ち、つで始まるタイトルの映画

チーム☆アメリカ/ワールドポリス 

こ、これはねぇー…(困惑)。
なんと今時、マペット映画
CGどころか、コマ撮りですらない、つまり往年の『サンダーバード』を思わせる、本当の操り人形劇。
しかし内容は、ものすごーく、強烈に、おげれつ

タイトルが全てを表すように、主人公達の所属するチーム・アメリカは、「世界の警察」を名乗ってはばからない強力武装集団。
のっけからパリの中心部に飛来して、花の都を火の海に。ここですでに、ノックダウンになったらしめたもの、引いてしまったらご愁傷様。全編この勢いでとどまる所無し、なのだから。

安っぽいクサーイ三角関係やら、良く確かめもせず殺しまくり壊しまくる派手派手アクションとか、ゲロネタにエロネタ、実名付きでの有名人非難、ブラックなギャグに下品な言葉(なんて段階じゃないな)のオンパレード。
R-18指定になった理由が「人形のSEXシーン」と聞いて「そういう問題!?」と吹き出してしまう程、子供に見せたくない内容だ。
この手がダメな人は、本当にウンザリしてしまうだろう。
私は………、そうでもない、不思議と。

内容がこんななのに、物凄く真面目に作ってあるのが凄い。
3頭身で釣り糸丸見えのマペットのくせに、皆なかなかの名演技。(ライティングで表情が全然違って見えたりして、感動モノだった)
爆発シーンとか、飛行シーンとか、本当に大迫力。
バックに流れるは、ノリノリのロックンロール、でも歌詞がヘン(笑)。
かの『パールハーバー』を観てみたくなる、怖い物見たさで。
ラストはこの企画の真骨頂とも言うべき「○○○」と「○○○」と「○○○」(自主規制…と言うより単にイヤ)でもって世界情勢を語ってしまう、という傍若無人ぶりだけど、ミョ〜に説得力があったりして………脱力。

ハリウッドの豪華スター陣(しかも顔が似てないぞ…笑)から北の将軍様(こちらは似てる…)まで、徹底的なおちょくりぶり。反体制・アメリカ批判を気取るかと思いきや、マイケル・ムーアまでやられてしまってビックリだ。要するに、誰彼かまわず毒づきまくってる。
ここまでやってくれると、これはこれでまあいいか、という気になってしまう。ある意味皆に平等に失礼だし。
唯一、ラストの北の将軍様の正体は、変に真面目さが見えてかえってつまらなくしてしまったな、と残念だったけど。

こんなおバカなモノを、大真面目に汗水垂らして造っている人達がいる、という事実に、取りあえず感動する。
それにしても、お気に入りのマット・デイモンをあんなにされて笑ってる私は、本当に世話は無いわ。

チェンジリング 

こ、怖〜い!アンジョリのが(笑)。

苦手な、と言うか私的には『ミリオンダラーベイビー』が軽くトラウマになっちゃってるイーストウッド監督だけど、今回は(やっぱり暗いものの)そんなにシンドイ思いはしなくて済んだ、ホッとしたけど、その分印象は薄い、いや顔は怖かったけど。
いつも憎たらしい程綿密な構成を見せつける監督だけど、そういう意味でも今回は比較的単純な造りで見易かったし、"衝撃の事実"も、単に「あ、そっち行っちゃいますか」的な素直さで、いつもの「ヤラレタ!」感が無く物足りない気も…あれれ、これではまるでファンみたい、私。

まず、警察が凄い。たしかに"腐敗警察"というのはある時期アメリカ映画の常識みたいに出て来ていたけど、「正義のためではない、悪事のライバルを消すために」活動する、って台詞は凄いわ。
実話がベースという事で、まずその事に戦慄してしまった。
逆らうと精神病院に放り込む…頭に穴空けられるかとハラハラしたけど、ロボトミー手術が実用化されたのはもう少し後の時代だったようで、命拾いしましたね、奥さん(笑)。

