかりでアレなんで良いところを。
ヒロの体が冷えてると言って温めるベイマックスのシーンは良かった。ホンノリ中から赤く色付いて、しかも触感はフワフワとな…。

追記:『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』を見た。
最初、あまり可愛くないな、R2や3POに比べると洗練されてないし、なんて思ってた"K"が、終盤には愛しくて愛しくて。
量産型である事も、それこそプログラミング一つで人格(ロボ格)豹変する事もシッカリ見せられた上でも、いやだからこそ、得難い尊い魂であった。
そういう事なんだよ、うん。

ヘヴン

青い青い空に、舞い上がって行くヘリコプターの姿。

なんだろう?
と、思うまま、場面がガラリと転換してしまう、冒頭シーン。
たいして気にもせず観ていると、ラストに来て「おお!そう言う事か」と思わず手を叩きたくなる展開。
こういう構成、私は好き。
もしかしたら、観る客を選ぶ、かも知れないけれど。

なんだか、不思議な印象の映画だった。
義憤にかられたイギリス人の女テロリスト(ケイト・ブランシェット)と、地元イタリアの若き憲兵隊(警察組織)員との運命の恋。
イタリア人って、本当に情熱的。
その情熱を受けるに相応しいブランシェットの魅力もさる事ながら、青年(憲兵隊員として新米なので、二十歳そこそこなのだろう)の父親の態度には、本当にビックリ。
愛こそ全て、なんだねぇ、本当に。

もう一つ、イタリアって本当に、*無法地帯(笑)。
いろんな映画で*イタリアは舞台になっているが、総じて「美しい景色、情熱的な恋人、無能でええかげんな役人」という固定イメージは不動なようだ。
これってつまり、ドラマティックなお膳立てはOK、ってコトだよね。

ヒロインがイギリス人なのでイギリスの映画かと思ったら、監督はドイツ人で『ラン・ローラ・ラン』と同じ人。
なるほど、スタイリッシュで美的な画面展開はサスガだ。
イタリアにしては陰鬱な印象の街中(トリノだそうだ)の景色も美しいが、恋する二人が逃走する田舎の景色は、殆ど神々しい程に美しく、その中で頭を丸坊主にする二人(!)、続くラブシーンと、センスの良さを楽しめる。

爆弾テロの容疑者に一目で恋に落ち、共に逃走する(しかも、手違いがあったとは言え彼女は無実ではないのに!)青年の存在は、私の感覚からすると「ほえ?」と思いながら観たし、繰り返しになるが父親も「愛し合っているのなら」で驚きだし、「罪無き人を殺してしまった私も生きてはいけない」と言いつつ逃げ回るヒロインもアラアラ、で、本来「ノレない」要素はタップリのはずなのに、それを払拭するだけの迫力が、ある。
そしてラストシーンで、タイトルの「ヘヴン」(=天国)とは、こういう意味だったのね、と、しみじみ納得してしまう。

見終わった直後の感動よりも、日々ふとした拍子に、あれこれを思い浮かべてしまう映画。
不思議。

*参考:『リプリー』『ミニミニ大作戦』『眺めのいい部屋

北京ヴァイオリン

中国映画はクサくて大雑把で強引で苦手、と思い込んでいたら、どうやらチャン・イーモウしか観てなかったらしい(バカ)。そんな事は全然、ないのであった。
『北京ヴァイオリン』は、丁寧に作られた品の良い秀作で、とてもデリケイトで洗練されている。
思い込みで避けていてはソンするな、と胆に命じよう。

主人公のチュン少年は13歳。ヴァイオリンが上手く、男手一つで育てた父親は天才と信じて疑わない。
田舎物丸出しで、気が小さく、人の良いこの父親。いじましいながらも息子のために必死に勇気を振るい起こす姿が泣かせる。
少年は、父に比べると、最初ちょっとクールな印象だが、思う気持ちは負けない事が、ちらほらと見えてきて心地良い。
この少年、顔つきも涼やかで(かのやんごとなき方に似ている…と思うのは私だけ!?)、芝居も爽やか。
やたら美形でもなく、不細工でもない、ちょうどいい感じの子だ。語り口も表情も、淡々としてるようで、目を覗き込むととっても切なかったりして。

いじらしい父は、息子の才能を伸ばすため全財産を持って北京へやって来る。
そこで出会う、ヴァイオリンの先生、チアン先生と、隣人の派手なおネエちゃんリリ、この二人がまた良い。
チアン先生は、一見無頼漢タイプで、部屋はグチャグチャ、髪はボサボサ。コンクールで居眠りこいてる不良教師だ。
でも、露悪的な男性が、実はとっても純情、というのは、万国共通なんでしょうかね。なんかカワイイんでありました。
先生の家では猫達が我が物顔で(6〜7匹はいたぞ)暮らしており、いつも目の端にチラチラしてる。深刻な言い争いの最中とかに「ニャー」と合の手が入るのも微笑ましい。
少年に教え出してから、だんだん機嫌のいい顔を見せるようになる先生。淡々と通いながらも、反抗したり、からかったり、距離を縮めて行く少年。
「稽古はこれで終わりだ」と少年を送り出すシーンは、思い出しても涙が出ちゃう、いい場面でした。

一方、思春期の少年を刺激しまくる(笑)隣人リリも、こういう女の子にありがちな、好きな人にはムチャクチャ純情な女。だけど男を見る目は無いんだよねー。
キレイだし、元気で、情にもろくて、ちょっと孤独。浮ついた生活をしてるけど、スジは通す。
少年の父親の田舎物ぶりを笑うけれど、男手一つで育てたと聞くと「じゃあダサくても仕方ないわね」とサラリと言う、泣かせるのよ、このネエちゃんも。

そんなこんな、ずっといい感じで物語りは進み、少年は父の奔走の甲斐もあり、やはり才能もあって、強力な後ろ楯も現れる。
今まで世話になった人達は、いわば底辺に暮らす人々。少年が遠くへ行ってしまうようで寂しいけれど、心から応援をしている。切ないながら折り合いをつけて行く、その過程もデリケイトで、とても良かった。ダサイと笑ったお父さんと仲良く編み物をするリリ。お金を稼ぎに田舎へ戻る父を当然のように送りに行く先生。
さあ、サクセスはもう、目の前!
…と、思いきや、そうではなかった。
どうなんでしょう、私はちょっと、面喰らってしまった、あのラストシーン。
出世だけが人生じゃないよ、という理屈は分からないでもないんだけど。
もしかすると、(権力サイドである)ユイ先生やライバルの女の子の描き方がぬるかったのかな。この部分は上品さが仇になってしまったのかも。

それでも、少年の弾くヴァイオリンの調べはドラマティックで、思わず拍手を送りたい気分にはなっちゃうんだけど。
うーん、ラストがなあ。

追記

ココアちゃん↓の御指摘でユイ先生は監督のチェン・カイコー氏と判明、さらにリリ役の美人女優がカイコー氏の妻と知ってまたビックリ!
やるなあ、オヤジ。

北京ヴァイオリン(byココアちゃん)

映画評見ました。異義有り!異義有り!
違うよ、あのラストは父子の別れだよ!
あのコンクールは棒に振ったかもしれないけど
あれだけ、神に選ばれた才能の持ち主があきらめるわけない!あのお父さんがそれを許すわけない!

あの駅で弾いたヴァイオリン協奏曲は父に捧げる
愛には違いない、それはたとえこれから離ればなれになったとしても永遠にかわらない、と少年は全身全霊で伝えたのだと私はとったなあ。
あの協奏曲こそ北京でのいろいろな人たちとの出会いと別れ。
そう、別れ、というより旅立ち、と、とったのだけれど。だから私はうんと感動したんだわ。
まあ、人それぞれだと思うけど。
ちなみに、何人かに「どっちだと思った?」と
アンケートしたら皆(男、3人)私と同意見でした。
どっちととるかなあ?

ちなみにユイ教授は監督の
チェン・カイコーさんですって。ナルシー。

ベスト・キッド(1984)

昔観たはずなのだが『2』を観て怒ってしまって、内容が飛んでしまってた。
ジャッキー版が思いの外良かったので、今更ながら観てみました。
84年かぁ…。

なるほど悪くない。
驚くほどジャッキー版はコレを踏襲している事を知った。
まあ正直、ジャッキー版の方が見やすいし面白いのだが、時代を考えればそれは無理もない。
多分公開当時はあまりに王道の直截さに照れてしまったのかもしれない。
短期間で強くなり過ぎとか、その修行本当に効果あるの?とか、そういうのはまあ、あるけれど。

でも、ジャッキーは好きだけど、先生役はこちらのおじさんの方が良かった。
すごいイイ味出してる、ミヤギ先生ことノリユキ・パット・モリタさん。
物静かで礼儀正しく、ちょっと仙人じみた、そして一見全然強くなさそうな、平凡な容姿が良い。
古き良き日本人を絵に描いて拡大したような、どこか哲学的な表情も素晴らしい。
思った程には胡散臭い日本論を聞かされすに済んで良かったし。
でも盆栽をもらっても日本人だって困るよ(笑)。

まあ、ある種の少年漫画ど真ん中的な、ある意味王道なのでしょうね、この手の少年の成長物語。
それに加えて、やはり先生との絆が美しくて感動的。
少年が成長し勝利を勝ち取った先に待っているのが母でも恋人でもなく師であるところも美しい。
若い頃は受け付けなかったアレやコレやが、今となっては心地よいのは、少年ではなく先生の気持ちにも乗れるようになったせいかもしれない。

