シガー(葉巻)


 シガー。つまり葉巻のことですが、ここでは難しいこと、専門的なことを書くつもりはありません。シガーを吸ったことが無く、予備知識も無い人のためにこのページは作られています。

 まず大前提として、シガーも煙草であることに違いはありません。禁煙の風潮が非常に強いこの御時世、喫煙を推奨する内容の文章を書くのはいかがなものかと自分でも思います。でも、「シガーを楽しみたいが、楽しみ方が分からない」という人の役に立てばいいと思い、自分の拙い経験や知識を公開しています。もちろん喫煙は20歳からですので、20歳未満の方は速やかにこのページから退出して下さい。例えこのページの内容を全部若しくは一部見ても、20歳未満の方は実行に移してはいけません。



 さて、シガーは金持ちやおじさん専用の物ではありません。とにかくこの先入観は一切払拭してもらいたいのです。これは、金持ちの象徴的アイテムとしてシガーを安易に使うアニメなどのメディアの責任が大きいと思うのですが、本来シガーはもっと簡単に楽しむものです。最近は20代の人でも意外にシガーを楽しんでいるようです。僕も20代で本格的にシガーの世界に足を踏み入れました。
 しかし、やはりシガーは単価が高いものです。贅沢品であることは否めません。
 この「贅沢品だ。しかしもっと気楽に経験すべきだ。」という、二律背反とも言える状態を理解し、楽しんでもらいたいと思っています。






1 シガーとは
 シガーには大きく分けて2種類あります。

■ プレミアムシガー
 手作りのもので、ある程度の長さと太さをもったものを指します。様々なサイズ、形状があります。それなりに高価で、一般的に市販されているものだと1本300円くらいの物から、1万円を超えるものまであります。
 保管の際は湿度と温度に注意が必要で、特に湿度管理を怠るとシガーは乾燥してバリバリになってしまいます。

■ ドライシガー(シガリロ)
 機械で作られる紙巻きタバコサイズの小さいシガーを指します。
 1箱5本〜20本入りで売られていることが多く、1箱1000円以下の物から、3000円くらいの物がほとんどです。
 プレミアムシガーのように保管に気を配る必要は少ないのですが、それでも乾燥させないようにした方が良いでしょう。
 なお、ドライシガーは「プレミアムシガーに慣れた人が短時間でシガーを楽しむために考案されたもの」であり、プレミアムシガーに比べて味がきついので、はっきり言って初めての人には向きません。
 このページはシガー初心者のためのものですので、ドライシガーの説明は以降省略します。






2 紙巻きタバコとの違い
 一般的なタバコ(紙巻きタバコ)と違うのは、シガーは100%タバコの葉で作られていると言うことです。
・ 吸っていないと火が消える
 紙巻きタバコはタバコの葉だけではなく、火薬や香料が混ぜてあります。そのため吸っていなくても燃焼し続けるのですが、シガーは火薬が入っていません。2〜3分置いたままだと火が消えてしまいます。

・ 費やす時間が長い
 紙巻きタバコは1本3分程度で吸い終わりますが、葉巻は一般的なサイズで40分から1時間。長いものだと2時間を越えるものがあります。
従って「仕事の合間に」とか「仕事をしながら」という性質の物ではありません。






3 シガーを楽しむためのアイテム
■ ライター
 タバコなんだから当たり前とも言えますが、ここで注意しなくてはいけないのは「オイルライター厳禁」と言うことです。 オイルライターの火は、オイルの燃焼の匂いでシガーの香りを台無しにしてしまいます。 そのため、シガーの着火にはガスライターを使うのが基本です。シガーの着火には時間がかかるので、火力が強いターボライターが便利です。また、シガー用のマッチを使うのもいいでしょう。普通のマッチはオイルライターほどではないけれど、硫黄の匂いでシガーの香りを邪魔してしまいます。


■ シガーカッター
 プレミアムシガーは吸い口の部分がタバコの葉で閉じられてしまっているので、切るなり穴を開けるなりして吸い口を作る必要があります。
 はさみ型やギロチン型のカッター、穴を開けるパンチカッターなどいろんなものがありますが、この時に作る吸い口の形状でシガーの味は変わります。自分の好みでどうぞ。
 なお、映画の影響からか「歯で食いちぎって吸い口を作る」という行為でもいいと思っている人がいますが、かっこいいものではありません。
 ちなみに、ドライシガーは大抵両切りになっており、吸い口を作る必要はありません。

僕が所有・愛用するダビドフのパンチカット用シガーカッター(平成19年秋に東京ミッドタウン内のシガー専門店で購入)
 キーホルダー型で、パンチカット用の円形ブレードは3種類(大・中・小)ついています。普段はキーホルダー本体に収納し、使用時にブレードを引っ張り出します。


