緊急事態対策


 大規模災害等の非常事態がいつ発生してもおかしくない昨今、ある程度の装備や備蓄は必要だと思っています。

 ここに書かれているものについては、僕が自分なりに考えて、多くの人にとって通常の生活の範囲内と解される場所での「非常事態発生直後から2週間程度」で有用となりそうなものを書き出してみました。
 海や山での遭難は想定していません。また、ここに書かれていることは「僕が自分なりに考えた」という程度の「自分用のメモ」に過ぎません。他者に向けて積極的に発信しているものでは無いことを御承知下さい。





 まずは危険な場所からの脱出・退避を。
 安全な場所に避難出来たら、次に考えるのは3日間の生存。3日あれば自衛隊などの救急援助が来る可能性が高いです(ただし、東日本大震災の時は2週間たっても援助物資が届かなかった地域があったらしいので、一応念頭に入れておいてください。)

 持ち物には名前を記入すること。混乱している状況下では、紛失もありますが、盗難の確率が非常に高くなります。「どさくさに紛れて失敬してしまう」というモラルの低い人は必ずいます。




■ 重要度・格付け外(生死に直接関わる物ではないが、社会通念上、個人で管理すべき重要な物と認知されている物品)
 ・ 貴重品(印鑑・預貯金通帳・権利書・保険証書などになると思うが、これは人それぞれ。)
 ・ 鍵の類
 ・ 現金(必要な額は人それぞれ。お釣りをもらえない場合も考えて、千円札や小銭を多めに用意。)
 ・ 携帯電話やスマートフォン
 ・ 身分証明書(自動車運転免許証、パスポート等)
 ・ 健康保険証(非常事態に備えて、コピーを非常持出袋の中に入れておくのも一つの手。)
 ・ 常用薬
 ・ その他、メガネなど個人別に必要なもの




■ 重要度・SS(用意していない場合、非常事態発生直後〜数時間以内で生死に直結したり、行動に支障が出てくる可能性がある)
 ・ ヘルメット、防災頭巾、帽子(ヘルメットの有無は生死に直結する(経験者です)。)
 ・ 靴(トレッキングシューズや安全靴、軍用ブーツが望ましい。最低でも運動靴。)
 ・ ゴーグル(防塵性能が高い物がよい。水泳用のゴーグルでも可。)
 ・ マスク(防煙・防塵性能が高い物がよい。)
 ・ ホイッスル(つまり笛。自分の居場所を知らせる以外にも、防犯上で非常に有用。)
 ・ 軍手(綿100%の物がよい。化学繊維は熱で溶けることがある。)
 ・ 厚い革手袋(軍手の上にはめれば、かなり熱い物も持てる。)
 ・ 懐中電灯(可能ならば複数あった方がよい。)
 ・ ロープ(登山用のロープやパラシュートコード。物資の連結や補修などにも使えるので、多めに用意しておくほうがよい。)
 ・ タオル(派手な色の方が有用。いざという時に自分の居場所を知らせる目印や旗になる。)
 ・ 持出し用のバッグ(両手が使えるようにリュックサックを選択するのがよい。)
 ・ エマージェンシーブランケット(手のひらサイズに畳める物が売られている。寝具や暖房が使える状態なら不要だが。)
 ・ 乾電池
 ・ ラジオ(アナログラジオの場合、周波数と局の対応表があれば便利。手回し充電式ラジオは「回す音がうるさくて周囲に迷惑がかかる。」「案外体力を消耗する。」という声もある。)
 ・ 救急セット(消毒薬、絆創膏、包帯、三角巾、目薬、毛抜き、ピンセット等)
 ・ 防寒衣類(冬はもちろんのこと、夏でも夜は冷え込む場合がある。使い捨てカイロも。)
 ・ 心構え(緊急事態発生時の原則は「まず冷静になる。次に安全を確保する。余力があれば負傷者や困っている人を助ける。あとは余計なことはせずに救助を待つ。」である。)




