TOPIXに投資できるか、投資家チャップリン、才能、株価というもの、
コメ兵の業績下方修正、SHOEIの本質価値、ユニバーサル園芸社の第2四半期決算、
薬王堂、リテール営業向け販促ツール、やまみの決算説明資料、個別銘柄分析
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ショートコラム(2017年2月)
■個別銘柄分析(2017年2月28日) |
ただいま、3月のバリュー投資塾に向けて、2016年のIPO銘柄を調べ直しています。 個別銘柄分析は、会社側の決算発表資料などを読み、それを額面通りに受け取るのであれば、簡単です。決算説明会ビデオが閲覧できる銘柄では、ビールでも飲みながら映像を見ているうちに分析が終わってしまうからです。 しかしながら、どの会社も中期経営計画を楽々と達成できるのであれば、投資家だって苦労しません。今のような株高局面では「口だけ」でIPOを行っても高値が付いてしまうだけに、なおさらです。 そこで、事業環境や業界構造、経営者の経歴について調べ「会社側の強調している強みは、本当にそう言えるのか」「この経営者をどこまで信用していいのか」といった事項について再検証する必要に迫られます。 機関投資家であれば、経営者と面談を行うことも可能でしょうが、個人投資家はネット上の公開情報をつなぎ合わせ、パズルを解くように投資対象の実像を明らかにするしかありません。 この作業は、恐ろしいほど手間がかかります。私自身も、バリュー投資塾という発表の場があるからこそ、できるのでしょうね。 |
■やまみの決算説明資料(2017年2月24日) |
やまみ(2820)のIRページに、第2四半期決算の決算説明資料が掲載されています。 ざっと目を通しましたが、当初計画未達の要因が正直に書かれており、好感を持ちました。自社にとって都合が悪い情報は、出さない会社も少なくないからです。 この中で、野菜価格高騰や残暑が長引いたことを額面どおりに受け取れば、天候に起因するもので、一時的な出来事です。ただ売上未達の言い訳に使われている可能性も否定できません。 新ライン導入に伴う不具合の発生は、製造業にとってつきものの一時的なつまずきであり、大半のケースでは時間が解決すると思われます。もし長引くようなら要注意です。 一番気になったのは「一部の販売先で価格競争の激化」や「計画を上回るリベートの増加」という文面です。豆腐業界の中では機械化で先行しており、相応の価格競争力を持っていると踏んでいたですが、販売面で苦戦を強いられてるのあれば、認識を改める必要がありそうです。 同社は期末の業績予想を据え置きましたが、価格競争の激化している状況下では、達成が難しいかもしれないと感じました。 |
■リテール営業向け販促ツール(2017年2月21日) |
会社四季報オンラインに巨額資金を動かす機関投資家の、知られざる4つの実態という記事が掲載されており、興味深く読みました。 とりわけ、琴線に触れたのが次の箇所です。 個人投資家の言うアナリストレポートは、証券会社のアナリストがリテール営業向けに書いたものであり、機関投資家は意思決定に使用していない 私自身も、調査を行っている銘柄のアナリストレポートがネット上で入手できれば、ざっと目を通します。ただ、参考にするのは非上場の競合他社についてなど、一般的には入手しづらい事実のみで、投資判断は見ていません。 以前から、この手のレポートには楽観的な記述が多く「甘いな」と感じることも少なくなかったのですが、その理由がいっそう明確になりました。要するに、車のカタログ同様、販促ツールという位置付けです。 ちなみに『マネーマスターズ列伝』でジョン・テンプルトンの項に書かれている、次のフレーズが私のお気に入りです。 金儲けを目的とした“収集”にまつわるパラドックスは、株式に限らず、美術品でも不動産でも、あるいはその他何でも同じことだが、ディーラーや画商が売り込みにやっきとなっているものの中には買い得品が決してないということである |
■薬王堂(2017年2月20日) |
薬王堂(3385)は、株価の割安な期間が長かった銘柄です。売上は右肩上がりで伸びていたものの、利益の低迷した時期があったからです。 手元の会社四季報2014年夏号では、予想PERがたった7.0倍でした。定性分析により、地方の小商圏でも成立する同社のビジネスモデルを理解した上で、帳簿上の利益が一時的に低迷している局面で仕込んでおけば、相当に儲かったことになります。 なぜなら、会計利益が成長軌道に回帰したとたんに、株価も飛び跳ねたからです。「良いビジネスの増収減益は狙い目」というバリュー投資の成功パターンとして、覚えておきたい事例です。 |