と、いう事で、昔の私を怒らせた『2』にも再トライしようと決めた。
ところでミヤギ先生、アカデミー取ってるのね。すごい。

ベスト・キッド(2010)

えっ、やばい。
普通に感動しちゃった。
って言うかラスト涙ぐんでるよ私。

いいんだけどね。
80年代の大ヒット作『ベスト・キッド』は一応観たが、いかにもな熱血ストーリーに怪しげな東洋趣味、ヘナチョコ主人公が突然強くなっちゃう無理矢理感で、ウンザリした記憶しかない。
今回も全く期待は無かったが、強いて言えばジャッキー・チェンが師匠役、という点に興味を惹かれて
観てみたんだが。

お目当てのジャッキーは、予想以上のイイ師匠っぷりだった。
怪しげな東洋趣味は継承してはいるものの、脱力系のジャッキーだと嫌味にならない。日本が扱われないせいもあると思うけど。
そして主演の少年が、え?ウィル・スミスの息子だって?普通に美少年じゃね?(笑)
…いえ、パパは魅力的だけど、ヒラメ界のハンサムだよね。ちょっとビックリ。
そして、そんな事はどーでも良く思えて来る好演。表情豊かでダンスも上手だし、カンフー時の姿勢がとても綺麗。跳び蹴りも華麗♪
オリジナルと同じ"いじめられっ子"でも、この子は最初から威勢が良くて強くなれそうな気がするし、イジメの理由も分かりやすくて話に入り易い。
でもあのイジメはイジメの域を大幅に超えてる、多分3回くらい死んでる。ダメ、絶対。

ヒロインがどーしちゃったのってくらいアレな顔で困惑したんだが、あるいは白人圏では「東洋の神秘」なのか、あの手の顔。
まあ顔は置いといて、あの少女と主人公が惹かれ合う描写は悪くなかった…影絵はやり過ぎだけど。
パパに謝りに行くシーンもすごく良かったし、ダンスの時の彼女はとてもチャーミングだった。
ママも最初は「どーなの?」と思ったけど、なかなかダイナマイツな感じでだんだん好きになった。
そして中国勢のまあ、憎たらしい事!素晴らしい。
あの決勝戦のガキね、絶対見た事ある!と思ったらアレだ、『のだめカンタービレ』の『ぷりゴロ太』のガキ大将・カズオ!ちょっとマニアック過ぎ(笑)。
あの子も好演だったし、準決勝で反則させられる子が、練習中に"トドメ"を刺せず叱られていた子だったのも良かった、いや辛かった。
あれがあったから、最後の子供達の敬礼にスンナリ感動できたんだと思う。

なんと言ってもジャッキーなので、前半でさながらお手本のように立ち回りを披露してくれるものの、子供相手でユルめだし、そこは師匠役なのでそれっきり。
ちょっと前菜が一番豪華なフルコースみたいだったけど(笑)。
最初に友達になる白人の少年とか、ジャッキーと敵側師範の関係とか、もっと膨らませて欲しくはあったけれど。師匠の暗い過去とかもありきたりで残念だったけど、弟子の対処の仕方は良かった。
食い足りない部分はあっても、スンナリ観られてスッキリ終われる、ついでにちょっと胸が熱くなる、思いの外良い映画でありました。

ベッドタイム・ストーリー

出だしは面白かったんだけど…あまりにもディズニー、良くも悪くも(結果悪い)予定調和過ぎて途中で嫌になってしまった。
「姫」が誰かも一目で分かるし、ファンタジー要素もガムが降るくらいで(アレは好き)他に大した事は起こらない。
友人ミッキー君(Mr.アーサー?)がイイ味出してて、彼の逆玉が一番の事件だったかも。って言うか私が嬉しかった(笑)。

大体さー、ホテルを任されて小さいモーテルを選ぶとかも意味不明
彼のプレゼンも内容はゼロのペラッペラで、勢いで乗せられるバカばかりってどうなの?
子供を理不尽に押し付けられても怒りもしないセレブ嬢も食い足りない。
そして何も事件が起こらない
子供達はおとぎ話の思い付きを言い散らすだけ、主人公はおとぎ話で主演してもどんなコスプレも似合わず魅力薄。
ハッピーエンドは好きだし結構だが、ライバルをアゴで使って威張り散らす、というのを現実(おとぎ話でなく)世界で実行されてしまうとドン引きだし笑えない。

ディズニーらしさがいちいち鼻に付く上に、ディズニーらしからぬセコさが目に付くという、悲しい結果になってしまった。
観客は皆本命と気付いているであろう女性に彼女のフリをさせるとか、そんな場で筋肉自慢?とか、痛いだけで共感はできないと思う。
元いじめっ子達が羨む理由も(特に絵的に)良く分からない。

好きなタイプの設定だしコスプレや美術効果にお金が掛かってそうなだけに、ガッカリ感が強かった。
あ、私、アダム・サンドラーが嫌いなのかも。
50回目のファーストキス』は好きwだったけどなぁ。

へルター・スケルター

悪趣味。
原作、半端に既読。すでに原作段階で悪趣味と感じて後も先も見る気にならなかった。
ニナガワミカってソフィア・コッポラを思い出す、七光りのとこだけじゃなく、ケバい"女の子センス"が売りなとこも、それになぜだか顔付きも。

で、なぜそんな映画を見たかと言うとですね、私は沢尻エリカ様が大好きなんですのよ。
あの容姿容貌、それに演技も良い…と、思っていたんだが、今回は演技は「こんなだっけ???」と首を傾げてしまった。
まあ、こちらが思い入れし辛い役どころだったせいもあるし、この監督の前作『さくらん』でも、「土屋アンナってこんな下手だっけ!?」と驚いた(『下妻物語』のアンナは最高だったのに)ので、演技指導だか演出の問題が大きいと思う、けど。
でも寺島しのぶさんは相変わらずだったもんなぁ。窪塚洋介も別の意味で相変わらずだったし(笑)。

とは言え、エリカ様はそれはもう本当に美しい。
この美しさをこんなクソ映画にしか投影できない、その事に真剣に怒りを覚える程に美しかった。
えげつない濡れ場も、あの完璧なヒップが拝めるとあらば目を背けまい。基本愛らしい顔立ちが、様々なメイクで妖艶に演出される様も、できるならもっと意義の見出せる、いやせめて不快感の無い形で拝見したいものだ。
この映画におけるエリカ様の姿について、某美容外科の院長がブログで長々と書いていて、物凄く面白かった。まあ要約すると「日本人には無理」って事なんだが(笑)。

ライバル?のアイドルの女の子が、わりと普通(の見た目)で残念だった。若さに嫉妬するのは分かるけど、なぜあの子?他にも若いのはいくらでもいるだろうに。
そして一アイドルのあの子が、刃物を構えたオバサンに立ちはだかられても全く動じないのはナゼだ?余程の修羅場を潜って来たのか?
いちいち突っ込むのはバカバカしい程の適当な内容なんだけど、印象に残ったのはソコとエグイ濡れ場くらいなんだもん。

あ、訪ねて来た残念な妹との会話「お姉ちゃんは強いから綺麗になれたんだよ」「綺麗になったから強くなったのよ」「違うよ、強いから綺麗になれたの」って会話は好き。
原作にもあったのかな?
あの時の姉妹の服装とか背景の草原とかも好きだな。 

それにしても、せっかくの「復帰作」に、こんなネタを選んでしまうあたり、私としては本当に残念でならないんだけれど。

ベン・ハー 

恥ずかしながら、1959年公開の、名作と誉れ高い本作を、2022年に初めて観まして。
いや〜、噂に違わず凄い大作!
特に、『ベン・ハー』を語る時誰もが真っ先に触れる戦車レースのシーンは、聞きしに勝る圧巻!
これマジで人死んでない!?
馬がひしめき合って走るというだけでも凄いのに、車輪は外れる、戦車はひっくり返る、乗り手は後続にふみ散らかされる…CGも無いこの時代に。
それ以前に、群衆シーンの層の厚さ
エキストラは総勢何人だったのだろう?
私はかねがね、CGが映画を見窄らしくした、と思っているのだが、その良い実例のようなゴージャスぶりだ。

しかし後半はビックリした!
正直、誰も何も教えてくれなかった(笑)。そしてその理由も分かった。
後から見直してみれば、冒頭のタイトルにシッカリと「キリストの物語」と書いてあるし、最初のシーンはベツレヘムの星だしで、構成的にも全く問題無くキリストの物語なんだけど。
だって誰に聞いても「戦車」しか言わないんだもん、この映画!
申し訳無いが、それが一般的日本人の答えだと思う。
戦車で仇敵メッサラを沈めて、お気に入りの彼女はもう為すがまま、義理パパだってマッチョで勇敢な新息子にメロメロ。もういいじゃん幸せになれば。
…あ、母と妹、忘れてた(酷い!笑)。

この母と妹がまたねー。
女優さんへの配慮なのか、病気への差別の問題なのか?
ハンセン病か梅毒か、と思いながら見てたけど、作中では『死病』とだけ。
ほぼ説明も無いので、感染するんだな、とか、死病ってくらいだから治らないんだな、とは思ったけど、母も娘もボロを巻きつけているだけで何の症状も見えない。
それで「見ないであげて!」とか言われてもなー納得できませんけどね。
でもあの口のきけない海坊主みたいな人が割って入るのは良かった。
どういう訳か、ああいうキャラ好きなのよ、昔から。
とは言え面倒臭い女ども(元奴隷の彼女も含めて)だなー、という思いばかりが募ったわ。
死んだ事にしてベンハーの気が済むと思う?納得すると?
チラチラと接触のあったキリストにカノジョさんが心酔しちゃったり、いよいよ処刑となったりで、まさか奇跡を起こさないよねー?と、思っていたら、想像通りの最悪の結末………。
済みませんね、当方邪教徒ですもので。

