世界の辺境株式市場で利益を上げる手法
「“目利き力”養成講座」音声CD御用聞き営業ニトリが成長した理由
長期の景気循環と株価心残り自営業の宿命兼業投資家の強み
機関投資家の弱み単純な原則ライトオンの業績下方修正

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ショートコラム(2019年5月)

■ライトオンの業績下方修正(2019年5月30日)

5月28日に発表されたライトオンの業績下方修正で、次の文面が目に留まりました。

下半期の売上高は既存店売上高前年比103.0%と計画をしておりましたが、最大の商戦であるゴールデンウィークでの販売は苦戦し、第3四半期会計期間の既存店売上高前年比は97.2%と計画から大きく乖離した状況にあります。

この前の10連休に近所のショッピングセンターまで出向いたとき、賑わっている普段の休日に比べて、思いのほか空いていたのが気になっていました。

株は連想ゲームの一面があります。ゴールデンウィークの販売不振が同社だけなのか、それとも全体的に悪いのか、間もなく公表される5月の月次に注目したいです。


■単純な原則(2019年5月29日)

ポール・ゲティの大富豪になる方法』より引用します。

安いときに株を買って、それをずっと手放すな。安ければ安いほどいい。まわりのゴタゴタに気をとられずに、流れに乗り続けろ。長期的に物事を考え、ときどき浮き沈みがあっても無視するんだ・・・。

言葉に表すと、単純な原則です。しかし、いざ実行するとなれば、そう簡単ではありません。

かくいう私自身も、長期投資のつもりで買った株を持ちきれず、大きな利益を取り逃してしまうことが多々ありました。当時はそれほど安いと思わなかった買値も、今から振り返れば、破格の安値だったりするのです。

もっと気合と根性を入れて投資を行えるよう、メンタルを鍛えるべきかもしれませんけど、そもそも性格は変えられません。長所は短所の裏返しですし、慎重なタイプだからこそ、生き長らえているのも事実です。

旧態依然の精神論を振り回すより、株を持ち続けることができるような、何からの仕組みを作るほうが合理的でしょう。会社に例えれば、光通信みたいに「気合と根性」で稼ぐ方式はなく、キーエンスのような「ロジック」で儲けるスタイルです。

今、そんなことを考えています。


■機関投資家の弱み(2019年5月25日)

苦瓜達郎氏の著書『ずば抜けた結果の投資のプロだけが気づいていること 「すごい会社」の見つけ方』にファンドマネジャーの気苦労がしのばれる記述を見つけました。

プロの投資家は、お客様からお預かりした資金を運用しています。ですから資金が入ってくれば、原則として投資しなければなりませんし、解約するお客様がいれば、売りたくないタイミングでも株を売って現金化し、お返ししなければなりません。

通常、株式投信は強気相場で資金が流入し、弱気相場では資金が流出します。また直近のパフォーマンスが良好なファンドに投資家が群がります。得てしてそういった資金は、浮気っぽいものです。

強気相場では、株価が割高となり、もう買える銘柄がほとんど残っていない中で、さらに組み入れざるを得ません。弱気相場では、株価が割安となり、本来であればもっと買いたい銘柄を手放すことになるのです。

私も若い頃、ファンドマネジャーに憧れた時期もありましたが、この文面を読んで「大変な仕事だな」と思うようになりました。音楽が鳴っているうちは、踊り続けなければならないのが、機関投資家の弱みです。

蛇足ながら、苦瓜氏の運用する大和住銀日本小型株ファンドは、2017年2月6日から2019年1月30日まで新規受付を停止していました。理由は次のとおりです。

現在の投資ユニバース市場の規模を勘案すると、現在の水準よりも資産規模が大きくなると運用に支障が出てくる

つまり、この時期は流動性が高いとは言えない小型株のマーケットに、多くの資金が流入していたことを意味します。小型株を主戦場としている個人投資家は「休むも相場」を実践できる強みを活かし、いったん利益確定を行う局面だったのかもしれません。


