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ショートコラム(2007年11月)

■テイクアンドギヴ・ニーズ(2007年11月30日)

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cpainvestorさんがテイクアンドギヴ・ニーズについて書かれています。「さすがはプロ」と思わせる素晴らしい分析です。

この銘柄は【PER・PBRマトリックスによる銘柄選択セミナー】でも、(実力を伴っていない)人気株として取り上げましたので、私からもふれておきたいです。

まず、数字を見てください(売上高・経常利益の単位は百万円)。素晴らしい売上高と利益の伸びですが、ここまで売上高が伸び、社員数が増えると、果たして会社としての「管理」ができるものでしょうか。私は、上場企業の本社スタッフとして働いていましたが、この増え方では「不可能に近い」と思います。

 
2002
2003
2004
2005
2006
売上高
5,275
11,444
21,830
33,962
46,417
経常利益
467
1,447
3,501
5,153
6,325
従業員数
136
342
535
797
1,093

太田忠氏は著書「とっておき中小型株投資のすすめ」で「ヒトの力が経営資源となっている企業であれば、おそらく30%以上の成長をすることは、水面下で企業のバックホーンに徐々に亀裂が起こっている可能性があるかもしれない」と指摘しています。そして「表面的に収益が大変な勢いで出ている時は、予想以上に経営体力が消耗している。ブームが去るとその反動が現われ、売上高の急落とともにコストコントロールもままならず、目も当てられない状況になることが多い」と続けています。

同社は、まさにそのような状態に陥ってしまったのです。

次に、ビジネスモデルについて考えてみましょう。テイクアンドギヴ・ニーズは「他人と違った結婚式を挙げたい」というニーズに応えて成長してきました。ところが、同社の式場が増えていくと「他人と同じ」になってしまいます。参入障壁は高くないはずですし、規模の効果も働きにくいでしょうから、成長すること自体が同社にとって阻害要因になってしまいます。

もう一つ、一般論として言われているのが「社長が派手な行動に出る会社は売り」です。芸能人関係については、交際の噂が立つだけでアウトです。まあ、今回はめでたく結婚したわけですが。

これらをまとめると、テイクアンドギヴ・ニーズは
■維持できない拡大を続け
■競争優位性を持ち合わせず
■経営者の行動に問題がある
となり、とても長期投資の対象先にはなりえないと判断できるはずです。

2005年の過剰流動性相場にて、「よりバカ理論」に基づくゲームとして投資するならともかく(私も「よりバカ理論」により不動産流動化銘柄を持っていましたけど)、本当の成長株と信じていたのであれば、それは明らかに分析力不足です。


■カルパースがリアロケーションを検討(2007年11月28日)

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ビッグニュースが飛び込んできましたので、腰が痛くても更新します(苦笑)。

ある方に教えていただいたのですが、カルパースがリアロケーション(資産配分の変更)を検討しているとのニュースが流れていました。太字にて引用します。

 [ロサンゼルス 27日 ロイター] 米最大の年金基金であるカリフォルニア州公務員退職年金基金(カルパース)のリード最高投資責任者(CIO)は、資産を米国株式から国際的な投資にシフトさせることがリターンの改善につながるとの考えを示した。19日の取締役会で述べた。

CIOは、全体の資産に占める米株投資の割合を40%から24%に減らすことが選択肢のひとつとして考えられるとした。実現すれば、米株の保有率は20年超ぶりの低水準となる。

カルパースの広報担当者は27日、現在のポートフォリオの内訳は約40%が米株で、20%が米国以外の株式だと述べた。

もうひとつの選択肢は、米国と米国以外の株式の保有率をそれぞれ30%以下で均等にすることで、リードCIOは「今後10年間で米株と米国以外の株式の保有率を均等にすることは妥当といえる」と述べた。

広報担当者によると、カルパースの取締役会は12月17日に開く会議で、今後3年間の資産配分について決定する。

カルパースに関しては、米国株式の比率が「ちょっと多いかな」という気がしていました。世界を見渡せば、拡大を続けるユーロ圏や成長著しいアジアの国々など、米国以外の方が魅力的に映ります。サブプライム問題にしても「他に有望な貸付先がなかったのか」と思いますしね。最終的に、どのような投資判断がなされるのか、大変興味深いです。

