ナチュラブ・日記パート１２

ナチュラブ・日記　　　　Ｐart　１２

　Part １（その1～9）　ナチュラブ代表が観た逢坂さんの政治観　Part ２（その10～22） 衆議院選挙
　Part ３（その23～36）　選挙後雑感、永田町での逢坂議員　　　Part ４（その36～48）靖国神社「遊就館」レポート
　Part ５（その49～60）エリート教育　　　　　　　　　　　　　Part ６（その61～69）負の連鎖・「元気の種コレクション」
　 Part ７（その70～77）真っ当な生き方のススメ　　　　　　　　　Part ８（その78～83）風（全５回）、６１年目の夏に
　Part ９（その84～88）　政治家と有権者　　　　　　　　　　　　　Part 10（その89～101）風の盆。　宿題を抱えたままで
　Part 11（その102～108）　ともにアジアに生きる（姜尚中さんの講演記）
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ナチュラブ・日記　その１１５（2007年1月28日号）
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　　　　　　　　　　　　　　　　「私たちの宿題～ともにアジアに生きる～」　（１３）

　「ともにアジアに生きる」と題した連続シンポジウム特別編(2005年8月19日実施)の記録を、
昨年末から1月17日にかけて数回に分けて全編公開終了しましたが、いかがでしたでしょう？
真綿で体中を包まれるような、息遣いが苦しくなるような右傾化が急速に目立つようになってきた今こそ、
この記録を私の責任で皆さまに公開しなければと考えた結果でしたが・・。

「内容はとても重い」というのが、どなたにも共通する感想ではないでしょうか。

でも、姜尚中・東大教授、上田文雄・札幌市長、ならびに逢坂誠二・衆議院議員は揃って、
この重いテーマを真摯に取り上げながらも各々持ち前のユーモアを散りばめて語られ、
会場の参加者の笑いを誘っていましたっけ・・・
その雰囲気が、私たちに希望を持たせたのは明らかでした。

特に姜さんが、
「日本人は潔癖主義というか生真面目すぎます」と言うようなことをおっしゃっていましたが、
日本人が“ともに生きる”アジアの人々と、
これまで過去の日本の行為のせいでできた負の関係を正の関係に作り直していく行程に、
そのご指摘を当てはめてみると
「ちょっとやってみてダメだからと直ぐ諦めることはない。
唯一無二の方法と信じたことが失敗したら、それでお終いと考えがちですが、
気を取り直して視点を変えてやり直してみる、それが外れたら、また違うやり方で試してみる。
そういう姿勢や努力が日本人に必要でしょう」ということでしょう。

姜さんは、おっしゃった、
「北朝鮮の今の惨状を何とか内側から変えられるように導いていくということです。
私の言葉で言うと、北朝鮮を平和的に羽交い締めにするんですね。
彼らが動けないように平和的に羽交い締めにして、
10年20年かけて、北朝鮮の社会が少しずつ中国型の改革開放に向かうように、
まわりが誘導していくということです。韓国は、そこに命運をかけていると思います。」と。

これが在日韓国人である姜さんが、私たち日本人に向けたメッセーッジでした。
そして、日本が潔癖主義に走りすぎずに、
アジアの最大危機である北朝鮮問題に取り組んで欲しいというのが姜さんの願いです。
もちろん日本人だけでなく、北朝鮮とともにアジアの国々に生きる人々に向けての願いですが、
特に60年前までは今の北朝鮮と似たような体制だった日本こそ北朝鮮を一番理解できるのだから、
姜さんのアジアの平和構築構想の悲願　“東北アジア共同の家”つくりに、
リーダーシップを発揮してほしいとおっしゃったと私は理解しています。
そして、これが姜さんから私たちに課せられた“宿題”だったのですね。

繰り返しますが　姜さんからいただいた宿題を、
「諦めない。でも、一途に突っ走るのではなく緩急をつけて続ける。」
という気持ちでゆっくり解いていけばよいのだと、私は解釈しています。
国際舞台では、六者協議も切れそうになりながら絶対に切れず、
いつも仕切りなおしをしながら、多分ほんの少しずつでも進んでいるのですから。

さて今回、ナチュラブ日記に特別編の記録を公開するに当たって、
今一度読み直し、新たなヴァージョンに組み替えましたが、
やはりかなりの作業量の上、集中力と緊張感で張りつめ、年頭から疲れてしまいました。
それで、しばらく、ナチュラブ日記はお休みいたします。

ところで、つい最近まで札幌の街は“白い雪”がほとんど見当たらず、
排ガスで薄汚れた茶っぽい雪の小山が、道路の両端に見られる程度でした。
“亥年は荒れる”というけれど、年明けには雪ならぬ雨が降ったりして、荒れると言うより単なる異変のような。
暖かい冬は、北国に住む住人には有り難い異変に思われますが、
年々歳々寒さが苦手になってくる私でさえ、このような雪の少ない(少なすぎる？)冬は、
簡単に地球温暖化の影響と言っていいものかどうかちょっと不安になっていました。
ま、このまま春が来るはずはなく、そのうちどかっと降るでしょうと、言っている間に25日頃からちゃんと雪になりまして、
その後も断続的に降り続き、やっと雪の街になりました。
やれやれ。これで安心？！

ということで・・・
近いうちに、また！

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ナチュラブ・日記　その１１４（2007年1月17日号）
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　　　　　　　　　　　　　　　　「私たちの宿題～ともにアジアに生きる～」　（１２）

　　-------　【第二部】　鼎談（姜尚中・東大教授、上田文雄・札幌市長、逢坂誠二・ニセコ町長）　⑤/5　-------
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（鼎談日：2005年8月19日）
　（鼎談、下段の続き）
　（この回で鼎談終了です）

【上田】
先ほど、姜さんは、他者に写る自画像を発見していないという精神構造と、おっしゃったように思いますけど、
そのところをもう少し、お話しいただければと思います。

先日、ＮＨＫテレビで、姜さんも出演された靖国問題に関する討論番組を拝見しました。
大変興味深く、新たな認識を持つことができましたが、ある方が、東京裁判について議論されました。

「東京裁判は不当な裁判ではあるが、日本人はその結果を受け入れ、
絞首刑という形で何人かの尊い命を連合軍に捧げたわけだから、
日本はそれで責任を果たしたのだ。戦争責任の話はそれで終わったんだ。
その後、日本は独立国家になったんだから、日本独自の考え方で充分だ。」
あるいは
「あの当時のＡＢＣＤ包囲網をぶち破るのには、戦争しか方法がなかったんだ。
自衛戦争だったということも許されるんだ」
という、これは極論ですけれども、比較的感情的に荒っぽい論理で語られるふしがあります。
そして、それはわりとわかりやすい議論といいますか・・・

【姜】
わかりやすいですね。

【上田】
そういうところが悩みの多いところかな、と思います。
それと自分たちが、あるいは自分の同胞が犯したことを、
他者がどう見るのかということに対する洞察力の少なさということとオーバーラップさせますと、
本来のかなり重い部分に行き着くと思いますので、
そこのあたりを、もう少しご展開いただければありがたいです。

【姜】
例えば韓国や朝鮮半島は、日本から、中国ほど被害は受けてないわけです。
亡くなった方も比較的少ないですから。
ただ、あの戦争に日本の兵士として狩り出されて、一緒に戦った。

