人事トラブル Q&A

労働者災害補償保険法 第一条、第三十条など

Q.会社で働いている時にけがをしました。労災保険って何?

A.
 労働者災害補償保険の略称で、その保険料は、全額、会社が負担(労働保険料として納付しています)します。この保険は、アルバイトやパートタイマー(例え1日しか働いていなくても)にも自動的に適用されます。また、通勤上の災害(けが)も、労災保険の対象になることもあります。
 労災保険が適用になるか否かは、労働基準監督署が判断しますので、会社が労災申請してくれなくても、自分で申告(近時非常に多いようです)もできます。また、労災保険で補填しきれない部分は、損害賠償請求も可能な場合があります。当然の事ですが、業務中のけがで働けない場合の賃金保証も一部労災で補填されます。

※ 会社が未加入だとしても当然に法律的には加入していなくてはならない制度(強制適用)となっていますので、会社側は、遡及して適用させられてしまいます。なお、労災保険未加入中の事故に関しての治療費の請求(医療保険が使えませんので、治療費は原則10割負担)は、全額会社にて負担させられるケースもありますので、まだ未加入の会社は注意が必要です。

(労働基準法 第十八条ノ二)など・・・整理解雇の4要件(要素)

Q.会社経営が苦しいので従業員を解雇したいのですが?

A.
 いわゆるリストラが蔓延しています。中には、リストラの名のもとに、即「人員整理」をする傾向もあり、そういった会社では従業員との労使紛争が発生しやすいと言えます。個別労使トラブルが近年増加の一途を辿っていますが、労使トラブルは労使双方にとって良いことは何一つありません。
 会社が苦境に立たされたとき、経営事情を説明し、役員給与のダウンや従業員の賞与カットなど、解雇回避の手段をとりながら営業努力を行うなどを行ったうえで、希望退職者の募集や退職の勧奨などを順序だっておこなうことが必要となります。

 一般の解雇もそうですが、人員の整理縮小は簡単にはいきません。基本的には次の4つの要件(要素)が必要となると判例などでは、言われています。

① 人員整理を行わなければならない業務上の必要性

② 解雇を回避する努力

③ 合理的、客観的、公平的な解雇対象者の選定基準

④ 社員への充分な説明と話合い
 これら全ての要件(要素)を満たせる対応がない場合には、会社側は解雇権の濫用と判断されることがありますので十分注意して下さい。

※ 「解雇権濫用法理」とは、昭和50年4月25日の最高裁判決(日本食塩製造事件)において示されたものです。この判決では、「使用者の解雇権の行使も、それが「客観的に合理的な理由」を欠き「社会通念上相当」として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になると解するのが相当である。」と判示されています。

労働基準法 第二〇条など

Q.社員が無断で何週間も会社を休んでいます。解雇したいのですが方法はありますか?

A.
 社員の無断欠勤はよく見受けられますが、長期に音信不通となったり所在不明になったりすることも、まれにはあります。事件に巻き込まれた可能性もあり、サラ金・闇金から逃げ回っているのか、はたまた急に仕事に嫌気がさして出社してこないのか、(近時は、鬱によるケースも)その理由も様々なようです。
 無断欠勤は、会社や同僚社員、取引先等に迷惑を及ぼすこともあり、退職や解雇にせざるをえないケースも多いかとは思います。事件に巻き込まれた場合は別として、社員が一方的に労務提供を怠っているのであり、仕事をするという債務を履行しないわけですからそれ相当の処置は当然のことかと思います。。

 ところが本人との連絡がとれないまま処置を決定してしまうと、思わぬトラブルになるケースも多々あります。これを避けるために、例として次のようなことを行うことも検討しておきたいところです。
① 会社側としては、本人への連絡のための努力・調査ならびに出勤督促をする。
② 就業規則などに、特定した一定期間連絡とれず、所在不明の場合は退職とする旨の定めをしておく。
③ 就業規則などに、解雇の通知方法として、届出のある自宅所在地に通知書を郵送することで解雇通知が到 達したとみなす旨の定めをしておく
なお、調査などの結果、本人は退職の意思があり欠勤していることが客観的に判明すれば、欠勤開始から14日経過した日に退職したとして処置することでも、良いかと思われます。

労働基準法 第三二条など

Q.月の後半に業務が集中し、残業代がかさむのですが何かいい方法は、ありますか?

A.
1ヵ月の間に業務の繁閑がある事業には、1箇月単位の変形労働時間制が適しています。この制度は、1週間および1日の法定労働時間(週40時間、1日8時間)の規制にかかわらず、1ヵ月以内の一定期間(変形期間)を平均し、1週間の労働時間が40時間を超えない範囲内で、労使協定または就業規則などにより、あらかじめ変形期間における各日、各週の所定労働時間を特定し、その定めにしたがって労働させることができる制度です。このように、特定された週または日の労働時間が、法定労働時間を超えていても時間外労働にならず、残業代(割増賃金)の支払いも不要となるものです。

賃金の支払いの確保等に関する法律

Q.会社が急に倒産してお給料が支払われません。社長を訴えたいのですが・・・

A.
 これも、近時非常に多くみられます。ただし、訴えるのは、簡単ですが、その回収方法は、非常に困難を極めるケースが多々見受けられます。
 そこで、会社が倒産したために賃金(給料)が支払われない場合、未払いとなっている賃金の一定範囲の額を国が会社に代わって、支払う(立て替えて支払ってくれる)制度があります。
 但し、会社がある一定期間以上労働保険に加入していること、などの条件があります。また、立替払いを受けられる労働者は、労働基準監督署への倒産認定申請日などの6カ月前の日から2年の間に退職した労働者に限られています。立替払いされる金額は、原則として、未払いとなっている賃金総額の80%程度なのですが、年齢区分によって限度額(上限)が定められています。

労働基準法 第八九条など

Q.就業規則ってあったほうがいいのですか?

A.
 労働基準法では、常時10人以上の社員(パート・アルバイトを含む)を使用する会社に対して、就業規則(賃金規程などを含む)を作成し、労働基準監督署へ届け出ることが義務づけられています。
 就業規則作成の目的(メリット)としては、①同じ職場で働く者同士、価値観は様々ですから、共通した職場のルール(服務規律など)を定める必要があるかと思います。②また、労働条件などを書面にすることによって、労使トラブルを未然に防止することもできます。③社員にとってもこれらが文書化されていると、安心して働くことができ、またそれが会社への貢献にもつながることにもなります。会社も社員も、共通のルールをお互いに理解することによって、よりよい職場生活が送れるものと思われます。
 また、近時非常に労使トラブルが、多発・複雑化していますが、良い就業規則は、そういった無用のトラブルを防ぐとともに会社をも守る矛盾にもなるものです。

労働基準法 第十六条など

Q.社員が会社の費用で資格を取らせたのに辞めると言ってきました。かかった費用を返還させる事 はできますか?

A.

 労働基準法には、「使用者は労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」、「使用者は、前貸金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない」との規定があります。これらの規定は、お金によって従業員の自由や身分を拘束してはいけないということです。では、会社の費用で資格をとって退職する者への対策の一つとして考えられるのは、会社は費用を負担するのではなく「立替」又は「貸付」とすることです。

退職につき違約金的に費用を返済させるのではなく、例えば、労働契約とは別に「特約付の金銭消費貸借契約」として、費用を立て替えて、一定期間の勤務により返済を免除するという特約により、費用を返済することにより退職は自由であるということ、その費用は合理的な実費であるということ、雇用関係継続を不当に拘束しないこと等が充たされればいいことと思われます。