ナチュラブ・日記パート５

ナチュラブ・日記　　　　Ｐart　５

　Part １（その1～9）　ナチュラブ代表が観た逢坂さんの政治観　Part ２（その10～22） 衆議院選挙
　Part ３（その23～36）　選挙後雑感、永田町での逢坂議員　　　 Part ４（その36～48）靖国神社「遊就館」レポート

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ナチュラブ・日記　その６０（2006年2月17日号）
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　　　　　　　　　　　　　エリート教育　（１１・・最終回）

エリートとは何か。エリート教育とは、何か。
思いつくままに、タイムリーなことも加えて、シリーズ「エリート教育」を連載してきましたが、今回は、その最終回です。
本シリーズを、私の高校入学という私事で書き始めましたので、最後もお許しいただき、私事で収めさせていただきます。

私の息子は、平成9年（1997年）、たまたま私と同じく札幌南高等学校に入学しましたが、
その入学式で、もうびっくりしました。
だって、「君たちは優秀だ」「君たちは素晴らしい」の大合唱だったんですよ、
挨拶に立つ校長先生はじめ、ＰＴＡ会長や来賓といわれる人々の。
君たちを教えられるのは幸せ、という単純なもの以上に、君たちに仕えられて幸運といった感じ。
「そういう君たちが本当のエリートとなる為に、教育を担う歓び」ではなく。
子どもをスポイルする典型的なやり方を、教育現場が率先して担っているとは。
私が入学してから34年目の現実でした。

たかだか、高校入学しただけのまだ15歳の子どもたちに向かって、
まるでご機嫌を取るような卑しい感じさえ漂わせる大人たち（しかも彼らは子どもを教育する立場）に、
私は眩暈さえしましたけっけ・・・
入学試験を受けて合格したから、不合格だった子に比べちょっとだけ学業優秀かも知れないだけでしょう。
「それが、どうした」という覚めた視点が皆無。
その優秀さを、社会に還元していくために今後はどのように学べばよいかという、
大人・先輩としてのメッセージが全く無かった。

付き添いの両親や祖父母
（当時まだ少ないとはいえ、そういう家族ぐるみの参加もありました。
今や大学、入社式にまで家族そろってという笑えないシーンが登場してきている芽が
この頃から出てきていた証拠でしょう？）
も、まるで蕩けるような顔で、わが子やわが孫を見つめている。
学校側も保護者側も、「単なる学業優秀者=エリート」として恥じない様子に、
私は逆に、なぜこんなにも恥ずかしい世の中になっちゃったのかと、怒りよりも疲れを感じたのを思い出します。　　

その夜、私は息子に、言わずにはいられなかった。
「たまたま高校に合格できる程度の能力を持って生まれてきて、
しかも義務教育後も高等教育を受けられる経済的環境にある自分に感謝しなさい。
君程度の能力の子は星の数ほどいる。
けれど、君以上の能力を持っていても、ストリートチルドレンのように基礎教育さえ受けられない子が、
この世界にはそれこそ数えきれないほどいることを忘れてはいけない。
そういう子たちの分も学んで、自分の恵まれた能力や環境を
社会に還元しなければならない十字架を背負っていると思いなさい。
自己責任で何をしてもいいし、何になってもいいけれど、
君の能力を、利己的で反社会的なものに使うことだけは許しません。
それだけは、いつも頭の隅に置きなさい。
気障な言い方だけれど、君が他人からされて嫌なことを他人にもしないで、
こうして欲しいと思うことをしなさい。
君の存在が、その周りの人々の歓びになるような人になりなさいね。」
　　
こういう当たり前のことを言ったり、書いたりすることが、
「ダサい」とか「ウザイ」とか、「マジ？」など言われるようになって、
なぜか大人が若者に、親が子に遠慮して口を閉ざすようになってきた、その先にあるのが、今の状況でしょう？
私は嘲笑されようが嫌われようが、言うべきことを言います。
どのような時代になったって、人としての真実というか、あるべき生き方というか、
そういう根本的なところは変わらないし、子の教育に義務を負うのは親ですから。

ここで、話を戻して・・・・
息子の高校入学式後、ＰＴＡ総会や成績懇談会などには出席しましたが、
入学式当日の雰囲気が助長こそすれ減少することはなく、
生理的嫌悪感で、その後はその手の学校行事には不参加。
ただ当然ですが、当時も札幌南高等学校の先生方の中には、
生徒たちに良い意味での影響を与えてくださる方もいらっしゃいました。
息子は、そういう先生や多くの学友に恵まれて楽しく高校時代を送ったようです。本当に幸運な息子です。

また現在も、札幌市の「子ども権利条例制定」に積極的に関っている先生もいらっしゃいます。
数年前に、学校行事の際に強要された“日の丸・君が代”をめぐって反対行動を起こした生徒たちに、
触発され考えさせられた結果だそうです。
生徒におもねるのではなく、また見下すのでもなく、
人として教師と生徒は対等であると見做す彼は、教師としてエリートです。
そういう先生がいてくださることを、嬉しく思います。

さて、私の息子がどう育ったか、やはりそれを最後に書かなければ、フェアではありませんね。

「お母さん、ホリエモンって、下品だね。」
「そうだけれど、他人のことは、どうでもよろしい。君も気をつけなさい。」
「はいはい、分ってます！」
「“はい”は、一回！」
「はーい。」

これが、ちょうど1年前のライブドアとフジテレビや日本放送などの間の株の買占めや買収問題に
メディアで大騒ぎしていた頃の、私ども親子の会話です。

ということで、総まとめです。
巷では、“エリート教育”の定義は、良くても、単なるリーダーを育てる英才教育だと誤解される程度のようです。
ですから、悪い解釈に至っては・・・です。
残念ですが、相変わらずです。
でも、絶望していても始まらない。
隗より始めましょう。
まず私たちが、自分自身“エリート”になるよう努力するしかない。
自ら“エリート”の種を蒔き、出た芽を丁寧に育て、社会全体を底上げしていく。
やがて、その中から“エリート中のエリート”が、出てくるのを期待して。

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ナチュラブ・日記　その５９（2006年2月16日号）
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　　　　　　　　　　　　　エリート教育　（１０）

その“おにぎり”を食べて、自殺を思いとどまった人もいるという
有名な“おにぎり”のことを聞いたことがあるでしょうか？
その“おにぎり”をつくる人は、佐藤初女（さとう　はつめ）とおしゃいます。