僕の父親の弟は、’70年の大阪万博のときに戦後初めて日本に来ました。
ある本にも書きましたけれど、
彼は、東大法学部を出て戦争中は熊本県で憲兵になって、かなり上のクラスにいました。
当時熊本では三菱重工が戦闘機を作っていたので、その秘密護持のための憲兵でした。

そういう人たちは対日協力者であるから、韓国ではかえって生きられないんですね。
これはたとえば、フランスのビシー政権、つまりドイツに対する傀儡政権と同じで、
パリが解放されたときに、それまでドイツ人と関係を持ったフランス女性を残らず引っ張り出して、
髪の毛を全部剃ったり殺したりしたわけですね。
それ以後も対独協力者は、ずっとフランスの中でいろんな追求にあってきたわけです。
その人たちのナチスドイツに対する感情は、非常に複雑ですね。
それが何十年も続いたわけですから、非常に複雑なわけですね。

それで、話を戻しますと、
父の弟が’70年に来日した際、靖国神社の近くまで行きたいというので一緒に行きましたけれど、
そういう人たちにとっては、一言では言えない非情に複雑な気持ちがあったと思うんです。
ですから、なんというか、その根幹にあるものというのは、やっぱり国は過ちを犯すことがある、ということですね。
国は過ちを犯すことがあるし国は決して無謬ではない、ちょっと難しく言うと。
負けても勝っても国家がある。
国家の栄光と共に歩むのが国民だという言い方があるならば、
国が過ちを犯したときは、国民は、いったいどうしたらいいんだろう、ということです。

戦後の日本と戦前の日本の根本的な違いは、
戦後、「国は過ちを犯すことがある」ということを学んだということだと思うんですね。

ハンセン病がひとつの例ですけれど、隔離政策は、これは過ちだったわけですね。
最近になって国は初めてそのことを認めました。
戦後もう五十何年たって、初めて認めたわけです。
熊本には日本最大のハンセン病患者収容所がありますけれども、
ハンセン病による患者たちは、五十数年にわたって、言葉が発せられなかったわけですね。
それを、ようやく国が過ちと認めた。
だから、国は過ちを犯し……まあ水俣病も、そうなわけですよ。
結局、国や行政の誤りを、チッソ水俣と共に認めるために何十年もかかったわけですよね。

だから、「日本という国家」対「その被害者である外国の人」という言い方をすると、
排外主義的な考え方がすぐ出てきちゃうわけですけれど、
では、「日本という国家」対「日本の国民」ではどうだったか、と考えてみて欲しい。

たとえば、皆さんにとって今一番リアルな問題として、アスベストの問題がありますよね。
アスベストから国民の生命を守るために、
環境行政が数十年のあいだ、もう少し機能していたならば、違っていたはずですよね。
すると、やっぱり「国の誤ち」というものを認めさせなきゃいけない。
このことのために、何年もかかるわけです。

ところが、水俣の例がよくあらわしているように、
「水俣病はチッソ水俣が垂れ流していた窒素水銀が原因である」、
ということを会社が認めて被害者に賠償金が出る時点で、
被害者は周りからかなりひどい迫害を受けました。
お金儲けのために水俣病になっているんじゃないか、と。

「国の誤ち」を前にしたとき、日本の国民は、
国に向かい合うのではなく、国民の内部、国民同士で、
こういう関係が生じたりこういう見方をされることが意外と多いのではないでしょうか。

翻って、戦争を考えてみますと、
戦争というのはなるほど対外戦争ですから、被害者はまず外にいるわけです。
しかし、日本国民も被害にあったわけですよね。
広島・長崎においてのアメリカの原爆投下は、戦勝国であれ明らかに人道に反していたと僕は思いますね。
日本政府は、どこまで被害者の側に立って、アメリカに対してもの申してきたか。
あるいは沖縄の基地もそうです。

そういうふうに考えていくと、
国というものをベースにして、「日本国民」対「日本国民以外」と分けるということは、
いかに不合理か、分かっていくと思うんです。

戦後60年の歩みの中で日本は、国が無謬ではないということを学んだし、
それが累々たるものとして積み重ねられてきたわけですよね。
北海道には炭坑も多いと思いますけれども、僕も三井三池炭坑の近くにいましたから、
国のエネルギー政策転換で、石炭産業から石油産業に移るときに、
国の政策のために地域社会が陥没していったのを見ていて、国というものは無謬ではないと思いました。

その一点に絞って問題を見ていけば、
日本国内でハンセン病もあった、水俣もあった、公害もあったじゃないか、と。
だったら過去の戦争をめぐって、日本の国家が過ちを犯すことだってあり得るだろうと思います。
そういうふうに僕は類推できるんじゃないかと思いますね。

僕は、日本の国民はあまりにもおとなしいんじゃないかと思います。
自分たちの被害ということについて、結局はそれに甘んじている。

東京大空襲でもあれだけ非戦闘員が死にました。それなのになぜ軍人軍属だけが恩給をもらうのか。
軍人軍属だけが戦争に協力したのか。そうじゃない。
一般の国民だって、あの戦争に協力しなかったかというと、決してそんなことはない。
国のために命をなげうって協力して、その結果多くが犠牲になっているわけですよね。
それなのに・・・と、ちょっと感じますけれども。

【上田】
法律のことわざの中に「国は悪をなさず」というのがあります。
結局、国家がいかに不都合なことをやらかしても国家が賠償するというという概念がない、
そういう時代が確かにあったわけですね。
その後、国家の無謬性を否定する・国家も誤利を犯すこともあるということが、
近代国家になる過程で確立されてきました。

日本国憲法では、まさにその前文のところで、そのことがしっかり語られて、
国が過ちを犯さないようにするためには民主主義は必要だと書かれています。
三権分立は、もっと強固な形で必要だということを、
政治機構としても統治の機構としても保障していくということでやってきたわけですけれども、
それを支えていく肝心の日本国民の感覚が、やはり我慢強さに欠けるんじゃないか。
あるいは諦めがよいと言いますか、仕方ないね、北海道弁で言うと「しゃあないなぁ」「仕方ないさ」。

誰かに任せておけば何とかなるさという感覚に見られるように、
民主主義を担いうる主体としての市民像というものが、
まだまだ発達途上にあると言うことでしょうか、日本では。
発展途上の過程にあるところの悩みが、この60年の今日を作ってきたのではないかなぁと思うのです。

ですから、私たちが今やらなければならないこと、
逢坂さんも私も自治体の首長として、行政でやらなければならないことは、
「一人ひとりの市民が、この国を支えていくんだ、作っていく主体なんだ」
という決意をみんなが持てるようにするための政治をしていくことです。
いかにリアリティを持った政治にしてくかということがとても大事な仕事だなと思います。

小泉さんのように、大舞台で大芝居を打つのは実際難しいんですけれども、
大芝居だけが面白いわけじゃないよ、と、
みんなが参加していただけるような、参加を通じて自分たちのまちづくりをしながら、
国のありようというものを考えることができるような市民に私たちがなれるようにしていかなければならないのかなぁと、
そんなことを思いました。

【逢坂】
問題の質は、少し違うのですけれど、
企業が事故を起こしてユーザーの方が亡くなったりするという事件は、年に何度か必ずありますね。
そのときに会社が記者会見をして責任者が出てきて
「もう今後は二度と起こしません。万全を尽くします。」と頭を下げるわけですよ。
でも私は、本当に二度と起きないと思っているのだろうか、
実はまた起きる可能性はあるかもしれない、
しかし、とりあえずその場では「万全」といわざるを得ないんじゃないかと思います。
不可能だと分っていても、とりあえず表面上の無理を強いる体質がやはり問題なんじゃないかと思います。

