全滅、「見」ができるかどうか、ダメージコントロールに対する意識、
株式流動性モデル、不動産業界、資本主義社会、少数意見、
プロ意識、スタジオアタオ、北海道旅行、寿スピリッツ
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ショートコラム(2018年10月)
■寿スピリッツ(2018年10月30日) |
北海道旅行の最終日、新千歳空港で土産物を見て回っていると、妙齢の女性から寿スピリッツ(2222)の主力ブランドであるルタオの試食をすすめられました。その商売熱心さに投資家のアンテナが反応し、つい「寿スピリッツの方ですか?」という言葉が出てしまいます。 いきなり社名を出され、驚かれるかと思いきや「ええ、そうです。あなたもですか?」と即座に切り返され、こちらが面食らいました。聞くところによれば「今やグループ会社が全国各地に展開しており、有名なお土産は当社の商品が多いです」と鼻息が荒かったです。色々と教えてもらったこともあり、お礼も兼ねてルタオを買って帰りました。 土産物コーナーのおばちゃんまで強気とは、やっぱり勢いのある会社は違いますね。株価は高値からかなり下げたとはいえ、まだ私には買いづらい水準です。 |
■北海道旅行(2018年10月28日) |
10月24日から27日まで、北海道旅行に出かけてきました。 今回は、大沼公園の紅葉に合わせて旅程を組んだところ、天候にも恵まれて、まるで絵葉書のような写真が撮れました。こんな絶景に出会えると、つい本格派のデジカメが欲しくなります。 ただカメラの世界は、凝りだすとキリがありません。画像処理用モニタや高スペックPCまで揃えれば、相応の出費を必要とします。 ここは本多静六博士の教え「好景気・楽観時代には倹約貯蓄」を実践して、次の不景気・悲観時代には思い切った投資を行えるようにしたいものです。 そういえば旅行中、宿泊したホテルで新聞をざっと目を通したところ、マーケットから不況の足音が聞こえてきたような感じを受けました。 大沼公園より臨む駒ヶ岳 道内では圧倒的な強さのツルハ 難読駅名のひとつ、長万部(おしゃまんべ)駅 |
■スタジオアタオ(2018年10月23日) |
先日の東京出張時、小田急百貨店の2階に入っているATAO新宿店を見てきました。 スタジオアタオ(3550)の実店舗です。日曜日のお昼前ということもあり、お店は若い女性の熱気であふれ、スタッフの方も対応に大わらわでした。 そんな中、どさくさに紛れて店舗の中まで入り込み、バッグなどの商品を手に取ってチェックしてきました。モノは良く、おしゃれで、庶民でも手が届く絶妙の価格設定がされており、「これは売れそうだ」と直感的に思いました。 残念ながら、足元の株価はバリュー投資家の手が届く水準ではありません。ただ消費税増税の影響を受けそうな銘柄だけに、じっくりと追ってみるのも一興でしょうか。 |
■プロ意識(2018年10月22日) |
私はファイナンシャルアカデミーで外部講師を務めさせてもらっています。生活費の足しにするという側面もありますが、一番の理由は私にとってアウェイだからです。 常連さんの多いバリュー投資塾はホームであり、何事も好意的に受けっていただけます。そんな状況にて「これでいいのだろう」と満足してしまえば、セミナー講師として進歩がありません。 またファイナンシャルアカデミーの講師陣は、総じてプロ意識が高いです。昨日の東京出張時も、講師陣が最近取り組んでいるレベルアップについて話がありました。そういえば 、久しぶりにセミナーを視聴する機会のあった若手M講師が、まるで別人かと思えるほど上手くなっています。 このままでは、自分のレベルが相対的に下がってしまいます。さらに自ら講師をされているスタッフの方より「次回までに角山講師も同等のレベルアップをお願いします」と念を押されました。まあ、やるしかないですね。 |
■少数意見(2018年10月19日) |
『僕は君たちに武器を配りたい』より、もうひとつ、お気に入りの文言を紹介しておきます。 資本主義では、「自分の少数意見が将来、多数意見になれば報酬を得られる」という仕組みになっている。 株がまさにそうです。もっとも少数意見についてみたものの、いつまでたっても現状維持であることは珍しくありません。しかし、もともと少数意見であれば、たとえ損をしてもかすり傷で済みます。 一方、多数意見についている投資家はどうでしょうか。その状態であり続けても、儲けはしれています。ところが、もし多数意見が少数意見に転じてしまえば、状況次第では大火傷を負いかねません。 そう考えると、常に市場のコンセンサスを追いかけるのは、割に合わない投資であることが理解できるでしょう。ベテランのバリュー投資家が「人気株を買うな。流行業種を追うな」と口を酸っぱくしているのも、同じ意味です。 |
■資本主義社会(2018年10月16日) |
『僕は君たちに武器を配りたい』を何度読み返しても、次の言葉が一番突き刺さります。 資本主義社会では、究極的にはすべての人間は、投資家になるか、投資家にやとわれるか、どちらかの道を選ばざるをえない。 ときおり、自分の職場について嘆く人を見かけますが、私には今一つ理解できません。なぜ、次のように考えられないでしょうか。 サラリーマンとして、月々の安定した給料を得た上で、世の中(資本主義社会)の仕組みを勉強させてもらっている。しかも、投資家としてある程度の経験を積めるだけの、十分な時間を与えられている。 「今は、将来的に投資家として一本立ちするための準備期間なのだ」と解釈すれば、少々嫌なことがあっても耐えられるはずです。 |
■不動産業界(2018年10月14日) |
