れ、ろで始まるタイトルの映画

レインマン 

公開は1988年。
「自閉症」と言うと、何かのショックで口をきかなくなった人、なんて認識が横行していた時代に、これだけの物を作った事自体に、まず敬意を表したい。
名優ダスティン・ホフマンの、なり切り演技は完璧で、今更語るまでもなく、ただもうサスガ、ご立派と称えたい。
音楽もいい。あの曲を聴くと自然と、ホフマンのチョコチョコ歩きが目に浮かんでしまうし、逆にあの絵を目にしたら、あの曲が聞こえて来る。そして最初にこの映画を観た時の感動が、体感的によみがえる。
ロード・ムービーというのもいい。
広い広い砂漠の一本道。笑っちゃう程仰々しいアメ車(こういう車、実は大好き)。煮詰まる物語に風通しの良い景色。

この映画のトム・クルーズ、けっこう好き。
適度なチンピラぶりがとてもいい。
笑うとサワヤカなのに怒った顔とかはチンケで、なんだかリアル。しかも良く怒る。無理もないが(笑)。
くだらな〜いアイドル路線を突っ走るかと思いきや、ちゃんとこういういい役もこなす。そんなに派手な容姿でもないので、こういう世界にもシックリとハマッてしまう。
この映画が自閉症のルポだけに終わらないのは、トム演じるチャーリーの視点を通しているから。怒りと利己的動機から発見そして愛情へと移る、彼の普通っぽさは貢献度が高い。

イライラするよねぇ、ぶっちゃけ。こんな奴と二人きりでは。
「オ・オー」と聞くたびにブチ切れそうになるな、きっと。
ましてやこの時代、殆どの人がこの症状の知識が無かったのだから、チャーリーには本当、同情するわ。
それ以前に、父親とソリが合わず、家を飛び出してもうまくいかず、父が死んでも遺産もくれない…と、踏んだり蹴ったりの人生。孤独で、不安な人生(とは言え、イカす車に乗って可愛くて性格もいい恋人もいるんだけどね)。
父が死んでもなお秘密にしようとした兄の存在を知る事で、チャーリーは見失っていた父の顔をも知る事になる。
自分を(他の誰をもだが)石ころか虫でも見るような顔をしている兄にも、思いやる心や傷付く気持ちがあった事にも気付く。
レイモンドの独特の「言語」を学び、わずかだが通じ合う心。おそるおそる触れ合う身体。冗談で笑い合う二人。
チャーリーの力ではどうしようもなく、兄との別れを余儀無くされるラストシーンは切ないが、彼の孤独は癒されている事だろう。

人と人とが分かり合う事は、実はとても難しい。
だから、たまに心が触れ合う実感を得ると、そこに感動が生まれる。
レイモンドは「特別」な人だけれど、その特別は質の問題ではなくて程度の問題でしかないのかも知れない。
てな事をシンミリ考えるも良し、単純に変人との旅やカジノを楽しむも良し。
深刻な問題を真面目に扱っているが、堅苦しくも無く楽しめる、いい映画だ。

レオン

フランス時代から、注目していたリュック・ベッソン。
『レオン』は話題になったエンタテインメント映画で、アクションも愛も泣かせもあり、美少女あり、楽しく観させていただいた。
楽しく、と言うのは正確ではないかも知れない。基本的に悲劇だし、甘い雰囲気があるだけに、八方塞がりの先行きが見えて来るに従って、見続けるのが辛いような気分に陥った記憶がある。

ベッソン映画ではお馴染みのジャン・レノ、頭の悪い(だってそうじゃんー)凄腕の殺し屋。一家惨殺の生き残り少女が、多分これがデビューだったナタリー・ポートマン。ちっとも強そうじゃないけど側に絶対いて欲しくないキレまくりの悪役が、ゲイリー・オールドマン、白人なのに撫で肩。
少女は殺し屋の元に逃げ込んで、孤独な二人に愛が芽生える。
殺し屋は少女の行く末を思い離れようとするが、少女は「私も殺し屋になる」と、健気にも(?)殺し屋修行を始める…。
と、こういうシチュエーションで、だよ?
アンハッピーで終わらせちゃって、いいのー!?
いや、泣きましたよ、私。
まんまとやられちゃいましたとも、その時は。
でもねえ。「あー、もう、無理そうー」と、いう所から、どうひっくり返して救い出してくれるか、そっちの方が腕の見せ所だと、ハッピーエンド大好きな私としては、思う訳ですよ。

