この巻は帚木の巻に直に引き続いているもので、やはり源氏16才の夏のことを記す。源氏はその夜を空しく明かしたが、空蝉に対する思いはますます募る。そして再びある宵小君の案内で中川の家を訪れ、はからずも空蝉が伊予介の先妻の娘軒端の萩と碁を打っているところを隙間見する。その夜源氏は空蝉の部屋に忍び入ったが、手に触れたものはその人でなくて、軒端の萩であった。空蝉は早くそれと覚って藻抜けの殻の薄衣を残して逃げ去ってしまったのであるが、源氏はその薄衣を持ち帰って女の情のなさを恨む。巻の名は源氏の「空蝉の身をかへてける木の下になほ人がらのなつかしきかな」女の「空蝉の羽におく露の木がくれて忍びしのびに濡るる袖かな」による
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