06B



「ん・・・・・・・・・。」ゆっくりと意識が戻る。「あったかい・・・・・・・・・。」
「お目覚めになられましたか?」
心配そうに訊ねてくる優しい声で、ぼんやりしていた頭が一瞬にして正気に戻った。
「よ、より・・・たださん?」
「神子殿。」
「わっ!な、何!?」
ここは船岡山。私が来た時よりも時間は過ぎて月は沈み始めている。そして竜胆の花に囲まれたこの場所で一枚の袿に包まれ、裸の私は同じく裸の頼忠さんに抱き締められていた。
「申し訳ありません。夜露に濡れて冷え切っておられましたので―――。」
「何で放っておいてくれなかったんですか!?」
どうして邪魔をするの?折角決心したのに。せめてもの願いを叶えようとしていたのに。
「神子―――。」
「神子じゃないっ!」遮って否定する。「頼忠さんも天の青龍じゃない。私は自分の好きにするの。頼忠さんも私の事なんて気にしないで勝手にして下さい!」
この男は何で分かってくれないの?嫌だと何度も言ったのに。その言葉は私を傷付けるのに。腕の中から逃れようともがくが、頼忠は胸に引き寄せたまま放さない。
「しかし、まだお身体は冷とう御座います。このままでは―――。」
「結婚は解消して下さい。私はもう妻ではありません。守る必要はありません。」
「貴女が私の主である事に変わりはありませ―――。」
「そんな事はどうでも良いの。」
「そうおっしゃられましても―――。」
「クビです!」いい加減面倒になって叫んだ。「頼忠さんはクビです。貴方を従者として認めないっ!」
「(ぴくっ。)」一瞬にして青冷め、頼忠の身体が固くなった。「ク・・・ビ・・・・・・?」
「放して!」
「貴女は・・・・・・神子で・・・・・・・・・。」
動揺して声が震えている。だが、力が緩んだ。―――動ける。花梨は身体を捻り、身体を起こした。
「貴女が・・・・・・頼忠の・・・・・・・・・主・・・・・・・・・・・・。」
『嫌。このまま主として生きるなんて嫌だ。』頼忠がぶつぶつと呟いている間に逃げようとするが、頼忠の身体は花梨の足に乗っていて動けない。周りをきょろきょろ見回して逃げる手段となりそうな何かを探す。すると眼の前に、紫苑色の袋が見えた。『貴方の傍にはいたくない!』
衝動的に掴み取ると袋から刀を取り出す。そして鞘から抜くと、思いっきり自分の胸に向かって力を込めた。
「―――っ。」
だが胸を突く寸前、頼忠の手が花梨の手首を掴んだ。
「邪魔しないで!放してっ!!」
「・・・・・・・・・。」
「放してってばっ!」
「花梨。貴女は・・・頼忠の主では無いのでしょう?」
「っ!」
低く張り詰めた声音が怖い。
「ならば、そのご命令には従いません。」
頼忠の手が花梨の手首から手の甲に移動し、力を入れて刀を放させる。
「あ―――痛っ!」
花と花の間に落ちた刀に意識が行っている間に、花梨の右腕が背中に回され、がっちりと固定された。
「・・・・・・・・・。」
頼忠の左腕が花梨の左腕を押さえつけながら前に回され、背中に移動した頼忠の身体に引き寄せられた。
「な、何よ!?」
拘束され、熱い吐息が首筋に流れ、恐怖心とそれ以外の何かで全身が粟立つ。頼忠の身体の熱を素肌に感じ、自分が真っ裸の無防備な姿だという事を今更ながらに自覚した。人間が変わったようにも思える頼忠の態度に、震えている事を悟られないように強い口調で詰問する。
「花梨。貴女のおっしゃるように、頼忠は龍神の神子の従者を辞めさせて頂きます。」
「え?頼忠さ―――ひゃっ?」
その言葉の意味が分からず尋ねようとしたが、首筋を這い回り始めた熱くて湿った感触に身を竦める。と同時に、頼忠の手が花梨の膨らみを包み込み、優しく激しく揉みしだくと、全身に電流が流れたような衝撃を感じた。
「花梨・・・・・・・・・。」
「や、やだ。止めて・・・っ!」
胸の形を変える手をどかそうとするが、二の腕が押さえられていてはどうしようも出来ない。
「勝手にしろとおっしゃったのは貴女ですよ・・・・・・?」
わざとらしく音を立てながら、首筋、肩、背中に吸い付く。足を前に投げ出し、更に引き寄せる。そしてジタバタしている花梨の足に絡ませた。
「―――ぁう。」
ぴったり抱き締められ、腕も足も固定されたままでは、暴れようにも動けない。眼を強く瞑り、歯を食いしばり、頭を振りながら衝撃に耐えるだけ。そんな抵抗する事も出来ない花梨の身体を、頼忠は思うまま弄ぶ。そして手を胸から少しずつ下へと滑らせていった。