相変わらず、景色が素晴らしく美しい。ゴミゴミした街なんだろうに、なんか全体に湿気があって、アメリカ映画なのにヨーロッパみたい。
撃ち合いのシーンも、盛大で迫力あったし。
ナタリー・ポートマンも美しくて、賢そうで、妖艶ですらあった。「やったー、アイドル誕生!」と色めき立ったのに、その後の映画ではただのドンくさいかわいこちゃんだ。撮り方が凄かったのか、その年頃だけ輝いていたのか。両方かな。
音楽も美しかった。道具立ても、雰囲気も、上質なのよ。
そんなこんなで、その場は乗せられちゃったんだなあ、と言うのが、何年か経った今思う私の感想だ。

最終的に、少女は救われて、まあアンハッピーではないんだよ、と、何やら前向きな臭いをさせて美しい場面で終わるんだが、植木を土に植えたからって、なんだっていうのさー!?と、泣きながら思ったものさ。
触ると手が切れそうな映画を撮っていたリュック・ベッソン。「いつから普通になったんだろう?」と、思っていた、『フィフス・エレメント』?『TAXY』?
今なら思い当たる。『レオン』から、すでに始まっていたのよ。
泣いたけどなあ。

レジェンド・オブ・ゾロ

「家族が一番大切」って言うヒーローって、かっこいいかぁ?
マスク・オブ・ゾロ』の続編という事で、前作でめでたくハッピーエンドになったゾロとエレナのその後の物語なんで、仕方ないっちゃーそうなんだが。
バンデラスは歳食って、ゾロ役にはちょっとお腹がキツそうだけど(笑)相変わらず、と言うよりますますセクシーなんだけど。
でも私、「家族が一番」と言う男にアピールを感じないのよ。
近頃のアメリカ映画がつまらない一因だと思う。
(あ、『スパイキッズ』はいいの、子供が主役だから。)

緊張感の無いお約束とは言え、アクションシーンはバラエティ豊富で楽しい。
男も女も牧師も子供も馬も犬までも、戦う戦う。
妻役キャサリン・ゼタ・ジョーンズも、相変わらず美人だけど、前作に比べすっかり貫禄を付けて「肝っ玉母さん」状態、広い背中が頼もしい。格闘場面の顔が、手加減無しでマジ怖い(好きだ、こういう女優…)。
息子(10歳くらい?)の曲芸みたいなアクションとか、どうやったの!?って場面は山盛り沢山。
悪役の伯爵役の俳優が、ちょいクリストファー・リーヴ似で泣けたわ。
これがまた、惚れた弱味とは言え、けっこう間抜けで人がいいんだわ。
まあ、勧善懲悪の観点からすれば、仕方ないんだけどね、ちょっと可哀想になっちゃった。

マスク物の常とは言え、どー見てもバンデラスなのに誰も正体に気付かない、まではいいとして、父が息子を抱きしめても気付かれないのって、まずくないか!?
家庭崩壊してまっせ、パパ。

レッスン! 

思えば『フォー・ルームス』でタンゴを踊りまくるアントニオ・バンデラス様を見た日から、こんな映画を待っていた、かも。

原題は『Take the lead』なかなか素敵なタイトルだと思うのだけれど、邦題は『レッスン!』と色気が足りませんな。

Hip hopしか知らないNY貧困層の公立高校の生徒達に、天然ボケとも言える紳士ぶりのダンス教師が社交ダンスを教えます。
一言で言うと、「セクシーな金八先生」イヤかも…(笑)。
ダンス好きに言わせると、バンデラスの踊りはうまくないんだそうだけど、色気に目が眩んだせいか私的には全然OK!そりゃあ、中盤一緒にタンゴを踊るカティア・ヴァーシラスちゃんには遠く及ばない、というのは素人目にも分かったけどさ、そりゃ相手が悪すぎますわ。この人ホンマモンのトップダンサーだもん。でもってすごい美人!きゃ〜。

バンデラス演じるピエール・デュレイン氏は、実在の人物。
実話に遠慮があったのか、ストーリーはやや平板な印象もあったものの、生徒達の切ない情況や、様々なダンス・シーン、雑踏や社交ダンス会場の様子等、見所は多数。
デュレイン氏の口からは、生きる勇気を与えてくれる素敵な言葉がいっぱい飛び出します。
彼の視線の先々で、いちいち微妙に女性がとろとろしてるのも可笑しいやら頷けるやら(笑)。

