早春日記...... | |||
子どもを居間に閉じ込めておいて、一日台所のテーブルに向かって人形を作った。
前にみつけておいたこげ茶色の花柄の生地に小さな型紙をあてて、ミシンも使わず全部手縫い。
小さな小さな襟ぐりの見返しを裁ちながら、男の子しかいないのにどうして人形なんて・・・と思う。
だが、作ってみたいのだ。動物のぬいぐるみは以前作ったことがあるけれど、可愛い女の子の、
色々な服を着せてやれる本当の人形は、何だかもったいなくてなかなか手がつけられなかった。
どうせならうんと可愛い、世界でひとつだけの、とびきりお気に入りのを作りたかったからだ。 | |||
そんなわけで、パンツをはいた首なしの胴体とくりくりした巻毛の頭を脇において、
花模様のドレスをひと針ひと針縫っている。次に女の子が生まれたらその子にやってもいいけれど、
息子の陽介には貸してやらない。これは私の大事なお人形。そうだ、陽介にはそのうち熊さんでも作ってやろう。 |
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スカートのレースは一段にしようか、二段にしようか、と迷いながら、のっぺらぼうの頭に服をあててみる。 |
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1978年3月...... | |||
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