病弱だった少女が“食”と出会い健康を取り戻した。
時がたち、70歳を過ぎたその女性は「食を通して、悩み苦しむ人が元気を取り戻せる場所を作りたい」と
青森県の岩木山麓に小さな家を建て、“森のイスキア（注）”と名づけた。
そこで作る料理は、不思議な力で訪れる人に生きる力を与えていった。
それから14年経ち、今も料理を作り続けるその女性―佐藤初女さんは
「食はいのち」というメッセージを伝えたいと願っている。
　　　　　　―「栄養と料理」2006年1月号より抜粋　―
　　　
初女さんの食卓には、
ご飯、味噌汁、焼き魚、野菜の炒め物や煮物などのごく普通のものが並びますが、
噛むごとに味がふくらむ、そういう食べ物です。
「特別なことをしているわけではない。
ただ素材を生かそうとして、食材を“いのち”と思うと、自然と作り方も味も変わってくるのです。」とか・・

野菜の皮むくときに、フードカッターやミキサーを使わないのは、
野菜の細胞が無残にも破壊されるような気がするから。
手間がかかるけれど、包丁で丁寧に刻んだり、すり鉢で全身全霊を込めてする。
余分な水分は味を損なうから水切りの工夫をする。
野菜を茹でたりいためたりするときには、野菜が鮮やかに輝き透き通る瞬間に調味する。
漬物石を大小さまざま20個ほど持っていて、漬物の声を聞きながら使い分けていく。
盛り付けにも気を使う。ご飯も盛り方一つで美味しさが違ってくる。
おかずも、素材が呼吸できるようにふんわりと盛る。
食べてくれる人を大切にしたいから、最後まで心を込める。

「心を込めて食材を調理し、それをいただくと、大きないのちの中で生かされていることを実感します。
いのちといのちのつながりで支えられていると。食はいのちなのです。」が、初女さんの持論です。

女学生のときに患った肺結核の闘病生活のなかで、薬を服用してもよくなる気がしなかったけれど、
おいしいものを食べたときは体にすうっと浸み込んで、細胞が躍動するように元気になるのがわかったそうです。
その後、病気を克服、結婚、出産・・・・そして53歳で奉仕の道に生きる決心を定められた。
「私には、知識も財力もないけれど、心だけはある。心は汲めど汲めども尽きることが無い。私は心で仕えよう。」と。

イスキアにさまざまな悩みを抱えた人が全国から集まります。
「私は、何もしていないの。料理を作って、みんなと一緒に食べるだけ。
ただ、人は料理によって美味しいと感じたとき、心の扉を開き、少しずつ自分のことを話し始めるんです。」
初女さんは、そういう彼らの話を意見も述べずにただじっと聞く。
すると話した人の暗かった表情が次第に生き生きとしてくる・・・。
料理で心が開き、自分が無条件に受け入れられることで蘇生する。
体が満たされても心が満たされない、そんな食卓が日々重なることが心や体を病む原因かもしれない・・・。

今、私たちの食の崩壊が危惧され、“食育”の重要性が言われ始めているけれど、
私たちが失い、取り戻そうとしているのは、初女さんの作るような食べ物ではないかしら。

写真で拝見する佐藤初女さんは、慈愛あふれ、物静かな佇まいの女性です。
「私が料理をしたものを、皆さんと一緒に食べて、そして皆さんのお話を黙って聞くだけです。」という言葉の奥に、
初女さんの凛とした自信を感じます。
「皆に喜んでほしいので私は一心につくります。
誰にでも出来る一線があるのですが、そこを超えることが心に響くと思うのです。」
“そこを超えること”つまり、他の誰にもできないほどの心の込め方、とでもいうのでしょうか。
佐藤初女さんは、まさにエリートそのものだと思います。

　　注：　“イスキア”とは、イタリアにある火山島の名前で、
　　　　　　生きる気力を失った青年が美しいその島で再び意欲を取り戻したという伝説から名づけられました。
　　　　　　なお、今回は、「栄養と料理」2006年1月号を、資料として使わせていただきました。

以下、余談。
食の話で思い出した、ぞっとする現実。
ある小学校で、母親たち対象の給食試食会をしたとき、ある母親が先生に、次のように文句を言ったそうです。
「私たちは子どもの給食費をちゃんと払っているのに、
給食を食べるときに、なぜ子どもたちに“いただきます”という挨拶を強要するんですか？」

ぞっとしません？

佐藤初女さんがおっしゃるまでもなく、
食材である野菜や魚介や肉類は、すべて、人間以外の生命そのものです。
それらのいのちを、私たち人間は“いただいて”生きているのです。
だから、感謝を込めて「あなた方のいのちを、いただきます。」でしょう。
また、それらの食材を調理してくれた人たちへの感謝を込めての
「作ってくださってありがとう。いただきます。」でしょう。また「ごちそうさま」でしょう。
それなのに！
ぞっとするでしょう？

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ナチュラブ・日記　その５８（2006年2月15日号）
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　　　　　　　　　　　　　エリート教育　（９）

たぶん、このような“もの”を素直に読んで単純に感激するのは、おばかさんと笑われるでしょうけれど、
それを承知で皆さまにもご紹介したい新聞記事が、朝日新聞・2月14日付け夕刊に載りました。
既にお読みになっていらっしゃる方も多いと思いますが、ご容赦いただいて・・・

　　「スケートは楽しい。愛している。
　　だが正直なところ、少しだけばかげているように思う。
　　タイツをはいて氷の上を滑り回るために、生涯を費やすなんて。
　　でも僕はスケートが速いおかげで、寄付を集めたり世界の問題に注意を呼びかけたりできる。
　　大きなことを成し遂げたら、世の中のためになることをしよう。」

現在開催中のトリノ冬季オリンピックのスピードスケート男子500メートルで、
金メダルに輝いたジョーイ・チーク（26歳・アメリカ）は、
試合前、選手村のベッドで白い天井を見つめながら、問い直したそうですね。
「金メダルに、いったいどんな意味があるのか。」と。その答えが、前述の部分です。

彼は、米大統領になることを夢見ていた14歳のとき、
1994年リレハンメル冬季五輪で、スピードスケートの３冠を制したヨハンオラフ・コス（ノルウェー）を見て、考えが変わった。
コスは、ＮＧＯ活動を通じて、世界の災害や戦争で苦しむ子どもたちを助けていた。
チークは、コスの氷を離れたときの振る舞いも心に焼き付けた。
そのあこがれのコスと同じく、オリンピックでチャンピオンになったチークは
　「金メダルの報奨金2万５千ドル（約300万円）は、
　虐待のため難民となったスーダンの子どもを助けるためにＮＧＯに寄付する。
　企業にも支援を求めたい。」
とレース後の記者会見で自ら切り出した。

こういう青年が出てくるから、やはりアメリカは凄い。
学生時代にＩＴ分野で起業して世界でも有数のお金持ちになった今、
やはり大口の寄付を続けるマイクロソフト社のビル・ゲイツのような人がいるから、
アメリカを徹底的に嫌いになれない。
“ブッシュのアメリカ”を、私が全面否定できない理由が、これです。

