関空の異変塩漬け株への対処投資のパフォーマンス
診療報酬のマイナス改定投資と投資の間フルポジ派の意見
ポジション管理
マンデベの営業CF工事会社の利益率

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ショートコラム(2019年11月)

■工事会社の利益率(2019年11月27日)

最近、工事会社を調べることが増えてきました。地味なイメージからか、投資家に不人気で、株価が割安だからです。業種柄、大がかりな設備投資が不要で、キャッシュリッチな企業も少なくありません。

10年単位で見れば、売上はそんなに増えていない会社が大半です。業務内容や地域における、棲み分けがなされているように感じられました。

ビジネスモデル的には労働集約型で、長引く建設不況を受けて人の採用も積極的に行ってこなかったことから、受け入れられる仕事量に限りがあるのかもしれないです。

一方で売上高利益率は、大幅に向上している会社が目に付きました。工事会社は製造業のような「規模の経済」があまり働きません。いくら儲かるかは個別案件毎の採算次第です。

会社のキャパシティに対して引き合いが多ければ、選別受注が可能になります。各社とも利益率が向上した主な理由として「売上総利益の改善、不採算案件の削減」をあげていますが、仕事を選り好みしている印象を与えかねない選別受注という言葉を避けているとも受け取れます。

やがて景気が悪くなれば、実働部隊を手持ちぶさたにさせないために、儲からない案件でも受注せざるを得なくなるでしょう。当然ながら、利益率は悪化します。

ゆえに工事会社の売上高利益率は、今がピークとも考えられます。PERが10倍を切っていても、一概に割安とは言い切れません。

景気が回復する前の売上高利益率を考慮したり、あるいは過去10年間の平均値を用いてEPSの計算をやり直し、それでも投資に値するかどうか確認したいものです。


■マンデベの営業CF(2019年11月25日)

マンションデベロッパーには、営業キャッシュフローがマイナスの会社も少なくありません。そもそも、キャッシュアウトの先行するビジネスモデルなのです。

営業CFの入金と出金を別々に考えてみれば、分かりやすいでしょう。

入金は、今年売れたマンションの販売代金です。

一方で出金は、今年の営業費用に、来年販売するマンションの建築費用、再来年販売するマンションの開発費用が加わります。

マンションは開発から販売まで2年程度を要するため、来年販売するマンションはある程度まで形ができていないと間に合いません。再来年の分も、少なくとも土地の仕込みは終えているはずです。

当然ながら、土地の仕入代金、原材料費、職人の日当などの支払いが先行します。そういった売上原価は棚卸資産としてバランスシートに積み上げられ、マンションが売れたときに費用計上されて、差額が帳簿上の利益となります。

さらに上場企業として投資家から増収増益を期待されているため、来年は今年より、再来年は来年より、いっそう多くのマンションを売ろうとします。年を追うごとに、仕入費用が増えていく仕組みです。

しかるにマンデベは、帳簿上の利益を棚卸資産の増加額が上回ってしまい、営業CFがマイナスになります。不足する現金は、銀行融資などで補っているケースが大半です。

一見、綱渡りに思えるビジネスモデルですが、マンションの販売が好調で、銀行が融資に積極的な好況下においては、ひたすら増収増益路線を突っ走り、株価も大幅に値上がりします。

問題が発生するのは、マンションが売れなくなり、銀行も融資を渋る不況期です。運転資金が回らなくなり、苦境に立たされます。

2008年のリーマンショック直後、独立系の新興不動産会社の1/3が経営破たんしたのは、以上の理由です。

要するにマンデベは売買する時期を選ぶ、長期トレードに適した銘柄です。ビジネスモデルを理解した上で投資するのは一向に構いませんけど、足元のような局面にて、ただ単に割安だからという理由で買うのはリスキーだと思ってください。

ちなみに外部講師を務めている初心者向け株式投資セミナーでは「マンデベのような2年連続で営業CFがマイナスの会社はとりあえず避けましょう」といった説明に留めています。キャッシュフローに関して、突っ込んだ話をすれば、受講者が混乱してしまうからです。


■ポジション管理(2019年11月20日)

株式投資セミナーの外部講師として招かれたとき、なるべくポジション管理(ポジションコントロール)の話を盛り込むようにしています。そのとき使用するテキストが下図です。

ポジショントレードなどの短期売買では、投資を行う前にこの作業を行い、1回のトレードで取るリスクを予め限定しておくのがセオリーです。どの程度までリスクを取るかについては、1%までが望ましいとされています。

また投資資金全体にも、この考え方を応用できます。年初に1000万円で始めた投資が、その年の途中で900万円にまで減ってしまえば、いったんポジションを解消して(すべての持株を売り切り)、年末まで頭を冷やすのです。