アンジェリーナ・ジョリーはとても真面目に真摯に役に取り組んでいる印象で、ちょっと見直してしまった。泣き叫ぶのもいいが、オドオドと言いよどむ所とか、弱々しい作り笑いとか、ちょっと新鮮。そしてやっぱり、精神病院に乗り込んだ時の微妙な"ドヤ顔"がキマッていてサスガだ。
犯人役のお兄ちゃんのニヤニヤ笑いも気持ち悪くて最高。
一見ハンサムなナイスガイの警部の嫌味っぷり、傲慢さも見応えがあった。
そして、マルコヴィッチの神父…怪しい(笑)。良い芝居してるんだけど、なんだか怪しい、存在感が。しかし、不屈の精神で警察と戦い続ける人なのだから、これくらいアクが強くないとダメなのかも。
なにくれと気にかけてくれる職場の上司や、怖い顔の割にマトモな内容の刑事さんも、威勢の良い売春婦も、とても人間ぽくて、脇役好きの私としては嬉しい限り。

難を言うなら、先にも触れたように実話のせいか、ミステリーと呼ぶには謎解きらしき物も無く、事実を順番に並べた印象。終わり方も、盛り上がってからが長い気がして、ちょっと間抜けな感じがあった。
事実自体がショッキングで、ヒロインの立場はどうしたって同情しないワケにいかない上に、皆が好演で、飽きずにコリンズ夫人を応援してしまったし、精神病院や裁判のシーンでは溜飲を下げたけれど。
終わってしまうとちょっと、物足りない気がした。

それにしてもあの偽物のガキめ。
思い切り虐待してやれば本当の事を白状したんじゃ、なんて思ってしまう私は、やっぱり鬼畜かも…(笑)。
個人的には20~30年代のファッションが好きなので、そういう点でも楽しめた。
薄物のブラウスや、今時はお婆ちゃんしか被らないようなお花の付いた帽子、ファー付きのAラインのコートと、アンジーさんは程良いフェミニン具合で素敵だった。けど、真っ赤な口紅にはあの唇は厚すぎる、残念!

ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年

えー…まるちゃんって、こんなだっけ?
やはり劇場版だと余所行きお澄ましさんなのか、日頃の毒気がすっかり抜けちゃって、何ともヌル〜いモゾモゾする世界が広がってるんですけど。
「まる子=原作者」というのが今では周知の事でありながら、
「イタリアから来た美少年に一目惚れされて友情を育み涙の別れ」等という、小っ恥ずかしい設定も、よくもまあ真面目な態でできたものよ。しかも「まる子将来は漫画家になりたいの」なんて台詞まで言わせて!
これはさくらももこさんも顔から火が出る思いだったのでは…と、思ったら、そのさくら先生の脚本だったでござる(爆)。
いや〜、追悼番組で観てこんな事はあまり言いたくないけれど。

それは置くとして。
日頃の毒っぽさが排除された分、笑いどころも少ないし、やたらに「日本人親切!」みたいな描写が多くて、ほのぼのを狙ったんでしょうが、むしろここまでやると嫌味だなと。
"留学生"も皆、世界各国から集ったにも関わらず性格が一様に優等生で何のギャップも無く日本の庶民の生活に馴染んでいて、個性と言ったら食いしん坊が一人いた程度。
ちなみに留学生達の声はタレントが当てていたそうで、まあ日本語不自由なのかな、と思えば棒読みも気にもならなかったが。香港の子はロボットみたいだったな。

そしてイタリアから来た少年・アンドレアの、昭和の日本人もビックリの控え目な性格!
…いえ、イタリア男が生まれつき図々しいとか馴れ馴れしいとか、そういう事を言いたいんじゃなくてね(ちょっと思ってはいるが)。
なぜあんなに遠慮するのか?あんなウジウジして、むしろ彼のために尽力してる人たちに失礼ではないか?
なぜイタリアかと言うと"マルコ"に反応させたかっただけだと思うんだけど、せっかく外国人を出すのだから少しはパブリックイメージを踏襲してくれてもいいのに。
他の国の子達もそうだけど、国別ジョークみたいな事やると差別だなんだとうるさいのだろうか?
皆あまりにも日本語うま過ぎるし。中国人の「〜アルよ」とか、ダメなのかね。