カルパースのアセット・アロケーション

なお、私たち日本の投資家も同じ問題を抱えています。長期的に、株式市場の成長率はGDPと連動します。個人消費にしても人口増によるマーケットの拡大は期待できません。サブプライム問題がトリガーになり、世界的な株高(特にエマージング市場)が崩れることがあれば、投資対象を世界に広げるチャンスととらえてもいいでしょう。

関連コラム:カルパースのアセット・アロケーション


■会計力と戦略思考力(2007年11月23日)

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東京出張時、丸の内北口の丸善にて、本を物色していたところ「会計力と戦略思考力」を見つけました。

この本の特徴は、会計と企業活動を結び付けているところです。冒頭にも「会計の数値を見れば、企業活動をある程度類推することは可能なはずだ」「逆に、企業がおかれた経営環境、業界の特性、あるいは経営戦略を紐解くことで、その企業の会計数値の構造をある程度類推することは可能なはずである」と書かれています。

それゆえ、決算書分析(定量分析)に続いて、ファイブフォース分析とバリューチェーン(定性分析)取り上げられています。両者(定量分析と定性分析)は密接に関連しているというのが、著者の主張です。

このことは、投資家にとっても大切な考え方ですから、一読されることをおすすめします。私自身も「そうか、決算書にはこういう読み方があったのか」と参考になった箇所がいくつかありましたし、今後のセミナーでの説明方法も再考しなければと感じました。「パラダイムシフト」といってしまえば大げさですが、ある意味で小さなショックを受けた本です。


■今、やってはいけないこと(2007年11月22日)

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厳しい状況が続きますね。私も投資暦が12年になりますが、この11月の下げは、1997年、2002年と並んで「きつい」部類に入ると思います。

私が説明するまでもなく、サブプライム問題に端を発した信用収縮が世界中に飛び火している現状では、しばらく大変かもしれないです。

そうはいっても、投資家としては、こういう時期を乗り越えないと長期的に資産を築くことはできません。そこで、今回は「今、やってはいけないこと」を書いてみます。

■いわゆる「バンザイ突撃」

さすがに最近では「今が底、全力買い」という元気な声も聞こえなくなりましたが(これも底値圏の特徴)、人間は負けがこんでくると一発逆転勝負に出たがるものです。テクニカル指標などを鵜呑みにして「今が底、全力買い」と勝負に出たところ、底でなかったらどうするのですか。

個別銘柄も同じで「こんな安値はありえない」と一点買いで飛びついたところ、あなたの知らない悪材料を抱えていたとしたら・・・。そういう投資家に限って土俵際まで追い込まれているわけですから、もう終わりですね。

太平洋戦争でも、バンザイ突撃によって戦闘そのものに勝利したことはありません。逆に、今は堅固な防御線を敷き、徹底した持久戦を行うべきです。

■正しい戦略の変更

たとえば、世界株式インデックスファンドの積み立てを行っているなら、続けるべきです。世界ベースでは、資本主義社会は発展しているので、株価は戻ります(ただし、特定の国や個別銘柄には当てはまらないので注意)。逆に、安値で買えることを歓迎すべきでしょう。

■一貫性のない投資手法

典型的なのが、今までホールドしていたのに、一転して損切りをはじめるケースです。投資では日常茶飯事ですが、自分の見込み違いが発生した場合、どう対応するかは前もって決めておくべきです。

私は、買値より15%の下落で一旦ロスカットすると決めていますから、「こんな安値はないよ〜」と心の中で泣きながら(これは本当)、売り注文を出しています。でも、昨年から、このルールに助けられているのも事実です。

バリュー投資家は、損切りに否定的な企業価値重視が多数派かもしれません。ただ、厳密にいえば、企業価値を決める変数の中には投資家のリスク許容度も入っていることをお忘れなく。いずれにせよ、中途半端は避けるべきでしょう。私(角山)が何と言おうが「断固ホールド」なら、それでいいと思います。