いわゆるサーキットブレーカー機能です。このやり方を併用すれば、1回のトレードで多大な損失を出さずに済み、年間の最大損失額も投資資金全体のマイナス10%までに抑えられます。

一方、長期投資では、リスクを限定するための機械的な損切りを行いません。投資の失敗が明白になり、自らミスを認めた時点で、泣く泣く持株を手放します。それゆえ売却に至るまでに、株価が相当に下げてしまい、深手を負ってしまう恐れがあります。

この件に関して、タープ博士はプロテクティブストップの使用をすすめています。長期投資家といえども、最悪の事態に備えておくことが望ましいです。

ポジションコントロール


■フルポジ派の意見(2019年11月19日)

このショートコラムに何を書こうか思案していたところ、メールにて、フルポジに対する私なりの見解を求められました。

株式はプラスサムで、相場の予想は出来ないのだから、常に割安な銘柄を組み替えていけば良い!

立派な意見だと思います。今度、世界経済や株式市場がどのような状況に陥ろうとも、この投資方針を貫くことができれば、投資家として大成できるに違いありません。

問題は、果たしてそれが実行できるか否かです。株式投資セミナー講師の仕事を初めて14年になりますけど、株価が高値を付けた直後のセミナーは盛況となり、その後に少し下げただけで会場が閑散とする光景を何度も見てきました。

常にフルインベストメントを行うか、その場の状況に応じて株式と現金の比率を入れ替えるかは、投資家の性格、価値観、投資目的、リスク許容度、人生におけるステージ、家庭環境、年収の安定度、資産状況などに応じて予め決めておくべきでしょう。

最悪なのは、株が高値を付けているときに買い、安値を付けているときに売るという選択です。米国で行われた調査によれば、個人投資家の大半がそういった行動を取っています。

かくいう私も、かつては腹一杯に株を買い、ブイブイ言わせていた時期がありました。考えを改めたのは、2008年のリーマンショックで多大な損失を計上したからです。

そのとき、初めて売買履歴を分析してみたところ、自分の勝っている局面と負けている局面が明確に分かれていることに気づきました。

しかるに今は、自分の勝てそうな相場のみ思い切ったポジションを持ち、それ以外はせいぜい打診買いに留めるように改めています。

なお私のような凡人が勝てるのであれば、世間一般の個人投資家も同じでしょうから、株式投資セミナーでは「私なら、足元の局面をどう見るか」という個人的な視点も紹介しています。

相場の予測ができないのは、その通りだと感じることが多いです。よって景気循環と信用サイクルが、どの辺りに位置しているかを大まかに見る程度に留めています。

次に私の勝てる局面がいつ訪れるのかは、正直なところ、見当が付きません(来年の今頃、買い場になればいいなという願望は持っていますが)。しかし、実際にそうなれば、今だと分かります。それだけの知見と経験値は持ち合わせているつもりです。

極力避けたいのは、せっかくの投資チャンスが訪れるまでに余計なものに手を出して、投資資金とモチベーションを消耗してしまうことでしょうか。だから、ひたすらじっとしているのです。

最後にまとめておきますと、投資のやり方に正解はなく、自分に合っているものが一番です。現在の私が「自分の勝てそうな局面のみ勝負する」主義なだけです。それ以外のやり方を否定する気は毛頭ありません。もちろんフルインベストメントもOKです。

では自分の方針が定まっていない場合は、どうすればいいのでしょうか。まずは投資家の見習いとして、投資額に上限を設けて、とりあえず3年間あれこれと試行錯誤してみてください。様々な経験を積み、それから決めても遅くないはずです。


■投資と投資の間(2019年11月16日)

続マーケットの魔術師』には、株式トレーダーだけでなく、バリュー投資家のケビン・デーリーやジョエル・グリーンブラットも登場します。ケビン・デーリーの章で、次の記述が印象に残りました。

投資と投資の間――相場から離れている時期――こそが、投資で成功するために大変重要になることがある。

時には相場から離れることも、投資することとほとんど同じぐらい成功にとって大切かもしれない。

相場環境があなたの手法にとって不利なときや、うまくいく機会がないか不十分なときには、傍観する忍耐力が必要だ。

中小型株の乱舞した2017年の熱狂に「2005年相場の再来」を感じ取った私は、2018年以降、あまり積極的に投資する気になれませんでした。

かといって守備範囲外である大型株に逃げ込むのも賢明と思えず、銘柄分析を続けながら、ここ1年以上は様子見を続けています。

一介の投資家として、常に「買いたい」気持ちは持っています。この状況をスポーツに例えれば、ずっと試合に出場できない中、黙々とトレーニングを続けている補欠選手のようなもので、とっても辛い立場です。