そして久しぶりに思い出したのです・・・・
アパルトヘイト政策で白人以外の人種を合法的に差別していた時代の南アフリカ連邦へ、
“黒人の大使”を送りつけた、当時のアメリカの外交政策を。
あの時日本はといえば・・・“名誉白人”として扱われて嬉しがって、南アとの貿易で儲けていただけですから！
恥ずかしいったら、なかった。そういう日本と比べて、やはり懐の深さを、アメリカに感じたものでした。

ジョーイ・チークは、今回でオリンピックを引退し、初心に帰って、中断していた経済学の勉強を再開するそうです。
できればハーバード大学で。この柔軟さ！
好みと言ってしまえば、それまでですが、私は、このチークのような考え方が好きです。

以上、“エリート”について相応しい例がタイミングよく出たので、紹介させていただきました。

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ナチュラブ・日記　その５７（2006年2月14日号）
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　　　　　　　　　　　　　エリート教育　（８）

“エリート”とは
　「しなければしなくても済むこと、義務ではないことを、する。
　　それが社会的に役立つならば。
　　また、自分の恵まれた能力や環境や持てるものを、私利私欲のためでなく、必要とされる場に惜しみなく還元する。」
それが、私が長い時間をかけて考えてきた“エリート”の定義です。

私がエリートと考える方（かた）は、まず、姜尚中（カン　サンジュン）さん。
改めてここで紹介するほども無いといわれそうですが、あまり知られていないと思われることを、ひとつだけ。
それは、なぜ姜さんが、テレビにご自身を曝すようになったか、その理由です。

学者の業界（？）には、一般市民を見下ろすような雰囲気があり、
例えばテレビのワイドショーなどはもちろん討論会でさえ
出演する学者仲間を内心軽蔑したり、嘲笑したりするようですね。
そういう風潮に抗して、もしかしたら学者としての政治生命を失いかねない賭けを、
姜さんが敢えてした、その理由です。

彼は、在日２世の政治学者です。
できることなら、大学で学生相手に講義をし、ゼミで議論をし、研究書を表し、
しかるべき筋からコメントを求められたら適切な解説と持論を述べる、
という静かな生活をしたいと望んでいらっしゃる方でしたし、今もまたそうでしょう。
また、そうしようとすれば、そうできましたし、今後も可能です。
でも、姜さんは、書斎に閉じこもるような生き方を捨てられたし、今後も後戻りはなさらないでしょう。

もともと姜さんご自身は、学者としての高みから、一般市民の考えを見下すような方ではありませんでした。
でも他方、政治や社会問題に関して、
学者や専門家と言われる層の意識や考え方と、一般の人々のそれらがあまりにも違いすぎるのを、
何とかしなければとも思っていたそうです。

また、姜さんは在日韓国人として、
朝鮮半島を含むアジアとの政治問題への一般の日本人の関心のあり方に、当然違和感を持ち、
それをなんとか改善できれば・・・とも考えていらっしゃった。

そして「それならまず自分が、その役を引き受けよう」と決意されたのだそうです。
「それをしなくても、誰にも批難されないかもしれない。でも、それでは自分が自分を許せない。
誰でもない自分が、しなければならないと思うから、する。」と考えたに違いないでしょう。
だから、姜さんは、自分自身や自分の持っているものを社会に曝し、
そうすることで、一般の人々にも自分で考えて欲しいと訴えていらっしゃるのです。

その覚悟と勇気。姜尚中さんがエリート以外の何者でもないと私が考える所以です。
昨年8月、私どもの連続シンポジウム特別編で見せてくださった姜さんの精神のしなやかな勁さは、
“本もののエリート”そのものでした。

金子　勝さんも同様ですね。
やはり、学者として、自分が知ったことを市民に知らしめなければならないという動機に突き動かされて、
次々と啓蒙書を表し、講演し、テレビ等で対談する・・・
「だって、ほんとうのことを、専門家の難しい専門用語ではなく、
分りやすい言葉で解説することが必要でしょ、学者が、市民に。
でも、多くの他の学者は、それをやってくれないから。
それで、俺がしているんだけれど、そうすると学者たちが俺のことをバカにするんだよなぁ・・・
でも、俺、みんなと反対のことするのが趣味だから、いいんだけれどね。」という理由です。

昨年7月に、ニセコで開催した連続シンポジウム第6章で講演されたとき、そうおっしゃいましたっけ。
口調は乱暴でしたが、ちょっとシャイな感じで。そういう金子　勝さんも亦、本物のエリートです。

次に、政治業界の上田文雄･札幌市長。
上田さんが立候補された時に、おっしゃったことは・・・
「ボクは札幌が好きです。こんな美しく住み易い街はないし、札幌での生活は、
ボク自身やボクの家族にとって取り立てて問題はないと正直思っています。
でもその札幌で、25年間弁護士活動してきて、
札幌の恩恵を受けていない人もたくさんいるということを知ったんです。
弁護士として、そういう人たちの役に立つのも必要だし、良いことだとは思うけれど、
弁護士としてでは限界もあるんですね。
政治に直接関らなければ、限界を超えられないこともあると気がついたんです。
で、いろんな面で他の人より恵まれているボクは、恵まれた分だけ、
皆さんに還元しなければならないんじゃないか、と思ったわけです。
気がついた人がやらなきゃならないってことですね。
それが、札幌市長に立候補しようと決心した理由の一つです。」
皆さんにも、上田文雄・札幌市長が本物のエリートであることに異論はないでしょう。

前ニセコ町長の逢坂誠二・衆議院議員については、
過去にたっぷり（！）、その本物のエリート振りを書きましたので、ここでは割愛します。
　　『本日記のＰａｒｔ（1）～Ｐａｒｔ（3）参照』

以下、余談です。
先日沖縄で、市民ボランティア・グループが、沖縄戦没者の遺骨発掘調査をして、
４体の遺骨（正式には遺体ですね）を収集したそうですね。
素人のボランティアが数時間作業しただけで、簡単に発見できる遺骨収集作業を、
戦争を起こした国が、しない。
戦後60年以上経っても、まだ国は、抛っておくのか。
それなら、気がついた自分たちがしなければならない。費用もすべて自分たちで持って。
特攻隊の遺品に涙した小泉首相は、こういうことには全く関心がないらしい。
関心がないといえる立場に無い首相の、この無作為ぶりこそ、
彼が政治家として“非エリート”であることを証明していると思います。
何をか言わんや・・・。

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ナチュラブ・日記　その５６（2006年2月12日号）
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　　　　　　　　　　　　　エリート教育　（７）