■ユニバーサル園芸社の第2四半期決算(2017年2月15日) |
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2月13日、ユニバーサル園芸社(6061)の第2四半期決算が発表され、営業利益が前回発表の業績予想を大きく下回りました。 【業績予想との差異】
差異の理由は次のとおりです。 当社グループの基幹事業であるグリーン事業において、(中略)連結子会社のローリング・グリーンズ社の事業譲受によるシステム費用や間接部門費の増加等のM&Aの一時的な取得関連費用が大きな要因となります。 しかしながら、通期の業績予想は次の理由で据え置かれました。会社側は先行きを楽観視しているようです。 第3四半期連結会計期間に連結子会社のローリング・グリーンズ社のクリスマス関連売上が大きく計上され、利額は改善すること等から 同社に関して以前から感じていることを述べますと、次から次へと手を広げすぎです。米国企業を買収したり、BtoCの小売事業に進出するよりは、関東でのグリーン事業に経営資源を集中すべきではないでしょうか。関東と関西の商圏差を考慮すれば、控えめに見積もっても売上を2倍に増やせるはずです。 【セグメント情報】
一般論として、買収に慣れていない企業が好景気・楽観時代に行ったシナジー効果の薄いM&Aは、その大半が失敗に終わるとされています。 しかも同社の稼ぎ頭であるグリーン事業は、オフィスビル市況に連動する、不動産業に近いビジネスです。次の不況のどん底にて、米国撤退とならなければいいのですが・・・。 なお会社四季報の担当記者も、一言いいたかったのか、新春号にて「連続買収で管理部門に負担増」とコメントしているのが興味深いです。 地合いが悪ければ、株価の急落を招きかねないような決算でしたが、株主優待の追加を同時に発表したことで、昨日の株価は堅調でした。個人投資家を小馬鹿にしたような、この手の株価対策も好きになれません。 ここの経営者は、律儀な人物に思えたのですが、私の見立て違いだったのでしょうか。 |
■SHOEIの本質価値(2017年2月13日) |
昨年11月のバリュー投資塾にてSHOEI(7839)の本質価値を試算してみたところ、おおよそ1,310円から1,701円の間でした。 それに対して、同社株の推移は下図のとおりです。 株価というものが、投資家心理の移ろいにより上にも下にもオーバーシューしており、フェアバリューに収まっている期間の方が短いことに驚かされます。 バリュー投資(=長期投資)の視点では、2009年から2013年までならいつ買ってもOKで、2014年以降であればいつ売っても儲かりました。 しかし、そのような投資を実際に行うのは、困難を伴います。本質価値をしっかり意識しなければ、目先のEPSに惑わされてしまうからです。 せっかく安値圏で買っておきながら、低迷を続ける株価に我慢できず、投げされられた方もいらっしゃるでしょう。逆に、過熱相場にのまれてしまい、株価の値下がりを待てず、高値づかみをしてしまうケースもありえます。 同社の製品であるバイク用高級ヘルメットは贅沢品で、景気の影響を多大に受けます。このような銘柄に投資を行いたい場合は、次の不況を待つのがセオリーです。 現に「フィデリティ・ロープライ スド・ストック・ファンド」がお手本のような投資を行っています。 個人的にも、SHOEIはとっても良い会社だと思います。自分の一生を捧げ、経営を建て直した山田勝氏の人柄にも魅かれます。とはいえ、高値で買ってしまっては、何の意味もありません。 |
■コメ兵の業績下方修正(2017年2月11日) |
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2016年12月のショートコラムで取り上げたコメ兵(2780)が、第3四半期決算発表と同時に業績下方修正を発表しました。