惜しむらくは、ラストのワルツが案外盛り上がらず、場末のチークダンスみたいになっちゃった事。あの娘は顔で選ばれたのかな?確かに可愛かったけど、大事な所なのに、もったいなかった。
それでもまあ、「勝つ事が全てじゃないよ」という悪くない集結で、若手に場を譲って散歩に出ちゃうピエール先生もまた素敵(まだ目が眩んでいる…)。
じっさい、『デスペラード』のワイルドさからは考えられない紳士ぶり。コート姿が特にステキ。

うーん、やっぱりバンデラス様、一生付いて行きます♡

レッド・ドラゴン 


羊たちの沈黙』は、文句無しの傑作だった。
続編である『ハンニバル』は、その傑作の燃えカスみたいな出来だった。
3作目の『レッド・ドラゴン』は、そんな訳で、「もういいよお〜」と、内心思いつつ、でもやっぱり気になって(原作も面白かったし)いささか引き気味で観始めたのだけど。
どーしてなかなか、面白かった。
『羊たち…』の、ち密さには及ばないけれど、なかなか香り高い良い映画ではありませんか。

今回は、天才的変態のレクター博士が事実上ワキにまわり、連続一家惨殺事件の犯人である「噛み付き魔」こと「D」の人生に迫っている。
そして、レクターを捕らえたものの、精神的打撃が大きくて引退した捜査官の人生がからむ。
レクター博士は、相変わらず気味の悪い笑みを浮かべて人肉を客にふるまったりしているが、あくまでも味付け程度の役回り。
私の当初の「もういいよ〜」の大部分は、アンソニー・ホプキンスのレクターの変態ぶりに対してだったから、これはありがたかったんだが、熱狂的レクター支持者には、物足りないかも知れません、だんぜん『羊たち…』の彼の方がキテるもん。

先に原作を読んでしまっていたので、自分の中でイメージがあったんだけど、ちょっと違った。と言うか、訂正が入った感じかな。
「醜貌恐怖」というのは心の病気で、多くはむしろ美男美女の部類だと本で読んだ事がある。
小説を読んで、もの凄いものを想像していた私は、色男の「D」に面喰らってしまった。
でも物語が進むうちに、ああそうなんだと納得していく。ナルシズムの双児の兄弟のようなところがあるのね。
エドワード・ノートンの元捜査官は(あまり好みじゃなくて残念)、まあそれなりに、正義漢一本槍でない危うい部分が出ていてよかったかも。
そして「D」の盲目の恋人は、まさしくイメージピッタリ!エミリー・ワトソンとやら初めて観る女優で、他の役はどうなのか、興味しんしんだけど、取りあえず今回は知らない顔だったのも幸いして、すごい存在感、説得力。

殺人の手口とかはまたまたエグイけど、悲しい物語だったりもするのよね。
混乱する「D」の気持ち、分かるような気がして来るから恐ろしい。
そして、人の痛みが分かるという事が、攻撃所も見えてしまう事になるというオチの悲しさ。
あ、なんか悲しくなって来ちゃった…。

レディ・イン・ザ・ウォーター

なんか行き当たりばったりで子供に聞かせる寝物語みたいな内容、と思ったら、ビンゴ!だったみたい。
クレジットの後に、娘達へお話しするからどーこーというメッセージが出た。
…そう言えば、かのスティーヴン・キングも、自分の息子のためにヘンテコなファンタジー小説を書いていたっけ。
パパに甘えて嬉しい寝ぼけた子供と、汗水垂らして稼いだお金で観に来てる観客を一緒にしないでいただきたい。

プロットは悪くないと思うのよ。雰囲気もいい。
でも、本当にそれだけ
なんか、天辺で掛け違えたボタンがそのままズレ込んで最後まで行っちゃった感じで、しかも着てみたら服自体がダサいデザインで仕立てもザツ、みたいな。
生地の手触りは良かったんだけどなあ、と言ったところで、そんな服気に入る人はいないでしょ、普通。

シャマラン監督と言えば、名作『シックス・センス』が忘れ難く、しかし考えてみれば、その後期待に添った試しが無い(笑)。
中でも今回、特筆すべきユルさかも。
“仕事"と呼べるんかい、こんなモン人前に出して。と、言いたくなる行き当たりばったりの出来で、お金も手間も掛けてないのがありありと見える。
やたら濃い〜顔したインド系青年が、おいしい役をやってると思ったらシャラマンさん本人だったし(爆)、もう公私混同はなはだし