■書籍の進行状況(2007年11月20日)

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お昼過ぎ、2銘柄に指値を入れたところ、私が注文するなり株価が戻ってしまいました(苦笑)。まあ、そんなものですね。買いのチャンスは何度もあるでしょうから、じっくり取り組むつもりです。

本題ですが、お待たせしている5冊目の「国際バリュー投資入門(仮称)」は年内に初校が出そうです。このペースでは来年2月頃でしょうか。

6冊目のバリュー投資本は、今月に入ってペースダウンして、1/4ほどの進み具合です。こちらは3月出版予定ですから、来年は書店に2冊が並ぶかもしれません。

来年1月の新春セミナーについても、そろそろ内容を考える時期になりました。これから忙しくなりそうですが、仕事があるのはありがたいことと思い、頑張ります。


■低位バリュー株投資戦略セミナーDVD(2007年11月18日)

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私が投資家として信用するのは、10年以上のキャリア(実績)を持っている方です。マーケットで10年に渡り通用するには、運だけではなく、実力が必要です。また、10年の間には、自分の投資手法が通用しない(パフォーマンスの劣る)時期もあります。それを乗り越えてきた投資家は「いぶし銀」のような輝きを放っているものです。

そんな数少ない投資家の一人が浜口準之助さんです。この度、低位バリュー株投資戦略セミナー DVDが発売されました。私はこのセミナーに出席したのですが、感じたことは「言葉の重み」が違うということです。

テキストから何点か抜粋してみましょう。
■有効な投資戦略の多くは、実施する上では少なからぬ抵抗感がある
■株式運用とは、常に将来という未体験ゾーンへの挑戦。欲と不安と恐怖に振り回される非常にメンタルな世界
■自分あるいは他人の予測力を過大評価した結果、自滅する投資家が多いのが現状

マーケットは、厳しい局面に入りつつあります。こういう時こそ、修羅場を何度もくぐりぬけてきた先人の言葉に耳を傾けてみるのも一考です。あなたもマーケットの「10年選手」を目指すのであれば。


■ハンディキャップ(2007年11月15日)

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今の仕事をしていて、サラリーマン時代と「世界が違う」のは、いわゆる「エリート層」に属する方ともお付き合いするようになったことです。医師、会計士、若くして会社役員といった方々です。その中では、東大卒も珍しくありません。

彼らを見ていて、比較的裕福な家庭に育ち、優良な遺伝子を受け継いだ上で、ご両親の動機付けにより、小さな頃から目的意識を持って物事に取り組んできたであろうという背景を感じます。

何となく大学を卒業して、何となく就職してサラリーマン生活を送ってきた私には、それが目に見えないハンディキャップのように思えるのです。著書やブログで情報発信を行うのは、そのような方々が多いのですが、一般人とは習慣そのものが違うだけに、憧れることはできても、書かれているとおりできるのか疑問が残ります。

では、なぜ、私がそのような世界に足を踏み入れることができたのかといえば、奇遇にも投資という「特殊な分野」にかかわっているからではないでしょうか。


■ボラティリティ(2007年11月14日)

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最近感じるのは、マーケットのボラティリティが高くなっていることです。

私は、買値より15%下げたものは一旦売却していますが、下手なタイミングで買い付けると、あっという間にロスカットラインまで達します。仕方なく売却すると、買い戻す間もなく急騰するケースもありました。これでは、新規買いが難しくなります。

マーケットの底値圏では、株価が地を這うような「なぎ」の状態になるはずです。激しく動いているうちは、どちらかへ行きたがっているとも取れます。世間の状況を鑑みると、楽観的にはなれないかもしれませんが。

こういう時期は、一定のポジションを保ちつつ、静観するのも一案です。「本業に励みなさい」という神様からのメッセージだと思って。

個人投資家の場合は、プロと違い、儲け損なってもクビになることはありません。今後も、投資チャンスは何度も訪れるでしょうから、ここはゆったりと構えるべきでしょう。

人のことは言えませんけど、近視眼的な行動は、ろくな結果にならないものです。


■マキ製作所の分析(2007年11月11日)

