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80mkII愛友会 別館

2016/08/31(水) ユリ熊嵐

アニメ
MY LITTLE PONYと一緒に注文した,ユリ熊嵐 英語版DVDも視聴してみました。


ユリ熊嵐 コンプリートシリーズ / YURIKUMA ARASHI: COMP SERIES(Amazon.co.jpアソシエイト)

一見すると女の子同士がキャッキャウフフする美少女動物園みたいな作品ですが,実際は毎回のように登場人物が死んでいくという割と凄惨な内容だったり。
熊が人を食べ,武装した女学生が熊を駆除し,人間が人間を排除するという重苦しい内容なのですが,頻繁に挿入されるギャグ要素のおかげで恐怖すべき場面で笑わされてしまうという,よくわからない感覚を味わえる作品です。


様々な暗喩に満ちたわかりにくい作品なので英語版はどうかと思いましたが,かなり上手にローカライズされていると感じました。
吹き替えの演技も日本語版に負けておらず,あのコミカルだったり退廃的だったりする内容をきちんと表現できていたと思います。

ただ,日本語ならではの独特な言い回しはバッサリ削られてしまっていることが多いです。例を挙げると
「銀子ったら,食い意地張り之助なんだから」→"You are such a glutton, Ginko."
「あいつ,じゃまじゃまジャマーだわ」→"That kid is in the way like big time."
「イラ イラ いらなーい!」→"Shut up. Shut up. Shut up!"
「弱肉強食・鮭肉サーモン」→"It's a dog-eat-dog world. And bear eat salmon."
というように,元の台詞にあったダジャレや間抜けな語感が抜け落ちてしまってます。
本作品はこういう小洒落た台詞が頻繁に出てくるので,その点は少々物足りない印象を受けました。
熊の唸り声も「がうがう」「ぎゃうぎゃう」「ぎゃるるるる」と日本語版では個性があったのですが,英語版ではこの辺は"growl growl"に統一されてしまって何となく味気ないです。
まあ,このような言語の性質に依存した言い回しは翻訳不可能な領域だと思うので仕方が無いことですが。
1話,12話では担当声優によるコメンタリーが収録されていたのですが,そこでも日本語特有のハイコンテキストな文章を英語で表現するのは大変だというような話をされていました。

逆に,英語版の方が気に入った台詞もあります。
るるが紅羽を呼ぶときの「クレちん」が"Cutie pie"をもじった"Kure pie"と訳されているのは,洒落が効いていて良いと思いました。
また,銀子の通り名「ヒトリカブトの銀子」は"Ginko the lone wolfsbane"と訳されてますが,これはlone(独り,孤独),wolfsbane(トリカブト)に加えて"lone wolf"(独りで行動する一匹狼)の意味も加わっている実にナイスな訳になっています。

あと,登場人物の好物であるちくわの磯辺揚げや塩辛がchikuwa, shiokaraと,そのまま使われてるのが予想外でした。
上記のリンク先を見てわかるとおりWikipediaの英語ページもできてるみたいですし,意外な日本語が海外進出してるんですね。実際に,現地でどれくらい使われている言葉なのかはわかりませんけど。


久しぶりに本作を視聴しましたが,一度見ただけでは内容がわかりにくく何度も見るたびに色々な発見があるというような作品なので,今回も十分に楽しめました。
個人的にもかなりお気に入りの作品なのですが,同時に他者にはあまりお勧めしづらい作品でもあります。
話がわかりにくいというのもありますが,それ以上に性的な描写が多いというのが厳しい。



もう,オープニングからして全裸の少女がキスしたり頬ずりしたりという絵がこれでもかと言うくらい出まくっていて,家族と一緒に見るのは気まずいなーという感じです。
他人に勧めるどころか,この作品が好きだと家族やリアル知人に知られるだけで,変な人扱いされそうでちょっと怖い。

同時に,このような考え方をする自分は本作品における「透明な嵐」の側に属する人間,世間体を気にしてマイノリティを排除する側の人間なんだなぁと思い知らされます。
最後の方のシーンでも「私はスキをあきらめない」という意志を最後まで貫く主人公達よりも,「迷うな,考えるな,悪は排除せよ」と叫ぶ「透明な嵐」の側に感情移入してしまったりして,何とも後ろめたい気分です。
そして,こういう複雑な感情を呼び起こしてくれるこの作品がますます好きになります。

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