さっき、国が過ちを犯すと言ったのですが、
過ちが起きることを前提にして仕組みを作るというのが、本当の危機管理なのですよね。
ところがそこのところをずっと日本の国は、マスクをしてくるわけですねえ。
過ちは起きないんだ、と。起きないことが前提なんだ、とやるところが、問題なのです。
しかも、とりあえず絶対事故や不正を起こさないと言わせることと、謝罪するというプロセスを経なければ
世間がその問題解決を容認しないというか、許さないという場面が、もう枚挙にいとまがないほどあるんですね。

でも、私は企業の記者会見などを見ていて、本当にそうだろうかと疑っている。
あの人たちは、心から本当にそう信じて謝っているだろうか、と。
いや、もしかしたら、また起きるかもしれないなぁと思っているんじゃないか。
そこを正直に言って、だからこういう対策をとっていますというのが正しいやり方なんだろう、と。
でもそれは、実は危機管理という面だけではなくて、
国家全体に対して通底しているようなところがあるような気が、私はしているのです。どんなもんでしょうかねぇ。

え、もう時間ですか？　(注：主催者側から、そろそろ終了時刻ですとの合図あり)
では、姜さん、最後にどんなことでもかまいませんので、お願いします。

【姜】
今日は、よく話しましたから・・・。

おそらく戦後70年というのはないんじゃないかと思うんですよ。
僕はそういう点で、戦後60年のこの年を、一つの目途にして動いてみるだけ動いてみようと思いました。
おそらく戦後70年はないと思います。
そのときには違う呼び名で、この時間を呼んでいるのではないかなと思います。
だから、戦後60年、還暦になりましたけれど、これは“まだ戦後”という言い方の節目の最後ではないかなと。

あと10年経ったときに、どうなっているか。
僕の場合、戦後50年で書いたことが戦後60年の今話していることと同じ、
つまり10年前に話したことがそのまま通用しているんですね。
ということは、あまり良くなっていない（笑）。

すると、戦後70年という言葉がなくなったときに、
日本の国民は、自分たちの時代を何によって理解しようとしているのか。
これに興味があります。やはり知りたい。

戦後70年という言葉が依然として生きている場合には、
やはり「戦後」というものに対するある思いというのは、まだ命脈を保っていると思うんですけれど、
戦後70年という言葉がないとした場合に、どういう呼び名で時代を読んでいるか。
多分西暦ではないと思いますから、どうなるんでしょうか。
そのときに時代がどう変わっているかを知るバロメーターになるのではないでしょうか。

時間をどう呼ぶか、は、その国民の歴史意識がはっきりとあらわれてくるわけですから、
そういう点では戦後は、60年で終わりではないかと僕自身は考えています。
戦後70年がないとして、今から10年後を、それはどういう呼び名で皆さんが理解しているかどうか。
まあ“戦後70年”がもしあるときは、もう一回お呼びいただけば来ますから、呼んでください。（笑）

【司会】
姜さん、上田さん、逢坂さん、ありがとうございました。
時間があれば、いつまでもお聴きしたいと思う内容の議論でした。
戦後60年の今年が、「戦後」と言う時間で理解する最後ではないかと言う姜さんのご指摘を、
私たちはしっかりと受け止めて、考えていかなければならないと思います。
では、姜さん、上田さん、ならびに逢坂さんを、もう一度大きな拍手でお送りしましょう。ありがとうございました。

（大きな拍手中、3人がご降壇）

　　（以上で鼎談を終了します。５回に分けて掲載しました）

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ナチュラブ・日記　その１１３（2007年1月16日号）
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　　　　　　　　　　　　　　　　「私たちの宿題～ともにアジアに生きる～」　（１１）

　　-------　【第二部】　鼎談（姜尚中・東大教授、上田文雄・札幌市長、逢坂誠二・ニセコ町長）　④/5　-------
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（鼎談日：2005年8月19日）
　（鼎談、下段の続き）

【上田】
もっと浅いところの話なのかもしれませんけれども、
“日の丸・君が代”の問題が、私が市長になってからの大議論になり、
その際に“日の丸”に敬礼をすることと“君が代”を歌うことが、
愛国心の現われだと言われる方がたくさんいらっしゃいました。

私は、それは内心の自由の問題があるという理由で、
自治体が主催する事業で、“日の丸”に敬礼し“君が代”を歌うことを自治体が参加者に強制するのは
異議がありますと申し上げました。
その議論の過程で、いろんなところでこの話がなされたわけでありますが、
私自身は愛国主義者ですということをきちっと申し上げております。

国を愛するということ。あるいは同胞を愛するということ。
この気持ちは、一番大事なところですから、そこのところが世界人類みんな同じで、
これは崇高な理想としてはいいのですけれども、
現実の生活の中で私たちが、生まれた国や同じ文化を共有してきた同国人を大切だと思う、
その気持ちをベースに持たなきゃならないし持っていて当然だと私は思いますし、
それを否定するものではありません。

しかし、“日の丸”に敬礼し“君が代”を歌うと言う形で実践することによって、
愛国心を持っていることを証明しなければならないとか、
あるいはそれさえしていればＯＫで、愛国者だとみなされる。
逆に、それをしなければ非愛国的な、昔で言えば非国民ということになる。
それでは、まことに生きづらい社会になると申し上げてきました。

愛国党の方を責めるわけではありませんけれども、
愛国党が愛国心について、本当に極端な形で愛国主義というものを言うことで
愛国心をおかしくしてしまったということが歴史的にあるわけですね。
ですから私たちは、戦前に私たちの国が犯した過ちをしっかり反省した上で、
本当の真の愛国者とならなければなりません。
自分の気持ちを素直に表現できる民主主義的な社会、人を慮る（おもんぱかる）社会になるための動機を、
そこに求めるのはよいのではないかと思います。

【逢坂】
まさにねじれてしまったんですね。きちんと正面から議論できないんですよね。
このことを口にすると、本当にすぐまわりを見わたして、
ちょっと危なくないかなと思ってしまう、そんな雰囲気になっているんですね。
どうしたらいいんでしょうね、なんていうことを、こう簡単に訊いていいものではないのかもしれないのですが。

【姜】
日露戦争に反対した内村鑑三は少数派だったと思います。
だから、今おっしゃったような意味でのスコット・リッター的な愛国心というのは、
やっぱり少数者であることを敢えて選ぶという現状です。
そのあたりは非常に難しくて、今さっき逢坂さんが機微とおっしゃったけれども、
そのニュアンスをはき違えると、非常に誤解を与えると思うのですけれど。

【逢坂】
分水嶺、どっちに転ぶかで大幅に違うんですよね。

【姜】
そうですよね。ただ、たとえば、村上春樹の文学は好きな人たくさんいますけれど、
そこを見ると、“私”とか“僕”という一人称がある。
それから“人類”というか、“地球人”というか、そういう言葉はあるけれど、
“民族”とか“国民”とか“宗教”、こういうものが戦後日本の中から、ある時期から無くなっていったような気がする。
冷戦崩壊後、一方ではそのグローバリズムが世界を席巻しているわけですけれども、
それは、どこの誰兵衛であれ、グローバルな市場経済で、誰でもアクターになれると。
ところが実際には宗教と民族と国民の問題が現実政治を動かしている面もあるわけで、
そういう面に対して非常に無菌状態にあったんじゃないかと思いますね。