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以前のコラムにて「手始めに、経営破たんしたマキ製作所を分析してみるのも一案です」と書きましたところRetriever2000さんが実際に分析されています。

よく調べられており、おおまかにはRetriever2000さんがの書かれているとおりでいいと思います。コメントを求められましたので、私なりに細かいところを分析してみます。

1.貸借対照表(バランスシート)

マキ製作所 貸借対照表

まず、目に付くのは、現預金の少なさ、売上債権と棚卸資産の多さです。売上債権回転月数は4か月以上がレッドゾーン、棚卸資産回転月数も機械メーカーは3か月台が標準です。

■売上債権回転月数・・・前期7.6か月、当期7.8か月(固定化営業債権を含む)
■棚卸資産回転月数・・・前期5.8か月、当期6.4か月

そして、当期の固定資産に「固定化営業債権」なるものが登場しています。固定資産に営業債権が計上されるのは「短期的に回収不能」と考えるのが自然でしょう。貸倒引当金のカバー率も67%と異常です。はっきりいってしまえば「固定化営業債権」とは、破産債権、更正債権等の回収困難な債権です。この「固定化営業債権」ですが、表示させるのはまずいと思ったのか、有価証券報告書では「その他」に組入れられてしまいました。

棚卸資産については「原価法(簿価)」で評価されています(注記に「原価法」の記述があります)。これだけ売れていない(回転月数の高い)棚卸資産の簿価を信用することができるのでしょうか?

次に、気になるのは、負債(特に有利子負債)が多く、純資産が少ないことです。

■当座比率・・・前期69%、当期63%
■D/Eレシオ・・・前期1.7倍、当期2.1倍

棚卸資産が回転していないので、安全性には当座比率を使いました。100%を切っていますので、資金繰りに問題があります。D/Eレシオ(有利子負債÷少数株主持分を除く純資産)は、1倍未満が望ましく、2倍以上は過剰債務なのですが、相当高いです。

この時点で、低PBRで株主優待つきであっても「近寄ってはいけない企業」という判断ができると思います。

2.損益計算書

貸借対照表を見た時点で言えるのは、低俗な表現が許されるのであれば「銀行員の彼氏なしで生きていけない女(企業)は化粧が濃い」ということです。

皆さん、PLの見方はよくご存知でしょうが、売上原価の計算方法までは知らないかもしれません。

■売上原価=期首棚卸高+当期原価−期末棚卸高

ということは、期末棚卸高に裁量の余地があり、水増し(もちろん、合法的に)することができれば売上原価は下がります。マキ製作所の場合、BSとPLより当期原価は9,051(百万円)となります。

■売上原価8,271=期首棚卸高4,851+当期原価9,051−期末棚卸高5,631

ここで、ちょっとした試算を行います。棚卸資産回転月数が5.8か月から6.4か月に上昇していますが、仮に5.8か月のままであれば、期末棚卸高は5,136(百万円)となり、売上原価も5億円程度増えます。当期の営業利益は3億円あまりですから、何が言いたいのかお分かりですね。「銀行員の彼氏に捨てられないよう、厚化粧している」可能性も否定できないわけです。

■修正期末棚卸高5,136=売上高10,626÷12×棚卸資産回転月数5.8か月
■修正売上原価8,766=期首棚卸高4,851+当期原価9,051−修正期末棚卸高5,136
■修正売上総利益1,860=売上高10,626−修正売上原価8,766
■修正営業利益△172=修正売上総利益1,860−販管費2,032

3.キャッシュ・フロー計算書

CS(キャッシュ・フロー計算書)は「目じり」です。厚化粧をしても、ここだけはごまかせません。当期は、本業で1,130(百万円)のキャッシュ・アウトが発生してしまい、会社の金庫に467(百万円)しかなかったので、銀行員の彼氏に泣きついて1,420(百万円)用意してもらったというストーリーです。