■ 重要度・S(非常事態発生後1日以内に、必要だと感じる可能性が高いもの)
 ・ 携帯電話やスマートフォンの充電器(乾電池式など、停電時でも使えるもの)
 ・ 公衆電話用の10円硬貨複数枚(非常事態発生時は携帯電話類がつながりにくくなる。テレホンカードは停電時使えない場合がある。)
 ・ 飲用水(飲用に限れば一人1日2リットルが一応の目安。)
 ・ 食糧(最低でも3日分は欲しいところ。)
 ・ 飴・キャラメル類(簡単な行動食として。精神安定の面でも有用。)
 ・ 食器類(コップ、皿、箸、スプーン)
 ・ 鍋類(アウトドア用のトラベルクッカー等が便利)
 ・ 雨具(傘は手がふさがるのでレインコートの方がよい。防寒具にもなる。)
 ・ 簡易トイレ(ドライブ用の携帯型でもよいが、設置型の簡易トイレがベター。)
 ・ ロールペーパー
 ・ ウエットティッシュ
 ・ ビニールシート(いわゆるブルーシートやレジャーシート。大きめのものがあれば簡易テントや仕切り、トイレの目隠しとしても使える。)
 ・ ヘッドライト(夜間作業時、両手が使えるのは便利。)
 ・ ランタン(LEDランタンが安全かつ便利)
 ・ ポリ袋(ゴミ袋としての利用のほか、簡易雨具としても使える。工夫次第でかなり有用。)
 ・ 寝袋・布団・毛布
 ・ ガムテープ(様々な補修に利用)
 ・ 油性マジック
 ・ 紙(コピー用紙サイズの物。出来れば耐水紙。併せてバインダーも用意しておけば便利。)
 ・ 緊急連絡先用メモ(家族の携帯電話番号など。)
 ・ IDカード的なもの(住所、氏名、生年月日、連絡先、血液型、持病、服用薬、アレルギーなどを記載。)
 ・ 家族の写真(可能ならば裏に住所・氏名・生年月日・血液型、連絡先等を書いておく。家族と常に一緒に行動できればそれほどの重要性はないが、もし家族とはぐれてしまった場合は非常に重要なアイテムとなる。)




■ 重要度・A(非常事態発生後数日以内に、必要だと感じる可能性が高いもの)
 ・ 着替え
 ・ 洗面用具(歯ブラシ、歯磨きチューブ、シェーバー、リップクリーム、ドライシャンプー)
 ・ 発電機(車のシガーソケット用ACコンセントインバーターも便利。)
 ・ 裁縫道具(見落としがちだが、絶対に省略できないもの。僅かな綻びを放置しておくと衣類やバッグはすぐに使えなくなる。)
 ・ 塩(調味料としてもだが、塩分補給のためにも)
 ・ サプリメント(ビタミンCは必須。複数のビタミンやミネラルが補給できるタイプが便利。)
 ・ ろうそく
 ・ 長靴(釘等の踏み抜き防止用に鉄板が入っているとさらに良い。)




■ 重要度・B(絶対必要とは言わないが、用意してあれば格段に便利なもの)
 ・ 新聞紙(身体に巻いて保温、シートの代用、ゴミを包むなど使い方は様々。場合によっては記事を見ることで暇つぶしにもなる。)
 ・ 黒色ビニール袋(汚物を隠しておける他、天気のいい日に日向に置けば洗い物の乾燥や食品の温めも可能。)
 ・ 腕カバー(上腕部をおおう筒状の布。衣類を守るほか、衣類が半袖しかない場合の補助となる。)
 ・ 対虫用品(虫よけスプレー、殺虫剤、虫よけネット、虫刺され用の薬、ポイズンリムーバー)
 ・ ラップ(有用度かなり高し。食事の時に皿にあらかじめ敷けば、皿が汚れなくて済む。負傷時に患部に巻いて保護もできる。)
 ・ アルミホイル
 ・ 針金(ロープと同じく補修・連結などに使える他、アルミホイルと組み合わせれば簡易フライパンも作れる。)
 ・ ジャッキ(重い物を持ち上げられるので、脱出・救出用に使える。)
 ・ 水用ポリタンク
 ・ バケツ(蓋付きのものが便利。緊急時には簡易トイレにもなる。)
 ・ 厚いゴム手袋とゴム長靴
 ・ 安全ピン(簡易補修ツールとしては非常に有用。)
 ・ アイマスク
 ・ 耳栓
 ・ 爪切り(爪を切る以外にも紐状のものを切断できるツールとして使用可能。)
 ・ 鏡(光を反射するシグナルとしても活用可能。)
 ・ 双眼鏡(周囲の状況の確認のため。)
 ・ 洗濯バサミ
 ・ ダブルクリップ
 ・ カラビナ
 ・ S字フック
 ・ さび止め潤滑油(工具を使った後のメンテナンスは重要です。)
 ・ 自転車(マウンテンバイクが便利)
 ・ 調味料(小分けパック入りの醤油、胡椒、固形コンソメなど。現代人は味が濃いものに慣れていることに留意すべき。)