でも、それでも嫌いじゃないの、この手触り。
また観ちゃうんだろうなぁ(タメ息)。

レミーのおいしいレストラン 

ネズミのおいしいレストラン

じゃ、なくてー。

お待ちかねのPixarの新作。
まあ、CGに関しては、今さら何を見せられても驚かないので……、でも、やっぱり凄い。
ネズミです。思った以上にネズミ。走り方とかリアルで。
リアルとマンガの間を、見事に走り抜けてる。
でもって、舞台はパリ。
あまりに鮮明な背景画に、思いもよらずパリ観光気分。お得♪
さらにさらに、扱うのはレストラン、フランス料理。
もうもう、お料理がいちいち美味しそうで、キレイで、いい匂いが漂って来そう。……生殺し(笑)。

ストーリーは、さすがのPixarらしく、いっぱい笑ってハラハラして、ちょっぴり泣けて。
惜しむらくは、私の頭の片隅で「なにネズ公に泣かされてんだ、ワタシ」って気持ちが最後まで消えなかった事、かな。
やっぱネズミがシェフって、無理でしょう。

そして、圧倒的な画面の完成度を一歩離れて冷静に考えてみると、ストーリー的にもちょっと詰めが甘いと言うか、語り切った感が薄い。(あくまでPixar作品にしては、というレベルの話だけれど)
ネズミのキャラクターはいいと思うの、でも、相棒と言うか人間の主人公のはずのリングイニが、魅力的とは言い難いんだもの。
気弱でナサケナイ男の子が主役でもいいけれど、結局最後まで成長しないってのはいかがなモノかと。
美人で有能な彼女はなぜか戻って来るけど、他の従業員は怒って出て行ってそれっきり?え?ネズミと仲良くやるからそれでいいやって?
へん
Pixarは大好きなので批判したくはないけど、近頃のアメリカ映画ってオタク仕様に片寄り過ぎだよ。プンプン。

肩肘張らず自分らしく生きるのが幸せ、という主張は分からないではないけれど、女の私としては、ダメな男がダメなまま他人(じゃなく他ネズミ)にもたれかかって幸せ、なんて結末じゃ、全然楽しくないです。
そうそう、原題にもなってる『ラタトゥイユ』が効果を発揮したのも、なぜリングイニがひらめいたのか分からなかったし、やっぱりちょっと消化不良(Pixarにしては)。
内容的には、葛藤するネズミ、不器用な恋、心の原風景、と、色々材料を揃えているんだけど、やっぱり詰めが甘い。

とは言え、画面の美しさ、動作や表情の豊かさ(特にネズミ)、スピード感、質感、とにかくスゴイの一言だし、欠点はあっても見てる間は殆ど感じさせない勢いと楽しい雰囲気がある映画。

でもやっぱり、ネズミの作った料理は食べたくないな。

*PixrのCGアニメ作品『トイ・ストーリーズ1、2』『Mr.インクレディブル』『ファインディング・ニモ』『モンスターズ インク』

恋愛小説家  

ジャック・ニコルソンて、スゴイ顔だよね。
正直、彼が主演のラブストーリーって…どーなの!?と、あまり気は進まなかったんだけど。
恋愛モノで主役(特に異性)が好みじゃないのって、キツイでしょ、どんないい内容でも、思い入れしにくい。
だから、あまりノレないかなー、とは思ったんだけど。
意外にも、とても楽しめた。この映画がラブストーリー一本立てではなかったからだろう。

ニコルソン演じる主人公メルビンは、偏屈で毒舌な神経症の小説家。
この「恋愛小説家」という職業が、そんなに生かされた脚本でもなかったんだけど、彼の性格の悪さ(と言うか屈折ぶり)を分かり易く見せるという点では有効でした。
そんな「ヤな奴」が、中年の子持ちウェイトレスに恋をする。
神経症だから、並大抵の執着ぶりではなく、まさに「君がいなきゃダメなんだ」状態、なんだけど、なにしろイヤな奴なので最初は相手にされない。
この、イヤな奴ぶりが、ものすごく面白い。
サスガ!へんな顔でもスターなのがうなずける。