『逆張り投資家サム・ゼル』より引用します。 アメリカの不動産業界で、開発される案件の数が、需要ではなく資金量によって決まることは、かつてからある重大な欠陥だった。 この業界では、資金があると、完成後にだれが入居するのかを考えずに、建物を建てすぎてしまうという長い歴史があるのだ。 どうやら、人間のやることは万国共通のようですね。 個人的に不動産投資を行う(=賃貸経営に新規参入する)つもりは毛頭ありませんが、不動産の勉強をしています。 資産価格は互いに連動する傾向にあり、どうしても思い込み(バイアス)のかかってしまう株より、当事者でない不動産のほうが客観視できるからです。 我が国においても、融資先に困った金融機関の後押しにより「完成後にだれが入居するのかを考えずに、建物を建てすぎてしまう」状況が続いています。 著者のサム・ゼルは「建設用クレーンが大都市の至るところで見られたが、アメリカが不況に向かい始めていた」状況を察知して、数年後に暴落した不動産を買いまくって大儲けするチャンスが来ると確信します。そこでディストレスト不動産(経営破たん不動産)に集中投資を行い、大成功を収めました。 おそらく賃貸経営に向いていないであろう私は、次の不況で、不動産株の底値でも狙いましょうか。 |
■株式流動性モデル(2018年10月11日) |
下図は9月のバリュー投資塾「勝ち残り投資術」でも紹介した、アベイター社の株式流動性モデルです。 足元の米国市場は、FRBの金融引き締めにより金利が上昇しているにもかかわらず、株価は過大評価されたままです。強気相場に後れを取れば、担当者の首が飛びかねないため、機関投資家はチキンレースの真っ最中でしょう。 この状況下にて、市場モメンタムがマイナスに転じれば、流動性の縮小により株価パフォーマンスの冴えない局面に突入します。昨晩の急落が、そのトリガーとなるかもしれません。今後の状況には注意が必要です。 |
■ダメージコントロールに対する意識(2018年10月8日) |
かなり以前に取り上げたダメージコントロールについて、ウィキペディアより引用します。 現在、この分野においては、太平洋戦争中に大規模な海戦を経験したアメリカ海軍や大日本帝国海軍の頃の戦訓を取り入れた海上自衛隊のノウハウは、世界でも類を見ないものになっている。 一方、日米の艦艇と比べると、それらの経験が比較的少ないヨーロッパ諸国やロシアの艦艇は、被害対策に対する意識の違いが表れているのが分かる。 (中略)こういったものは実戦を経験して初めて得られるノウハウでもあるため、訓練等で補うのは難しい。 「太平洋戦争中に大規模な海戦を経験した」を「リーマンショックによる株価の大幅な下落を経験した」に置き換えれば、株にもそのまま当てはまる言葉です。 外部講師として株式投資セミナーに招かれた際、なるべくリスク管理(=ダメージコントロール)の話を含めるように工夫しているのですが、たいていのケースで会場の反応は今一つでした。 やはり実戦でとことん痛い目に合わないと、意識しないものなのでしょうか。もっとも、かくいう私もリーマンショックまでは、旧日本軍のように「我が皇軍に敵の弾など当たらない」という考え方に近かったですけど。 |
■「見」ができるかどうか(2018年10月4日) |
先月のショートコラムで『ドキュメント 道迷い遭難』を紹介したところ、「株本以外で、他に面白い本がありませんか」というメールをいただきました。 そんなわけで、本棚を見渡してみたところ『安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生』が目に留まりました。付箋を貼っている箇所から引用します。 私はこれまで、バブルの時は「見」を決め込んでいっさい動かず、逆にバブルが崩壊するやいなや、手のひらを返すようにして店舗用物件の土地や不動産の確保、あるいは企業のM&A等を積極的に仕掛けてきた。 (中略)ともあれ、成功者と失敗者の分かれ目は、この「見」ができるかどうかにある。 「見(けん)」ができるかどうかは、経営者にとっても、投資家にとっても、きわめて重要なポイントです。 しかし悲しいかな、サラリーマン社長や機関投資家などの“雇われ人”には、見をしている余裕がありません。「何もしていない」と思われ、最悪のケースでは首が飛んでしまいます。 これができるのは、自己資本が厚く銀行からとやかく言われないオーナー経営者と、他に収入源があって自己資金で現物株投資を行っている個人投資家のみ。 私たち個人投資家が、有利な立場をみすみす放棄するのも、もったいない話です。 |
■全滅(2018年10月1日) |
以前から気になっていた言葉があります。軍事用語の「全滅」です。ここでは100%を意味しません。 諸説があるものの、一般的に使われているのは次の数字でしょうか。 ●全滅:兵力を30%喪失 戦場における指揮官の重要な役割として、部隊が全滅する前にそれを察知し、一時的に後退して戦力を立て直すなど、方針を転換することがあげられます。 仮に部隊が壊滅してしまえば、もはや勝ち目がなくなるため通常は降伏します。もっとも旧日本軍は、壊滅しても抵抗を続ける玉砕への道を選び、敵軍を驚かせました。 この数字は株式投資にも使えそうです。投資家は、資金の30%を失う前に方針を転換する必要に迫られます。50%を失ってしまえば、精神状態も正常でないはずで、そこで投資をやめるべきでしょう。さらに頑張り続けても、一発逆転を狙う賭けに出てしまい、たいていは全てを失ってしまいます。 |
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by 角山智