ライブドアの社長であったホリエモンこと堀江貴文容疑者の逮捕以来、
各界のトップクラスの方々が、善後策や再発防止作などについて論じ合っていますので、
私のような素人がしゃしゃり出る幕はないなぁ・・と、はじめは思っていました。
でも、そういう態度こそいけない。
そういう他人任せ＆専門家任せにしてきたツケが出てきているのだから、
そのような態度を反省し考え直すべき時だと気がつきました。

そう思って、周りを見渡せば・・・
これまで専門家が見落としてきた小さな視点や考え方が案外役に立つのではないか、ということに気がついたのです。
なぜなら専門家といわれる人々は、何か事件が起きると、
再発防止策として完璧な仕組み＆チェック機能をつくり、それで良しとしていることが多いように思われます。
でも、仕組み＆チェック機能も、不完全なニンゲンが作るもので、それを運用･運営するのも、不完全なニンゲン。
そうであれば、仕組み＆チェック機能だけでなくて、
ニンゲンそのものを少しでもまともな存在に作りあげる“仕組み”が必要ではないでしょうか。
そして、私が思い至った仕組みが「エリート教育」でした。

さて、それでは、エリート教育とは・・・。

学業成績は良いに越したことはありません。つまり、お勉強は、できた方が良いでしょう。
様々な知識は生きていく上で役に立つのですから、
一つでも多くの知識を身につけ、それを駆使して問題解決する力をつけることは望ましい。
同じ理屈で、良質な頭脳自体も価値があるでしょう。

でも、良い頭脳（資質）がすべてではないし、良い学業成績がすべてではありません。
それだけで、彼らをエリートとはいえません。
持って生まれた良い頭脳と、努力によって培われた良い学業成績（使える能力）を、どう使うかが最も大きな問題です。

今は、恥も外聞もなく、建前をふっとばして本音一筋、
ただひたすら、利己をむき出しにすることが自己実現とばかりに奨励されます。
そしてその先にあるのは、有名になるという名誉とその結果としてのお金。
「お金で買えないものは無い」と豪語したといわれているのが、あのホリエモン、ちょっと露悪的でしたが。
でも、お金で買えないものの価値が分らないなんて、やはり非エリート。
せっかく良い頭脳を持って生まれても、受けたのがあるべきエリート教育ではなく、
幼児期から知識を詰め込まれるような悪しき“英才教育”であれば、こういう結果になるのかしら。

「人は、その能力を広く社会に還元するべきである。ゆめゆめ反社会的なことに使ってはいけない。
人より優れた能力は、十字架である。その意味を考えて自分の能力を生かせる道を生きなければいけない。」
という当たり前のことが実行できる人がエリートとしての第一歩であると私は考えています。
でも、現実には、ここしばらく私たちの国では、そういう生き方は煙たがられるようになってきていて、
その結果が、今のどの分野にもはびこるモラルハザードに満ちた状態であると思います。

そのモラルハザードの代表例が政治家というのは、ほんとうに悲しい。
数ある職業の中で、その仕事内容ゆえに敬意が払われ、非逮捕特権を有するなどの特別扱いを受けている彼らが、
エリートではないどころか、“反面教師”としての存在である現況は哀れです。切ない。
また、メディア関係者や実業家や学者や諸々の業界のそれなりの成功者の多くが、“反面教師”というのも、ほんとうに切ない。
“エリート”ではなく“非エリート”の例ばかりが挙がって、
「あのようになってはいけません。エリートとは、あのような人とは正反対の人のことです。」
といわなければならないやりきれなさ。

実は、エリートをつくるための「エリート教育」という王道は無いというのが私の持論です。
ただ、エリートいえる人々を、私は知っています。
彼らの価値観・生き方そのものがエリート教育のお手本であると確信しています。
彼らを見れば、私たちはどうあるべきか自ずから分ってくると思うのです。
そういうわけで、次回から、私がエリートと思える人を紹介させていただきます。

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ナチュラブ・日記　その５５（2006年2月10日号）
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　　　　　　　　　　　　　エリート教育　（６）

毎日、どの業界でも“非エリート”ばかりが目立ちます。

でも、やはり酷いのは政治業界。
なぜ政治家になったのかしらという政治家が多すぎます。
確かに「どの職業にも貴賎なく、それに携わる人に貴賎がある」のですが、それにしても、です。
また政治家のなかでも、特に内閣府の方々の「帝王学」不足には、この国の国民を辞めたくなります。

ＢＳＥ感染牛肉のアメリカらの再輸入後のトラブルをめぐって、小泉首相は薄笑いを浮かべ
「そんなに、私たちを責めなくたっていいじゃないですか。
私たちはちゃんと規則を決めてそのとおりにやっている。約束を破ったのは、アメリカでしょ。」と。

じゃ、そのアメリカにきっちりはっきり文句を言ったか、と問われると、
「それは、あなた方野党の圧力によってではなく、
自分が一国の責任者として判断してから文句を言うべきときに言う」と。

追求する野党側も、ツワモノを揃えているといいながら、
首相の不遜で答弁になってもいない答弁をひっくり返せないほど情けないけれど、
ここでは、野党についてはひとまず措く。

確かに、アメリカという国は・・・・
“ＢＳＥ”感染の兆候があるとされ、アメリカ国内でも食べることを禁止されている牛を、
食肉用に処理していたという杜撰（ずさん）なお国柄。
政府高官が
「ＢＳＥ牛肉を食べてクロイツェル･ヤコブ病を発症する確率は自動車事故よりずうっと低い（＊注）」
とヘーキで言うお国柄。
自国の一般市民の命の一つや二つ、どうなったって知らない、どうなったってかわわない、
という政府高官の存在が許されるお国柄。（ま、日本だって、政府高官の本心は分りませんけれど、ね。）

だから、小泉首相が
「悪いのはアメリカでしょ。
私たち日本は輸入された牛肉の検査をして、危険部位が混じった牛肉の箱を見つけ出したんですから、
ちゃんと約束は守っているじゃないですか。」までは、一見、正しい。
「日本政府は、ＢＳＥ感染したアメリカ産牛肉が混入していたから、一切のアメリカ産牛肉の輸入を中止し、
アメリカ政府とアメリカ牛肉輸出業者に反省を促し、二度と過ちは繰り返さないという約束
（輸出用牛肉の一部検査だけで、全頭検査をアメリカに拒否された中途半端な代物ではあるけれど）
を取り付けた。だから、安心して輸入再開した。
それなのにまた日本側の検査で危険部位混入が見つかった。
日本側は約束通りにきっちりと検査をした。だから日本政府の責任なんかじゃない。
危険部位を輸出しないといいながら、それを守らなかったアメリカ側の約束違反でしょ。
日本側は悪くないもんね。」とでも言いたげな論理でしょう。