【逢坂】
無菌状態。

【姜】
うん。やっぱりそういうものを考えないようにしてきたというか、そういうものから無縁であるというような。
それが、一挙にその波をかぶったときに、意外と反対側にぶれてしまっていると思いますね。
だから僕は、先ほど北朝鮮と韓国との話をしましたけれど、社会には右もいて左もいていいと思うんです。
それは当然のことで、考え方が一つにまとまるということは、なかなかできるものではない。
ただ問題は、それが極端にぶれることですね。
いつそれがぶれたかということがわからないように、極端にぶれてしまう。
それが、僕はやっぱり問題なんじゃないかと思います。
だから、ぶれないようにするためには、どうしたらいいのかと。
右よりの人であれ左よりの人であれ、あまりぶれていない人と話すと、ある程度通じるんですね。

【会場】
（笑）

【上田】
私もそう思いますね。あまりぶれない人となら安心して話できますよね。
ぶれると信頼を基礎にして話していいかどうかわからなくなっちゃうっていうくらいですからねぇ。

【姜】
まったくそうですね。

【逢坂】
その意味で言いますと、今私は、今のこの日本が何かぶれているのではないかという気がするんですがね。
それで、ちょっとこれは極論なのかもしれないですが、いわゆる日本の皇室ですね。
あまり詳しくは知りませんけれども、例えば今の皇太子の話、あるいは今の天皇の話を聞きますと、
実はセンターよりも今の天皇は左寄りなんじゃないかって……今の社会の中で、ですよ。
そんな印象すら受けることがあるんですが、
それは実は社会全体が、ちょっと右に寄ってきたためじゃないかという気がするんです。ちょっと極論でしょうか。

【姜】
それは確か、金子君(注：金子　勝・慶応義塾大学経済学部教授)も、どこかで論説で書いていましたねぇ。

【会場】
（笑）

【上田】
最近、直接聞きましたから（笑）。
　　（注：2005年7月30日にニセコ町で開催した当連続シンポジウム第6章の講師が、金子勝・慶応義塾大学教授でしたが、
　　　　今夜と同じ内容の皇室の話題が出ました。）

【姜】
ただ、今日の会場の皆さんから質問をいただきましたが、
基本的には靖国問題の本質は、東京裁判及びあの戦争の評価にあると思う。
基本的には東京裁判は勝者の裁きで、問題があったことは事実なんです。
ニュルンベルク裁判の人道への罪、平和への罪を引用しています。
東京の市ヶ谷の旧東京裁判の跡に行かれた人はほとんどいないんじゃないかと思いますが、
行かれると分かるのですが、あの裁判の作り方は全部ニュルンベルク裁判の通りにやれとＧＨＱから命令があって、
その通りにしたのですね。
たとえば、共同謀議というようなことも果たして成り立つかどうか。
ただ問題は、あの裁判は基本的には昭和天皇を訴追させない、
昭和天皇を戦犯から外すことが最大の眼目だったと思います。
その限りにおいては、それは連合国側と日本側との間に、あうんの呼吸があったわけですね。

ですから、Ａ級戦犯が絞首刑になったとき、東条はもちろん、
広田弘毅のような非軍人だった政治家も極刑になっているわけですね。
これは、城山三郎さんの「落日燃ゆ」の中に出ていますが、これはおかしいと。
しかし彼らは、誰のためにあるいは何のために、今、絞首刑台に立つのかということは理解していたと思う。
そこに彼らの最後の意味を見いだしたと思うのですね。

だから、今、靖国参拝を進めている側の人たちが、
「東京裁判はけしからん。これは、すべての罪を日本にかぶせるものである。
あれは自存自衛の戦争だった。解放戦争であった。」と言いだした場合には、
なぜ天皇の免責というか訴追が防げたのかということを、最初に戻ってパンドラの箱を開けちゃうわけですね。

日本国民が東京裁判をどう思ったかは別にして、受け入れたと思うんですよ。
ですから、サンフランシスコ講和条約の第１１条でしたか、
この判決を（英語の表現ではＪｕｄｇｍｅｎｔｓと複数になっていますが）受け入れると。
国がそういうふうに明言したということは、それがなければ日本は国際社会に復帰できなかったからですね。

だから、今、靖国を掲げるなら、連合国ともう一回戦争するのかということになるわけですね。
下手をしたら、アメリカでも民主党政権になれば、靖国参拝という日本の主張はおかしいと言い出すかもしれない。
今、共和党のブッシュ政権なので、日米は、ある一面ではハネムーンになっていますけれど。
でもクリントン政権のような民主党政権になった場合には、中韓だけではすまなくなる。
やっぱり僕は、日本の国にとって何も良いことではないと思います。
ですから、私自身は靖国の分祀は反対でした。
信教の自由がありますから、国が勝手に、あれせいこれせいというのは間違いです。
合祀自体が間違っていたにしても今それを分祀せよというのは、国が一宗教法人に介入することですから反対でした。

でも逆説的なのですが、東条家が分祀を拒んでいることによって靖国問題がずうっと続いているわけなんです。
今の日本で、Ａ級戦犯の分祀が実現されたらもう問題がないというので、靖国問題は終わってしまうわけです。

でも、そうではないと思うんですね。
誰でも肉親の情がありますから、肉親を追悼するのは当たり前です。
しかし靖国問題の本質というのは、
その追悼が、本質的に戦争を解放戦争として肯定すると周知することになる、という点です。

ですから靖国神社は、一面ではそういうことを内外に明らかにする、
まあこんなことを言うと語弊がありますけれど、
今の靖国神社は、ある種の神道の色彩と国家神道の色彩を併せ持つテーマパークになっていうるわけですよね、
悪い言い方を使うと。
それは神社にいる御魂のことではなくて、遊就館がそうですね。
ですから将来アメリカをも巻き込んだ問題になる可能性がないとは言えない。
そういう意味で、私はやめた方がいいと思います。
今やめた方がいいということは、今というのにこだわるっていう方がいらっしゃいますけど、
今はという意味はどのくらいですかって言うと、“今”を延ばせばいいわけですから・・

【会場】
（笑）

【姜】
今は、やはり小泉さんが選挙の前に、靖国神社に行く可能性はあります。当然あると思います。
これは、公明党との連携があまり頼りにならなくなれば、
日本遺族会をはじめとする、つまり郵政に造反した人々が比較的靖国に参拝の人が多いですから、
そうするとやはり日本遺族会等々の固い地盤が必要になってくるので、
彼は8月15日は避けましたけれど,わからないと思います、まだ。
どういうふうに靖国参拝するか、やや憂慮されますね。

　（次号へ続く）

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ナチュラブ・日記　その１１２（2007年1月12日号）
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　　　　　　　　　　　　　　　　「私たちの宿題～ともにアジアに生きる～」　（１０）

　　-------　【第二部】　鼎談（姜尚中・東大教授、上田文雄・札幌市長、逢坂誠二・ニセコ町長）　③/5　-------
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（鼎談日：2005年8月19日）
　（鼎談、下段の続き）

