この巻は源氏17才の三月から十月までのことを記している。源氏はわらわ病を患い、花盛りの頃加持を受けた、北山の聖の許に行き、偶然小柴垣のある庵室に尼君と美しい童女を発見する。尼君は兄である僧都の庵に病気静養に来ているので、童女はその孫に当たり父は藤壺女御の兄兵部卿宮であるという、いかさま藤壺によく似ている。源氏はこの児を養育して、妻にしたいものと思い、祖母の尼君に対面する。源氏は病本復して北山から帰ってくるが、葵の上の打ち解けない性質を物足らなく思う。童女は尼君が死んだので、父兵部卿に引き取られることに定まったが、源氏はその日の明け方に先回りしをして、彼女を二條院に連れて来る。この童女が紫の上である。巻の名は源氏の「手に摘みて、いつしかも見ん紫のねにかよひける野辺の若草」による。
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