これは一見、理屈が通っているように見えるけれど、冗談じゃありません。
なぜなら、そういうアメリカを信用して、日本国内の輸入慎重派を押し切って、
アメリカ側の早期再輸出という要請に諾々と従った日本側の責任は、誰にあるのか。
人の健康が脅かされ、挙句の果てに生命が失われかねない牛肉を輸入許可した責任は、誰が負うのか。
それを問わなければならないでしょう？
つまり結果責任の問題です。
そしてその結果責任を負うべきは、明々白々、日本政府であり、その最高責任者である小泉首相でしょう。

政治家の務めは、国民の命と生活を守ることが第一義。
今、その命と安全が脅かされているというこの問題ほど、絶好の政治家の力の見せ所は、他にない。
これは、アメリカの牛肉業界と、日本の輸入業者だけのモラルの問題ではないのです。
国と国の約束と、約束違反の問題です。お互いの国同士の責任者（政府）の問題になります。
そうやって突き詰めていけば、最高責任者の責任にまで行き着くはずです。

ここでちょっと余談程度に、“食”に関する国民側の自己責任について。
私たち国民は、「疑わしきは食べない。」それに尽きます。
これは、連続シンポジウム第7章で、宮口先生がおっしゃっていた問題と根が同じです
・・･･私たち国民側も、ただ安いからという理由だけで安全性を無視して食物を買いがちであるということ。

また、安全など気にしていたら、この時代、空気も吸えないと嘯（うそぶ）く人は、どこにでもいますし、
危険であるという充分な情報を得ていても、それでも買うというのであれば、
個人責任・自己責任として済まされるかもしれない。
しかしながら、供給する側（政府や食肉業者や飲食店）には、そういう理屈は許されない。
そのあたりを、政府や与党が故意にぼかしているとしたら、それを見破って鋭く追及する義務を負うのが野党側。
あら、こうやってやはり、ことは政治家の問題に戻っていくのですね。

（＊注）
　　ＢＳＥ感染牛を食べて、クロイツェル･ヤコブ病を発症する確立は、１／50万だそうです。
　　数だけみれば、確かに発症する可能性は小さい。
　　けれど、不運にも1／50万の確率にあたったら、命を失う。
　　それが、あなた自身でも、あなたの家族でも、あなたの友人･知人でも、
　　1／50万に当たってしまって不運だと諦められるでしょうか。
　　また、ＢＳＥ感染牛の怖さは、肉そのものに止まらないのです。
　　その牛肉が、加工肉の一部に使われたら・・・そうなれば、もうどこまで危険が広がるか分らない。
　　それほど今回の問題は深刻で根が深いのです。
　　政治家たちが、この問題を単なる食の問題として軽く扱っているとしたら、
　　彼らは、人の命と安全を守ることを努めの第一義とする政治家には相応しくない。そう思います。
　　政治家としてエリートではないという以前に、人としても“非エリート”と言わざるを得ません。

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ナチュラブ・日記　その5４（2006年2月6日号）
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　　　　　　　　　　　　　エリート教育　（５）

皆さまには、私の考えている「あるべきエリート教育」がどういうものか、
もう想像がついているのではないでしょうか。
これまで私が展開してきた論旨から「あるべきエリート教育」の片鱗は、簡単に引き出せると思います。

私は、エリート教育に先立ち、教育全般には十分な“お金”をかけるべきと考えています。
ただし、家庭教師とか学習塾とか各種問題集のような学習補助用品とか習い事とか、私立校とか、
そういう方面へ、個人がお金をかけることではありません。

例えば学校。
教師が、じっくり時間をかけて基礎科目を教える。
子ども（児童＆生徒）に能力差があるのは当たり前だから、その子にあわせて個別に教えるのが、本当の平等。
そのためには、今の学校制度を変えなければ･･･・・・
教師が勉強を教える以外の雑用をなくし（それは学校事務員が担う）、教師の時間を確保する。
（今は、こういう当然のことが無視されている。）
また教師を増やす。行政は、そのために十分な予算をつける。
教育にお金をかけるというのは、本来そういうことです。

また例えば、教材についても、個々の教師が必要に応じて充分に使えるように配分する。
同様に、学校の施設についても、教育に相応しい環境を用意する。
シックハウス症候群を引き起こす可能性のある環境ホルモンなどは絶対に使わない、機能的な教室。
食育を兼ねた、安心安全な食材を用いた給食など。

こういうことは、教育のいわばハードの面ですね。
ここに充分な税金を使います。子どもという未来に投資するのですから、当然です。

次に、ソフト面としての学校での教育内容の一端について。
今は、例えばテストで速く正解を出すことに力点が置かれていて、それを学業優秀というのですね。
そういう学業優秀さも大切ですが、それは単なる一面に過ぎないでしょう。
時間がかかっても自分の頭でじっくり物事を考えることが出来ること。
それが本来の優秀な学力であるということが、世界的にも証明されたではありませんか、フィンランドで、昨年。
教育の最終目的が、社会に出たときに一人で生きていかれる人間を育てることならば、
それこそがまさに教育の真髄でしょう。

またフィンランドを持ち出すまでもなく、教育現場では、一つの価値・物差しではなく、
たくさんの価値・物差しによって子どもの能力や向き不向きを見るべきでしょう。
そのためには、教師が一人ひとりの子を丁寧に見なければならず、とても時間がかかります。
それを許すだけのゆとりあるカリキュラム。
教育のソフト面といえば、学ぶ知識自体も問題になりますが、それは、最低必要限度の知識で充分。
それをしっかりと身につけさせて、必要に応じて、その知識を駆使して答えを出せるように訓練すること。
それが肝心だと思います。

以上のような環境で教育された子どもは、自分で将来の進むべき方向や職業を選択できるでしょう。
そうそう、子どもが職業を選択する際には「職業に貴賎はない」と教えることも、また大切なことです。
「もともと職業そのものには貴賎はありません。
どの職業でも、それに携わる人間に貴賎があるだけです。
例えば、校長先生にも政治家にも銀行員にも、尊敬できる人と出来ない人がいるでしょう？
あなたは、尊敬される人になってほしい。」と。

そういう価値観の下で、子どもは自分の意志で自分にあった職業・自分の好きな職業を自分で選びます。
そして、その選択に責任を持ちます。
そしてまた、自分の生活におおむね満足している子どもは、他人にも寛容であるから、
悲惨ないじめとか、不必要に人を傷つけることはしないはずですが・・・
ちょっと話がずれましたか。どうでしょうか。

今回は、“エリート教育”以前のあるべき教育全般について私が考えていることを披露しました。
また、国語･算数･理科･社会
　（と今でもいうのでしょうか・・・　今24歳の息子が小学生の頃は、理科と社会ではなく生活科というのもあったような・・・）
という小学校での基礎科目と、国語・数学･理科・社会・英語という中学校での基礎科目を頭において考えました。
体育や音楽･美術等の芸術系については脇におきましたので、念のため申し添えます。