■兼業投資家の強み(2019年5月22日)

サラリーマンなど本業を持っている私たち個人投資家は、専業トレーダーと違い、常に何らかの銘柄を売買して生活費を稼ぐ必要に迫られていません。他人の資金を運用している機関投資家のように、四半期毎の成績を問われることもないでしょう。

そんな兼業投資家の強みを一言で表せば、次のとおりです。

不況で株を買い、景気が回復するまで持ち続けられること。

不況下の相場では、よほど空売りが上手でない限り、専業トレーダーといえども苦戦し、退場が相次ぎます。株式投信のファンドマネジャーは、ファンドの解約に応じるため、断腸の思いで持株を売らざるを得ません。

このような買い手不在の状況にて、割安になった株を買い、短期的な株価の変動を気にせず、じっくりと持ち続けられるのが、自己資金を運用している投資家の特権です。

にもかかわらず、短期的なパフォーマンスを気にしたり、お腹いっぱい買いたい気持ちを抑え切れなければ、他人の土俵で勝負することになります。一日の大半を職場で過ごしている兼業投資家は、専業トレーダーみたいに株価をずっとチェックできず、機関投資家に情報量でも劣るため、競争劣位となり勝ち目がほとんどありません。

そうであれば、自分自身の競争優位を発揮できる方向に、私たちは限りある時間を有効的に使うべきでしょう。ポイントは次の3つです。

景気循環や信用サイクルの大まかな局面を、いかにして判断するのか

株価が再び上昇するまでの間、底値圏で振り落とされないために、どうすればいいのか

不況を乗り越え、景気の回復局面で収益が大きく伸びる企業を、どうやって選ぶのか


■自営業の宿命(2019年5月20日)

事業内容にもよりますが、一般論として自分のような自営業者は、好景気では売上が伸びて、ほくほく顔です。

ところが世間が不景気になれば、一転して売上が落ち込みます。仕方なく、今までの貯えを取り崩し、生活する羽目に陥ります。

そんなことの繰り返しです。長い目で見れば、果たして儲かっているのかどうか、怪しいものです。

ゆえに個人事業主が絶対にやってならないのは、好況時、世間のムードに流され、調子に乗ってしまうことです。

高級車など贅沢品の購入はもちろん、本業の設備投資も「このタイミングでやっていいのか」よくよく考える必要があります。つい「利益を残しても、どうせ税金で取られるし・・・」と考えてしまうからです。

株や不動産への投資も控えた方が無難です。そういったときは資産価格も上昇しており、高値づかみになってしまいます。

2005年に独立開業した私は、新車を買い、売れた株本の印税を株につぎ込んでいました。そんな行動が裏目に出て、リーマンショック後の大不況にて「自営業の宿命」を嫌というほど思い知らされます。

不幸中の幸いは、セミナースペースを備えた事務所を東京で開設する計画を、まだ実行に移していなかったことでしょうか。

2010年に売ってしまった後、今でも車のない生活を送っています。本業の稼ぎは、次の不況に備えて貯金しました。投資資金もキャッシュのままです。

しつこくて恐縮ですけど、個人事業主が好景気で調子に乗ってはいけません。もっともこれは、すべての個人投資家にも言えることです。


■心残り(2019年5月19日)

私の自主開催セミナーも、2008年までは盛況でした。しかしリーマンショックによる株価の暴落を受けて、2009年からは大多数の方が来られなくなりました。

自分自身も何度か廃業の危機に瀕しながら、細々と個人事業を続けています。投資に関しても、リーマンショックの損失を取り戻し、さらに金融資産を大台に乗せることができました。

2009年以降もセミナーに参加し続けたお客様は、どなたも大きく資産を増やされています。ただ心残りなのは、個人投資家として成功された方が、思っていたより少なかったことです。