亡くなったお祖父さんが昔日本で写真撮って、その頃の友人を訪ねて行く、というプロットはいいし、いくらでも感動物語にできる要素はあるのに。
そんな私も「マルコ、死んだんかぁ…」っていう所はちょっと涙出たけど。

野口さんが暗い顔でサンバを踊るところは笑えた。

チャーリーズ・エンジェル

ヤッター!だーい好きだったチャーリーズエンジェルの映画化、おまけにお気に入りのドリュー・バリモア、キュートなキャメロン・ディアス、そして『アリー』で大注目だったルーシー・リュー。
…でも、なーんか違うんだよね。

実際に弾丸が飛んで来るのが形になって見えて、ササッとそれを避けられたら、そりゃ楽しいかもしれないけどさ。あの表現に、なんの意味があるのか分からないよ。
せっかくチャーミングな三人組を揃えたのに、なんか色気無いし、キャラクターの印象も似たり寄ったりで、食い足りない。

プロデュースは ドリュー・バリモア。あらまあ。
バリモアは銃の所持反対の立場から、エンジェル達には銃を持たせず、カンフーの達人という設定で通したとか。ゴリッパ、ゴリッパ。気持ちは分かるよ。

まず、「銃がダメならカンフーで」。
暴力である事に変わりは無い、などと言う、おカタイ話は置いとくとしても(本当は重要だけど)。
スタイルのいい3人が、身体の線にピッタリのジャンプスーツ(って言うの?)で長〜い脚を振り回すのは、それはそれで良い眺めではあるんだけど、通算5分もあれば私はもういいや。
思えばかつてのTVシリーズ『チャーリズエンジェル』は、華やかなワンピース姿で、美女がアクションシーンを演じる、というのが「売り」だった。
カンフーのみが武器となってしまったら、ヒラヒラのドレスではちとマズイ。堂々とパンチラやられても不愉快だし、ねえ。でも見せ場が全てあの服装じゃなあ。

そして、それでもカンフーで通すなら、せめてホンモノが見たい。
ジャッキー・チェンのファンではないけど、あそこまでやってくれたら文句は無いさ。『小林寺』も可。
そこまでは無理でも、スタントでもいいから、CGでお茶にごしてるみたいなのはいただけまへん。

女性の美しさは累計的なフェミニン路線だけじゃないのよ、と言いたいのだろうけど、そしてすぐに『2』ができたくらいだから、評判良かったのでしょうが(信じられん…)。
ドリュー・バリモア、『エバーアフター』でもちょっとそう思ったんだけど、頭でっかちかも!?

でも考えてみれば、TVで『エンジェル』が流されていた頃は、女性がアクションをやる事自体が珍しかった時代。ヒーローのサポートではなく、ボスのチャーリーは姿を見せず、女の子3人だけで活躍する、という設定だけでも夢があった。
今じゃあもう、拳で男の顔を殴る女なんて珍しくもないもんな、映画の世界では。

チャーリーズ・エンジェル フルスロットル 

ははははは。
見事に吹っ切れてしまいましたねー。
ここまでやってくれちゃうと、むしろ好きかも。

前作『チャーリーズ・エンジェル』では、「CGでお茶を濁すな」だの「服装が地味だがパンチラされても不愉快」だの、真面目な事を考えていましたが。
もはやそういう段階ではないな、これは。
パンツもあそこまで堂々と出されると、水着やレオタードと同じだし。
衣装の幅が広がって(もう無理矢理着替えてたし・笑)楽しかった。
緊張感のカケラも無いCGだらけのアクションシーンも、安心して笑えるから、それなりの価値はある。
ますますハイテンション3人娘、怪しいキノコでも食ったんか!?っていうノリノリぶりだけど、そういう人達なんだと一旦納得してしまえば、可愛くて楽しいので文句は無い。
そして何より、出てくる男が全員バカっぽいのがgood!
バカ男ウォッチャーの私としては、とっても楽しめてしまったんであった。

往年のTVシリーズのファンには、本物のOB登場の嬉しいオマケもあり、貫禄デミ・ムーアのチョー下品な悪女ぶりも楽しく(毛皮に黒ビキニでっせ、奥さん!)、良く分からないパロディの数々も、なんだかおかしい。
アクション映画でも、コメディでもなく、バラエティコントと思えば良かったのね。
ルーシー・リューのパパが泣かせ(笑わせ)る。