これだけではまあまあの映画なんだけど、メルビンの隣にはゲイの画家が住んでいて(当然と言うか仲は悪い、だってメルビンがとても失礼だから)、そいつが小さな犬を飼っている。
私は犬は大きいのが好きで、小型の室内犬ってイマイチなんだけど、こいつは、もう、なんと言うか、カワイイ
ものすごく表情豊かで、誰よりも(そう、ニコルソンよりも!)芸達者。助演女優賞(メスらしい)は彼女に決まり!なんであった。
メルビンはイヤな奴なので、最初は犬にも辛く当たるが、なりゆきで預かる事になるや、アッという間にメロメロになってしまって、犬もまた彼によく懐く。この様子が実に微笑ましい。
犬を愛する事で、人からも優しい眼差しを注がれたりしては、やっぱりいつもの毒舌をまき散らしたり。
アップダウンを繰り返すうちに、不器用で病気だけど、悪い奴じゃないのかも、なんて思えて来てしまう。
そしてそういう発見は、とっても心をあったかくしてくれるんだよね。

物語りは、メルビンとウェイトレスのキャロル(ヘレン・ハント、地味な顔。こちらも恋愛モノの主役にはギリギリのところか?)の恋、犬との愛、ゲイの画家の挫折と再生、キャロルの病弱な子供、メルビンと画家そしてキャロルの友情と、いろんな要素が混じり合って、無理無く進んでスッキリ終わる。
派手な場面は無いけれど、エピソード一つ一つに説得力があって、生き生きしたキャラクター、きちんと錬られた脚本は、観ていてとても心地良い。

そして一番の説得力は、犬がカワイイって事なんだけど。 犬を愛する人々も、ね。

ローズ・イン・タイドランド11/29

大好きテリー・ギリアム監督。
比較的小振りな『ブラザース・グリム』をやったばかりなので、しばらく見られないものと思っていたら、『グリム』の合間に好き勝手やってたようです(笑)。
劇場で見た予告編は、ギリアムワールド大全開!で、期待値上がる上がる。

本当は劇場に行きたかったが、諸事情あって人様のお宅でDVD鑑賞。
いやぁ。覚悟はしてたが居心地の悪い映画で、かなりきまり悪い思いをしたわ。押しかけて付き合わせてしまって、ごめんなさい。
こんな方向に世間にケンカ売ってどーする。頼むよ、ギリアム監督。と言っても何をどう頼んでいいのか分からないんだけど。
やってる事は児童虐待だし、グロいし不謹慎だし大人みんなクズだし、もうどうしようもない状況なんだが、少女の目を通すその世界観は清冽でイノセント、美しい。

主演の少女がもう、素晴らしい。
撮影当時10歳だったというジョデル・フェルランドは、可愛いと言うより、もはや美人。演出なのか演技力なのか、はたまた"地"なのか、えらい色っぽいし。
おそらく望みうる最高の主演女優だったろう。複雑な境遇のため、妙に子供っぽい部分と大人びた部分が混在する、孤独な少女を、完璧な美しさと危うさ、そして太々しさすらも備えて、何の無理も危な気も感じさせず演じ切っている。
そして相変わらずの、画面が斜めったりひっくり返ったり(今回飛翔するキャラは出ないものの)、地に足が付かないカメラワークは、いともたやすくいつもの悪夢に導いてくれる。
ワイエスの絵画を彷彿とさせる、金色の草原。だだっ広い閉鎖空間を、伝説の妖怪のごとく駆け抜ける列車。ポツンと取り残された、白いペンキの廃屋。
頭だけのバービー人形との会話もシュールだが、"バケーション"に出掛けたまま帰らないパパに対する扱いも相当にシュールだ。この子の頭の中はどうなっているのか…ああなっているんだけど(笑)。

人によっては退屈だったり、気分が悪くなったり、というのもいつもの事。
私は何でか、むしろいつも元気をもらってしまう、人前では多少気まずい思いはするけれど。何と言うか、吐き出し切って悪いモノが残らない、という感じかな?
珍しく原作付きだが、そもそも原作者がギリアムありきで書いたと聞いて納得の内容。実は原作小説も読んでギリアムリスペクトは良く分かったけれど、映画化によって掛かったバイアスはよりギリアム的で楽しいものだった。

ちなみに原題でもある"タイドランド(Tideland)"とは"砂州"の事、だとか。"境界"の意味もあるらしい。
その名の通り、危うい(物理的にも、精神的にも)境界線上に一人放り出された少女の行動と心情を描く本作は、その描写は見事なものの、物語性は軽いかもしれない。
『ブラジル』よりはイマジネーションが薄く、『フィッシャーキング』程はドラマ性が無い、という事で、ギリアムの中で超オススメには入らないが、嫌いでなければ一見の価値はアリ。