主演のチャールトン・ヘストンは、今ではすっかり銃器マニアのゴリラおじさんってイメージだけど。
若い頃はなかなか、可愛かったのねー。加えて肉体美。
時々顔付きがシュワちゃんに似てて(特に戦車のヘルメット姿)愛嬌もあり、見てて長丁場も飽きなかった。
義理父・アリアス将軍のジャック・ホーキンスも、奴隷カノジョの父サイモニデス役のサム・ジャッフェも、アラブの成金馬主イルデリムのヒュー・グリフィスも、おっさん勢がとても良い。
親友から仇敵に急展開の末凄まじい負けっぷりを見せるメッサラを演じるスティーヴン・ボイドも、憎々しさの中に滲む小物具合と言うか、とても繊細に演じてて惹きつけられた。
「優しい少年だったのに、ローマへ行って変わってしまった」というベン・ハーの言葉が、とてもスンナリと腑に落ちるような演技だった。
ちょっと『グラディエーター』のホアキン・フェニックスを思い出してしまったけど、アチラは当然参考にはしてるよねぇ。
男性陣がとても生き生きと存在感を放っているのに対して、女性の扱いがお粗末で悲しい。
先述の母と妹、いつもバッチリフルメイクの奴隷娘エスターも。どんな境遇でも、取り敢えず綺麗な形を崩さない
これは多分女優のせいではなく、時代の要求がそうだったのでしょうね。

まあ、後半あんなだったにしても、戦車レースのシーンやガレー船のシーンの迫力とリアリティが掻き消されるワケじゃない。
だから皆、中盤で終わってしまう戦車の話ばっかりしていたんだな。
それだけでも十二分に観る価値のある映画だったし、本当に観て良かったと思えるのだけれど。
惜しむらくは、劇場、それも昔のような巨大スクリーンのロードショー館で、あの戦車レースを体感したかったな。

ポセイドン

1972年のオリジナル版は、多分私が生涯最初に保護者抜きで劇場で観た映画。
怖さも迫力も衝撃的だったけど、繰り広げられる人生模様が素晴らしく、長年心に突き刺さって消えない名作である。
近年のリメイクブーム?で、まあCGは発達したものの、ドラマ的には本家を超える事はない、と期待せずに観たが、まあほぼ予想通りの出来だった。
ウォルフガング・ペーターゼンは好きな監督だが『U・ボート』や『トロイ』のようなスケール感は無く、一言で言えば「リメイクしなくても別に…」というのが感想。

こういうパニックものというのは、危機的状況の恐ろしさを見せるダイナミズムと、それに立ち向かう人々の明暗を巡り浮き彫りにされる人間ドラマの二本柱が見どころだが、前者はCGの発達でかなり見せ場が作り易くなっている反面(だからこそ、とも言える)後者のドラマ性はリメイクだといただけない場合が多い気がする。
どうも映画関係者は感性が麻痺しているのか、と思うこともしばしば。

例えば本作の、けっこう始めの頃に出て来る、ハシゴから案内役のボーイを蹴り落とすシーン。
ハラハラドキドキさせたいのは分かるし、こういう状況では最善の対処であったかもしれないが、少なくとも私は「ここまでは見たくない」と感じてしまう。
それもさ、直前に散々先を譲り合ったりしていい人アピールした挙句。
何か以前もこういう…と思い出したら『エアフォース・ワン』でも同じ事書いてたわ私。奇しくも同じペーターゼン監督作だけど、うん。
もうこのシーン一つで、私にとっては「もう二度と観ないであろう映画」枠に入ってしまった。
おまけに、蹴落としたネルソン爺さんと、落とされたバレンタイン君がコッソリ無賃乗船させてた(一応恋人?)エレナとは後に接触するのに、因果応報的展開もまるで無く、お互いその事実を知る事も無いままで、「なぜこの関係でやる必要が?」と首を捻る展開。
ここで上手に拾ってくれてたら胸糞悪さも許せたかもしれないのに。

カート・ラッセルは大好きなんだが、流石にヒーローには歳を取り過ぎと判断されたか、英雄要素は若いジョシュ・ルーカスと分け合う形に。
このルーカス君が好みならもっと楽しかったのかなぁ、という、ラッセル退場後の盛り下がり感が我ながら情けない(笑)。
父と娘、というのも最近のハリウッドの大好きなテーマだが、「プロポーズされたからパパの言う事には従わないわ!」って娘もどうなのよと。あんなに守ってもらったのに可愛くない。
ラッセルが水中に特攻して行くシーンは、どうしても前作の太ったおばさんを思い出してしまって、あの名場面には到底太刀打ちできないので、記憶が足を引っ張る結果になってしまったし。

何と言っても最後の難関で、ルーカス君が生きてた理由がどうしても分からない。
あれはどう考えても死ぬでしょ?無理でしょ?
生き残る人達は、子供に母親に若いカップルに爺さんと、だいたい予想通り(爺さんはどっち?と思ったが)。
いつも思うけど、泣きわめき迷子になり知識も体力も無く足手まとい一直線の子供が当たり前に助かるのは本当にシラケるので、今回は「手が小さい」という活用の場があって本当に良かったと思った。
しかしうるさかったわあのガキ。

ドレイファス爺さんは胡散臭くもエレガントで魅力的。
ラッセルは衰えを知らぬ男前ぶりで、もう少し「元消防士」が生かされるともっと良かったな。
生意気な娘役はアレか、『オペラ座の怪人』のヒロインね。やっぱり歌ってないいとタダの大根ちゃんでしたね。

亡国のイージス

悪くはない、と思うんだが。
まあ全体的に、薄味な印象はあったかな。けっこう豪華キャストなんだけど。

真田広之は大好きだが、"千石"はちょっと、違うよね。かっこよすぎるんだ。
原作も読んで(文章が合わず辟易したんだが)それでもこのヒーローが中年の小太りオヤジなのがツボだな、というのは理解できた。
突然のスクランブルに、日頃の運動不足を呪ったりしながらも、愚直なまでに迷い無く闘う彼。
アクションは抜群、顔は二枚目、年はそれなりでも色気溢れる真田さんだと、全然意味合いが違ってしまう。勝っても意外性が無いと言うか。
フライ,ダディ,フライ』の堤真一もそうだったけど、どうしても映像となるとビジュアル重視なんでしょうが。『風と共に去りぬ』ですら、原作の冒頭には「スカーレット・オハラは美人ではないが…」と書いてあるという。
もっとも、他の出演者に吉田栄作、豊原功補、谷原章介と、モデルばりの長身イケメン俳優を取り揃えて、その辺りのバランスを取ってると言えなくもないが(笑)。私的には目にありがたい事ではあった。

勝地涼はこれが初見。
見る見る売れっ子になってしまったが、それも納得だ。動きが綺麗で、表情がとても良い。説明不足を否めない"如月"の生い立ちや人となりを、その瞳と存在感が補っているような。
どうしても艦内のドンパチが中心になってしまい、政府側の対応とか、そもそもの"亡国"の原因とかが薄くて残念だった。豪華キャストだったのに。
中井貴一の悪役は良かった。かの国の人に見えなくもないし、いい人役も似合うけど冷酷な役も似合う。制服や拳銃が、意外な程似合っていた。
あとあのルビーの指輪のおじさんはアレでいいんだろうか。あの緊張感の無い顔で。いつも笑ってしまうんだが私。
そして何の意味があるのか分からない韓国女優の起用。どうせ喋らないんだし貴一君の妹なんだから日本人でいいじゃん。容姿も演技もアクションも特筆する事は何も無かったわ。

生きるか死ぬかのところでの疑似"父と息子"の愁嘆場は、それぞれの事情説明不足のせいもあって、ああ邦画らしいわねぇと引いて見てしまったが、最終的には比較的スッキリと締めてくれたので救われた。
悪役の国籍がハッキリ出て来ないのが弱腰と非難されてたが、いや、なにも"北"と特定はできないよね(笑)。

日本の国防の痛いとこ突いた小説では、村上龍の『半島を出よ』の方が面白かったけど…映画化できないんだろうなぁ。

亡国のイージス (byココアちゃん)

真田広之かっこいいし大好きなんだけど、巨大なイージス艦の上ではことさら「寸づまり感」を強烈に感じてしまったのでした。もう少し背が高かったらなあ・・・。
でも中井喜一との死闘、ちょっとくどかったです。まるでホラー。
物語はね。ルビーの人もそうだし
豪華キャストであればあるほど「役立たず感」ばかりが心に残り・・・。
ま、駄作ですかな、正真正銘の。

暴走車 ランナウェイ・カー

子供うるせー!!!(爆笑)

スペイン映画ですか。
主人公の顔が激濃ですな。
第一印象は「車版『フォーン・ブース』だな」だったが、濃くても可愛いコリン・ファレルと違ってこのお父さんの顔だけをずっと見続けるのはいかにもキツイ。
そこを慮ったワケでもなかろうが、後部座席には天使のように可愛らしい子供二人、お姉ちゃんと弟。
しかしコヤツらが癒し要員かと思いきやとんでもなく、泣くわ喚くわ罵るわ怪我するわ、終いに救助を拒んでまた面倒を増やすという。
いや〜ぶっちゃけ、面白かった!