チャーリーとチョコレート工場 

かなりブラック、と言うか悪趣味なんで、人を選ぶのかもな。
何がなんでも子供は可愛がらなきゃいかん!て人にはダメなのかも。
私は大ウケだったけど。(劇場では殆ど笑いが無かった…)

ジョニデ。
おばさんやんか(爆)。
ウォンカさんて、原作ではもっと年寄りらしいんだけど、この映画では最後に蛇足なエピソード(まーた家族かよ…大物俳優登場は、ちょっとウレシイけど)が追加されたんで、若くないといけなかったのね。でもおばさん。
神経質で、引きこもりで、子供なんか本当は大嫌い、っていうウォンカさん。いちいちガラスに激突し(おいおい、ガラスになんか付いてるぞ、液体が…!)子供達の災難を冷たく見つめ、カンペを見ないと喋れない。
性格悪くても、見た目がおばさんでも、何となく可愛く見えて来ちゃうから、凄いよね、ジョニデ。

ティム・バートンの色彩感覚とか造り物のデザインって、すごく私好み(悪趣味スレスレ…すでに踏み込んでるかも・笑)。
シザーハンズ』の町並みも、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』の絵も大好き。
チョコレート工場の中の色合いが、ウチの洗濯物と似てるのよ(私のセンスって…)。
子供紫色になっちゃうし。独り爆笑でしたが観客は引いてたかも。
リスのシーンはビックリだったけど、実際にリスを仕込んで特撮ナシで撮ったと聞いて2度ビックリ。好きだなぁ、そういうの。
変な小人のミュージカルも見所だが、こちらも何と、CGではなく一人一人重ね撮り(俳優は一人だけど)だそうだ、ブラボー!
チャーリー少年の「貧しいけれども愛情一杯の家庭」が、またスゴイ。家のデザインも凄いし人の詰め込み方も凄い、だけどなんかメルヘンチックで悲壮感は無いんだけど、そして家族各々のキャラも面白くて、まあネコババくらい許される、よね?

映画はウォンカさん寄りのストーリーになってるけど、本来の主人公・チャーリーを演じる子役もいい。
あまり美少年じゃなくて、ちょっと栄養悪そうで(設定にピッタシ)、とても達者だけど、こまっしゃくれてなくて。
なんかイタリア貧乏映画に出て来そうな少年だ。
ジイさん達もいい。出番少ないが両親も、すごくいい。
他の憎たらしい子供達も、そのバカ親達も、見事なカリカチュアで笑える。

先に「蛇足」と書いたが、おそらくティム・バートン監督は、その追加部分にテーマを語らせたかったんだろう。
変人で冷酷だけどナイーヴで、自信無さ気なジョニデ=ウォンカさんの姿は、その狙いにピッタリはまっている。
私としては、言葉にするなら「大人になるのは案外時間がかかるんだよ」って所かな、と思う。
ウォンカさんとパパのエピソードはもちろん。加えて、チャーリー以外の子供達が工場を出る時も全く懲りてなくて(あんな目に合ったのに!)、親達はちょっと反省の色を見せているのも、そういう事なのかなと。
チョコレート、小人のダンス、色取り取りの別世界と、お子様向け要素満載の映画だが、意外と狙いは大人達、かな?

超高速!参勤交代

なかなか良い評判を聞いていたし、佐々木蔵之介は好きだし、なにしろ宣伝が物凄くて(こういうのは中身が無い事が多いのは承知だったが)。
うーん。時代劇、好きなんだけどなぁ。
まずは何か、コスプレ現代劇みたいな空気感。に、しては参覲交代、お上に絶対服従という、現代にそぐわぬ内容…無論古いテーマを馴染みやすくという配慮なのでしょうが、私的には逆効果だった。