■ 重要度・C(重要なものではないが、用意してあればそれなりに役立ちそうなもの)
 ・ 食用油
 ・ スポーツドリンク粉末(水に溶かせば手軽な補給ができる)
 ・ インスタントコーヒー等(嗜好品をとることで落ち着くのもあるが、ミネラル等の補給にもなる。)
 ・ 暇つぶし用品(トランプ、ゲーム、本など。ある程度の娯楽はストレス発散・精神安定になる。)
 ・ ほうき&ちりとり(周囲を清潔に保つのは基本。)
 ・ 消火器
 ・ 木炭(備長炭は火力が強いが火が付くのに時間がかかるので注意。)




■ 状況に応じて用意すべきもの
 ・ 方位磁石(行動範囲が自分の家の近くならば必要はないが、山での遭難時は必要。)
 ・ 冷却用品(電池駆動の扇風機、冷却パックなど)
 ・ 簡易浄水器
 ・ 食器用洗剤
 ・ 洗濯用洗剤
 ・ 石鹸
 ・ 頭痛薬、胃薬、正露丸的な薬




■ 使用・携帯・所持・保管に注意を要するもの
 ・ ナイフ、カッターナイフ
 ・ はさみ
 ・ のこぎり
 ・ バール
 ・ 工具類
 ・ 折り畳みスコップ
 ・ その他、使用方法によっては殺傷能力を有すると思われるものや、特殊開錠用具・指定侵入用具に該当する可能性が高いもの
 これらは有用である反面、普段から持ち歩いていると銃刀法違反や軽犯罪法違反などで処罰される可能性があります。ちなみに、「護身用に持っている」という言い訳は全く通りません。「持ち歩いて災害などの非常事態に備えている」というのもダメだと思ってください。そもそも災害の備えとしてのこれらの優先順位は決して高くありません。特にマルチツールなどを含めたナイフは持ち歩きたくなる人も多いと思います。アウトドア・ミリタリー系のグッズが好きな人にとっては心くすぐられる物ですからね。でも、ダメです。懐中電灯や携帯型ラジオ、ホイッスル、救急セット、ヘルメットなどが用意されている中で小型のナイフがあるのならばまだ「災害の備え」として判断される可能性はあると思いますが(もちろんそれでもダメな可能性の方が高い)、ナイフ1本で災害に備えるなんて理屈は通りません。というか、無理です。
 考えてもみてください。市街地や住宅地で、刃物を持ち歩く必要性が果たしてあるのかということを。少なくても僕は、普通に生活している状態で刃物を持ち歩いていれば便利だろうなと思うことなんて「買った品物のタグを切りたい」程度ですね。しかも、そんなのは家に帰ってやれば済むことですし、どうしてもすぐに使いたいという時は店の人に頼めば対応してくれるでしょう。仮に緊急事態発生時になったところで、刃物がどうしてもすぐに必要になる状況というのはあまりないと思います。そんな事態になってしまったら、早めに家に帰るなりして今後に対応した方がいいでしょう。
 ちなみに僕は、車の中に、緊急事態になっても一週間程度はそこそこ快適に生存していけるような保存食・水・衣類・救急用品・調理用品などを積んでいるのですが、刃物は除外しています。警察官に職務質問されても問題なく堂々としていたいというのもあるのですが、要は「必要になっても家に帰って取ってくれば充分である。」という結論に達したからです。

 ・ 着火用品(マッチやライターなど。マグネシウム製のファイヤスターターという手もあるが、100円ライターを防水パックに入れておく方が手軽。)
 ・ カセットコンロ、アウトドア用バーナー
 ・ ガスボンベ等の燃料
 ・ ガソリン携行缶
 火気の取扱いは特に注意してください。ライターやガスボンベは、40℃以上になる高温の場所(夏の車内など)では爆発する危険もあります。オイルライターはオイルが蒸発してしまうので、保管には向いていません。
 また、ガソリン携行缶の中に入れたガソリンは、長期間の保管はできません。