…しかしジェフ・ブリッジス、哀れ…(笑)。

ロード・オブ・ザ・リング1.2.3

言わずと知れた、アカデミー賞総ナメの超大作。
なんだけどさあ。
んー、普通。

時々、自分はある種の感受性が、ストンと抜け落ちているのかな、と思う時があって、商売(マンガ描き)的には損かも、なんて不安になる。
スゴイのは分かるのよ、物凄く手間もお金もかかってるし、壮大な内容だし、異形の物が闊歩する楽しい世界だし………………、でもさ。
合わない物は、仕方が無いわね。

あれだけの長い旅を共にして(と、いう気分にもならなかったが)、旅の終わりになんの感慨も無い。別れ難い人もいない。
かろうじて、魔法使いのガンダルフじーさんと、朴訥な忠義者のサムがチャーミングだったけど。
あと、さすがと言うか、ゴラム、すごいんですけどね、動きとか、表情。
実際に俳優が演技したのを撮影してCGにした…って、かつてディズニーがアニメーションでやった手口。マンガチックな絵のアニメだと、キメ細かいけどムダな動きも多いかな、という印象だったけど、CGだとそういう印象は無かったな。
なにしろ、いちいちホビットはCGな訳だし(私的には「本物」出演の『ウィロー』のがイイ…って気もするが)、巨大ゾウやら翼龍やら、タコの化け物やら、楽しい(はずの)物はいっぱい登場する。
一応オトコマエ系も各種取り揃えてあるし。
でもねえ、ワクワクしないの、私。
なんか薄味。
心に残る美しい絵とか、何度も見返したい楽しいシーンとか、本当に無くて、ただなるようになっていく。
あ、レゴラスがスケボーに乗ってゾウを倒すシーン、ちょっとおもしろかったかな。

と、言う訳で、私的には努力賞しかあげられない超大作なのでした。

追記:キング・コング』も全くダメでした。どうもピーター・ジャクソン監督とは相性悪いみたい。キライ〜!

ローマの休日

みんながだーい好きなオードリー・ヘプバーン。
確かにどの映画もオシャレで綺麗だけど、傑作と呼べるのはこの一本だと、私は思う。反論はあると思うけど、私は思う。

甘く切ない、なんてお決まりの言い方があるけれど、まさに甘くて切ない物語だ。そして、とても美しい。
王女様がコッソリ抜け出して恋に落ちる、という設定もナイスなら、この映画がハリウッドデビューのヘプバーンも、後の洗練ぶりは無いものの、可愛らしく上品で、天真爛漫な王女役にピッタリだ。恋の相手が新聞記者というのも泣かせるし、ローマの街は美しく、楽しくて、きっと誰もが憧れる。(実際21世紀を迎えた今この時でさえ、スペイン広場前のジェラート屋は大繁盛で、大量の女性達がアン王女ごっこをやっているに違いない。)真実の口のシーンも、いったいどれだけの観光客が真似した事か。あのオードリーは、本当に可愛かったなあ。ショートカットに白いブラウス姿のウエストの細さは、ほとんど衝撃だった。
こうして振り返ると、本当に見どころ満載の大サービス企画だと、改めて思わされる。

まあ、それやこれや踏まえた上で。
この映画の価値は、ストイシズムだ、と思う。
最初にTVで観た時は、私はまだ幼くて、恋する二人がただ別れて行くのが不満だった。
少し大人に近付いてこの映画に再会した時、そうではないのだと分かった。
王女は記者会見で、「ローマが最高」と、キッパリ宣言する。
こんなアイラブユーもあったんだ。
オードリーのキラキラした大きな瞳が、感動に拍車を掛ける。
すんなりと伸びた細い背筋の、なんと美しい事か。

男女が惹かれ合うと簡単にベッドに行ってしまう御時世では、こんな美しい恋はあり得ない。したがって、甘さも切なさも、無い。
みんな、少しは我慢しなさい!!

ところで、私が一番お気に入りのシーンは、王女が家出前、スカートの下でコッソリ靴を脱いでいて、転がす所です。

ローマの休日(byココアちゃん)

オードリー・ヘップパーンが髪の毛を切ったシーン、中学生(くらいだったか)の時見た私はあのショートヘアがあまりに!!あまりにひどい!!と思ったでした。
アン王女泣き出すかと思ったくらい。あの前髪、ださい、ださすぎる...。今見ても...う〜ん、美人だからかろうじて 見られるけどさあ。まあ、映画があんまりステキだったからそのうちどうでもよくなったんでした。
私が一番好きなシーンは船上パーティーでアン王女が追手のど頭にギターで一撃するところかな。
あれだけ美しいオードリーは自分の顔がらくだに似てる、って悩んでいたんですと。いやはや...世界一美しいらくだ。
そんならくだに私もなりたい。なんちゃって。