【姜】
まだそれは明らかにされてないので。
だから、僕がよく日本の戦争責任の問題を言うときは、
決してそれは絶対正義対絶対悪で言っているのではなくて、韓国が抱えている影の部分があるわけですが、
それをどうやって、自分たちが切開できるのかという問題意識があります。これは重大な問題ですね。
そういう点で、やっぱり軍はない方がいいに決まっていると僕は思う。
しかし、韓国が日本と根本的に違うのは、
日本では銀座を迷彩色の軍服姿の人が大勢で歩いていれば、
通行人はよけて通るし、不気味だと思うと思うはずですが、
ソウルを歩いていると、兵役帰り、あるいは休みで、そういう人たちが10人20人ぞろぞろしていても、
みんなたじろがないわけですね。

【上田＆逢坂】
（はぁはぁと頷く）

【姜】
これは、やっぱり韓国では、軍というものが市民社会の中に完全に着床した証拠だと思う。
一つの時代が終わった後の、良い意味で言うと、自信ですよ。
ところが日本は、なんでしょうか、ある種のツベルクリン陽性反応っていうか……

【会場】
（笑）

【姜】
つまり、いったん陽性になったら、もう結核だというような。
だから陰性であることが理想状態だし、それが普通だと思っていましたから、
ちょっとでも陽性になったとたんに、もうだめだという、それを僕は潔癖主義だと受けたのですね。
ドイツに行ったときもそうでしたね。
西ドイツにもドイツ国防軍があります。彼らの狙いは、良心的兵役拒否というのがありますけれども。
西ドイツは日本と比べるとねじれていて、徴兵制を敷いてＮＡＴＯに入って、
そしてコソボ問題では、ドイツの国防軍はＮＡＴＯの外側に人道的介入をしたわけですね。
しかし歴史の問題では、かなり日本よりは徹底している。

日本は、歴史の問題でいろいろ紛争になりながら平和憲法を持っている。徴兵制もない。
そして自衛隊は、いわば軍隊ではないという位置づけだったわけですね。
英語で、Ｓｅｌｆ　Ｄｅｆｅｎｓｅ　Ｆｏｒｃｅ　となっていますから。
だから、そのねじれが、ずうっと解けないまま今になっているわけですね。
統一ドイツを脅威だと見なす国は、今のところヨーロッパにはあまり無いと思います。
ところが、日本が現在の憲法を変えるというのは、非常に脅威だという国があるのは事実ですね、残念ながら。
これから、それをどう考えていったらいいだろうかと思います。

【逢坂】
市長、いかがですか。今の話を聞いて。

【上田】
ドイツが、あれだけの戦争を二度に渡って遂り、そしてその後まだ軍隊も持っているわけですけれど、
それでも周囲に脅威に思われない。多くの国から批判というのはそう多くはない。
あるいはかえって評価されているといいますか、そういうふうな状況にある。

一方、アジアでは、日本が過去の戦争で犯したアジア太平洋に対しての批判があり、
あるいは日本が平和憲法を変えたらどうなるんだろうという不安で、アジアの国々が日本を脅威としてみる。

ドイツと日本のその違いは、どうしたところにあるのかということになると、やはり戦争に対する責任の問題ですね。
北東アジアを中心とした国に対する日本の配慮とか、その後の外交だとか、
日本の果たすべき責任がどんどん薄められているというか、
しっかり過去を反省し周囲の国々と新しい関係を構築して行こうとする決意が見られないと言いますか、
そんなところにやっぱり日本が周囲の国々の信頼を勝ち得ていないものがあるからだろうなと、私は思っております。

だから、先ほどのお話の中にもありましたけれど、
日本はＯＥＣＤを通じて、あれだけ莫大なお金をかけて世界に貢献をしているはずなのに、
ちっとも世界から評価されない・信用されてない、ということもありますし、
そしてまた世界に向けて平和に対するメッセージをちゃんと発してきたか、
我々日本国民自身はもちろん、日本政府がそれをやってきたかと、思わざるを得ないような状況にある。

これは、日米安保の中で、日本がアメリカの顔色を窺がいながら、
アメリカの戦略を理解し協力をするという形がずっと続いてきたこととの関係で
そうならざるを得なかったという解説もあるかもしれません。
しかし、戦争によってあれだけ大きい犠牲を払って平和憲法を獲得したと私は考えています。
でも、そうやって獲得したのにもかかわらず、
その平和憲法を大事にしていこうという気概が肝心の日本人にどうも見られないことに対して、
諸外国、特に日本軍の被害にあった、特にアジア国々の人々は、やはり納得をしない。
日本人が、そう思われているのは、当然だと私も思っております。

【逢坂】
今年は戦後60年で、60と言うと還暦ですね。
日本の暦で言うと、本当に一廻りしたという年なわけで、
実は今年の8月15日というのは、すごく重たい8月15日に本来なるべきだったと思うんですね。
多分、この60年の間に、日本の国が何をしてきたのかとか、あるいはどうすべきだったのかとか、
あるいは日本の側のアジアの仲間の国たちが日本をどう見ているのかとか、
そういうことがもっと総括されて然るべきだったと私は思うんですよ。

ところが、まあ郵政解散でそれが一気に吹き飛んでしまって、
このせっかくの節目の60年が、このままないがしろにされていいのかなあという気持ちは持っています。
だから、この60年の立ち振る舞いが、ドイツと違う今の状況を日本に作り出しているんだろうなあと感じます。
そのあたり、どうですか。

【姜】
そうでしょうねぇ。その原因はどこにあるのかなぁというのを考えていたとき、ちょうどイラク戦争の直前に、
東大にスコット・リッターという、アメリカの海兵隊上がりで国連のイラク大量破壊兵器査察をやった人が来ました。
まだ若い人でした。彼は、イラクには大量破壊兵器はないと断言しました。
どうしてかと言うと、95パーセント大量破壊兵器はないからだ、と。
サリンとか毒ガスは、3年間そのまま放置しておくと劣化して使えない、と。
3年前我々は徹底して査察をしたから断言できる、と。だから、この戦争には反対する、と。

そのときに、その理由を言う前に彼は、自分はパトリオットだと言ったんです。つまり、自分は愛国者だ、と。
これは、敢えて愛郷心と言いませんが、そのときは雰囲気としてみんなは驚きました。
自分は愛国であるがゆえに、この戦争に反対する。

じゃあ何に対する愛国かというと、アメリカ憲法に対する愛国だと言うわけです。
つまり自分は、アメリカ憲法に対して忠誠を誓うパトリオットであるがゆえに、この戦争には反対する、と。

おそらく、戦後日本の中で一番何がねじれていたかというと、
愛国ということを前面に出して、反戦非戦平和ということがなかなか言えなかったことだと思います。
それで、たとえば日清戦争のときには、クリスチャンの内村鑑三は、その戦争を支持したんですが、
日露戦争のときには非戦論を展開しましたね。
そのときには、自分はイエズスとジャパンを愛するがゆえにこの戦争に反対する、という理由でした。

左翼とかリベラルな人たちの中にも、愛国を反米という形で表現した人もいたと思うのですが、
結局、愛国というのは、それこそ愛国党という政党もかつてあったように、
日本では街宣車の専売特許になっちゃったわけです。

