街の働き者 パーク&ライド |
街の働き者
九龍油麻地や香港銅鑼湾などの市街地で出会う自転車は、どれも丈夫そうで黒など地味な色のフレームを持った貨物運搬車ばかりだ。乗っているのもランニングシャツやダブダブ半ズボンが制服のようなオジサンばかり。荷物は多種多様な産業資材。レストランや商店へ運ぶ食材や、逆に運び出してきた生ゴミ、建設材料、ガスボンベなどだ。重たい荷物を運ぶ自転車は荷台にごつい鉄パイプの補強が付けてある。
こういった自転車の仲間は手押し台車だ。積荷は似たり寄ったりだが、より大きなものや長いものも運べる。路上のあちこちで放置してある台車を目にすることができるが、何故か台車本体に比べて車輪が小さいものが多い。
自転車も手押し台車も、汚れが染み付いて黒っぽくなってまったく産業用機器の趣だ。そして走る場所は車道。大きな二階建てバスや速い自動車、ミニバスやタクシーの奔流に交ざって突然大通りに顔を出す。しかも通りの真ん中を走るかと思えば、斜めに突っ切ったりで見ていてヒヤヒヤする。しかし何故か自転車は、香港繁華街の正当な登場人物のひとつのように風景に自然に溶け込んでいるのだ。
ところで、すぐ北側に広がる大陸中国では自転車全盛で、通勤通学時間など大通りは自転車の洪水のようになる。この違いは、香港がとにかく狭いことに原因があるのだろうか。
船湾淡水湖の堤防 右は吐露湾の海 |
パーク&ライド
自転車が産業用車両であることは香港全域で当てはまるが、郊外の新界へ行くと少し様子が変わって用途が広がる。海沿いや湖の畔にはサイクリング道路がよく設けてある。レンタサイクルもあって、スポーツ車としての利用がされている。
もうひとつは通勤など、普通の人の乗り物としても使われる。公共交通が網の目のように覆う香港でも、さすがに新界まで来ると網の目が粗くなる。特にバスと違って駅間が長い鉄道ではなおそうだ。2003年に開通した九広西鉄は新界にある各駅に駐車場と駐輪場が設けられた。駅へのバス路線はあるにはあるが、バスに乗るなら九龍や香港島への直通路線がたくさんある。したがって、鉄道会社としては自家用車や自転車で駅まで来てもらうためにパーク&ライド(中文では、泊車轉乘)を推進し始めているのだろう。開通半年後の2004年夏に九広西鉄の錦上路駅に降りてみた。周囲は荒地と丘が広がるだけ。駅前の駐輪場には既にたくさんの自転車が置いてあるが、さっそく付近の路上に違法放置自転車があった。
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