株式投資セミナーの講師として、もう少し、何とかできなかったのか・・・。

今、バリュー投資塾ではあえてネガティブな情報もお伝えしています。株式投資セミナーでは、このようなことが好まれないのは承知の上です。

なぜなら、きっと訪れるであろう弱気相場に備えて、それを乗り越えることができれば、残存者利益が得られることを個人的に経験しているからです。

次は、もっと多くのお客様に成功してほしい。

切にそう願っています。

株式投資セミナーの講師は、何かと誤解の多い仕事です。でも自分はライフワークとして、やりがいを求めてやっています。


■長期の景気循環と株価(2019年5月15日)

JPモルガンのGuide to the Marketsに掲載されている、米国の失業率とS&P500指数のグラフが興味深いです。

米国の失業率は歴史的な低水準に達しており、株式市場も高値を付けています。資本主義社会から景気循環がなくならない限り、いつ景気後退と弱気相場がやってきても不思議ではありません。

少なくとも長期投資家が、本腰を入れて株を買う局面でないことは確かでしょう。ただ歴史が繰り返すのを待てばいいのです。

米国の失業率とS&P500


■ニトリが成長した理由(2019年5月13日)

NEWSポストセブンの記事、ニトリが不況を経るにつれ成長した理由、似鳥昭雄会長に聞くを読みました。

好況と不況は繰り返します。バブル時は従来比で土地も建物の価格も2倍に上がる。しかし、不況になれば半値になって元に戻る。この法則がわかったので、景気のいい時は投資は半分に控え、逆に不景気になったら投資を2倍にして土地も建物も積極的に取得していく。この繰り返しで、世間とは逆を行くのがセオリーだと考えています。

先を読む秘訣は、次に景気が悪くなるのはいつかを常に調査し続けることに尽きます。景気が悪くなったほうが、当社にとってはチャンスが多い。投資がしやすくなり、優秀な人財も採用できるからです。逆に景気が良い時は好材料が生まれない。

(景気の先を読む力を養うには)米国経済を定点観測することです。世界経済を牽引しているのは米国だし、時代の最先端をいくので変化のスピードも速い。

資産の大半が自社株であるオーナー経営者と自己資金を運用している個人投資家は、同じ立ち位置です。よって個人投資家も、似鳥会長のスタンスを大いに見習うべきでしょう。ちなみに安田隆夫氏も著書『安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生』でほぼ同じことを述べています。

その一方で世間では、まったく別の立場の人種が大多数を占めています。自社株をほとんど持っていないサラリーマン社長と他人の資金を運用している機関投資家です。景気のピークで大がかりな設備投資を行ったり、世間をあっと言わせるM&Aを発表したり、高値の株を買い上がるのは、たいていこの手の人達です。

もっともオーナー経営者や個人投資家の中にも、世の中の多数派に同調してしまう人々が少なくありませんが・・・。世間の逆を行くのがセオリーであれば、今は次の不況に備えて投資を控え、株価が半値になれば投資したい企業の調査を進めておく時期です。

また景気の先を読むには、米国経済の定点観測が欠かせない点にも同意します。実はバリュー投資塾においても、最初の30分から1時間程度を投資環境の分析に当てており、その中で米国債の長短金利差やハイイールド債価格の解説をしています。「日本株のセミナーで、なぜそんな話をするのか」と思われるかもしれませんけど、実はおおいに関連があるのです。

好況と不況は繰り返すことから、そう遠くない将来、似鳥会長にも私たち個人投資家にも、投資チャンスが訪れると見ています。同じ立ち位置の人間として、来るべき不況を謳歌しようではありませんか。


■御用聞き営業(2019年5月11日)

御用聞き営業に対する『高収益事業の創り方』の指摘が興味深いです。

もう一言足すなら、どのケースでもいわゆる御用聞きをしていない。顧客の先に回って提案を持ちかけている。モノ自体の原価は必ずしも高くないため、高収益は提案内容に対する対価と捉えたほうがよさそうである。

CSを高めるため、各社とも顧客の声を聞き出そうとやっきになっています。 B2Cビジネスでは、最近、メールアドレス宛にアンケートを送りつけてくるケースも少なくありません。

