『―――偽りの果てに―――』



「神子はこの京のどこが一番お好きですか?」
天の四神と仲良くなった頃、泉水さんに訊かれた。
「え?」
「色々な所に行きましたが、お気に召した場所はありましたか?」
「お気に入りって言えば。」真面目に考えたのはそれが最初。「やっぱりこの四条のお屋敷が一番好きだよ。」
帝を呪っている怨霊を払う為、最近はずっと地の四神と行動を共にしている。でも彼らはまだ私を神子と認めていない。親切にしてくれてはいるけど、一緒にいるとどことなく居心地が悪い。疲れる。だから屋敷の中で一人ぼけぇ〜としているのが好き。―――そんな事は口が裂けても言えないけど。
「住んでいる屋敷をお気に入りの場所って、普通言わないだろう。」
イサトくんや幸鷹さんに苦笑いされてしまった。
「ん〜〜〜、そう?賑やかな白河や静かな泉殿も好きだけど。でも自分の部屋の中が一番落ち着かない?」
屋敷なら、頼忠さんが警護で居る。言葉を交さなくても、姿が見えればただそれだけでホッとする。安心感をくれる人。
「それはそうでしょうけど。」
「ここの庭って綺麗でここから見ているのも好きだし、降りて散歩するのも楽しいし。それにやっぱり居心地が良いんだもん。」
そう答えると、紫姫が嬉しそうににっこりと微笑んだ。



時が経つにつれ、あの時の答えは違う場所に変わった。


船岡山。
青紫色の花が一面に咲いているその場所。竜胆の花は真っ直ぐに立ち、青い空を見上げている。

八葉と呼ばれる人達と信頼関係を結べた後でも、泣きたくなる日がある。あまりに重い責任に、逃げ出したくなる瞬間がある。迷い、悩み、落ち込んだ時、そんな時、ここに来る。一人の男(ひと)を連想させるこの花に囲まれた場所にいると、強いあの男(ひと)に守られているような安心感に包まれる。
私を慰め、癒す場所。


時が経つにつれ、その場所は他の事をする場所となった。


船岡山。
竜胆の花が一面に咲いている場所、そこは京という町を一望出来る。私が守りたいと願う町を。

花と共に町を眺めるのが好きになった。そこからあの男(ひと)が何処にいるのだろうと、何を見ているのだろうと想像するのが。
この町を歩くあの男(ひと)を守ると誓う場所。



時が経つにつれ、その場所は違う願いを持つ場所となった。


船岡山。
この場所からあの男(ひと)を見ていたいと想う。
ずっとずっとここに居たいと願う。
役目から解放されたら・・・・・・この場所で永遠の眠りにつきたいと――――――。






注意・・・花梨→頼忠、頼忠→花梨。
      ゲーム中→ED後の話。

雰囲気や心理描写、内容は『温もり』と似ています。
苦手だった方は、読まずにお戻り下さいませ。

※やはり制限を付けました。ご了承下さい。

※別窓が開きます。 更新日
01020304
全て完結。
護り刀に想いを込めて 2006/
07/03完結
050607
ただあなたが欲しくて
※無理矢理系。16歳未満立ち入り禁止。
2006/
09/05完結
050607080910
※10から後書きにお入り下さいませ。


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