全然予備知識が無く、「まあ観てみるか」くらいの心構えで始まったら、のっけからグイグイ来る迫力と臨場感にビックリ。
先の子供のうるささにしても、電話で進むウザい犯人とのやり取りにしても、会話が噛み合わなかったり話の腰を折られたり横から茶々が入ったり、という、日常では当たり前にあるけど映像作品では整理されてしまう要素がそのまま垂れ流されていく。
開始5分でヘトヘトになったが、面白さが勝って止められず、それも次第に慣れて来て、ずっと前のめりで見た。
犯人の動機はだいたい予想通りだったが、そんな事は別に良い。むしろ犯人がショボいのが良い
次々襲いかかるピンチに無茶苦茶に対応するいちいちがパワフルで、疲れはしたが飽きる事なく完走できた。
何と言うか、密度が濃くて(主演の顔も濃いけど)香り高い、味も濃い。
化学調味料や人工甘味料てんこ盛りな印象のアメリカ映画とは一線を画した、生々しいリアリティ。
映像の綺麗さ、動き回るカメラの小気味良さ、「まだやるんかいっ!?」なアイディアの数々。車の暴走ぶりもハンパない。
ツッコミどころはあるものの、それすらも現実は案外そんなモンかも、と思える勢いがあった。

後半戦になって、いきなり登場する爆弾処理班の女性がキャラ立ってて魅力的。
こういうのも基本だと、もうちょっと前から顔出しておくものなんだけど、後半はほぼ彼女が持って行ってしまったと言っても過言ではない。
エルビラ・ミンゲス。
欧州系の女優さんは時々こういう凄い存在感の人がいるけど、なんだろうあのかっこよさ。

最終的に爆弾をどう始末するのかと気を揉んでいたが、そう来たか、とこれまた感心。
実際そうなるかは分からないけど、本当にギリギリまでハラハラさせてもらった。
娘が車に居座った時は「あーもう!」と思ったが、狙撃対策だったとは恐れ入った。それに彼女が同乗していなかったらお父さんは途中で諦めてしまったかもしれない。

キャストについてはスペインに限らず、あまり観る機会の無い国の映画だと、既視感の無さが新鮮さに繋がり、役その人に見え易い、という利点はあるかもしれない。
街の景色や走る車なんかも、見慣れた物といちょっと違って目に楽しいし。
でもそれを差し引いても、かなり出来の良い、何より勢いのある、面白い映画だった。
邦題がちょっと残念、全く期待してなかったもん。

抱擁のかけら 

なにしろもう、ペネロペ・クルスのファム・ファクタールっぷりが凄い。
映画監督マテオの元を訪れる、女優志願のレナ。振り向きざまの満面の笑顔。
あ、狂う。
まざまざと思う、立ちすくむマテオを体感する。

ストーリーの骨子は、よくあるメロドラマだ。
ちょっと構成が複雑で、私とした事が一瞬見失った。これが平坦な話の雰囲気造りに貢献しているので、あまり文句を言う気にはならないけど。
しかし、プロットは普通でも、味付けの濃さは相変わらずのアルモドバル風味(笑)。
美女とオヤジ二人の三角関係を、こうまで濃厚に描くか…うへぇ〜。
先に美女レナのスポンサーになるマルテル翁の、悲しくも凄まじい嫉妬ぶり。
よりによって息子に撮らせた、レナの映像を読唇術で読ませたり、ベッドで死んだふりしたり、終いにゃ階段落ちまでやらかして、もう痛いやら恥ずかしいやら。いや怖い。でも、悲しい。

女優であるレナが、様々な髪型と衣装で着せ替え人形のように撮影に臨むシーンが楽しい。劇中劇のように挟み込まれる主演映画での、ヘプバーン調のポニーテール姿もキュート。
豪華な邸宅や、海辺の美しい別荘、逃避行の田舎町等、景色もこの上なく美しく甘美。しかし、それもこれも、ペネロペのためにあり、ペネロペのために輝く、ってくらい、意外に出番は少ない"美しすぎる"ペネロペが全編通して印象的。

爺の息子(この子が一番気の毒)やら監督のマネージャーみたいな女とその息子やら、話は色々広がって行き、盲目となったマテオ(=ハリー)の再生で物語は閉じる。
嫉妬のため"殺された"作品を取り戻す。愛する女に永遠の命を吹き込むのだ。
モノを造る事の怖さと尊さについて、監督自らの思いをマテオに託したかのような終幕。
唐突な程プツリと途切れるラストシーンの、最後の台詞が胸に残り、ポッと暖かい火が灯される気がした。

ボーイズ ドント クライ 

実話ですってよ、これ。
ひどいなぁ…。
痛いったらありゃあしない。

事件性という点では確かにショッキングだし、主演女優(男優!?)ヒラリー・スワンクの痛々しい演技は迫力あった。
でも、それがなに!?
「ひどいねぇ、ひどい目にあったね」以外、何も言うべき言葉が無い。
後は、アメリカって乱暴だな……とかね。
性同一障害っていうのがあってね、というレベルだったら多少の宣伝力になったかも知れないが、たいして掘り下げてる訳でもなし。
後味悪い物見せるんだったら、それなりの見返りが欲しいっつーか。
なんとも、暴力・差別・クソ田舎・ チンピラと、不快な物を並べただけの印象で。

問題提起と言うには淺過ぎて、女性週刊誌的見せ物になってしまってないかい?
もう少し何か欲しい、光を指し示す、何か。

ボーリング・フォー・コロンバイン 

ってナニ!?
と、思ったら、アメリカはコロンバインで高校で生徒が銃を乱射して死傷者がいっぱい出た事件があって、かなり話題になったんだけど、その事件を軸に、銃社会アメリカに迫るノンフィクション、だった。
この風変わりなタイトルは、犯人の少年二人が、銃を手に学校に押し入る当日の早朝、つまり事件の直前に、女の子と一緒にボーリング場に行き、何ゲームかした、という理由で付けられたらしい(しかしボーリングには他の意味もあるんだけど)。
宣伝文句では、「アポ無し突撃レポーターが惨事の真実に迫る」みたいな事が書いてあって、かなり殺伐とした物を予想して観たんだが、このマイケル・ムーアというスゴ腕ジャーナリスト、なんと言うか、カワイイんである。
見た目はよくいる小デブのおじさんだし、腰が低くて物腰やわらか。シリアスな社会派というよりは、コメディアンみたいな様子なのに拍子抜けした。
が、観て行くうちに、やっぱりスゴイや、このおっさん。って気持ちになって来る。
「僕はこういう(銃)社会で育ちました」から始まって、高校の乱射事件を足掛かりに、「なぜ?」はどんどん広がって行く。
犯人達が聴いていた、という理由で不買運動まで起こされたマリリン・マンソンのクールなコメントを取り、地続きなのに全然違うカナダへ飛んだり、銃を売ってる大スーパー、Kマートで銃を買って見せたり、興味深い取材の合間に、可愛いアニメーションでアメリカの(ムーア的)歴史を流す。ブッシュにまで突撃し、しまいにはコロンバイン校の被害者達と共にKマートに乗り込んで、銃の販売中止の約束までさせてしまう。
そして、NRA(全米ライフル協会)の会長になっちゃってるチャールトン・ヘストンの豪邸を訪問、ウザがられながらもインタビューしちゃう。

銃の規制に関して、色んな考え方があるのだろうけど、こうして見るとやっぱり、どう見てもヘストンはバカヤローの野蛮人だ。だけどそのスピーチに喝采を送る人々が大勢いるのも、また事実。
それでも、このレポートを観ていると、銃社会アメリカは、もう限界かな、という気がしみじみしてしまう。

で、これだけ認めておきながら、こんな事言うのもナンだなと、分ってはいるんだけど、やっぱり突撃レポーターなら、『ゆきゆきて、神軍』のがスゴイわ。

ボーン・アイデンティティ

「精子提供してほしい男性全米No.1」(なんじゃそりゃ)に輝く、マット・デイモン。
そんな名誉賞号が付く以前から、私は大のお気に入りだったけどね。
でも、今まではわりと、セクシー男優と言うよりは演技派っぽいイメージだった。
役柄も、いわゆるヒーロータイプよりはナイーブな青年って印象。出演作自体、静かな設定が多かったし。
そのマット君が、アクションヒーローとは!?
かーなーり、楽しみにしてました、私。

まず注目は、やはりマット・ディモンの「人間兵器」ぶりでしょう。
記憶喪失という設定もさる事ながら、「咄嗟に身体が動いちゃうの」的なアクションは、ちょっとドッキリ。
一瞬の迷いも、無駄な動きも無く、適格に相手を仕留めて行く様子は、言いたかないけど胸がすく。(人殺しを見てスカッとするなんて、やーね)
バリバリの美形でもない、どことなく人の良さそうなディモン君だから、ますますそのギャップが心地よい。
パリの街を暴走するのが、小さくて可愛いミニクーパーなのもハイセンス、と思ったら、『ミニミニ大作戦(この邦題なんとかならんか)』なんてのが出たりして、ミニ流行りなのかな?