ロスト イン トランスレーション

うっわー、ムカツクッ!!!
なんざんしょ、この不快感。

かつて取材で行った男性ストリップのステージで、白人ダンサーの首根っこにすがりつくボディコン追っかけ姉ちゃんを見た時の屈辱感(笑)。
こんなモンが世界中にバラまかれて、しかも結構な賞までもらってる(監督はラズベリー女優・笑)なんて、国辱!と言いたくなる。
言っておくが私は断じて国粋主義者ではないし、ハンサムな白人男性は大好きだ。(威張る事でもないか。)

「日本」という国に対する扱いだけではない。
ストーリーは空虚で、すっかり退屈してしまったし、ビル・マーレイはくたびれたオヤジ以外の何者でもなく、唯一可愛い顔の主演女優は冒頭シーンが(意味も無く)ケツのアップという悲惨さ。

各国では日本語の部分は字幕ナシで上映されたという。
それを見て、観客は大受けだったと。
なんじゃあそりゃあ。
昔読んだ遠藤周作の小説を思い出した。
ヨーロッパに留学した黒人が、故国の踊りを見せろと言われて歌い踊るのを見て白人達が大笑いする、というシーン。(そう、今皆が大好きな、あのリズムの原形だ!)
ラストシーンは、日本語どころか英語すらも誰にも聞き取れない。(あれはきっと「君の名前は事務所に通しておくから」とかなんとか言ってたに違い無い。)
こんなん見せられて「オッシャレー」とか言われても、なあ。
しかも日本でも、わりと好評だったと言う話。にわかには信じられなかったが、すぐに思い当たった。
この映画に出て来るような日本人が、きっと本当にたくさんいるのだ、残念ながら。

こんな無礼千万な映画を撮った監督は、「親日家」を名乗ってはばからないのだそうだ。
きっとパパも、ベトナム大好きだったんでしょうよ。 

ロッキー

シルベスタ・スタローンは好きじゃない。
顔も声もイヤだし(筋肉質の男は好きだけど)、それでも何本か映画を観て、何度もイヤ〜な思いをさせられた。
容姿だけではない、存在をアピールするもの自体が、多分嫌いなのだ、と思う。

で、『ロッキー』だけど、この場合最初の『ロッキー』に限ると、唯一の例外であり、その後私が何度もイヤな目に合っても、スタローンの映画を切り捨てられなかった原因でもある、いいんだか迷惑なんだか分からない存在だ。

ストーリーは、とってもマッスグなスポ根物語。
金も無く、コネも無く、ただ若さと情熱だけをたのみに、無茶な挑戦をする主人公。コトがボクシングなだけに、下手をすれば命取りだ。
彼を愛して支えるヒロイン。一心同体のトレーナー。遥か高みに輝くライバル。道具立ては上々。仕上げを御覧じろ。

まず主人公。スタローンの出世作だから、私も初めて見る俳優だった。
アホそう。品が無い。いいカラダはしているが、そりゃあチャンピオンのアポロと並べば見劣りするもはなはだしい。
そしてヒロイン。よほど予算が無かったのかなーと、本気で思ってしまったような美しくない女優だった。名前は知ってるけど可哀想だから書かない。
そんな二人が、公衆の面前、血みどろの汗まみれで互いの名を叫び、抱き合うラストシーン。
困った事に、いや、だからこそ、なのか、大感動だったのだ、本当に。

あの頃、ロッキーの真似をして、シャドウボクシングをしながら走ったり、生卵を飲んだりした少年は多かったはず。
かく言う私も恥ずかしながら、ジョギングを始めてしまいました(赤面)。
『ロッキー』という映画には、そして一人黙々とトレーニングを積み重ねるロッキーの姿には、確かにそういう力があった。

仕事でホサれた時、失恋した時、人間関係がこじれた時。
ひとしきり落ち込んで、立ち上がる時、頭の後ろから、『ロッキー』のテーマ曲が流れて来る。
それだけではないけれど、ただそれだけでも、この映画は本当に、凄い。

ロビン・フッド 5/1

いやぁ〜。
久々にたぎる映画を見て大満足!
リドリー・スコット監督に、ラッセル・クロウ、ケイト・ブランシェット、そしてウィリアム・ハートと、私好み過ぎるラインナップ。
でも、期待に違わずどころか応えて余りある満足度だった。
実は某スパの休憩室のビデオサービスで見たんだけど、劇場に行かなかったのを本当に後悔したわ。