月明かりの中、花に埋もれるように横たわる貴女を綺麗だと思った。そのまま見つめていたいとも。
だが、夜露に濡れ、氷のように冷たい貴女を死なせたくは無かった。屋敷にお連れするのでは間に合わないかもしれない。側に置いてあった袿を広げ、抱き上げる。何かが胸から落ちたが、今は気にしている暇は無い。それはそのままにして少女を袿に横たえる。しかしただ衣で包んでも、ここまで冷え切った身体は温まりはしない。
「ご無礼、お許し下さい。」
衣を脱がせ、己も脱ぎ去る。頼忠の熱を与えようと覆い被さろうとした瞬間、見惚れた。月の光が身体の緩やかな曲線を照らし、神秘的な陰影を作り出している。細い首筋から鎖骨の辺り、小ぶりな膨らみや華奢な腰、臍から脚に向かっての・・・・・・・・・。
「美しい方だ・・・・・・・・・。」
視線を無理矢理剥がし、身体を重ねる。そして外気に触れないように袿で二人を包みこむ。抱き締めながら後頭部の辺りから背中、腰と優しく撫で、頼忠の身体と触れ合っていない場所にも熱を与える。

―――生きていて欲しい―――

祈りを込めて。それなのに。

―――頼忠さんはクビです。従者として認めないっ!―――

貴女をお守りしたい。貴女をお守りするのは、この頼忠でありたい。ずっと貴女のお傍に居たい。そう願っていたのに。
『私をお厭いになられているのですね。存在全てを否定するのですね。』
花に月に救いを求めるように、視線が忙しく動く。頼忠を映さないその瞳が憎らしい。
『このような状況に陥っても、頼忠を見ては下さらないのですね。』
それどころか。
それは貴女をお守りする為の物。貴女を傷付ける為にお渡ししたのではない。
『頼忠から逃げる為に、死を選ぶのか。』
―――そこまで頼忠を拒絶するのか。
白く滑らかな肌が眩しい。小ぶりでも形良い膨らみが揺れている。そして、何時もは澄んで輝いている瞳が怒りで燃えている。その姿は男としての本能を刺激し、身体に熱が籠もっていく。
『頼忠を忘れさせない。憎しみという傷を、貴女に刻みつけよう。』
起き上がると少女の背中に回りこむ。そして掴んでいた手を背中に回して固定し、もう片方の腕を身体の前に回して引き寄せる。
「花梨。貴女のおっしゃるように、頼忠は龍神の神子の従者を辞めさせて頂きます。」
その言葉通り、従者の仮面を投げ捨て、男としての本能のままに動き始める。
「―――ぁう。」
恐怖と快楽に混乱し、泣き声とも喘ぎともとれる少女の吐息が、屈折した悦びをもたらす。だが、まだ足りない。更なる刺激的な姿が見たくて、手を下へと滑らせていった。


「っ・・・・・・。」
胸を激しく上下させ、手足を投げ出してぐったりと頼忠の腕の中に崩れ落ちた。
「花梨・・・・・・。」
そんな様子の少女に、頼忠は満足げな笑みを浮かべながら弄んでいた場所から指を引き抜いた。そして袿の上に優しく横たえると、両手首を一纏めにして片手で地面に押さえつける。
「次は貴女の望みを叶えましょう。今も先ほどの願いをお持ちでしょうか?それとも。」未だに閉じられた瞼や涙が伝う頬に次々と口付けを落としながら囁く。「他の事をお望みでしょうか?」
血の滲む唇を優しく舐め、敏感になった場所を掠めるように内腿ぎりぎりの部分を撫でた。
「あぅっ!」
じれったい刺激に堪らず悲鳴が上がる。その隙を突いて開いた唇に頼忠の舌を押し込んだ。
「んっ・・・・・・んんっ!」
上から下からの休み無い行為に、無意識の内に頼忠に身体を押し付けるように悶える。
「花梨。」唇を首筋に這わせながら低く、甘く、囁く。「このまま頼忠と共に、永久(とわ)の眠りにつきますか?それとも。」軽く喉の辺りを噛み、熱を持って硬くなったものを擦り付ける。「頼忠と契りを結びますか?」
「っ!」息を呑み、痙攣するように身体が激しく震える。「ち・・・ぎ・・・・・・り・・・?」
眉間に皺を寄せながら眼を開き、やっと少女の瞳が頼忠を映した。
「頼忠の妻として、50年間、この京で生きますか?」
「・・・・・・・・・。」
「どちらか、貴女がお選びになった方を叶えて差し上げましょう。」
涙が溢れる瞳を見つめながら下の入り口を突付く。
「・・・・・・・・・。」
唇を開いたが、わなわなと震えるばかりで声が出ない。大粒の涙が零れ落ちると、再び眼を閉じた。何時の間にか自由になった腕を頼忠の首に回して引き寄せながら。
「花梨・・・貴女のお望みのままに。」
一気に貫いた。






無理矢理系・・・・・・。


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