ストーリーは、私的には、いささか古色蒼然、って印象でした。
巨悪に踊らされて、最後はあちらの勝手な都合でウヤムヤ、って話でしょ?
まあ、基本はそれでもいいんだけどね、どうも食い足りない気がして。
理由の一つはハッキリしていて、他のキャストがつまんなーい。
ヒロインは地味なおばさんだし、悪役の元上司もサエないサラリーマンだし。
九死に一生を得たラストシーンも、こんなに嬉しくもなんともないハッピーエンドは『スピード』以来だわ。
多分、キャラクターへの思い入れが無いせいだとは思うけど(特に女)、それにしても、二人が引かれ合う気持ちに乗れないって言うか。そりゃ非常事態に異性と二人タッグを組んだら、そんな気分になる事請け合いだけど、あそこで別れて、もうそれでいいじゃん?
なんて思うのは、やっぱり女優に魅力が無くて、見た目全然似合いじゃなかったせいかなあ。

でも、世界各国からネットで召集されて送り込まれた刺客達は、なかなか楽しめた。
最後はなんかシンミリ話し合っちゃったりして。
そこらへん、やはりマット・ディモンの従来イメージなのかしら。
せっかくの殺人兵器なのに、結局子供のせいでためらったのがケチの付き始めだったとは。
子供好きな人はスンナリ納得するのかなあ。だって人間兵器なのにー、殺人マシンなのにー。
それならそれで、もう少しほじくって見せて欲しかった(別にそんなに見たくないけど)。

そんなこんなで、アクションはマルだけどストーリーはペケ、でもディモンはかわいかったよ。

追記:20年も前に書かれた小説が原作なんだって、ナルホドね。
原作はロングシリーズらしいので、受け次第で続編とか狙っているのかも。
続編はいいけど女優は換えてほしいなあ。

ボーン・コレクター

連続猟奇殺人事件、車椅子探偵、勇敢な美女。
ワクワクしますねぇ。
冒頭は一気に引き込まれた。誘拐事件、全身麻痺で安楽死を希望する元警官、そしてうら若き女性警官による遺体発見。
アンジェリーナ・ジョリー、似合うなぁ、お巡りさん。素敵。この頃はまだ可愛いし。
続く中盤も、役割を得て急に生き生きし出すデンゼル・ワシントン(楽しそうじゃん…)の見事な推理と言うか予測と言うか、それに果敢に従うアンジー、痴話喧嘩かよ…な揉め事、新たな犠牲者と、どんどん話は面白くなる。アンジー様が小娘呼ばわりされちゃってますよ(笑)!

が。
終盤のグダグダは、どうした事か!?
だいたい連続猟奇殺人に快楽以外の動機なんてあったらつまらんやろ(独断と偏見)。
あまりにも適当な解決で脱力。
そして人命に対する、何と言うか…いや、猟奇殺人を扱うのが悪いとかじゃなくて…うー。
いつも思うのだけど、「どうせ子供は助かるんでしょ」って思ってその通りになる退屈さときたら。いや死ねと言ってる訳じゃないけど、助けられなかった老人とかおいてけぼりな扱いだし。
最後は「冒頭の苦悩は何だったの?」なデンゼルの満面の笑顔が、乗り越えた達成感よりも取って付けた感の方が強くてさ。
だって身体状況は何も変わっていないのだし、その上あんなに良くしてくれた看護師さん(あの人好き)まで犠牲になったというのに…そういうのグダグダ引きずらないのがアメリカ的ポジティブ思考なのかしらと。
(なんか最近この手のハッピーエンディングが鼻に付く事が多くて…『バーティカル・リミット』だの『2012』だのね…だからと言って『ミリオンダラーベイビー』が良いとは絶対に思わないが)
ボーン・コレクターというキャッチーなタイトルも、あまり生かされたとは思えず。

いや基本、断然ハッピーエンド主義と言っても過言では無い私なんだけど、だからこそ手落ち無く気持ち良く終わらせて欲しいのよ、一緒に喜びたいのよ私は!

ボーン・スプレマシー  

ボーン・アイデンティティ』の続編、という事で、前作でさんざこき下ろしたヒロインが冒頭で殺されちゃってヘタッてしまった。これだから、ハードボイルドは…。

しかしやはり、今作を観ると、彼女は退場するしかなかったでしょう。
なにしろまあ、前にも増して、ハードボイルド。
デイモン君も、心なしか前作以上に鍛えて来た感じで、『リプリー』のおダサい海パン姿が悪い夢のよう(笑)。
相変わらず多くを語らないキャラクターである上に、今回はのっけから相棒が消えてしまったんで、本当に何を考えてるか分からないまま話が進む。
ストーリーは前作をシッカリ受け継いでいるから、ちゃんと復習して観なかった私は、ますますもって付いて行くのが大変だった。
アクションも、もうすごいのなんの、って、特にカーチェイスは、なんなのコレ!?と呆れる程の物凄さ。
好きな人にはたまらんのだろうなぁ。
正直私は、嫌いじゃないけど…というレベルなんで、ここまでしていただかんでもいいです。
疲れた………。

で、目がクラクラしながら、冬のロシアへ。う〜寒そう。
語らないボーンの心が、ここでやっと開いて見せられる。
おお。納得は、した。
前回同様、彼のテーマは「殺人兵器である自分とどう向き合うか」なんだね。
正直ストーリーは、あまりに無能な組織の人々、濃すぎるカーチェイス、あまりスゴ味の無い悪役と、派手な道具立ての割に地味な印象だったけど、多くを語らぬボーンの行動から見えてくる心は魅力的。

次もありそうなんで、その時は1、2まとめてちゃんと観直してから行こう。

ボーン・アルティメイタム

あれ?ご免、面白い

正直『アイデンティティー』『スプレマシー』は、アクションは凄いものの、ストーリーはちょいと古臭いし分かりにくく、キャラクター(特に主人公)にも思い入れがしにくくて、まあそんなに…という印象だったんだけれど。
もっとも、主人公"ボーン"はアイデンティティを見失って彷徨う設定なのだから、途中経過で人物像に思い入れができないのは当然といえば当然なんだけど。
3作目にしてやっと全貌が見えて、"ボーン"が人に戻った、というか。
そう考えると1、2作目は不利な条件の中、大健闘だったと言えるし、ちょっと頑張って見続けた3作目はよくぞここまで、という出来だったと思う。

アクションシーンが相変わらず凄いのと、ボーン君の哀愁の表情がとてもチャーミングなのがね、つい見てしまう。
あと通して見て、スコット・グレンの長官(憎まれ役)とジョアン・アレンのエージェント仲間(作中の良心)?が、とても良い。
今回特に重要な位置に来た若いエージェントのニッキー(ジュリア・スタイルズ)は…え、ご免。ブス!?
と言うかバランス的に変な顔なんすけど…………幸いと言うか、今回はボーンとたいした接触も無かったけれど、なんだかミョーに入れ込んでる風情だし。
実際そのせいで命を狙われ、自分を捨てて逃走する羽目に陥る彼女、何を考えているのか…???
まあ正義感と言ってしまえばそれまでなんだけど。
それよりは、意見はするけど何もできず、ニュースで「行方不明」と聞いてニンマリするランディ(ジョアン・アレン)の方が、ずっとシンパシーを感じる、のだが。
まだシリーズは繋げるつもり満々なようで、この先どうなりますやら。(現時点でこの先を観ていません)

まあ正直マリーも魅力的とは言い難い容姿だったし、ボーンは面食いじゃないという事も大いに考えられるのだが(笑)。

本作ですでに、マッド・ディモンもかなりおっさん化が進んでいるのが見て取れた事だし。
そうでなくとも彼のキャリアからするともっと演技力が要求される役を演っておいて欲しいという気持ちが先立って、もういい加減ボーンはいいんじゃないかと思うのですがどうでしょう。

ボーン・レガシー

あ、『ボーン〜』シリーズ新作出たのね。
と、何の予備知識も無しに見たら、ボーンが出て来ない………………。
どうやら時系列は一緒らしく「ボーンが暴れてる時代」。登場は結局写真一枚でした。

で、つくづく思ったこと。
マット・デイモンってやっぱり可愛い
今回主演のジェレミー・レナーは全く可愛気が無く、おっさん臭いし目がイッちゃってて怖いし、"殺人兵器"がこの容姿では面白くも何ともないんですけど。
エドワード・ノートンやスコット・グレンなんか一応出て来るけど「顔は出したし義理は果たした」って感じだし。

ストーリーは相変わらず分かりにくく、中盤以降はアクションだけを眺めていた。
アクションと言うか暴力シーンはなかなか凝ってて面白かったけど。
研究室での博士の銃撃は慣れてない(殺傷力低い=死ぬまでに時間が掛かる)感じが物凄く怖かった。
雪山での狼との対決〜狼身代わりのくだりも面白かった、けど狼…(泣)
無人飛行機やらGPSやらYouTubeと、今時のアイテムも多数登場だけど、アクションとしては地味かな。
むしろ昔ながらの感じのマニラの雑踏でのバイクチェイスは凄かった。追っ手の彼の二度のクラッシュも「死にますわな…」という転げ方。
でも悪役、体張ってるわりに存在感が薄いのは気の毒な程で、これは脚本が悪いと思うわ。
それでラストにお決まり?の「もう追うな」って書き残されても、組織側とのやり取りも殆ど無いままに追いかけ回されてただけなんで、「はぁ?」って思っちゃう。