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ナチュラブ・日記　その5３（2006年2月1日号）
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　　　　　　　　　　　　　エリート教育　（４）

如月。
年が明けてふと気がつくと、日が長くなっているという感じを毎年持ちます。
そしてまた、空気が甘くなってきたように感じ始めます。
空気の甘さ、それが、私にとっての如月の象徴です。
まだまだ充分に寒くて冷たくて、真冬なのだけれど、早春という言葉が相応しい月、
それが私にとっての如月です。実は、私は今が一番好きなときです。

そういう理由があるから、また、せめて新しい月の初めの日だからということで、
2月1日の日記は、明るく始めたかったのに！
それなのに、情けなくて･･･・・・
私は、いったい、こんな駄文を書いて何をしているのかしらと自嘲したくもなります。
あるべき“エリート教育”について、悲壮な気分で考えて書いているなんて、“くらーい”感じ。
“瞑い”と書くほうの“くらい”気分です。

ライブドア、マンションやホテルの耐震強度偽装、ホテル設備の条例違反・法令違反と毎日。
そして、またまた外務大臣の「天皇への靖国参拝の勧め」発言、防衛施設庁幹部談合逮捕、
米産牛肉輸入再開に当たっての事前調査約束違反＆大臣の閣議決定無視事件と
日替わりメニューのように、不祥事が発覚する状況は、
ただでさえ忘れっぽい日本人には、こういう状態に慣れてしまって多少のことでは驚かない免疫がつきそう！
おまけに、これでも、この国はこんな程度では、内閣が倒れないし。
みんなが他人事を語るように自嘲する。

何で、このように節操の無い時代になってきたのか。
その理由の一つが、お金に代表される欲望が通奏低音として絶えず付きまとうのでは････
それは、また、なぜ？・・・・
ということで、私なりに原因を考えようと、“エリート教育”を連載中ですが、
そういう一種真面目な私が、滑稽に見えてやりきれないときもあるのですよ。
それが、まさに今。

明日、目が覚めたら、また何か一つ降って沸いているかも。
とても疲れてしまっているので、今日はここまで。

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ナチュラブ・日記　その5２（2006年1月30日号）
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　　　　　　　　　　　　　エリート教育　（３）

「君たちも将来は、エリートになるのだと自覚して学びなさい。
それにはまず、自分の持って生まれた能力と進学できた環境に感謝すること。
そして、それをどう生かせばよいか、君たちが自分で考えなさい。
それが君たちがエリートとして背負う十字架だ。」

高校一年生で　衝撃的に意識させられた“エリート”という概念を、
それ以来私は、何かにつけて持ち出して試すという癖がつきました。

一例を挙げると「水俣病」。
公害の原点といわれる水俣病が公式に確認されてから、この2006年で50年になります。
患者の多くは、有機水銀に汚染された熊本･水俣湾の魚介を食べた漁師やその家族、
とくに母親自身、また彼女の胎内でその毒に侵され生まれてきた子。
水俣病の症状がどのようなものかは、いまさらここに書くことも必要ないでしょう。
　（＊文末に参考文献から引用記載）

ただ特筆されるべきは、彼らの辛さや悲しみは、
体の障がいや障がいゆえ仕事ができなかったことだけでなく、
それ以上に、周囲の偏見や差別だったと容易に想像できることです。

彼らは言います、
「なおらない病気になったことは悲しいことでした。
でもそれ以上に悲しかったのは、近くに住んでいる人から『うつるからそばに寄らないで』と言われたり、
『ほんとうに病気なの？』と疑われたりしたことです。
また水俣の子どもたちがよそのまちに行ったときに、『やーい水俣病な』どとからかわれたことです。
そんなことを言う人は、ほんとうは水俣病のことをよく知らない人なのです。
知らないで知ったかぶりをしないでください」　と。

その偏見と差別は、長い間かかってやっと水俣病として認定され、
公害を生んだ会社・チッソと国から損害賠償を受けたときに
「補償金のあるけん、働かんでもよか」と言う言葉になって投げかけられたのでした。
偏見をもち差別をした人々を責めるのは簡単です。
彼らには「では、あなた自身がそうなったら、どうですか？」と想像力を促してみればいいのですから。

問題は、この水俣病を引き起こしたチッソという会社と、
その監督責任があった県や中央政府の行政側です。　

チッソは、明治の終わりに水力発電の会社としてスタートした会社です。
その電気を利用してカーバイト工場を作り、やがて化学肥料の生産を始めて日本の大事な化学会社となりました。
1932年から1968年まで、酢酸や塩化ビニールの原料となるアセトアルデヒドを作るときに無機水銀を使いました。
そのときにできたメチル水銀（有機水銀）を無害化せずそのまま海に流したので、海の魚や貝などが汚染されました。
そういうことを何も知らないで水俣湾の魚や貝を食べた人たちが水俣病に罹ったのです。
　（なお、いまのチッソ工場ではゲームやパソコンの画面に使う液晶、化学肥料、食品添加物などを作っています。）

では、このチッソという会社と、私が考える“エリート”がどういう関係を持つのか。
それも実に簡単です。
チッソが日本有数の大企業として“エリート”であったなら、
1932年から水俣湾に流し続けた毒性ある有機水銀を、無害化して流せばよかっただけのことです。
そのために会社が負担しなければならなかった金額は、100万円程度と聞きました。
当時の100万円というのは結構な額ですが、
でも、アセトアルデヒドを作って売った収益は、100万円の何百倍にもなったことでしょう。
それを惜しんだというチッソの経営責任・社会的責任はいったいどうなるのでしょうか。

チッソの経営者は、たぶん学業優秀者だったでしょう。
また工場で働く技術者の責任者も、たぶんその専門分野の優秀者だったでしょう。
でも、彼らは、会社の社会的責任の何たるかを知らず、
また同時に、人としてしてはいけないことを認知できないほどの欠陥があったのではないでしょうか。

いろいろ原因があるでしょうが、その一つが、
彼らは帝王学やエリート教育とよばれる、あるべき教育を受けてこなかったことではないかと、私には思えました。
また、せめて水俣病の原因が有機水銀と分ったときに、
チッソはひとの命と健康にかかわる障碍物を流し続けた責任を取るべきで、謝罪と補償を申しでるべきだったのに、
それを拒否し裁判で争い続けたのですね。
その姿は、私には“非エリート”の典型に見えました。
エリート教育（１）で私が定義した“エリート”の概念から、簡単に引き出せる
「反社会的なことをしない」という“エリート”の定義の対極のもの。

