【珍スポ観光 File030】
石和ロマンの館(山梨県)
(その2)
朝起きて、いつも同じ時間に家を出て、同じ電車に乗って会社へ向かう、そんな毎日を繰り返していたある日のことです。
春の陽気のせいだったのでしょうか。
会社と反対方向のホームに止まっていた電車が、なぜかその日は妙に自分を誘っているように思えて、気がついたときには閉じる寸前のドアの中に吸い込まれていたのでした。
どこへ向かうかも特別考えないまま、車窓を流れる風景をぼんやり眺めているうちに、列車はいくつかの駅を過ぎ、次第に山の中へと分け入っていきます。再び周囲の景色が開けてきた頃、車内のアナウンスがある温泉地で停車することを告げました。
「ちょっと温泉に浸かっていくのも悪くないか……」と考えた私は、そこで電車を降りることにしました。改札を出ると、あたり一面桃の花が咲き乱れており、まるで桃源郷へと足を踏み入れたかのようです。実はこのとき、本当に別の世界に迷い込んでいたのかもしれません。
案内所で紹介してもらった宿に落ち着いた私は、温泉でのんびりしてから、少し暗くなった街を散歩してみることにしました。飲み屋などをひやかしながら適当に歩いている内に、いつしか酔客で賑わう通りを離れ、あまり人のいない場所へとやってきていたのでした。
そのとき、こんなネオンが輝いているのを見つけたのです。最初はストリップ劇場かと思ったのですが、そういえばこのような名前の秘宝館があったことを思い出した私は、入口の戸を開け、中に入ってみることにしました。
階段を上っていった2階が入口ホールとなっているようです。おかしなことに、誰にも会わないまま、料金も払わず2階までやってきてしまいました。違和感を感じたのはそれだけでなく、ふつうなら外まで響いてくるPAを通した嬌声や音楽も聞こえてきません。
壁には昭和を感じさせるヌードポスターと、そしてくどいほどガム禁止の表示が貼られています。よほどガムを展示品に張り付けられる被害が多かったのでしょう。
「ヴィーナスの群像」というレリーフ。
その矢印的な形状が、深層心理的に入場を促す効果を狙っているのかもしれません。
「愛と性の殿堂」というキャッチコピーにふさわしく(?)造られた入口部分。薄暗い内部からは、おそらくギミックを動かすための動力と思われる、コンプレッサーの作動音だけが聞こえてきます。上部に掲げられたプレートにはカラフルな文字で「メルヘンポルノ」と書かれていました。
等身大に近い大きさの切り抜きヌード写真。なんで股間が白いのかと思ったら、どうやら張り付けられていた「順路」の表示が落ちたせいのようです。
シュールレアリズム的なテイストを感じさせる(?)オブジェ。
……しばらく入口付近で様子をうかがっていたのですが、誰も出てこないので、きっと料金は出口で払うのだろうと考え、意を決して中に入ってみることにします。
(続く)
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