収穫といえば、レイチェル・ワイズが美しかったことくらい。
ハムナプトラ』の頃なんかファニーフェイスと思っていたのに。ブロンドより黒髪が似合うのは意外。
ただ逃げ回ってただけの二人がラストシーンで当たり前のようにイチャイチャしてるのはお約束とはいえ鼻白んだが。

ぼくたちと駐在さんの700日戦争

市川隼人かぁ〜…と、いささか引き気味の気分で見始めたのだけど、面白かった。
市川君演じる"ママチャリ"は、かの『陰陽師2』の大根っぷりが嘘のように、生き生きしてキュート。
派手な柄シャツに膝丈ジーンズの夏衣装も良く似合う。

他愛のないイタズラで新任の駐在さんに絡みまくる高校生達が、なんだかやたらと皆可愛くて面白い。
喧嘩が滅法強く、心優しいけど女の子方面の刺激に滅茶苦茶弱い“西条”。登場時からコレは絶対と思ったらやっぱりセーラー服を着させられた"ジェミー"、異様に似合ってた。肉屋の息子のデブも2年留年の"辻村さん"も“星の王子”も、みんな好き。
よくある男子高校生モノは、あまりに男の子目線で女性に対する扱いが失礼だったり、喧嘩や暴力が無茶過ぎて不快だったりする事が多いんだが、この映画は舞台がのどかな田舎、特に不良でもない高校生達だから、えげつない事もあまりなく、無駄なお色気シーンも無くて、見やすかった。
対する駐在さんは、安定の佐々木蔵之介。もう安心してお任せできる(笑)。
妙に生真面目なところ、大人気ないところも、いちいち説得力があって面白い。
麻生久美子も安定の美しさだが、暴走族姿というレアな見せ場も、意外と似合ってる。
やたら熱血の先生も、“ママチャリ”のマイペースな母の石野真子も良かった。

自転車でのスピード違反に始まって、バカバカしいイタズラで駐在さんを挑発する高校生達。
参謀のママチャリだけが違反スピードを出せなかったり、金属と言われて鎧甲を着て来る奴がいたり、笑えた。
だんだんエスカレートするのは致し方無いとはいえ、1番犯罪の臭いがするのは駐在さんの置き去り事件か(笑)。ちゃんとオチが付いてるとこも気持ち良く笑えた。
一歩間違うと失笑モノの「心臓病の少女」ネタも、西条の性格描写が先にシッカリしてあるし、メンバーの友情もキッチリ見えているから、嫌味無くスンナリ受け容れてしまった。

花火泥棒は、これはまあ完全に犯罪なんだが。
せっかく打ち上げに成功したのに、その後の駐在さんのアレは…うーん、ちょっとやり過ぎ、人情話過ぎ、かなぁ。
だいたい花火って、駐在さんのボーナスくらいであんなに大量に上げられないでしょ。どんだけ高給取りなんだ。
まあ絵的には、空一杯の花火は問答無用で盛り上がるんだけれど。

設定は1979年だとか。私はほぼ同世代、だから何だか馴染みやすいんだろうか?
物語は特に大発展も無く、高校を卒業するとかもなく、駐在さんとの戦争も実は700日も描かれず、日常の中で幕を閉じる。
一応は主人公の成長物語なんだが、ママチャリは最初からそんなにダメな子ではないし、説教臭い人生訓も露骨に語られる事無く終わってくれて、その辺りの控え目さがまた、好印象だった。

僕の彼女を紹介します

大ヒットした(らしい)『猟奇的な彼女』の姉妹品、と言う事で、ついでに『猟奇〜』も含めての感想を。
だって同じなんだもん。

主演の女の子は、まあウケ線なのは分かりますよ。
人なつこい丸顔に、サラサラロングヘア、スレンダーな身体。
でもなあ。
女の子がカワイイと言うだけで、映画1本(いや2本だ)楽しめないの、ワタクシ。

恋人が死んじゃったら、それは悲しいでしょう、誰だって。
そんなモン見せられて泣いたからって、別にな〜んにも感動とか、違うでしょ。(結局泣いてやんの…私。)
前半の、さむ〜いギャグの連続(路地に挟まる所は笑っちゃったけど)、全然魅力的に思えない乱暴な彼女の性格(こんな女と恋がしたいか!?マゾ男共め!)、これでもかと続く主演女優のサービスカット。
正直、いささかウンザリさせられました。

『猟奇〜』は、それでもまだ、取りあえずまとまりと言うか、テーマがブレないだけの方向性が一応あった。
そのヒットで注目度も予算も高まったのは分かるけど、『僕の〜』(世間じゃ『ボクカノ』とか言うらしい、けっ!)はいささか、お調子に乗り過ぎ、と言うか、欲張り過ぎだ。
貧乏人に大金持たせて「好きに使っていいよ」って言っても、使い方分からないでしょ。私は知らない。
「ワーイワーイ、お金使えるよ!空撮も道路封鎖もできちゃうよ!台車使って回っちゃうよ!上映時間も長くていいよ!」完全に舞い上がっているのがミエミエ。
結果、とにかく長いし、バラバラだし、回想形式なのにスタート地点に戻って来た時忘れてるような始末。
おまけに映画の一番の見せ場とおぼしき風車のシーンなんか、女優が一番ブサイクに見える角度でエンエンとアップが続くといった無神経ぶり。(サラサラのロングヘアがチャームポイントの彼女に「風」をからませる、という発想は、かなり私好みなんだけどな)
えーかげんにせーよ、っつーか、誰か止めろよ!

でもね。
元気いいのよ、とにかく。
構成はバラバラだし、テ−マ自体が好みじゃないし(言い訳がましいんだもん)、キャラクターにもちっとも思い入れできないし、本音を言えば肝心の主演女優もそんなに好みじゃないんだけどさ。
撮れて嬉しい!お金使えて嬉しい!って声が、聞こえて来そう。
商品として一流とは、私は断じて思わないけれど、例えば友達がこういう物(予算は全然少ないにしても、こういう勢いのある物)を作って来たら、「やったね!」とハグしてしまいそう。
…………なーんだ、けっこうやられちゃってるじゃん、私。
こういう元気の良さって、邦画(ゴメン、あまり観ないけど)やアメリカ映画では、滅多にお目にかかれないかも。両者が最低限の完成度を保ってる、と言えない事も無いが。
おそるべし!?韓流映画。

ホットロード

原作は連載当時に完読し、そこそこの思い入れがある。
だから、評価が厳しくなってしまうのもある、とは思うものの。

能年ちゃんは、頑張ってはいるのだが。
まずね、ナゼ今!?
ナゼ尾崎(分かるけど安直)!?
ナゼ実写映画!?
あ、でもアニメで劇場版よりは、実写が良いかも、この作品は。
ただし出来が良ければ、の話である事は言うまでもない。

…正直、暴走族とかヤンキーとか、全く憧れも共感も無いもので、人物達に思い入れもしにくく、ましてやカッコイイとか全く思えない。
それでも(そんな私に)読ませてしまった紡木たくの手腕は恐ろしいモノがあるし、原作にはそういった設定や人種身分を超えた透明感と切なさがあった。
しかしこのような平板な実写になってしまっては、そのアホ下品さが際立ってリアルに感じられてしまい、悲しい。

だいたいなんなんだ、あの老けたハルヤマは???
正直もう、それだけでアウトなんで、他に言う事も無い気がするの、私。
百歩譲っても、あの作品界の味わいは、無茶はしても無垢で未熟な少年と少女の純愛と、そうではなくなってしまった大人達との齟齬に苦しむ切なさなのであって、そこはヤンキーとは程遠い青春時代を送った私のような者でもギリギリ共有できる、ある種聖域のような部分だったと思うのだが。
ハルヤマがスレっからしのチャラ男では、お話にならない。
能年ちゃんのカズキはいい線だっただけに残念なんだが。
だいたいあの男いくつよ!?と、ググってみたら当時で20台半ばだったらしい。酷い。
高校生だよ?あの年頃の1歳2歳の差は本当に大きいのに、25歳なんて完全に"敵方"じゃん。

しかし、原作の力は凄いモノがあり、そんなポンコツな配役でもなお、カズキの事情はあまりに切なく痛ましくも微妙なところを突いて来るので、(ハルヤマの出番の少ない)中盤はかなり引き込まれた。
ちょっとイメージとは違ったのだが、カズキの母役の木村佳乃も好演。
実はこの話、母と娘の物語でもあるからね。

しかしやはり、何とも端折った印象が拭えない内容だった。
原作を読んでない人が観て流れを理解できるのかも怪しいと思う。

能年玲奈は才能のある女優さんだと思う。
くだらない営業上のゴタゴタなど飛び越えて、また活躍してほしい。

ボディ・ターゲット 

ヴァン・ダムねぇ。
なかなかハンサムだしイイ身体なんだけど、頭悪そうで(笑)あまり気乗りしない。
と、思って今までスルーしてたんだけど、彼の主演と知らずに観てしまった。
…意外に、ちゃんとした映画で、ヴァンダム君のボンクラっぷりが際立った結果になってる、ような。

