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研究員物語 (愛と涙そして・・・ |
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エピソード7:期待と不安 |
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私はついに、ローマ空港に立っていた。 思ったより小さな空港だなという印象だった。 それでも、ここに来るまでの長い道のりを思い、これからの生活への期待と不安の入り混じった気持ちを落着ける為に深く息を吸い込んだ。 |
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季節は冬、まだ新年が明けて2週間しか経っていない寒い朝だった。 飛行機の到着は6時前、迎えに来てもらうには早すぎる時間だったので、私は遠慮してホームステイの世話人と7時に待ち合わせをしていた。 空港内はまだ店も開いていないようで人もまばらだった。私はまず公衆電話を探した。十数時間前、成田で涙の別れをした(実際には荷物が多すぎて減らすのに大わらわで、慌しく別れて来たのだが)、とにかく恋人の声が聞きたくてピポパポとダイヤルした。 「トゥルル・・」何度か鳴らしたが出ない。。 あれれぇ。(T_T) 寂しかったがあきらめて、家の父親にかけた。こちらはすぐに出た。「そうか、無事に着いて良かった」と一言、それがまたありがたくて少し涙が出そうになった。 電話を切ると、さて時間までどこに居ようかなとキャリーケースを押して歩き始めると、青い目の金髪の美人と、イタ男らしい美男、それにドラマに出てきそうな恰幅の良いおじさん、の三人組が私に向かって歩いてくるのを見つけた。 あ"っ、この人達だ!! と直感した。向うもそう思ったらしく声をかけてきた。 しょっぱなからなんて素敵な出会い・・と嬉しくなったが、何の事はない。私が前もって知らせておいた、目印の白いコートを着ていたアジア人だったからすぐにわかったのだ。 この目の青い美人が後に私の大好きな友人となり、家に呼んで手打ちパスタをご馳走してくれたソニアだった。 最初の挨拶もそこそこに、空港で1軒だけ開いていたバールに連れて行ってくれ、滞在初のカッフェ(エスプレッソ)をご馳走になった。 おいし〜。。(゚∀゚) それにこんな朝早くから、約束のずっと前に迎えに来てくれた人達・・そう思うとまた濃い味が心に(胃に)しみわたった。 車に乗るとハイウェイを走り始めた。まだ朝もやの立つローマ郊外の田園風景は、長いこと憧れてきたイタリアの地を初めて踏んだ私には、眩しい程美しかった。 その感動をソニア達に伝えようと、懸命になったが、まだ辞書を片手にしていた私には無理だった。 飛行機を乗り継いできた疲れも忘れるほど、車窓に見入っていた私に、三人はいろいろ話し掛けてくれ、まだ半分以上理解できなくて焦りながらも思う存分イタリア語の話せる環境にわくわくして、精一杯返事をした。 「本当にイタリアに来たんだ!」この時になってじわじわと実感がわき起こってきた。 寝不足のせいもあり、文字どおり夢のような1時間余りのドライブののち、車は1軒の家に着いた。 石造りで隣の家がくっついている感じの、いかにもヨーロッパの田舎らしい住宅だった。 放し飼いの犬に吠えられて少々びびりながらも、家の住人に招き入れられた。 ここで6ヶ月間過ごすんだ。綺麗なキッチン、素敵なお部屋、親切そうな人達、、私は自分ひとりの期待に胸を膨らませながら幸せに浸っていた。。 しかし、それからの半年はそんな夢のようなことばかりは起きなかった。 |
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