蔵之介の殿も家臣団もフランク過ぎて切迫感を感じない。陣内の悪代官も安っぽい。鈍臭い忍者のワイヤーアクションには失笑。
「死して屍拾う者なし」って『大江戸捜査網』だよね。あのドラマ自体が当時としては妙に現代風な時代劇だったけど、好きだったわ、あれ(つまり私が歳取った、って事?笑)。
トラブルの解決法が、全部隠密と偶然だからな。ちょっと「またか…」と引いてしまった。
最後もあんなボロボロの姿で駆け込んでも大名行列としてはアウトだと思うぞ。鐘の件は面白かったけど、やっぱり隠密だし。

でも俳優は概ね好演。
文句を言ったが蔵之介さんは軽い演技がとても良いし(でも殿強すぎです)、深キョンはいつもの天然ブリっ子芝居じゃなくて普通に綺麗な女優さんだった。こういうのもっとやったらいいよ、こっちの方が好き。
上地雄輔も西村雅彦も、甲本雅裕の殿様も良かった。
石橋蓮司のお偉方も可愛かった。なぜこの人が深キョンに叱られなくてはならないのか意味不明だけど(笑)。
お家の東北なまりが何ともノンビリした心地よい響きで、時々聞き取り辛い事を差し引いても良かった。

全体にユルい雰囲気なのは見やすいのだが、タイトル『超高速!』という緊迫感は全く感じず、設定の時間の無さが迫って来ない

他愛ないハッピーエンドも、それはそれでいい。むしろ悲劇はいらないわ。
後味が悪くないのはいいが、そこへ至るまでの味わいも薄くて軽い。
歴史や時代に無頓著な若者向けデートムービーというところか、どうにも食い足りないのが残念な印象だった。

ツイスター

なんと言うか、清々しいまでに"ツイスター"な映画だった。
単純なストーリー、どう見ても相思相愛の似合いのヒロインとヒーロー、死ぬ人と残る人も一目瞭然。ほんのり"父の仇討ち"要素も織り込んで、それなりにドラマを流しつつ、殆どストレスにならない軽さでもって人間関係はさばかれて行く。
だって主役は竜巻だから

ヤン・デ・ボン監督ってなんだっけ、と思ったら『スピード』か。でもそれ以前に数々の傑作のカメラマンをしていたそうで、なるほど20世紀としては驚きの竜巻映像かもしれない。
スピード感も迫力もあるのだが、正直あまりハラハラしない、怖さも迫って来ない。
実際問題としては、日本人にとって竜巻ってあまり身近に見られないモノはあるが、それでもかなり怖い災害である事は想像にかたくないのだが。
そこが残念とも、それくらいでいいのだとも言える、そこは好みの問題かもしれない。

ヘレン・ハントは演技派という印象で、こんな映画にも出るのか…と思ったが、涼やかな容貌は熱血ヒロインの暑苦しさを良い具合に散らしてくれて、なかなか好印象のヒロイン像になっていた。
そりゃあ、演技は上手いに越した事はないしね。
ライバル?当て馬(笑)役のジェイミー・ガーツも好演。美人だし。
普通の人はこうだよね、というね。ヒステリックな反応も含め、説得力があり、お邪魔ではあるが不快感の無い、マトモな女性で良かった。
そして"竜巻オタク"達の熱狂ぶりも、楽しく拝見した。学者とか研究者って、こういうとこありそうで。 

正直ドラマ部分は薄味で食い足りないが、その分不快感も少ない。
最終的に一番印象に残ったのが、お料理上手なおばさんの手料理が物凄いボリュームで肉と芋オンリーだった事なんだが。
我々とは内臓の構造が全然違という話も、なるほど納得のメニューでありました。

追跡者

かの『逃亡者』のスピンオフ映画だが、普通に考えるスピンオフとは一線を画した、かなり本気の事件ドラマだ。
なにせ本家『逃亡者』でも主役のキンブリー医師(H.フォード)を食ってしまった、冗談のようにしつこい根性刑事・ジェラード連邦保安官ことトミー・リー・ジョーンズの「もうひとつの物語」。
正直、映画の規模もキャストも地味になった印象はぬぐえないが、前作が古い古いTVドラマのイメージで古臭く見えて仕方無かったせいか、私はこちらの方が楽しめた。