ご免なさい、これはもう、好みの問題だと思うの。
多分この映画のような、複雑な背景とかが無い、スッキリした勧善懲悪で延々殴り合う、みたいな方がヴァンダムファンは楽しめるんじゃないのかな?私は観ないけど。
彼の表情がほぼ無いので、罪を悔いてるんだかないんだか、やったのかどうか、あの一家に愛着を持つ過程とか、薄ボンヤリしちゃってて。泣かせるシーンもあったと思うんだけど。
そもそも冒頭の脱獄シーンからして「あららら…」で、例えば全くの無実で誰かに陥れられて、逃げて自分で証明するしかない、とかでもなく。
逃げた後何となく田舎に行ってキャンプしてるだけって…逃げおおせるのか???普通。ピストルで武装してるし、いつでも無辜の一般人を殺す気満々だよね…。
そういう黒い主人公が善行を行う、というストーリーも無論アリだけど、繰り返すがヴァンダムにはちと複雑過ぎて荷が重い。

悪党サイドの地上げ屋共の乱暴さも凄くてビックリ。
でもアメリカの田舎って、だだっ広い中に銃持った人が住んでて、こういうのあっても無理は無さそう。人口密度低過ぎる。
砂漠の一本道とか怖いよね。

あとアレだ、未亡人とやっちゃったらダメだよね。
最後の逮捕前の、元彼の目前でが最初のキスとかだったら良かったのに。
むしろ少年との絆の方に焦点を絞ってほしかった。
気丈に頑張るロザンナ・アークエットはチャーミングだったけど、夫を恋しがって泣く割に警官と付き合ってて、ヴァンダムが来たらポイ捨て状態で…ちょっとアレだ、うん。

とか何とか具体的にダメ出ししたくなる程度には、面白く観てしまったんですが。

炎のランナー

公開時、慣れないデートで観に行って冒頭の砂浜ランニングシーンで眠りに落ち、目が冷めたらラストの砂浜ランニングシーンだったという(笑)。
なんと37年後に、ようやっと中味を観ましたよ。

やっぱり眠いんだよね…。
元々スポーツ観戦に全く興味が無いもので、こんな風に競技スポーツに一途な人達にも興味が持てない。
漏れ聞いた噂では差別問題なんかも絡んでるというのでそっち方向に活路を見出そうとしたけれど、正直「こんなモンか」程度で全然エグくない
お金持ちのお坊っちゃま連中が、陸上競技に夢中になってひたすら練習して、クライマックスがオリンピックでメダル獲って終了って、あまりにもベタにスポーツもの過ぎる。
こう言ってはナンだが好みのイケメンの一人でも出てれば違ったかもしれないが。

彩度を抑えた画面はどこを切り取っても淡い水彩画のように絵になるし、公開当時話題になったヴァンゲリスの音楽は神々しいまでの美しさ。当時のイギリス有産階級のシックな衣装の数々、建物や家具調度の重厚さ、海や牧場の自然の美。
全編に渡る上品な映像美は確かに心地よいのだが、心地よいままに眠りに誘ってくれる…実に眠い
やたらに繰り返されるスローモーションも、早う進めろや!という気持ちもさる事ながら、ああまた眠ってしまう…という誘い水になっていた。

頑張って観ていれば、一度負けたからとデカい図体して女に泣き言を言い募るエイブラハムとか、何故にハードルにシャンペン!?とか、笑っちゃうシーンもあるにはあるのだが。
コーチのおじさんは良かったな。上流っぽくないせいか、とても人間らしく感じた。
「プロ」である事を云々されていたが、そういえばディック・フランシスの小説でもプロの騎手が貶められるシーンがあった。英上流会の伝統的価値観だろうか?
学生の身分で校内行事が蝶ネクタイにタキシードで晩餐会だもんなぁ。
ユダヤ問題も薄めだがこだわりの強さは良く見えるし、敬虔なクリスチャンが「日曜日だから」試合を放棄するというのもうーんと唸ってしまった。
しかし一番強烈に思ったのは、オリンピック、それも陸上競技だというのに白人しかいない事。
この点は当時(パリ五輪は1924年)当たり前過ぎて誰も問題にすらしていないのがまた凄い。

丁寧に作られた、良心的な映画だという事は私にも分かるのだが、いかんせん私の興味の及ぶところではない。
そこを飛び越して来る程にはインパクトも無かった。
30数年前のデートが盛り上がらなかったのは言うまでもなく、偏狭な自分が残念ではある。

ボルベール<帰郷>

…なんともはや、シュールな展開に目が点になった。
ゲイでマザコンの監督(ファンです)だからかな?
無職でロリコンで浮気者の男なんか死んで当然!という世界。

パートのおばちゃんの通勤服が谷間全開だったり、そもそもペネロペ・クルスだったりするんだけど、スレンダーな彼女は"おばちゃんっぽさ"を出すためにお尻に詰め物をしたんだとか。
なるほどね。言われてみれば大きなお尻。

殺人、近親相姦、レイプ、失踪、放火、ガン等々、酷い素材が山積みなんだけど、空気感はボンヤリ明るく湿り気が無く、さすがラテンは違うなと思ったり。
画面の原色がとても綺麗。
スペイン中部の景色と共に室内装飾、人々の衣服も、正直我々には「あり得な〜い!」な色使いも見事にハマって美しい。
もちろんヒロインのペネロペの美貌には、赤や黄色やビリジァンが、本当に良く映える。
そして美しきペネロペ、歌も上手くてこれまたさすがはラテン系。多分そのまま踊り出しても上手いはず。

そうそううまく行かないでしょ、という無理矢理展開が続くのだが、何となく説得力があって見続けて納得してしまう。
母、娘、祖母、妹、叔母、隣人。
濃密な女たちの絆の前で、男は全て無用な異物

かくして女達は罪に問われる事も罪悪感に病む事も無く、互いが互いを想い合いつつ幕は降りてしまった。
この監督にしてはユーモラスな場面も多く、見終わって悲しいモヤモヤ感が残る事も無くて、ちょっと意外。
『帰郷』というタイトルに納得の、無責任だが心地良い後味であった。

ホワイトアウト

豪華キャストで雪山で、ヘリぶっ壊す等お金も掛かってそうで、なかなか力が入ってますが。

…なんと言うか、邦画でアクション系は、やっぱり難しいのかな?無理が目立つ気がしてな。
ダイハード的状況に雪山ダムが舞台って面白そうだし、そうかダムを占拠すれば政府に我儘言い放題だ!その上真似する奴はそうそういない(笑)と、ある意味目から鱗も落ちたんだが。
まず孤軍奮闘のヒーローがダムの運転係って無理があり過ぎ。銃社会のアメリカですらマクレガーは刑事の設定だったのに、タダのダム職員がサクサク人殺して犯人本部に啖呵切るなんてドン引きですわ。
と言うか根本的に、主演男女のテレビドラマ感がもう、残念。

しかしまだ、織田ユージの方は頑張ってたかな。やはり(見た目全く好みじゃないにもかかわらず!)華のある人なのだなぁと再認識した。その"華"が、シリアスなシーンでは邪魔になる事もあるのだが。
松嶋さんはねぇ…元々美しいひとではないと思っていたが、気の毒な程不細工に撮られていて、時々笑ってしまった。
以前ヴィヴィアン・リーが南北戦争中に髪振り乱して泥だらけの姿がますます美貌を引き立てて見せる、みたいな事を書いたけど、菜々子さんクラスだとそれなりの美人演出してあげないと本当に可哀想。ああいう場面でそれはリアリティの欠如に繋がると言うのなら、ミスキャストでしたね、と言っておこう。

脇役が豪華で錚々たるメンバーなんだが、あまり使い切った感が無くてもったいない。
石黒賢が出て来た時は「おおっ!懐かしドラマのコンビだ♪」と、脳内をチャゲアスの曲が駆け巡った(あのドラマ好きだったなぁ)が、石黒さん即行退場。私の脳内にヤーヤーだけが残った(笑)。
平田満も、ビックリの短時間出演。これも吹っ飛び方に笑った。
敵役の佐藤浩市は大好きな俳優さんだが、今回はうーん…見た目キタナイしなぁ。なんか団塊の人たちが喜びそうなセリフ吐いてたけど、今更?だし、車椅子の意味が最後まで分からなくて、あまり生かされてなかったような。ちょっと勿体無かったな。
嬉しかったのは、元・劇団☆新感線の橋本さとしさん。この豪華メンバーの中じゃどうせ端役かなと思って見てたら、意外と活躍してくれた。そして作中一番、レザーコートも銃器類も似合ってた♪ココだけでも(って言うかほぼココだけ)見た甲斐がありました。
あと良かったのは吹越満と高橋一生かな。一生君の頭が吹っ飛ばなくてホッとした。

ホワイトナイツ/白夜

公開当時、「これはあまりな設定…」と、まず引いてしまったのを覚えている。
実際に亡命をしたバレエダンサーを主演に据えて、亡命ダンサーが飛行機事故でソ連に舞い戻らざるを得なくなり、ソ連側の卑劣な足止めを振り切って自由の国へめでたく帰還。
分かるけど。棄てたとはいえ祖国をこのような扱いで、当のバリシニコフさんはどんな心境だったのだろうか。

ピルエット11回転!事も無げに。しかもあんな、普通に街歩いて来た靴で(それは本当かは分からないけど)!
当時はバリシニコフばかりに目がいって、タップダンスではバレエに対抗できないな、と思ったものだが、今見るとクライマックス前の二人のシンクロダンスは秀逸だった。
そうそう、グレゴリー・ハインズは歌もお上手。イイ声でした。
若く美しいヘレン・ミレンはこの映画が初見。あんな素敵な女優さんとは、当時は気付かなかった。
最初は髪型や服装のダサさに驚いたイザベラ・ロッセリーニも、清らかで可愛らしい。最後の笑顔は最高だ。『永遠に美しく』や『ブルー・ベルベット』の変態○ブ姐さんとは別人のよう(笑)。