 
前期
当期
営業CF
535
△1,130
投資CF
△122
△122
財務CF
△777
1,420
現金同等物
467
607

4.破たんの原因

マキ製作所の破たん原因は、棚卸資産でした。56億円あまりの棚卸資産を調べてみたところ、44億円分の「価値がなかった」ことが判明します。損失が68億円にのぼり、23億円の債務超過に陥ったため、ギブアップしたのです。

マキ製作所のバランスシート(イメージ図)

今回、経営破たんを起こすとは「神のみぞ知る」ことだったかもしれませんが、バランスシートが相当痛んでおり、業績悪化(特別損失の発生)についてはある程度予見できたはずです。

ところが、売上と利益(及び来期予想)にばかり気を取られていると、業績悪化の予兆を見逃してしまいます。私のCDは後回しでもかまいませんから、次の教材で勉強されることをおすすめします。

■「決算書の暗号を解け! ダメ株を見破る投資のルール」
■「マンガ 決算書でわかる株式投資入門(原文を読みたい方は「投資家から「自立する」投資家へ」)」
■「「粉飾決算にだまされるな!決算書深読み術」レポート&音声セミナー
【公開情報の読み方セミナーCD】(ここでは債務超過に陥ったニイウスコーを例に説明しています)


■5年前の11月(2007年11月10日)

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2002年、日経平均は11月14日に8,303.39円の安値をつけます。

当時は、下げ相場が3年近くに及び、1999年のITバブルで作った含み益も底をつきかけていました。マーケットでは「みずほとUFJがつぶれる」という噂が流れました。今となっては笑い話ですが、預金封鎖の話題まで出たものです。心配事だらけで、明るい話は皆無でした。

「もう、株価が戻ることはないのだろうか」「長期的に株式投資が有利だと聞いていたが、日本だけは例外なのだ」そう思い始めていました。

それでも、私の脳裏には、次のことが焼き付いていました。

1997年秋の平成金融恐慌による株価下落になすすべもなく沈黙していまった自分。マネー誌からも株式特集が消えた1998年に「電卓を叩くまでもなく割安」だった株を買えなかった自分。1999年の暴騰で呆気に取られた自分。

ここであきらめてしまっては、1995年に投資をはじめてから7年間の徒労だけが残ります。「いずれ1999年の再現は起こる。なぜ、買っておかなかったのかと悔いの残るようなことだけは避けよう。そもそも、よほどやり方を間違えていない限り、長期投資で富を築けない資本主義社会なんてありえない」自分にそう言い聞かせていました。

我慢を強いられたのは、そこから「たった」半年でした。その後、どうなったのかは書くまでもないと思います。


■CFROA(2007年11月7日)

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決算書の暗号を解け! ダメ株を見破る投資のルール」で興味深く感じたのは、PL(損益計算書)とBS(貸借対照表)のバランスチェックにROAを使っていることです。

ROAの低下は、利益以上に資産が増えていることを意味します。費用化を先送りすれば資産が増えますし、資産効率の低下は望ましくありません。

ところが、この本では「会計利益を信じてはいけない」と主張しています。そうであれば、資産効率のチェックという観点からはCFROA(キャッシュフロー資産収益率)の方がふさわしいような気もします。CFROAには複数の計算方法がありますが、資産効率のチェックに使う場合は次の式でいいと思います。

CFROA=営業CF÷(総資産−現金性資産+リース資産)

キャッシュフローに営業CFとFCF(フリー・キャッシュフロー)のどちらを使うかは少し悩みました。

総資産から現金性資産を引くのは、事業用資産を求めたいからです。事業用資産に「運転資本+有形固定資産」を使うやり方では、資産計上された費用(長期前払費用や繰延資産など)が抜けてしまいますし、最近では無形固定資産(ソフトウェアやのれん代など)も無視できません。