■ 灰皿
 普通の灰皿でも問題はありません。 しかし、よりシガーの世界を楽しみたいならシガー専用灰皿を使う方がいいでしょう。

上:プレミアムシガー(ダビドフ スペシャルR)、プレミアムシガー用の灰皿(ノンブランド、黒大理石製)
下:ドライシガー(ダビドフ ミニシガリロ)、ドライシガー用の灰皿(ノンブランド、クリスタルガラス製)


■ ヒュミドール
 プレミアムシガーはその保管に際し、湿度・温度に気を配らなくてはいけません。 そのために必要となってくるのが「ヒュミドール」と呼ばれるシガー保管箱です。 一般的なのは木製ですが、アクリル・ガラス・カーボン製などもあります。 ヒュミドールには通常、湿度計や水分補給のための保湿器が付属します。
 ただし、短期間の保存であればシガーを買ったときについてくることがある金属製のチューブでも大丈夫ですし、見た目は良くないかもしれませんが食品保存用のタッパーウェアでも代用できます。

ノンブランドのヒュミドール(蓋についている黒い円形の物は保湿器。金色の円形の物は湿度計。)
 画像では個々のシガーが包装されていますが、保管の際は包装を外します。


■ シガーチューブ、シガーケース
 シガーを持ち運ぶための容器です。1本用から3本用の物が多く、材質は金属製、木製、革製などがあります。絶対必要なものではありません。


上:ブランド不明のシガーチューブ(1本用) カーボン模様で、伸縮できるタイプ。平成22年12月、東京・新宿の喫煙具店で購入。
下:カルティエのシガーチューブ(1本用) カルティエ「パシャシリーズ」。平成19年春、新宿伊勢丹メンズ館喫煙具コーナーで購入。






4 TPO
 シガーは紙巻きタバコのように日常的に吸うものではありません。 ・・・いや、日常的に吸ってもいいのですが、実際問題としてシガーは高価ですし、1時間とかそのくらいの時間をシガーのために用意しなくてはいけないのですから、普通の勤め人には金銭的にも時間的にもそんな余裕はなかなか捻出できないはずです。

■ 時間
 食後1〜2時間ほどの余裕が取れる時がいいでしょう。 したがって、普通は夕食後、若しくは休日の昼食後になると思います。

■ 場所
 勤め先に持ち込んでまで吸うものではありません。禁煙となっている場所も多いでしょうし。 普通に考えれば、オーセンティックなバーか自宅がシガーを吸うのに最も適した場所だと思います。
 居酒屋やお姉さんが隣に座ってくれるようなスナックなどはあまり似合わないような気がします。

■ 場合
 シガーは金持ちの物ではありませんが、やはり贅沢な物であることは否定できません。 週末に「この1週間お疲れ様」という自分への御褒美とか、とっておきの1本は自分の誕生日とか年末年始の吸い納め・吸い始め、何かの記念日、何か大きな仕事をやり終えた時の後など、「ちょっと特別」って時に吸うくらいでいいと思います。
 「一人でゆっくり」が一番です。






5 シガーの産地とブランド
 シガーは、そのほとんどがキューバ、ドミニカ、ホンジュラス、ニカラグアなどの中南米各国で作られています。 特に評価が高いのはキューバとドミニカです。
 なお、キューバで作られるシガーは「キューバシガー」とは呼ばれずに「ハバナシガー」と呼ばれるのが一般的です。

 ブランドについては
■ キューバ
 コイーバ、モンテクリスト、ロメオ・イ・フリエタ(ジュリエッタ)など
■ ドミニカ
 ダビドフ、アヴォ、グリフィン、ダンヒルなど
が有名です。
 ハバナシガーは当たり外れが激しいらしいですが、全体的に高い評価を受けています。ドミニカは品質が安定しており、及第点をクリアした良質のシガーの産地と言われています。品質が特に安定しており「シガーのロールスロイス」と呼ばれるダビドフは、現在ドミニカで生産しています。  






6 シガーの入手
 街のタバコ屋さんに置いてあることもありますが、保管状態が必ずしもいいとは限りません。 都市部に住んでいるならシガー専門店、比較的規模が大きいタバコ店、百貨店、シガーバーがいいでしょう。地方に住んでいるなら通販が便利です。
 シガーを購入したら、出来ればすぐに吸うのではなく、ヒュミドール内でしばらく保管しましょう。適度に水分を含ませることで、シガーをベストな状態にさせます。
 ちなみに、シガーは保存状態さえよければ製造後半世紀くらいは品質に問題ないという話です。その「保存状態」をベストに保つのが問題なんですが。






5 シガーを吸ってみる

1 はじめに
 何よりも先に、シガーを吸える状況かどうか確かめます。例えシガーバーでも隣に人が座っている場合には「吸ってもいいでしょうか?」と確認するのがマナーです。
 吸える状況であれば、まだ火をつけていない状態のシガーの香りを楽しんでみましょう。芳しい香りがします。