【会場】
（笑）

【姜】
護憲派が、これをいわゆる愛国だという形でとって返して問題を投げかけられなかった。
僕は将来的には日本国憲法は人類に通じていると思うんですね。
ある意味では、将来の地球的な人類が目指すべき理想を日本の国民が、
先ほど上田市長がおっしゃったように、獲得したと思うんです、膨大な犠牲を払って。

ただ、そこに向かうためには、いったんは、そういうナショナリズムの非常に難しい問題を避けずに、
僕は引き受けても良かったんではないかと思うんですね。
愛国、つまりナショナリズムを最後のよりどころにするというのではなくて、
内村のように、愛国であるが故に非戦を貫く、と。だからこそ自分は憲法への忠誠心を持つ、と。
そうすると、韓国の愛国にも中国の愛国にも場合によっては対立するけれども、
他者というものがいるということがはっきりと自覚できるわけです。

韓国の場合も、実は、民主化は愛国によって成り立った面があるわけです。
誰が本当の愛国主義者なのか。軍部なのか。いや、自分たちが愛国だ、ということで民主化運動があった。
だから韓国の場合には、民主化運動をやる学生やいろいろな人々が、うんざりするほど国旗を前面に立てますよね。
では日本で、反戦平和運動で、日章旗を持てるかというと、できないと思うんです、なかなか。

それが、戦後日本のある種のねじれですね。
これが僕は、先ほど上田先生がおっしゃったような、いわゆる内向きの護憲派がだんだんと力を失って行き、
逆に今の非常に野郎時代的な愛国というものがのさばっている、その原因なのかなぁと。

【逢坂】
非常に微妙だけど重要な話で、その機微みたいなものを我々はつかまなきゃいけないんですよね。

　（次号へ続く）

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ナチュラブ・日記　その１１１（2007年1月11日号）
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　　　　　　　　　　　　　　　　「私たちの宿題～ともにアジアに生きる～」　（９）

　　-------　【第二部】　鼎談（姜尚中・東大教授、上田文雄・札幌市長、逢坂誠二・ニセコ町長）　②/5　-------
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（鼎談日：2005年8月19日）
　（鼎談、下段の続き）

【逢坂】
日本人は、割と「話せばわかる」みたいに思っているというイメージですか、簡単に言うと。
そうでもないんですか。
要するに、韓国の皆さんは、相手を変えるにはずいぶん時間がかかるという認識を持っている。

【姜】
はい。

【逢坂】
逆に、日本人の方は、姜さんの目から見て、それはどんな認識なんでしょうか。

【姜】
沖縄だけは同じ日本といってもまったく違いましたが、
沖縄以外の日本では、米軍基地があったりしても、やっぱり日本の国民の大半はかなり平和的な状態にいました。
また、自民党の草案の中には、自衛隊を国防軍にせよという動きも出ていますけれども、
今、日韓で根本的に違うのは、兵役のある・なしです。
兵役があるということは否応無しに軍隊があるわけで、
韓国ではシビリアンコントロールを生かすために、30年以上かかりました。

日本の場合は、かつて制服組が東条英機のように内閣を組閣するということがありましたけれど、
今は、憲法上も制服経験の人は一応閣内には入れないことになっているわけです。
でも、韓国の場合には、軍人が全部政治家になっちゃったわけです。
それを押し戻して、シビリアンコントロールを徹底させないと。
やっぱり軍は、悪い言い方をすると市民社会の異物だと思うんです。
どうやって異物をもつ市民社会をコントロールするのか。

日本は敗戦後、平和憲法を与えられたから、昔からそうだったように錯覚しているわけです。
そうじゃないと思いますね。
日本の軍部の暴走を考えていくと、もちろん統帥権の問題はありましたけれど、
結局シビリアンコントロールを社会に着床させるためには、かなり困難な作業が必要だと思います。

ところが日本は、軍閥が無くなって、軍隊がなくなっちゃったものだから、そこがすっと抜けちゃったと思います。
韓国の場合を見ると、今でも学生たちは、兵器を握っていますから。
我々は銃の動かし方を知らないわけですよね。
日本で銃の動かし方知っているのは、警察官と、それこそ、その筋の人……

【会場】
（笑）

【姜】
銃に実弾を込めて実際ぶっ放してみるっていうことを経ずに生涯を送るというのは、
普通はかたぎの人ですよね。
普通はそうだと思うんです。

【逢坂】
私も、かたぎですので。（笑）

【姜】
（笑）　向こうは、そうではありませんから。　
そうすると、もう少しリアリスティックな判断が要る。
つまり軍があるけれども、それをコントロールしないと暴走する。

【上田＆逢坂】
（なるほど、というように頷く）

【姜】
そのためには、韓国では、制服組が暴走しないようにと日々普通の国民が常に注意をしてきたという
長い長い歴史があったと思うんですね。

【逢坂】
なるほど。昨年と一昨年韓国行きましたときに、韓国人の女性の通訳が
「日本の男の顔は、見たらすぐわかる」って言うんですよね。みんな、府抜けていると。

【姜＆上田＆会場】
（笑）

【逢坂】
彼女は、マルシアみたいにすごいかわいい女の子で、東京に2年か3年いて日本語を覚えて、通訳をしてくれたんですね。
その彼女が「日本人の男はすぐわかる」と言うのでなぜかと尋ねたら、彼女が一つあげたのが、やっぱり兵役の問題でしたね。

【姜】
うーん。

【逢坂】
韓国人の男の人はみんな、ある一定の年齢になったら、軍隊に行くという覚悟みたいなものがあるし、
そこでの生活を経てくることで顔つきが変わっているような気がすると、彼女は簡単に説明してくれました。
まあそんな単純なものではないのかもしれないのですけれども、
韓国と日本の“徴兵制”という差は、ある種大きいなぁというふうに思いますね。
上田市長、どう思いますか。

【上田】
そうですね。韓国の人とは“ガタイ”が違うというのか、
遠くから見ていて、日本人と韓国人の違いがよくわかるという言われ方をしたこともありますよね。
また会話するときに、すぐ同意をしてしまうというか、そういう体質が日本人はあると。

【逢坂】
すぐ同意しちゃう、はい、はいと。

【上田】
要するに、日本人はすぐ頷いてしまうんですね。
だから遠くから見ていると、うん、うんと言っているのは、だいたい日本人だ、と。

【会場】
（笑）

【上田】
しかし、韓国の人は、そうじゃないぞ、と。

【逢坂】
ぴっとしているぞ、と。

【上田】
そうですね。韓国人は決して安易な同意はしないと書いてある本も読んだことがありますけれども、
私も何となくそんな感じがします。
日本人は、うん、うんという割には、それは見てくれの同意であって真剣に考えてないというか・・。
あるいは先ほど言われたような、真の和解や解決を求めての議論をする体質、
あるいはそういう技術をあまり身につけてない。
その反面、表面的には同意をしていくといいますか、平和をとりつくろうといいますか、
そういうところが本質的に問題があるのかなと思いますね。

【姜】
そうですね。この間、ＮＨＫでハングル講座を担当していた人と話しているときに、
なぜ韓流ブームが起きたのかという話になりました。
そうしたら、今日ここにも同じ質問があったのですが（会場の皆さまからいただいた質問票）、
右派の人は、
「韓国には軍隊があるじゃないか。だから、日本の国民ももっとしゃきっとするために、
そういう意味で韓国に目を向けだした」と言います。
で、左派の人は、
「言ってみれば韓国は民主化があって、ポストモダンじゃなくて近代真っ盛りのような国だ」と言います。