簿外のリース資産は紛れもない事業用資産ですから、足し込んでおくべきです。

CFROAを追加することにより
■PLとBSのバランス・・・ROAでチェック
■PLとCFのバランス・・・アクルーアルズでチェック
■BSとCFのバランス・・・CFROAでチェック
とそれぞれのバランスをチェックできます。

3つもチェックするのが面倒であればCFROAだけでもいいのではないでしょうか。入ってくるキャッシュ以上に資産が増えているのは、会計利益がどうであれ、企業として望ましくない状態だからです。


■アクルーアルズ(会計発生高)(2007年11月4日)

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KAPPAさんの「東大卒医師が教える 科学的「株」投資術」を読んで、気になっていたのがアクルーアルズ(会計発生高)です。自分の中でモヤモヤしていたのですが「決算書の暗号を解け! ダメ株を見破る投資のルール」にて勝間和代さんが明快に解説してくれました。

会計発生高=(当期純利益+特別損失−特別利益)−営業CF

特別損失、特別利益を無視できる場合(通常時)は
会計発生高=当期純利益−営業CF
となります。

キャッシュ・フロー計算書では、おおまかに
営業CF=当期純利益+減価償却費±運転資本増減
ですから「運転資本を見ておけばいいのではないか(特に売上債権と棚卸資産が増加していないか)」と思われるかもしれないです。

しかしながら
営業CF=当期純利益+減価償却費−費用の資産化±運転資本増減
のケースでは会計発生高でないとチェックできません。

また、減価償却費にしても
■定率法から定額法への変更
■耐用年数の延長
が行われた場合、会計発生高に反映されます。

そう考えると「必要以上に利益を多く見せかけていないか」「利益は現金化できているか」のチェックポイント3つ
1.減価償却費に小細工を施していないか
2.費用の資産化が行われていないか
3.運転資本は膨らんでいないか
をまとめて見ることができるアクルーアルズ(会計発生高) は優れものであることがわかります。これから取り入れたい指標の一つです。


■投資と恋愛の共通点(2007年11月3日)

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今回は、柄にでもないテーマです(笑)。

山崎元氏の新作「新しい株式投資論」には「とくに他人に紹介された美人には、つい惹かれてしまうかもしれないが、くれぐれも気をつけよう」という文面があります。

思わず「上手いこと言うなあ」とうなってしまいました。最近では、離婚も珍しくありませんが、奥さんが「友人から紹介された美人」というケースがけっこうあるような気もします。株式市場でも、雑誌やネット上での安易な推奨に乗り、グラマー・ストックに手を出した投資家が痛い目をみるのは、いつものことですね。

なお、著作では「自分で見つけた、愛嬌のある半美人、性格のいい不美人と仲良くして、おおいに幸せになってほしい」という結びの文章に続いています。

投資と恋愛のコツをかけた、趣のある終わり方は著者ならでしょうか。


■セミナーのプライシング(2007年11月1日)

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かねてから「角山さんは良心的ですね」と言われることが多く、褒め言葉として受け取ってきました。しかしながら、裏を返せば「プライシングが甘い」と指摘されていることにもなります。

セミナーにしろ、プライシングは大問題です。価格以上の価値をご提供することはもちろんですが、自分を「安売り」するのも愚かな行為になります。「適正価格(フェアバリュー)はいくらだろうか?」と自問自答してみるのですが、けっこう難しいです。

パーソナルブランディング」や「金持ち父さんの起業する前に読む本」を読むと「価格でなく、価値で勝負すべき」と書いてあります。今まで集積してきたノウハウや下げ相場でも崩れない運用を考慮すると、もう少し上のプライスゾーンを目指したいのですが、いつも来てくださる常連さんの顔が浮かんでしまう自分はお人好しなのでしょうか。

来年1月には新春セミナーを予定していますが、プライシングも再検討したいです。参加料をあげれば「儲かっていいですね」と嫌味の一つも言われそうですが、講師にもプレッシャーがかかります。なぜなら、参加料に見合うものをご提供できなければ、次回は誰も来てくれなくなるからです。

ただいま、新春セミナーのテーマを選定中です。クオリティとプライシングのバランスをどう取るかも一つの課題です。



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