当時はまだまだ、「ソ連が悪い」で何でも済まされてる感のあった時代。
だから、何となくアンフェアな気はしても、まあ見逃そう。それよりも見直してみて、レイモンドの脱走の理由が「米軍の虐殺」と語るのにビックリ。そういう時代でもあったのね…。
ラストの再亡命のくだりは、なぜだか丸々記憶が抜け落ちていて(バリシニコフがバレエ少女にどつかれる所とか良く覚えてたのに)改めてちょっとハラハラさせてもらった。
…まあ、三人共無事で終わらないハズはない作りではあるんだけど、特に最後の取引シーンは怖くてドキドキしたな。
ソ連の悪党代表のチャイコ大佐もイイ味出してました。あれ絶対最後は意地悪したよね(笑)。

あまりにソ連が悪者だったり、色々展開がご都合的だったり、バリシニコフの顔が好みじゃなかったり(笑)と、色々ケチは付ければキリが無いんだが、改めて見返してみると、それなりにまとめてあるし、それ以前にこの有名バレエダンサーの勇姿をフィルムに収めて世界規模で(私を含むバレエを観ない層にも)公開した、という点で充分に価値はある映画、だと思った。
だからこそあの設定があざといんだけどね…。

意外とロケシーンも多く美しいが、よくソ連が撮影を許したね。

ポワゾン

レンタル屋で見かけて何気無く借りて来たら、‘R指定’というヤツだった。
きゃ〜、初体験だわ。
と、ドキドキしながら観たけど、何と言うか、け恥ずかしい程純愛でした。
商売柄えげつないレディコミを目にする事も多いせいか、どこら辺が「子供に見せるな」なんだか意味不明。

主演は大のお気に入りのアントニオ・バンデラスと、アンジェリーナ・ジョリー。
登場するや「こんな美人でごめんあそばせ」と言い放つアンジェリーナには口アングリ。
そしてこの時代のドレスがちっとも似合わないのが、最後まで気になったけど、まあ現代的な美人という事で、許せない範囲ではないな。
ヒロインには似合わなくても、この南米の町や豪邸の雰囲気はとても良かった。
話もリメイクらしくてちょっと古臭く、ヒロインの気持ちに乗りにくい部分はあるんだけど、ラストまで観ると悪くない。

なにしろ富豪のお坊ちゃまのバンデラスの、やられっぷりが徹底している。
この富豪、最初は異常に猜疑心の強いヘンな男だと思ったら、フタを開けてみれば異常に女にのめり込む情熱野郎だったんであった。
自分の性癖にうすうす気付いていたのかもね(笑)。
なにしろバカ丸出しの惚れ込みっぷりは、さすがラテンの血?
似合います、とっても。

私の好みとしては、ヒロインはもっとスタンダードな美形で、あそこまで健康そうでない女が良かったんだけど(オリジナル版はカトリーヌ・ドヌーブだと…そっち観たい!)。
なんだかんだ言って、バカバカしい程の激愛っぷりと、一応二転三転、無理矢理でも転がしてくれるサ−ビス精神がウレシイ。
愛でしょ、愛。
そう思って気楽に観れば、なかなか楽しい映画です。

で、R指定なんだけど、子供に見せちゃイカンのは、主役二人の「顔」かも、なんて、観終わってから思っちゃった。
二人して濃いし、なんかエロイんだもん。

ホワット・ライズ・ビニーズ

ワタシタチのハリソン・フォードが、こんな事に………(泣)。
なんと言うか、イメージチェンジを狙ったか、演技派の称号が欲しくなったのか。
まあ意外性を狙うという点では良いキャスティング…な、ハズなんだけど、あまり功を奏してるとも思えず。
結果汚れ損、みたいな、消化不良感の残る映画でした。
ミシェル・ファイファーも、今回はちっとも美しくない。
元々端正な美形ではないんだが、顔立ちの悪い特徴ばかりが目立ってしまって。
でもまあ、見ようによってはホラー顔なので(笑)この映画のムード作りには貢献していたのかも。

ゼメキス監督かぁ…………。
ホラーっぽい雰囲気は良いと思うのよ。
怖い音、怖いタイミング、怖いシチュエーション。まんまと乗せられて「ビクッ!」となる事数回ではあったけど、ストーリーにあまり繋がって来ないと言うか、とても表層で怖い印象で。
前半の思わせぶりなミスリード?も、後半全く生かされず、「今まで何をやって来たんだ…」という徒労感しか残らない、という。

正直、この映画の"売り"は、「あのハリソン・フォードがっ!!!」でしかない、と思った。

ポンペイ

関係ないけど、私"ンベイ"だと思ってたわ、割と最近の展覧会まで。

で、街がどうなるかはもう皆知っているワケだし、あまりハッピーエンドは期待できない。
まあ7割方心中エンドと覚悟して観ましたが。
正直、アティカスだっけ、黒人剣闘士王。彼は生き残って欲しかったなぁ。
まあ見せ場もあってカッコ良かったし、締めの口上みたいなの任されてて美味しい位置ではあったんだけど。

あまり驚きが無かった事は仕方ないとして、何と言うか、軽い印象が否めない。
もう少し重厚さがあれば、時代絵巻、歴史物として、予想通りの展開でも十分に楽しめたんだけど。
ストーリーが男女の恋愛中心で、しかもその恋が割と軽いと言うか薄い印象でサワヤカなんだが食い足りず、もっとドラマを掘り下げてくれたら、とか、剣闘のくだり結構グダグダよね、とか、まあ色々。

キーファー・サザーランドは大熱演だったけど現代人みたいだし、主人公もイケメンだけど剣闘士王とタメ張るには線が細くイマドキの子っぽい。カッシアお嬢様も綺麗だけどゴージャス感は無く、せっかくの時代物なのに衣装もあまり心に残らなかった。
ところでカッシアさん、どっかで見た顔と思ったら『レモニー・スニケット』のお姉ちゃん!!まあ綺麗になってー!昔から美少女だったけど。
でも残念、次女(ジェシカ・ルーカス)があまりにも可愛くて分が悪い(笑)。いやあの娘は本当に可愛くて魅力的だった。扱いが軽くて最初次女ならぬ侍女かと思ったけど。
剣闘士王、ああいうキャラクターも定番ではあるが、やはり肩入れしたくなっちゃうのよねぇ。明日で解放、とかさ。
カッシアの両親の、善良だけど政治は苦手な田舎者っぽさは、なかなか良かった。しかし無能だったなパパ…。

だってポンペイと聞いたら、パニック物を期待すると思うのよ。
確かに火山の噴火は派手にCGを使ってくれてるけど、相変わらずの頭カラッポなCGで火がボンボン出るだけみたいな。
パニック物と言えば群像劇を期待するよ、私は古いタイプのせいか。
あ、だから『タイタニック』もつまらなかったんだな…恋愛中心で。
そして剣闘士にコロセウムと言えば、どうしたって『グラディエーター』を思い出してしまう。
どこを取っても勝ち目は無いわ。
真面目に作ってる感じは好感持てるんだけどな。

ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走 8/26

チョビヒゲが暑苦しいパパ、臨月の美人ママ、エロ爺チャン、ホラーなマスクの姉ちゃんと弟、ヌーディストビーチを目指す青い髪の見知らぬおネーちゃん。
という濃い〜メンバーが、ブレーキのきかなくなった真っ赤なバンで大暴走!

タイトルの「大暴走」は、てっきりもっと抽象的な意味かと思ったら、そのまんま高速道路を暴走し続ける映画でした。
ついでに「ボン・ボヤージュ」はフランス語でbon voyage、「良い旅を!」って、何の皮肉だか(笑)。
うーん、キャラは立ってるし、意外にお金も掛かってるみたい(って言うか撮るの大変だったよね…)だし。
面白かったけど、ずっと暴走してて疲れた(笑)。
もっとハートウォーミングなファミリーものかと思ったら、そうでもないし。
一応愛を叫び合ってはいたけどな。

このメンバー構成、どこかで…と思ったらアレだ、『リトルミスサンシャイン』に似てる。
ちょっと暑苦しいパパ、中ではマトモなママ、エロい爺さん(なぜ爺さんのキャラ付けはエロなのか!?)、娘と息子に、他人(『リトル〜』は叔父だけど)が一人。
内容は全然違うけど、ジジイのエロ好き以外は。
人を動かしやすい構成だし、ママがマトモなのはそうならざるを得ないんでしょうね。
まあこちらでは爺さんが無事で良かった

あとさ、あの黄色いBMWのおじさんが、ただただ気の毒で。
笑えないのよ…ああいう、一方的に酷い目に遭う人を笑う気持ちになれない。
酷い目がちょっと限度超えてるし。
そこが一番引っかかったかな。
あとトイレが詰まるくだりとかも、やるかあんな事!?って、ダメ、生理的に。
まあ、その水漏れが伏線となって…という話ではあるんだけどね。

家族の他にも警察サイドも曲者揃いで、白バイカップルとかカッコよかったんだけど。
卓球に夢中の女上司とか意味分からない(笑)。
車屋さんも暑苦しくて凄かったけど、あの人も可哀想だったなー。

救出シーンはけっこうハラハラドキドキしながら見たし、それなりのカタルシスはあった。
お母さん役の女優さん、カロリーヌ・ビニョって言うのね、ちょっとグウィネス・パルトロウを思わせる美人さんでした。