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<二次創作における原作としての「ゼロの使い魔」>
ゼロの使い魔を「二次創作の原作」として考えてみると、なかなか興味深いです。
以下では作品の傾向や公開時期ごとに「初期」「中期」「後期」の三つに分けてまとめてみました。
■初期
純粋な本編再構成作品や、あの作品のキャラがルイズに召喚されました@ウィキに代表される『ルイズが才人の代わりに他作品のキャラクターを召喚する』という形をとったクロスオーバー作品が多数登場しました。
これらに共通しているのは、ルイズが主人公もしくはヒロインとしての立場にあるので、必然的にルイズを中心としたストーリーになり、「フーケ編」「アルビオン編」といった原作の流れを踏襲する形になっている点です。
これには召喚当初の才人が性格も含めてごく普通の高校生だったことも大きいのでしょう。
成長前の無個性に近い状態の才人ならば別のキャラクターと入れ替えても特に問題はなく、クロスオーバーとの相性が良かったともいえます。
また、当時はブリミルも名前だけの登場だったので、ブリミル関係やハルケギニア世界については作品ごとに様々な解釈があり興味深いです。
本編再構成としてはタバサが才人を召喚するという作品もありました。
■中期
この時期になると後に「内政もの」と呼ばれる作品が登場します。
「内政もの」を簡単に説明すると、ハルケギニア世界の貴族を主人公として、その立場を利用して領地を豊かにしたり原作に介入するというジャンルです。
これには、この頃からオリジナルキャラクターを主人公としたり、現実から転生、憑依という形で作品世界の登場人物となる現実来訪(トリップ)というジャンルが流行し始めた事も少なからず影響しているでしょう。
『アルビオン王国興亡記』(全手動軽文量産機)では幼少時のウェールズに憑依した原作知識持ちの主人公がアルビオン軍の編成に口を出す等の原作介入を行っています。
転生作品としては『rebornlife』(ひねもすダラダラ)で原作知識無しの主人公がアンリエッタの侍従となっていますが、こちらはむしろオリキャラ主人公作品に近い物となっていますね。
ここで注目したいのは原作知識と現代知識についてです。
転生・憑依という設定を生かすならば、どちらかもしくは両方を活用することになりますが、その組み合わせによって作品の傾向が変化しています。
原作知識が有ることを生かすならば本編の流れに沿った作品になりますし、原作知識無しとする場合には、現代知識を生かす作品や、現代の価値観とハルケギニアの価値観の差異を生かした作品となるでしょう。
■後期
さて、「ゼロの使い魔」という作品から主要なキャラクターや場所を除外して、舞台としての「ゼロの使い魔」ひいてはハルケギニアの世界観について考えてみます。
まず、魔法についてですが、体系が簡単にまとまっていることや、呪文や詠唱を省いて効果を重視した表現が出来る点、特に土系統には錬金術が含まれており、現代知識の活用と相性が良いと言えます。
魔法を使える貴族と使えない平民、ドット〜スクウェアという分かりやすい魔法レベル等、魔法については、分かりやすく自由度が高いことが特徴として挙げられるでしょう。
次に、国や地形については、現実のヨーロッパを模したものであるため分かりやすく、広さもあるため、開始位置によっては原作と全く関わらないストーリーにすることも可能です。
こうして考えると、「ゼロの使い魔」の世界や世界観はシェアワールドとして優れていると言えるのではないでしょうか。
その利点を生かした作品が後期になると登場します。
『ハルケギニア南船北竜』(棒の人ぶろぐ)では原作知識の無い主人公が、主に食料品加工の現代知識を錬金術に生かして出世していきます。
『G線上のアリア aria walks on the glory road』(Arcadia)では原作知識はそれほど重視されず、ハルケギニア世界での商売や成り上がりが主軸におかれています。
『ハーレムを作ろう(遠くの世界へ)』(EURASIA)では現実と行き来できることを利用して食品や機械、日用品等を領地に持ち込んで活用しています。こちらの作品の場合は、当初はゼロの使い魔の二次創作として公開されていたのですが、後にゼロの使い魔の要素を外してオリジナル作品に変更されています。
この時期は、原作とは離れた作品が多く登場しているようです。
原作も終盤にさしかかった今、二次創作における原作としての「ゼロの使い魔」について改めてまとめてみました。
現在(2011年)のネット小説の流行である「一般的な男子高校生という主人公像」「突然の異世界への召喚」について、「ゼロの使い魔」が一定の影響を与えたことは確かでしょう。
「ゼロの使い魔は二次創作と相性が良い」を今回のまとめの結論ということにして締めくくりたいと思います。長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
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