日本で腑抜けなのは軍隊がないからだというふうな言い方をすると、韓国の人は実は困ると言いますね、意外にも。
やっぱり軍隊はない方がいいと。　
それはそうですよ。僕は大学2年の1972年に韓国に行ったときに、
徴兵先の軍で、かなりいじめられて鼓膜が破れた大学生の親戚がいましたねぇ。
だから、確かに軍隊内部では非常にいろいろな私的な制裁、影の部分があるわけですよね。

しかも韓国は、ベトナムでめちゃくちゃなことをやりましたから。
韓国では、単に日本の戦時期のいろいろな問題を告発をするだけではなくて、
韓国がベトナムでやったことについても、今いろいろな市民の声は上がっていますね。
ハンギョレ新聞も、その特集をやったりしていますけれど、
韓国の軍隊がベトナムでやったことについては、アメリカと同じように、
韓国内にベトナムシンドロームがあるんですね、まだ本当は。

【逢坂】
はぁ、なるほど。

　（次号へ続く）

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ナチュラブ・日記　その１１０（2007年1月10日号）
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　　　　　　　　　　　　　　　　「私たちの宿題～ともにアジアに生きる～」　（８）

　　　　今回から、標記について、2005年8月19日に開催した連続シンポジウム特別編
　　　　　「ともにアジアに生きる」の第二部を連載いたします。
　　　　なお、当日の第一部終了後に、会場参加者の皆さまから質問票を回収し、
　　　　姜尚中・東大教授、上田文雄・札幌市長、逢坂誠二・ニセコ町長（当時）に、お目を通していただき、
　　　　それを踏まえての第二部です。
　　　　また、姜教授のご発言部分は引き続き、私・上野伸子の責任編集ですが、
　　　　上田市長並びに逢坂町長のご発言部分は、ご本人の校正済みです。

　　-------　【第二部】　鼎談（姜尚中・東大教授、上田文雄・札幌市長、逢坂誠二・ニセコ町長）　①/5　-------
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（鼎談日：2005年8月19日）

【司会】　
では、これから第二部の鼎談を始めます。
最初に出席者を紹介いたします。
まず上田文雄・札幌市長です。
次に、第一部でご講演下さった姜尚中・東大教授です。
そして、逢坂誠二・ニセコ町長です。
第二部は、いつものように逢坂町長にコーディネーター役をお願いたしますので、よろしくお願いします。

【逢坂誠二・ニセコ町長（以後、逢坂　】
皆さん、こんばんは。
今日は、駒大苫小牧も準決勝で勝ちましたのでね、心おきなく（会場の大きな拍手）　
ああ、やっぱり拍手は起こるんですね。　
明日は……明日も、もし勝ってしまうと、明後日以降のテレビ番組はきっと変わるんでしょうね。
まあ、でも北海道にとってはいいことだなぁと思います。
　　（注：8月19日のシンポ開催当日は、姜さんへのＨＢＣの取材が入り、22日に放映予定でしたが、
　　優勝した駒大苫小牧の特別番組が組まれ、姜さんの取材の放映は8月23日にずれ込みました。）

北海道は大変だとか特別だとか、いろいろ言っていましたけれども、
駒大の活躍を見ると、特別ではなくて北海道でもやれるんだなぁということを、
目にものを見せてくれたのではないかと思っています。
さて、それはそれとして、私はコーディネーターと紹介されましたが、今夜は、3人の話し手のうちの1人ですので、
あまりたくさん話すという気持ちはございません。3人で分け合って話をしていきたいと思います。
それで、余計なことは言わずに、まず最初に、上田市長からお願いします。

【上田文雄・札幌市長（以後、上田）】
どうもありがとうございます。
この時期に、こうして姜さんのお話を直にお聴きできてよかったと思います。
私たちも、もちろん平和の危機ということを考えて、この連続シンポの前々回に
　（注：2005年5月29日開催の第5章「憲法」）
日本国憲法について私もお話をさせていただきました。
そのときの記録集は、私が多忙ゆえ原稿の校正がまだできないために完成していませんが、
次回(注：2005年11月13日開催の第7章「都会で暮らす・地方で生きる」)までには何とか努力して完成させ、
皆さんのお手に入るようにしたいと思います。
もう少しお待ちください。（注：第5章｢憲法｣の記録集は2005年11月発行）

内向きの平和憲法論といいますか、特に日本の場合に、戦後のこの60年間は、
軍備をどうするか、再軍備をどう阻止していくのかという観点で、
戦争のできない状況をどうやって作っていくのかという国内的な政治の方向づけと、
あるいは先ほどの姜さんのお話ですと、戦争ができないように“平和で羽交い締めにしていく”といいますか、
そういうふうな問題の立て方で議論をしてきたように思います。

今日、姜さんのお話から、やはり戦争はできない・しなくてすむ、そういう社会や地域を作っていく、
そこに平和憲法の思想を実現することが非常に大事なのだという視点を頂戴しました。
内向きの平和憲法ではなくて、平和憲法を我々は獲得をしたのだから、
それをいかに道具化して世界に広めてくのかということをやっていかなければいけない。
私たち日本人は特異な道具を持った、そして特異な思想を持った国民なんだということを感じたわけであります。

そういう意味で、今の北朝鮮の問題でも、とことん相手を追いつめるとどういうことになるかを、
かつてのＡＢＣＤ包囲網下、日本国がどんなことをしたのかを考えれば、
日本国は……日本の国民は、一番よくそのことを理解できるのではないかというお話を頂戴して、同感しました。

もっと卑近な例で言いますと、私は弁護士を25年やっておりましたけれども、
相手をとことん追いつめて逃げ道を無くしてしまいますと、和解はできないわけであります。
また、裁判には勝ったけれども何も得るものはなかった、という悲惨な状況もよくあります。
それは正義を振りかざして俺だけが正しいぞと、どんどん裁判をやって行って、
法律的にも理論的にも完膚無きまでに相手を破り裁判を勝ち取ることができるわけですけれども、
しかし相手方が、それで納得をしないとか、そういう状況の中で多分得るものが多くはないと。
生産的な発展がない。解決手段というのは、
紛争を担当する我々弁護士などの仕事などにも相通ずる課題だと私も思います。

そういう卑近な例と経験例と今国際問題というレベルで、全くレベルが違いますけれども、
しかし考えるところというのは、あるいは人の心とか人間の行動様式とか、そういったものを考えるときには、
同じレベルでものを見ることができるのかなという思いをいたしました。

そういう意味で和解というのは、非常に大事な作業でございます。
広島でも長年にわたって、あれだけの被爆という体験をした人たちが何を考えたかというときに、
キーワードとしては「報復ではなく和解を」という言葉ですね。報復ではなく、和解を。
これが、彼らが運動を世界に向けて発してきたキーワードであろうと思います。
要するに
　「やられたからその分やり返さなければならない。
　やり返すことにはそれなりの正当性はあるかもしれない。
　しかしそれで問題は何も解決しない。
　やはり自分たちと同じ辛く不幸な思いを、どう再生産しないでいくかということが一番の問題だ」
と問いかけてきたのが、広島の、あるいは長崎の、被爆した方々の考え方であると思います。