行政の責任も、言わずもがなの酷さでした。
徹底的に、企業監督責任を回避しようとしました。
行政の役割や責任を放棄する役所など要らない。百害あって一利なし。
行政側のそういう態度は、薬害エイズをめぐる事件でも暴露されましたが、
行政担当官たちは最高学府の優秀卒業者で、しかも最難関の国家試験合格者の集団です。
思わず目を覆う、その“非エリート”ぶり。

チッソは、つきつめればお金を惜しんだのでしょう。
一度非を認めれば、ずうっとその責任賠償としてお金を払い続けなければならないと、
その視点しか持てなかった。
行政側は、行政の責任を認めることは、行政担当官としての自分の出世がそこで断ち切られるから、
認めるわけにはいかなかっただけでしょう。

私に言わせれば、たったそれだけの理由で、チッソも当時の行政も、
人としての尊厳を自ら売り渡したのです。
どこに“エリート”としての心意気があったというのか・・
彼らは単なる学業優秀者に過ぎない。その上、彼らこそが教育を蝕んできたのです。
でも最終的には、我が国の教育自体に問題があると考えますが、そのことについては、次回にまわします。

では、水俣病患者側は、その後どうして生きてきたかといえば・・・

　　「水俣病は、チッソが流したメチル水銀という産業廃棄物が水を汚染し、汚染された魚を食べることによっておき、
　　人々の対立も生み出しました。このことから水俣は、生命の源である『水』と『食べ物』がいかに大切なものであるかを
　　学びました。そして、家庭や事業所から出す『ゴミ』は、自然を損なうものであってはいけないことを学びました。
　　そして人々の対立をなくすために、もやい創りが大切だと知りました。みんなも、自分の回りにある山や川や海を
　　汚さないことです。毎日食べている食べ物は、どんな人がどのようにして作っているんだろうか、自分が出しているゴミは
　　誰が集めてどこへいっているんだろうか。そういうことを友だちと、考えたり・調べたりすることが水俣病から学べることだと
　　思います。」　といいます。

そういう彼らの一部の人々は、できるだけ農薬や化学肥料を使わない有機農法で水俣みかんを栽培しています。
体に障がいのある彼らが、炎天下でする草取り作業の辛さをちょっと思いやってみてください。
私に出来る彼らへの支援（というのもおこがましい程度ですが）は、彼らのつくるみかんを買い続けること。
豊作のときは彼らの苦労が報われたことをともに喜び、
不作の年は、彼らが手塩にかけた“子”が自然災害に見舞われた悲しさを共有するという連帯を伝えて。
ただ、私のやり方は、決してエリートなどではなく人間として当たり前のことです。

なお、今回は参考文献として『財団法人水俣病センター相思社』が作成した資料を使わせていただきました。
彼らが定義する水俣病とは以下のとおりです。

　　「水俣病は、チッソ工場の排水にあったメチル水銀が、海にいる魚や貝などに入って、
　　それを人が食べることによって起こります。空気を通じてうつることも、触ってうつることありません。
　　体の中に入ったメチル水銀は、主に脳や神経を侵し、手足のしびれ、ふるえ、脱力、耳鳴り、
　　見える範囲が狭くなる、耳が聞こえにくい、言葉がはっきりしない、動きがぎこちなくなる、などの症状が起こります。
　　汚染された魚を食べた母親の胎内でメチル水銀が体に入って、魚を食べていないのに水俣病になった赤ちゃんもいます。
　　水俣病で苦しんでいる人は今もたくさんいます。でも今は海がきれいになったので、新たに水俣病になる人はいません。」

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ナチュラブ・日記　その5１（2006年1月27日号）
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　　　　　　　　　　　　　エリート教育　（２）

私が入学した北海道立・札幌南高等学校は、いわゆる進学校でした。（今も、そうですが）
でも、前回も記したように私は団塊の世代ゆえに
何でもドサクサ紛れにことが収まるような感じで生きてきたところがあり、
高校についても例外ではありませんでした。

そういう中でただ一つ、というかただ一人の先生が
「高校、それも進学校で学ぶということはどういうことか」を考える切っ掛けをくださったことが、
私のその後を規定したと、今では思えます。

高校に入学して各科目の最初の授業は、それぞれの担当の先生のオリエンテーションで、
その科目の学び方･自習の仕方・大学受験への心構え
（高校に入学したばっかりなのに、もう大学受験のハナシとは、さすが進学校と感じ入りました）
などを話されるのが一般的でしたが、その先生は、全く違いました。
まず、「君たちは、選ばれた生徒であるということを自覚しなさい。」でした。

確かに入学試験を受けて合格し高校生になったのですが、
でも私たちは、それが特別なこととは考えもしませんでした。
なぜなら、団塊の世代対策として実施された小学区制により、
札幌南高等学校を受験できる条件が、その周囲の中学校在学者に限られ、
おまけにそれまでの2倍の合格数でしたので、
たとえば私は札幌市立柏中学校出身ですが、
その柏中学校からは180人ほどの生徒が札幌南高等学校に合格しました。
（当時の柏中学校の一学年の生徒数は850人強。一クラス平均66人で13クラスありました！）
それで、同じ中学校から引き続き同じ高校へ通うという感じで、受験したことさえ忘れていましたから。

そういう状況だったから、自分たちが選ばれた生徒である、なんて思いもよらなかった。
中学校を卒業したら、周りの友人たちもみんなそうだから、ワタシモボクも、当然高校へ行く。
そういうことを疑いもしなかった。
でも、あの当時の高校進学率は、どうだったかといえば・・・
記憶が不確かですが、50％には達しなかったはずです。（現在は94％程度）。
そういえば「集団就職」「就職列車」というのがありました・・・
中学校を卒業したばかりの15歳の男女が、3月末に地方から都会へ、ブルーカラーとして集団就職する、
その集団就職の男女を乗せた集団就職列車・・・・・
あの当時も、高校生といえども、しっかりとした目を持って周囲を見れば、
高等教育を受けられる有難みを感じたでしょうが、
“札幌という都会”で育った私も友人たちも、そういう視点など全く持っていなかったのです。

そこに、「高校へ進学できた幸運を喜びなさい。」さえを飛び超えて
「君たちは、選ばれた生徒であるということを自覚しなさい。」でした。びっくりしました。
そして続けて「この高校は開学以来有名な進学校で、能力的に優れた卒業生が多い。
その中から、日本の各界のリーダーも出ている。
特別名を成さなくても、役所や会社でも、指導的立場になる者が多い。
君たちは、この高校に合格したのだから、不合格だった者に比べてまずは能力的に優れている。
ということは、君たちも将来は、この国を担う一人になる。
そういう覚悟を持って勉強しなければいけない。
エリートになるのだと自覚して学びなさい。
それにはまず、自分の持って生まれた能力と進学できた環境に感謝すること。
そして、それをどう生かせばよいか、君たちが自分で考えなさい。
それが君たちがエリートとして背負う十字架だ。」