リドリー・スコットとラッセル・クロウと言えば、名作『グラディエイター』を思い出すけど、今回のはだいぶ趣きが違う。
映像美は相変わらず重厚で、森の緑は瑞々しく中世の薄暗い建物内も雰囲気タップリ、土や草の香りが漂って来そうな臨場感。そしてまた城壁は燃える(笑)。
けど内容は、軽めと言うか明るめで、ユーモラスなやり取りも多く、『グラディエイター』と比べてしまうと物足りない向きも多い、かも。
私はコメディ好きなんで、楽しかったです。クロウvs.ブランシェットの「大人のツンデレ合戦」は、微笑ましくも色っぽくて見応えがあったし。ブランシェット演ずるマリアンがカワイイのなんの。
そして相変わらず、時代物らしい大仰さと重厚さは見ててとても心地良い。なんでしょうか、このリドリー的重厚感。いったいドコが違うんだろう?

所謂ロビン・フッドの義賊的英雄イメージを期待すると違うんだけど、戦闘シーンは当然のごとく迫力満点だし、ロクスリー卿には胸潰れる思いだし、獅子心王もジョン王もタック神父もいい味出してたし。どんどん顔がズタボロになってく悪役とか(笑)。
なんと2時間20分の長丁場、全然飽きる事無く見てしまった。
…最後、マリアンの甲冑姿はかっこよかったけど、うーん。ヒロインに戦闘参加させなくてもいいのでは?その前の藁小屋のシーンとかでもう充分だと思うんだけど、そうもいかないのかなぁ。
元々武術の達人設定とかならいいけど、ちょっと無理矢理と言うか唐突で安っぽい印象だったな。

それにしても、ラッセル・クロウはなぜかっこいいんだろう???
ジャガイモみたいな顔だよね…体つきだって、マッチョと言うよりズングリ気味だし。
でも、彼が動いて、喋って、闘ってるのを見てると、本当に映画のたびに、毎回惚れてしまいますがな。本当に!
声がいいよね、すごく。あとなんだろう、あの銀幕から漂う…フェロモン!?
悔しい程毎回、やられっぱなしなんですけど、私。

ロング エンゲージメント

おフランス映画への苦手意識も薄らいだ今日この頃。
と、思って、楽しかった『アメリ』の監督と主演女優というんで観てみましたが。
う〜、冒頭かなりキツイ、放り出しそうになった。
でも、その苦行を乗り越えたらどんどん引き込まれて、結局最初をシッカリ押さえておかないとダメだったと気付いてもう一度観たわ。
そういう意味で、無駄が無くきちんと造られた映画。
でも、観客への要求水準が高いのよ(これだからおフランスは…)。

しかし塹壕のシーンは強烈だった。
サスガは『エイリアン4』の監督だわ。
純愛映画であり、サスペンス映画でもあるんだけど、そこいらの反戦映画よりよっぽど「戦争」についてクリアなイメージがあって、私は心から「戦争ってイヤだなぁ」って思った。

長く苦しい冒頭の人物配置説明が終わると、『アメリ』的自己満足ワールドがしばし展開。オドレイ・トトゥの顔は、やっぱりちょっと狂気スレスレで怖い。
でも、この緊張感がいいのかも。
若い二人の恋物語に、だんだん引き込まれて行った。
相手役の男の子が本当に若く瑞々しくて、トトゥさんどーなの?という気はしたけど(笑)、灯台を舞台に妄想を展開する少女時代には笑ったし共感し、そしてそういう魂をトトゥの丸過ぎる瞳の中に見る気がして、やはり適役だなと納得したりして。
でもってそのヒロインの魂が、皆が死んだと言う恋人を探し続ける執念になるのだわね。

中盤突然、ジョディー・フォスターが登場、なんの説明も無しに(当たり前だ)フランス語を操るのにたまげた。
しかしサスガの貫禄、出番は少ないけど鮮烈な印象。
このあたりから物語はサスペンス色を強くして来て、だんだん前傾姿勢になる自分(笑)。
結末はだいたい見えるし、終わってしまえばちょっとした仕掛けでしかないんだが、とてもミステリアスに格調高く荷ほどきをして見せてくれて、充分に楽しめた。
出だしの入りにくさを差し引いても、観る価値はあった、と思う。

でも、これから観る人がいたら、そしてその人が白人オヤジの顔の見分けとフランス風の名前の区別に絶対の自信があるのでなければ、メモ帖片手に観る事をオススメするな。