『逃亡者』を観たのがだいぶ前で気付かなかったが、捜査官チームは前作とほぼ同じメンバーだそうで。嬉しいなぁ、そういうの。
前作見直したくなった。
しつこくて渋い「追う男」ジェラード保安官は、健在。
でも、今回は彼が主体という事で、より色々な顔が見られるし、ちょっと可愛い。
その分「まだ来るのぉ〜!?」という(殆どコント的)クドさは薄れてしまったかもしれないが。
対する「追われる男」は、ウェズリー・スナイプス…絶対やってると思ったのに(笑)だって悪そうなんだもん。
そういう意味で、"ドンデン返し"は成功だったし、真犯人も「ほー」と思ったんだけど。
『逃亡者』からの流れを考えると、「また!?」と、ちょっと捜査官チームが哀れになって来る。
ここは残念、普通に犯人で良かったのに。

でも、困ったワーカホリックおじさんのジェラートと部下達の関係が面白く、チームから犠牲者が出るとは思わなかったから胸が痛かった。
追跡者と逃亡者の両サイドからの目線で見られて、その辺りのバランスが良いのも嬉しい。映画観た!って気になります。
普通だったらいけ好かない余所者(デキる奴)と次第に打ち解けて…と、なるかと思ったら全然違う方向だったのも良かった。
アクションシーンは総じて地味だけど、手作り感があって、マンガみたいに大仕立てな前作より、私はこういう方が好き。真面目にハラハラしました。

ローバート・ダウニー・jrが初めてイケメンに見えた。
良く見たらグラサンしてた時限定で、どうやら私は彼の目元が嫌いみたい。それってほぼ致命的(笑)。

余談だけど、友人と話し合った結果、「ハリウッド版ルパン三世の銭形警部はトミー・リー・ジョーンズ」という結論に達しました(笑)。

 

追記12/24:飛行機事故でグショ濡れになったせいでキャラクターTシャツを着る羽目になるジェラード君は可愛かった。

ウェズリー・スナイプスは、二転三転する立場にピッタリの、どっちにも転びそうでどっちでも上手く演じてくれそうな絶妙なキャスティングだが、ミョーにイケメンなダウニーJrの方は、初めからどうも胡散臭くてな(笑)。
しかしよくも10年ばかりで、あんな油臭いオヤジ(『アイアンマン』)になったものよ…。
スナイプスの恋人のフランスギャルが美しかった。もっと活躍して欲しかったけど、昨今のハリウッド大作のように素人女性が突然スーパーアクションというのもしらけるしね。

しかし一番印象に残ったのは、T.R.ジョーンズが追い詰めたスナイプスの焦げ茶色のスキンヘッドをおが屑?に突っ込むシーンだったりする。なんか不思議な物体だった(笑)。

ツーリスト

美人って凄いよなぁ。
天下のジョニデをあんな風に、鼻面掴んで引きずり回して…と、思って見ていたら、サスガにそれだけじゃ済まされませんでしたとさ、やはりジョニデ。
こういう軽いノリでハッピーエンドの話は嫌いじゃない。二転三転するプロットもサービス精神旺盛で良い。
…けど残念、肝腎の"美男美女"ジョニデとアンジョリが…イマイチだった。

ジョニデは元々顔が苦手なので、こういう素に近い外見の役(キャプテン・スパロウウォンカさん手がハサミ怪人じゃなくて、という意味)はキツイんだが、加えてなんだか中年太り?
平たく言ってしまうと、キモいわ。役柄的に野暮ったくてサエない田舎の数学教師、という触れ込みなんだけど、そういうんじゃなくて…うーん、やはりこういうバカバカしい娯楽映画は、絵的に楽しくないと。
アンジョリさんは逆に痩せ過ぎちゃって怖い。歌舞伎の隈取りみたいなアイラインも怖い。そして、かの駄作『Mr.&Mrs.スミス』の女王様とか、『ウォンテッド』のお風呂上がりみたいな、絶対的腕力でかっさらってくようなシーンが見当たらなかったのも残念。
ポール・ベタニーが、相変わらずいい感じにやな感じ(笑)。好きだな、この人。