先生がおっしゃった正確な言葉は、もう思い起こせないのですが、
でも、このようなニュアンスの言葉を投げかけられた衝撃は今でも忘れません。
あの時からです、「エリートとはいったい、何？」と、何かにつけて考えるようになったのは。
人種、性別、社会的身分、門地、学歴、経済力とは、関係があるの？
単なる学業成績優秀者ではなさそう。
また、能力を生かすとはどういうこと？　どのように生かせばいいのかしら。
エリートって、十字架？
エトセトラ・・・エトセトラ・・・

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ナチュラブ・日記　その50（2006年1月26日号）
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　　　　　　　　　　　　　エリート教育　（１）

私見ですが、今の日本には、あるべきエリート教育は存在しないと思います。

私が“エリート”という言葉を初めて本気で意識したのは高校生になった昭和38年（1963年）ですから、
今からもう43年前にもなりますが、それ以来何かにつけて、“エリート”とは何かと考え続けてきたように思います。

「しなければしなくても済むこと、義務ではないことを、する。それが社会的に役立つならば。
また、自分の恵まれた能力や環境や持てるものを、私利私欲のためでなく、必要とされる場に惜しみなく還元する。」
それが、私が長い時間をかけて考えてきた“エリート”の定義です。

私が入学した高校は札幌南高等学校ですが、
昭和22年（1947年）生まれの団塊の世代の高校生を受け入れるために、他の小学校の教室を借り、
入学定員をそれまでの2倍にして一学年1,000人という、今では全く考えられない規模の学校になりました。
昭和22年～24年生まれが団塊の世代といわれますが、
それらの急激に増加した高校生を受け入れた我が母校の生徒数は、
私が3年生のときには、各学年1,000人ずつの合計3,000人でした。
また、一クラスの定員は50人、各学年20クラスずつで、全クラス数は60！

私たち団塊の世代は、そうですね、芋の子を洗うようなという形容がぴったりな感じでしたね・・・
なぜか、特に目立つ子もいなくて、何をするにも群れさせられて（？）
ドサクサ紛れで、気がつくとことがなっているというような、そういう時代を生きてきました。
そういう“どんぐりの背比べ”的な生徒が1,000人も一気に入学した我が母校は
「どこが、有名進学校？！」という状態になりましたっけ・・・
　
で、私が何を申し上げたいのかというと・・・・
40数年前のあの当時は、まだかろうじて“エリート”とか“エリート教育”という概念が、
あるべきスタイルで語られていたということです。
団塊の世代という急激な人口増加があって、充分な教育施設もなく、
今に比べると全く教育環境が悪かったというあの時代であっても、
まだというか、あるいは、それゆえに、というか・・・
とにかく、あの時代には、まだ本物の“エリート”を育てよう、本当の“エリート”になろうという
健全な教育観があったように思えるのです。

先日、証券取引法違反容疑で、ライブドアの社長以下重役が逮捕されました。
そのとき私は、問題ある業界のモラルハザードだけでは割り切れないと書きました。
でも、一方で、今の時代のあらゆる分野でのモラルハザードを見せられ続けて、
その原因はいったい何かと、私なりに考え続けてきて、
やはり、人としての教育、特に指導者を育てる目的のエリート教育に
問題があったのではないかと思うようになりました。

これを機会に、そのあたりのことをご一緒に考えてみたいと思います。
そういうわけで今回から「エリート教育」を連載いたします。
次回は、私が43年前、高校一年生になったときに、
初めて“エリート”という言葉を意識したというエピソードをご紹介する予定です。

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ナチュラブ・日記　その4９（2006年1月24日号）
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　　　　　　　　　　　　 鮫ではありませんけれど･･･

「ﾅﾁｭﾗﾌﾞ･北海道」のホームページをご愛読くださっている皆さま、大変ご無沙汰いたしました。

2006年の一月も既に下旬にはいりましたが、いやはや･･･今年も年頭から酷いことばかりが次々と起きて、
今夜（１月23日）は、ライブドアの掘江貴文社長が逮捕されたとか・・・
あのホリエモンを乗せたライトバンが、東京拘置所に入る場面がテレビで実況中継されています。

他にも、ここに改めて書くことも無いほど、毎日、テレビでも新聞でもインターネットでも、
この世も末という感じの社会ニュースが吐き出し続けられています。
それらのニュースを通じて見えてくるのは、ほとんどの事件の根本原因が、ひとこと“金”。
名誉や権力も欲しがるけれど、それは、お金を得る為の単なる手段になってしまいました。

私は、私たちの住む社会が少しずつ壊れ始めてきたのではないかと思う場面が、
ここ数年多くなってきたように感じていました。
事件を起こす様々な業界（行政を含む）の単なるモラルハザードとは割り切れないような、そういう感じです。
そういうことを、ぼんやり感じ考えながら来ました。
でも、私は義務感がなければ、あるいは追い詰められないと、積極的に自分の考えを書けないタイプです。
また、大きな社会的事件に関しては、関係者と言われる層が様々なコメントをしていますので、
私などが口を挟んでどうなることでもないし、など思っているのも事実です。

でも、私は、政治的な問題を扱う連続シンポジウムを開催する「ナチュラブ・北海道」の代表という立場です。
そして毎回のシンポジウムに際しては、参加くださる皆さま方に、
　　「私どもは、参加くださる皆さまとともにいろいろな政治問題を考える場として、
　　　この連続シンポジウムを設定いたしております。
　　　わずかな時間で、すぐ結論を出すことなど不可能だと思っています。
　　　それゆえ、このシンポジウムでの議論を、皆さまのそれぞれの生活の場に持ち帰って、
　　　そこで発展させていってくだされば幸いでございます。」
と申しあげています。
そうであれば、私自身が、こういう政治＆社会問題について、それなりに自分の考えを書くべきであると思い至りました。

逢坂さんが、いみじくも23日の徒然日記で、ご自分を「泳ぎ続けていないと死ぬ鮫」らしいと書いていらっしゃいますね。
「国会が始まって、気力が充実してきた。やっぱり私は、仕事をしていないとダメらしい。」とも。
私は、逢坂さんとは比ぶべくもなく「泳ぎ続けていなければ死ぬ鮫」ではありませんけれど、
日記を書かない間は、やはり、ぐうたらな時間を過ごしていました。
そろそろ正気（？）を取り戻しませんと・・・・・
次回の連続シンポジウム第8章の準備にも力を入れなければなりませんし、
過去のシンポジウムの記録作成作業もありますし・・・・・。

ということで、ナチュラブ･日記再開宣言です。
ただし、頻度等については気まぐれに・・・ということで、今年のナチュラブ日記をスタートさせていただきます。

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