しかし相場から離れているからこそ、できることもあります。ポジションを持っていないために、自分自身の投資について客観的に見つめ直すことができるのです。

高値を更新中の日米株価指数を横目に、「単なる皮算用に終わるかもしれないな」とつぶやきつつ、「次の投資チャンスでは、こういった売買をやってみよう。あの手の銘柄群を狙ってみよう」といった、やりたい投資の作戦を練っています。


■診療報酬のマイナス改定(2019年11月14日)

朝日新聞によれば、医療サービスや薬の公定価格「診療報酬」が2020年度の見直しでマイナス改定となる見通しです。関連業種にとって逆風と言えそうです。

とりわけ薬価はマイナス改定が続いており、主力品の相次ぐ特許切れに苦しむ先発品メーカー、設備投資の償却負担が増大しているジェネリックメーカーの減益要因になりかねません。

ディフェンシブセクターに位置付けられる医薬品ですが、自社で製品の価格を決められない規制業種ゆえ、収益が国策に左右される点には注意が必要でしょうか。

診療報酬の改定率推移


■投資のパフォーマンス(2019年11月11日)

株式投資のパフォーマンスは、勝率と損益比率(リスクリワードレシオ:平均利益÷平均損失)で決まります。勝率50%、損益比率1倍でトントンです。

パフォーマンスをプラスに持っていきたい場合、少なくとも勝率か損益比率のどちらかを改善させる必要があります。

改善余地が残されているのは、勝率より損益比率のほうでしょう。負けが付き物の投資において、勝率を高めるのは難しいです。一方で損益比率に関しては、利益水準はそのままでも、ロスカットの徹底により損失を抑えることで数字を上げられます。

ちなみに私が個人投資家として何とかやってこれたのは、勝率50%、損益比率2倍を維持できているからです。

目標としては勝率60%、損益比率3倍を念頭に置いています。この数字に少しでも近づけるために「何をどうするべきか」が自分自身の課題です。


■塩漬け株への対処(2019年11月6日)

外部講師を努めている株式投資セミナーにて、最後の時間に、私自身の転機となった出来事についてお話ししています。

2001年に長らく放置していた塩漬け銘柄の損切りを決行した。一時的に大きな痛みを伴ったものの、初心時代の失敗を清算することで、前向きな気持ちになれた。

その後もマーケットに食らいつき、2003年の上昇相場に最初から乗れたことで多大な成果を上げた。

またセミナーの休憩時間や終了後に「長らく塩漬けにしている銘柄をどうしたらいいでしょうか」とご相談に来られる方には、次のようにお答えしております。

個別銘柄に関してのアドバイスはできませんが・・・。しかし一般論として「この株、もう売ったほうかいいかな」と誰かに聞いてみたくなったときは売り時です。

リピータとなってくださったお客様からは、セミナーのアンケートに「塩漬け株の損切りができました」というメッセージを添えていただくことも増えました。

心のどこかで「売った方がいいのかな」と思っている塩漬け株を持ったまま投資を続けても、いいことはほとんどありません。

奇しくも日経平均が高値を付けている足元の相場は、塩漬け株の処分にもってこいの状況です。いっぺんに売り切るのが嫌なら、段階的に損切りしてみてください(下図)。

2001年の私のように、晴れ晴れした気分になれるはずです。

塩漬け解消アクションプラン


■関空の異変(2019年11月4日)

10月24日の午前7時前、私は関西空港駅に到着します。8時発の仙台行きピーチ便に乗るためです。

早朝から、関西空港駅の自由通路はアジア人の旅行客でごった返しているはず。人混みを覚悟していた私は、拍子抜けしました。

閑散としていたからです。いつも必ずと言っていいほどすれ違う、若くして成功した青年実業家風の韓国系らしき男性と連れ添って歩いている美人女性(整形しているのか、みんな同じ目元をしている)のカップルを一組も見かけませんでした。

出発前の7時50分過ぎに飛行機のドアが締まります。普段であれば、客室乗務員がバタバタしている時間帯です。乗客は、どうやら乗り慣れた常連ばかりみたいでした。

その後、出発の順番待ちをすることもなく、8時過ぎには飛び立ちました。今までは、8時半前まで離陸できないことが度々だったにもかかわらずです。おそらくアジアからの乗り入れ便が相当に減っているのでしょう。

仙台空港にも早着し、30分の遅れを見込んで旅程を組んでいた私は、仙台駅で時間つぶしをすることになります。

とにかく、今回の関空は異変と思えるほど空いていました(もっとも1〜2年前が良すぎたのかもしれません)。我が国の経済にとって、何らかの悪影響がでなければいいのですが。



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