2 吸い口をカットする
 カットにはいくつかの方法があることを先に述べました。僕は個人的にパンチカットが好きなので、ここではパンチカットの方法を紹介します。

プレミアムシガーとシガーカッター(パンチカット用)
 プレミアムシガーにはまだ吸い口が無く、煙草の葉で一方の端が包まれている状態です。


 パンチカッターを吸い口に合わせ、軽くねじ込むようにカッターの刃を入れます。このカッターの場合、カッターの刃の直径は3段階から選べます。直径が大きい方がまろやかな口当たりとなりますが、吸っている際に小さな葉片が口に入ることが多くなります。


 吸い口部分が綺麗にカットされ、穴が開きました。
 カットしたクズは灰皿に入れておきましょう。


3 火をつける
 プレミアムシガーの場合、シガーを一方の手に持って、ライターをもう片方の手に。シガーを傾けながらシガーの端をライターの火に近づけ、シガーをまわしながら着火します。紙巻きタバコの様に吸い込みながら火をつけるのとは違います(ただし、ドライシガーは普通の紙巻きタバコと同じ着火方法で構いません)。
 慣れないうちはシガーバーで店員さんにつけてもらったり、経験者にレクチャーしてもらうのがいいでしょう。

 一人で撮影したので、ライターはテーブルに置いてしまっています。
 一部分の着火だけでは吸っているうちに燃え方に偏りが出てきます。シガーを回転させながら先端全体に着火させましょう。


着火終了直後です。先端にまんべんなく着火できました。


4 吸う
 煙を肺に入れる必要はありません。そもそもシガーは煙を口の中で燻らせて、香りを楽しむものです。
 2〜3分吸っていないと消えてしまうので、気をつけてください。 仮に消えてしまっても再度着火すればいいのですが、冷めたシガーに火をつけると風味が落ちます。途中で吸うのをやめる際は、火が消えた頃合いを見て、シガーの中に溜まっている煙を吹きだすと、風味が落ちるのを少し防げます。


5 灰を落とす
 シガーの灰は頻繁に落とすものではありません。巻きがしっかりしているシガーならば、太さにもよりますが2〜3センチくらいになっても落ちません。
 また、灰はシガーにおけるラジエーターの様な役目を果たしており、温度が上がりすぎるのを防ぎます。ある程度の灰を保っておくべきなのです。
 灰の長さが2センチを超え、「そろそろ落ちそうかな」と思ったら、灰皿にそっと灰をつけて、灰の根元から軽く折る様にします。灰皿の上に円筒状の灰が残り、見た目にも綺麗です。

 巻きがしっかりしているシガーならば、先端がこのくらい灰となっても落ちません(この時点で灰の長さは2.8センチメートル)。


 灰の長さが3センチメートルくらいになったので、灰の部分をそっと灰皿に押し付け、灰を折るように落としました。吸い終わるまでこの繰り返しです。



6 吸うのをやめる
 シガーは放っておけば2〜3分で火が消えます。灰皿に押し付けてもみ消すようなことはしないで下さい。外国ではシガーを灰皿でもみ消すのは「怒りの表現」とされているそうです。
 「どのくらいまで吸っていいのか」というのは迷うところですが、あんまり最後までチマチマと吸っているのはかっこいいものではありません。

 吸い終わった状態です。綺麗に折られた灰がなんとなく気持ちいい(自己満足)。




※ シガーのリングについて
 シガーにはブランド名が入った紙製のリングが巻かれています。これは吸う前に外してしまう人もいれば、最後まで残してしまう人もいます。
 ちなみに僕は、吸い終わりの辺りで外して、家に持ち帰ります。


※ シガーとのマリアージュ
 シガーはそのまま吸っていると舌が麻痺してきます。それを洗い流すような感じで何か飲み物を用意しておくといいでしょう。
 ミネラルウォーター、コーヒー、アルコールなどと相性がいいのですが、よく言われるのはシングルモルトウイスキーやコニャックとの相性です。これらはシガーと一緒に楽しむとお互いの味を高めあうと言われています。これを「マリアージュ(結婚)」といいます。


※ 「C」
 「食後のC」というものがあります。これは、食後に嗜むと食事の余韻を更に楽しめるというもので、
・ シガー
・ コーヒー
・ チョコレート
・ コニャック
・ シャンパン
・ チーズ
などは「C」が頭文字となるので、「食後の3C」とか「4C」などと言われています(上に挙げた6つの中から何が選ばれるかは、文献によって違うようです)。






最後に
 シガーは大人の嗜好品であり、吸っている時間は非常に贅沢なものだと思います。 紙巻きタバコの様に吸うわけには行かないけれど、月に1本、または週に1本、贅沢な時間を過ごして大人の勉強をしてみるのも面白いのではないかと思います。
 時と場所、場合、金銭面、そして健康面との相談になりますが(苦笑)。