ストーリーは(いささか盛り込みすぎではあるが)意外な結末も含め、それなりに楽しめたし、後から「あの時はああで…」等と考えるのもまた楽し。
むしろジョニデの役は、本当にモッサリしたジャガイモみたいな人が演ってくれた方がシックリと騙されたかも。
そしてアンジョリは、恋人の顔はどーでも良かったんだろうか?まあ直したモンは元に戻せるのかもしれないが(笑)。
ラストのゴンドラのシーンは綺麗で、なかなか印象的だった。

月の輝く夜に

なにがどう、って特定するのがむずかしい、でもすごーく面白い映画。大好き。
ポスター?写真が印象的で、手足の長ーいヒロイン役のシェールが、満月をバックに両手を開いて伸び上がってる。
映画のイメージを、すごく語ってる写真。

なにしろ騒がしい、やかましい。
登場人物はみんないい人、でもみんな一癖あって、へん。
理屈も道理も通らない、あるのはひたすらラテンの勢いと濃い〜愛。も、濃い濃い。
そんなにたいしたストーリーでもないんだけど、ただ勢いに身を任せていると、ステキな(笑)ハッピーエンドに流れ着く。設定やあらすじを聞いて予想するよりも、はるかに楽しめる。
そして映画はハッピーエンドがいいけれど、心からハッピーエンドを祝福したくなる映画って、実はそんなに多く無い、その貴重な一本でした。

ニコラス・ケイジ、この映画で初めて見たんだっけ。当時はもっぱら「コッポラの甥」と宣伝されてて、今それを言う人っていなくなった。良かったねー、ケイジ(タメグチ)。

月のひつじ

何の予備知識も無しに、なにやらメルヘンなタイトルだなーと思って観たら…うん、ある種大変メルヘンチックな映画ではあった。
アポロ11号ね。
人類初の月面着陸有人ロケット。それを中継する、巨大アンテナを守る南半球の人々の、物語とな。

当然の事ながら、人類が初めて月面に一歩を踏み出した光景は、全世界の注目を集めた。っていうか世界中大騒ぎだったと思う。
私はまだ子供だったけど、周囲はとても興奮していたし、TV中継は生で見たかは定かでないが、ニュース映像等で散々見た。
その中継が、オーストラリアの小さな町の巨大アンテナから送信されていたとは。思いも寄らなかった。
軌道の関係とか何かで、突然世界の注目の的に躍り出てしまった天文台。
大迫力で手に汗握った『アポロ13』とは、また全然違ったアプローチで、古き良き時代を振り返る。
どの辺りまで実話かは分からないが、のどかさの中にも胸が震える、ロマンティックな映画だった。

皆さんのクラシカルなセーター姿が素敵。さすが羊の国。
所長夫婦は好人物。宇宙オタクの少年や、反抗的な所長の娘も可愛かった。
「人より羊の数が多い」田舎の、ある意味世間知らずな人々が、それぞれに生き生きと魅力的だ。
所長のサム・ニール、私的にはいつまで経っても『オーメン』なんだが(笑)なかなか好演。
そもそもこういう、技術者モノって好きなのよ。
アンテナのスタッフも、NASAからの派遣の人も、とても良かった。何気に門番までが素敵。
なかなか足並みは揃わず苦労はしても、だんだんと皆の心が一つに集約していく様は感動的だった。

そんなに派手な見せ場がある訳ではないが、退屈せず見入ってしまった。
むしろ、肝腎の中継の時になって強風でアンテナが使えないと、そんな盛り上げ方しなくても、と思ってしまったのだが、これは最後のテロップで実話であると語られる。
風速15mが限界なのに25mを超えてたと!!!なんっちゅー無茶を。
本来ならば安全第一、人命尊重で、そんな無謀は責められるべきだが、ついつい結果オーライな気持ちになってしまう。
彼らが無茶をしてくれなかったら、あの歴史的中継は違う形になっていただろうから。
(大惨事があれば流石に耳にしてるはずだから)結果は分かっていたけれど、それでも着陸通信が流れた時は息を飲んだ。そして心から、あの町の皆と共に快哉を叫びたい気持ちになれた。

「て、と」へ