■ 食糧について
 食糧については、まずは冷蔵庫の中身を消費しましょう。
 非常食とは、「他に食べるものが無くなった時に手を出す、最終手段」と考えて下さい。出来れば火や水を使わなくても食べられる物を。カロリーメイト的なもの、クラッカー、ビスケット、乾パン、飴、キャラメル、羊羹、チョコレート、チューブの練乳など。ただし、クラッカー・乾パンの類は食べると喉が渇くので、結局水を消費することになります。賞味期限は決して長くはないが、ピーナッツ入り柿の種はカロリーが高いので便利です。水さえ確保できるならば、ゆで時間が短いマカロニは便利です。削り節の類は高タンパクということです(タンパク質は消化吸収に多量の水分を使うので注意しましょう)。
 非常食として備蓄する場合、消費期限の管理(定期的なチェック、消費期限間近の食品の適正な消費、消費した分の補給・追加)さえちゃんとできれば、「長期保存できるもの」にこだわる必要はありません。そもそも食糧備蓄は「非常時に手軽に食べられるもの」を考えるべきで、長期保存さえできればよいというものではないのです。また、食べるまでにに多大な労力を使うことは、非常時(余裕がない状態)では本末転倒。手軽な物を選びましょう。
 缶詰は缶切り不要タイプが基本です。ただし、缶詰は食べた後の缶を洗わないと周囲の衛生上よくないので、可能ならば洗いましょう。
 支給される食糧は、同じものが続くことが多いです。「同じものばかりで飽きた」と文句を言わないためにも、備蓄をしておくべきでしょう。




■ 犯罪等への対策
 残念ながら、災害が発生して治安が乱れると、略奪をしたり、自分の欲求を満たすために犯罪行為を行う者も出てきます。非常時はそれらに対応する装備も必要となります。ホイッスルで警告する、危険を知らせるというのももちろんですが、いろんな状況を想定して必要な装備を整えておいた方がいいと思います。装備として何が必要かはここでは言及しませんので各自考えてください。また、仮に何か武器になるものを所持したとしても、通常それらは持ち歩くことは法に触れますし、それらを犯罪者に奪われれば自分の身が更に危険になるという事は承知しておいてください。
 基本的に治安が乱れている状況下では1人で行動しない。2人でも危険はあります(犯罪者は1人とは限りません。)。4人以上で行動すれば、犯罪被害にあう可能性はかなり減ると思いますが、それでもゼロにはならないでしょう。夜間ならばなおさらその危険は増します。原則は「危険には近づかない。危険を感じたら速やかに遠ざかる。危険が迫ったならとにかく逃げる。危険に立ち向かうのは最終手段。」。




■ 豆知識
 電気の復旧は比較的早いとされています。ガスもプロパンガスならば災害発生時でも使える可能性は高いです。問題は水。断水からの復旧はライフラインの中でも遅くなりがちです。




■ 終わりに
 こういう「緊急時想定の備蓄」というのは、周囲(特に家族)に理解されないものです。僕も家族に「うちの周辺は地震も少ないし、そんなに備蓄なんてしなくても大丈夫だよ。」と言われています。そりゃあ、何年分も食料を備蓄しているとかだったら家族から呆れられても仕方ないと思いますが、たかが数日分の備蓄でも「必要ない」と言われるのはちょっと心外であるとともに、災害などの緊急事態を甘く見ているのではないかと思うのです。
 確かに、僕の実家の付近が大災害の中心地になることは、地理的特性から考えると可能性としてはかなり低いでしょう。しかし、別のどこかで大規模災害が発生した場合、物流がストップする可能性はあります(東日本大震災の時は、直接の被害が無かった長野県南部でもトイレットペーパーやガスコンロ、カセットボンベ等が無くなり、ガソリンの入手が困難になった)。非常時に慌てて入手して「買占め」という事態に陥るよりは、余裕のある時に少しずつ入手して「備蓄」しておいた方がずっとスマートであることは言うまでもありません。
 いいんですよ、気休めでも。備蓄食料の期限が来たら、笑って「役に立たなかったね」と言いながら期限間近の乾パンや缶詰を食べて、また買い足せば。備蓄がなかった時の苦労を考えれば、数日分の食糧を常備するのは決して無駄にはならないと思うのですが。

「心配性と言われても、いざという時にいかに物資を揃えているかで勝敗が決まる。」









令和2年5月6日 追記
 現在、世界は新型コロナウイルスの流行で、混乱に陥っています。マスク、アルコール消毒用品は数カ月にわたり品薄状態。トイレットペーパーは現在は解消されたものの、一時品薄状態でした。
 また、日本では史上初の「緊急事態宣言」が出され、外出自粛要請などが行われています。
 入手困難になってしまった物がある、外出できないわけではないが感染のリスクを考えるとあまり外出したくない・・・。こんな時に、備蓄があるとないとではやはり心強さが違います。
 僕がここに書いたこと、改めて見直しても決して的外れではないはずです。

 まあ、正直、マスクとアルコール消毒用品のここまでの品薄は想定以上でしたが。
 普段から備蓄しておけば、非常時での買い占めという後ろめたさを感じなくてもいいわけですよ。

 十分な供給状態になったら、他の人に迷惑をかけない程度に備蓄を考えましょう。