しかし、もっと他にやるべき仕事があるのではないでしょうか。高収益企業が「なぜ高収益なのか」をじっくり定性分析してみると、そのことがよく分かります。


■「“目利き力”養成講座」音声CD(2019年5月8日)

5月のバリュー投資塾「“目利き力”養成講座」音声CDが完成しました。今回は長期投資(=バリュー投資)に必須のスキルである定性分析を取り上げています。

定性分析の本質は「持続的な競争優位を備えているか」を見るものです。競争優位に関しては、何かと難解な内容になりがちですが、なるべく関係にお話ししました。

長期投資を目指されている皆さんが、競争優位に関心を持つきっかけにしていただければ幸いです。

ご購入を希望される方はメールにて、氏名(漢字とカナ)、郵便番号、住所、電話番号、カナ振込人名(ご本人と異なる場合)を記入してお申込みください。折り返し、振込口座などのご案内をいたします。

既にお申込み・ご入金をいただいた分は、本日中に最寄りの郵便局から発送予定です。

「“目利き力”養成講座」音声CD
セット
内容

CD1枚組(mp3形式の音声データ約233分、pdf形式のテキスト50ページ、資料付き)、2019年5月6日収録

バリュー投資塾の音声を収録しています。映像は含まれておりません。意見交換や質疑応答などについても、できる範囲で収録しました。

なお音声について「聞こえにくい」というご指摘をいただきましたので、今回は「ややうるさい」レベルの音量にしています。

CD代金

銀行振込 26,400円

ご着金を確認後、最寄りの郵便局より郵送いたします。

内容

個別銘柄の“目利き力”を高めるために必要な定性分析(数字の背景にある質的な分析)に関して、競争優位を中心にお話しします。

テキスト
目次

第1部 定性分析の重要性
1−1 定量分析と定性分析
1−2 企業価値の源泉
1−3 投資判断における情報ソース

第2部 競争優位の種類
2−1 幻の競争優位
2−2 無形資産
2−3 スイッチングコスト
2−4 ネットワーク効果
2−5 コスト優位性

第3部 有望企業の探し方
3−1 スクリーニング
3−2 リバースエンジニアリング

第4部 ケーススタディ
4−1 建築資材メーカー
4−2 特化型情報サイト
4−3 製造小売
4−4 生産財メーカー
4−5 産業廃棄物処理
4−6 セキュリティサービス
4−7 店舗型小売業


■株式市場で利益を上げる手法(2019年5月5日)

千年投資の公理』の序文に、株式市場で利益を上げる手法として、次の4つが紹介されています。

1.ウォール街の競争に参加して収益トレンドに目を光らせ、四半期毎にどの会社が予想収益を上回るか推測する

2.強気のチャートパターンや急成長を遂げる強い銘柄を買う

3.本業の質を気にせず割安の銘柄を買う

4.素晴らしい企業を適正価格で買い、長期間にわたって利益を複利で増やしていく

この中で定性分析が重視されるのは4番目です。皆さんはどの流派でしょうか。


■世界の辺境(2019年5月2日)

かつてハーバード大学ビジネススクールで教鞭を取られていた、三品教授の著書『高収益事業の創り方』より引用します。

大多数の事業において、日本は世界の辺境に過ぎず、本場と呼ぶべき市場は海外に君臨する場合が多い。そういう夢のある市場に振り向けなければ、せっかくの経営資源も活きるものではない。

これから私たち個人投資家も、夢のある市場に経営資源を振り向けている企業をポートフォリオの中心に沿えるべき時代に入りつつあるのかなと感じている今日この頃です。

ただ割と簡単に分析できる内需関連に対して、グローバル企業の調査は骨が折れます。為替の変動やカントリーリスクなど、心配事を上げれば切りがありません。

しかし、そこまで踏み込まなければ未来が開けないという危機感を、自分の中で持っています。今から25年前、投資家になることを決意したときのように。



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