報復ではなく和解を。で、和解ということの意味合いというものを、外交という場で映し出すと、
平和憲法という我々の持っている大事な宝物を道具として、どうやって有効に使いこなしていくかということが
今日提供された問題だろうと私は思いました。
新たな視点というか、私たちがいつも憲法を語るときには、
平和憲法・平和憲法、自衛隊をどうするかということに比較的論点が集約する方向にありますけれども、
外交の大事さを、今日の姜さんのお話を聞いて非常によく理解できたような思いをいたしました。
まずは、とりあえず、以上です。

【逢坂】
今、上田市長がおっしゃったことは、ある雑誌の中で姜さんが
「日朝問題が解決しない理由は、日本人のある種の忍耐力のない純粋思考が背景にあるんじゃないか」
ということをおっしゃっているのと通ずるのではないですか。
あまりにも物事を純化したがる日本人というのがいるがために、日朝問題が解決しないと。
だから今、上田市長が話されたことも、そういうことに通ずるのではないかなと思うのです。
姜さん、いかがでしょうか。

【姜尚中・東京大学大学院情報学環教授（以後、姜）】
それと、関係あるのは戦後の歴史体験が違うのではないかということです。
というのは、僕は1972年に韓国に行きました、初めて。
1972年の韓国では、北朝鮮と関わり合っている人間を、ちょっと強い言い方をすると要するに殺してもいいんですね。
たとえば、1950年に朝鮮戦争が起きたときに、アメリカではマッカーシズムが吹き荒れた。
マッカーシズムが、なぜアメリカのような民主的な社会で吹き荒れたのかというと、
コミュニスト、つまり“アカ”、“レッズ”は、もう人間じゃないということでした。
コミュニストは、社会からはじき出していいんだ、という理由。
だから、今でいうと、ややテロリストに近いような、そういう烙印を押されたわけですね。

そうすると、韓国の場合、本人だけじゃなくて、その家族・一族が社会的に抹殺されてしまうような状況だったんですね。
そのときの経験は僕には非常に鮮明に印象に残っていましたし、
その分、日本に帰ってくると、ああなんと日本は自由な国なんだろうと感じました。
やっぱり自分は日本に生まれたから、韓国のカルチャーショックみたいなの受けましたねえ。

でも、そのときの印象、つまり異端狩りは鮮明に焼き付いています。
異端をあぶり出す。異端を狩り出す。
そういうものに社会がワンカラーで染まっていくときの怖さというものはあるわけですよ。
結局、冷戦の中で相手側と対峙し合うというのは、そういうことなんだろうなぁと……。

極端に言うと、70年代のはじめに北朝鮮と関係を持っているとなると、
今で言うとオウム真理教と関係がある人ということになるんですね。
そういう烙印を押されたら、その人は普通の社会生活はもうできないわけです。
そういう異端狩りのようなことですよ。50年代のマッカーシズムもそうだったわけですけれど、
だから僕はそこから学んだことは、やっぱり日本は自由な言論があっていいなぁと素朴に思いました。
ただ一方で、だからこそ相手側と、どうやって向き合っていくかで、かなり韓国は苦労したはずですよね。

【上田＆逢坂】
（なるほど、と頷く。）

【姜】
皆さんは『シルミド』という映画を見られたと思うのですが、やったらやり返す、当時の朝鮮半島はそういう状況でした。
それが今こう変わってきたというのは、ちょっと僕も信じられないんですけれど。
だから日本は逆に、先ほど上田市長がおっしゃったように、
和解を求めるよりは大義の下に相手を徹底的に殲滅してもいいとか追い込んでもいいというようなことが通るのは、
お互いにやる・やられるという歴史が、戦後一度もなかったからだと思います。
韓国の場合には、かなり暴力的な時代を経ましたから、
逆に、相手側を変えるためにはどのくらい時間がかかるか、よく知っているわけですよね。
そういう違いがあるのではないかなぁと思います。

　（次号へ続く）

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ナチュラブ・日記　その１０９（2007年1月8日号）
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　「新しい年・2007年の初めに」

　---　今日から、新しい年・2007年のナチュラブ日記を書き始めます　---

ナチュラブ・北海道のホームページを公開したのは、2004年1月8日でした。
あれから、3年経ちました。素直に、感無量です。

またナチュラブ日記は、2005年8月末から書き始めました。
その理由は、ナチュラブ・北海道主催連続シンポジウムのメインパネリストの
お一人であった“逢坂誠二・ニセコ町長”が突然、
2005年9月11日に投開票のあった衆議院議員選挙に立候補されたことに、端を発します。
正直申し上げて、私どもナチュラブ・北海道スタッフは、大変戸惑いました。
今後の連続シンポジウム開催は、どうなるのかとさえ心配になり悩みました。
そして次のように書き出すことで、ナチュラブ・日記を始めたのでした・・・

　『私どもナチュラブ・北海道として、今回の事態にどのように対処するべきか、
　　逡巡いたしましたことを正直に申し上げなければなりません。
　　そこで、今回の選挙と、連続シンポジウムの今後について以下のように決めましたので、ご報告いたします。』

　(この続きは、ナチュラブ日記 Part １　をご参照ください。
　でも、今、気づいたのですが、“逢坂誠二・ニセコ町長”が、ナチュラブ・日記の産みの親だったんですね！
　あれ、まぁ！）

そういうわけで、「ナチュラブ・日記」自体は、書き始めてまだ1年4ヶ月しか経っていませんけれど、
ずいぶんと時間が経過したような・・・つまりは、密度が濃い時間だった、と感じています。
政治状況がそれだけ動き、しかも憂慮される方向に確実にシフトしつつ動いているという実感というか恐怖というか、
そういうものに抗わざるを得なくて、書き進めてきたような、そんな感じです。

さて、昨年末から今年始めにかけても、良いことよりは嫌なことが・・・
年末に元・イラク大統領サダム・フセイン氏の絞首刑が執行されたなど・・・報道されたように思います。
ただ、マスメディアの性質上、善よりは悪が、小よりは大が、日常＆普遍よりは非日常＆特殊が、
情報として流されます。
しかも一方的且つ大量に垂れ流されます。

そういう当たり前の事実に留意してマスメディアの情報を見ながら、自分の生活圏に目を移せば、
マスメディアからの情報とは違う事例が・・・嬉しいこと・面白いこと・希望のもてることなども多いのではないでしょうか。
それを自分の耳目で直接見たり聞いたりして、そして、その中から何を選ぶか、自分で判断しなければいけませんね。

と、つい、お節介な説教口調になったところで、新年のご挨拶を書いていないことに気がつきました。
相変わらずの我がお粗末さは、年が改まっても改まりそうにありません。
ということで、下記に新年のご挨拶を。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
　　皆さま、明けましておめでとうございます。
　　昨年は大変お世話になりました。ありがとうございました。
　　今年、私は還暦を迎えます。
　　立ち止まって来し方を省み、時間をかけて行く末を考える良いチャンス到来です。
　　敢えて“猪突猛進”に逆らって。
　　ただ、この国で私が60年に渡って享受してきた平和な生活を次世代に引き継ぐべく、
　　できる努力はしなければと思います。時を待たずに。
　　どうぞ、今年もよろしくお付き合いくださいませ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
　
では、次回より、「私たちの宿題～ともにアジアに生きる～」シリーズを再開いたします。
連続シンポジウム特別編「ともにアジアに生きる」（2005年8月19日開催）　の第二部を連載しますので、ご期待ください。

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