修正の理由にて、目に留まった箇所を抜粋します。 全体の約9割を占めるブランド・ファッション事業において、主な商品調達先である個人買取仕入高が累計で前年同四半期比12.8%減と振るわず 個人消費の低迷は循環的要因ですし、インバウンドも特需だったわけですから、そういったところで反動が出るのはやむを得ない面があります。 ただ、リユース業の生命線である個人買取仕入において、ネット買取を専業とする新興勢力との競争が激化しているのであれば(数字からはそのようにも受け取れる)、ちょっとまずいです。新たな脅威となりえるからです。 このように品揃えが十分にできず、人手不足による採用難が続いている中で、同社はこの2月に梅田店、5月に名駅店と大型店を立て続けにオープンします。 とりわけ、梅田店は知名度の低い関西における初の大型店につき、モノの見る目が厳しい関西人に「コメ兵はあかん。ロクなもん置いてない」という第一印象を持たれてしまえば、出足でつまづきます。 「若社長は、この苦境をどう乗り切るのだろうか」と危惧していたところ、ひとつだけ、評価できることがありました。 それは、不採算店舗をスクラップするリストラを行った点です(下図)。全体的な売場面積がそう変わらないことから「新店を出したものの、商品が足らない、店員も足らない」 という事態だけは回避できそうです。 なお、私の同社に対する投資判断は前回と変わりがありません。長期投資の場合、2018年3月期の進捗を確認してから、投資判断を行うべきでしょう. |
■株価というもの(2017年2月10日) |
名著『投資で一番大切な20の教え』より引用します。 相場は割高あるいは割安でも、数年にわたってその状況を維持したり、さらにその度合いを強めたりする可能性がある 我が国の株式市場も、2009年から2012年にかけて割安な状況が続きました。逆に、ここ数年は割高なままで推移しています。 私たちの祖先は、長きに渡って、その日暮らしの狩猟生活を続けてきました。そういうこともあり、人間は未だに短期志向です。 ゆえに、安値圏で株を買ったにもかかわらず、持ちきれずに投げてしまったりします。一方、高値圏では、株価が十分に下がるまで待ちきれないものです。 とにかく、株価とはそういうものだと割り切った上で、粘り強く対処するしかありません。とりわけ、長期投資では。 |
■才能(2017年2月8日) |
以前、ビートたけしさんが久米宏さんと対談を行った際、発した一言が刺さりました。 才能のないことを理解するのが重要な才能 私自身、あれもこれもこなせる器用なタイプではないことから不動産投資は断念しました。優柔不断で即断即決ができないので、デイトレもやりません。小心者につき、高PER銘柄には手を出さないことにしています。 身の丈に合った投資を心がければ、さほど損はしないものです。 |
■投資家チャップリン(2017年2月6日) |
『金融の世界史: バブルと戦争と株式市場』に興味深い逸話が掲載されています。 喜劇王チャーリー・チャップリンが、1929年の株価大暴落を逃れていたという話です。 失業者を主人公とした『街の灯り』を撮影していたチャップリンは、街角の失業者の多さに不信を抱き、大暴落の前年に持株をすべて処分していました。 後日、大暴落で全財産を吹き飛ばした仕事仲間から「その売りの情報はどこで手に入れたのだ」と聞かれたそうです。 観察眼の鋭さが、自分自身を救った例といえます。 |
■TOPIXに投資できるか(2017年2月1日) |
『金融の世界史: バブルと戦争と株式市場』より引用します。この文章を読んで「金融業界にも、まとなことを言える人がいるんだ」と心をあらわれたような気持ちになりました。 また根本的な問題として政府関与が大きく、過保護で企業間の持ち合いもあり、ゾンビ企業が多く生き残っていると言われている日本の株式市場全体が、果たして最も効率的な市場ポートフォリオであるのか、言い換えるとTOPIXなどのインデックス投資が本当に効率的なのかどうかには疑問が呈されています。 私が株式投資に興味を持ったのは1990年代です。資産バブルの崩壊により、企業の不祥事が相次いで明るみに出た時期でした。 素人ながら、堕落していく大企業を横目に「とてもじゃないが、日本の代表するような会社の株なんて買えない。時流に乗っている新しい会社を自ら発掘するしかない」と強く念じました。 もしそう決意していなければ、今の自分はなかったでしょう。 初心者時代の思いは、20年経った今でも変わっていません。悲しいかな、S&P500には投資できても、TOPIXに投資できない状況が続いているからです。 今の我が国において、株式投資で資産を築きたければ、自分で銘柄を選ぶしかないのです。 |
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by 角山智