ファーストイーグル社の銘柄選択、企業価値評価における無形資産、心に響くトップメッセージ、
9月のバリュー投資塾、投資の4つの教訓
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ショートコラム(2024年9月)
■投資の4つの教訓(2024年9月27日) |
伊藤忠商事(8001)の統合レポート2024に掲載されている、事業投資における「投資の4つの教訓」が興味深いです。 当社は、過去の失敗事例の反省から得られた教訓を「投資の4つの教訓」としてまとめ、投資失敗事例研修や全社の経営会議等で何度も繰り返し共有し、現場における投資案件の検討段階から留意するよう徹底しています。 (1)高値掴み:将来の減損リスクを最小化するため、投資額を抑制 まるで自分のことを指摘されているように感じました。きっと皆さんにも、いくつか心当たりがあるはずです。 結局、人間の行動である以上、伊藤忠商事のような大企業が手がける投資も、私たち個人投資家が行う株式投資も、失敗のパターンは似たり寄ったりということでしょうか。 明確な相違点があるとすれば、過去の投資失敗と同じ轍を踏まないための対策が徹底されていることです。 |
■9月のバリュー投資塾(2024年9月20日) |
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9月28日(土)に開催するバリュー投資塾のテーマは「ファーストイーグルの日本株投資」です。 コロナ禍の2020年8月、ウォーレン・バフェット氏が三菱商事など総合商社5社への投資を公表し、世間をあっと言わせました。 ファーストイーグル社は、その四半世紀前から我が国に投資を行っており、日本株に関しては先輩格に当たります。同社の投資哲学は次のとおりです。 従来の定量的なアプローチにとらわれず、長期的な経営上の優位性を備えており、複製が極めて困難な希少で耐久性のある有形・無形の資産を有していると考えられる企業を探し出す。 本質的価値に対する十分な安全域を考慮した価格で購入し、注意深く分散化を行うことで、資本の恒久的な減損を回避しつつ、市場サイクルを超えて長期的にプラスの絶対リターンを獲得する。 バフェット氏は集中投資派、ファーストイーグル社は分散投資派に属しているものの、それ以外の考え方に大きな違いはありません。それもそのはずで、両者ともグレアム流の証券分析を今風に進化させたモダンバリュー投資の担い手だからです(モダンバリュー投資に関しては『バリュー投資入門』で解説されています)。 むしろ分散投資を心がけてる分、ファーストイーグル社の手法はより個人投資家向きと言えそうです。それに加えて多くのケーススタディを学べることから、投資の勉強にもなります。 相変わらずの株高で特にすることもないので、ここ1カ月ほどセミナーテキスト作成に没頭していました。そんなわけで今回は少しばかりガチな内容ですけど、大阪まで聞きに来られる価値(バリュー)があると自負しております。 ご参加を希望される方はメールにて、氏名と電話番号(列車が遅れた際など、非常時の連絡にのみ使用します)を記入してお申込みくださいませ。折り返し、振込口座などのご案内をいたします。 なお申し込みの締め切りを9月25日(水)とさせていただきます。まだ残席がございます。
ご注意:ケーススタディを盛り込んでいますが、銘柄推奨を行うセミナーではありません。
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■二重割引(2024年9月14日) |
長きにわたり、ファーストイーグル社のファンドマネジャーを務めていたジャン・マリー・エベヤールは、二重割引(ダブル・ディスカウント)に着目していました。株が割引価格で売られており、資産も割引価格で取引されている企業です。 我が国では、かつての三菱地所(8802)が該当します。不動産市況が冷え込んでいた時期に、同社株は実質PBR1倍割れの水準で売られていました。丸の内のオフィスビルを格安で入手したければ、同社株を通じて間接的に保有するのが一番だったのです。 不思議なことに、不動産市況が回復した後にも、株価の割安な時期がありました。2020年から2022年にかけては、相当に割安だったと思われます。 株価が急騰したのは、2024年の春先でした。ファーストイーグル社はこの時点で売り切っています。果たして今後、同社株を買い戻すことはあるのでしょうか。 ちなみにジャン・マリー・エベヤールは『価値の探究者たち』 と『一流投資家が人生で一番大切にしていること』 に登場します。欧米ではかなり知名度の高いバリュー投資家です。 【三菱地所 30年チャート】 |
■心に響くトップメッセージ(2024年9月10日) |
このところ、統合報告書を発行する企業が増えてきました。機関投資家に対して、情報量の劣る私たち個人投資家にとっては喜ばしいことです。 統合報告書を読む際に、私が真っ先に目を通すのはトップメッセージです。経営者自身が自分なりの言葉で語りかけているかどうかに注目しています。 その中で、とりわけ心に響いたのは次の3社です。 【伊藤忠商事 岡藤正広会長】 企業のトップの言葉や姿勢が、そのまま企業全体のイ メージとなり得るのも事実です。 オーナー企業ではない当社のビジネス規模が拡大すればするほど、当社の経営を司る私は、オーナー経営者に負けない覚悟を持って、経営に没頭しなければならないという切迫感に駆られています。 【オリックス 井上亮社長】 2008年のリーマン・ショック後から足元までの 15年間を大過なく過ごし、追い詰められるような失敗や危機を経験していない人がオリックスでも少しずつ増えていることに危惧を抱いています。 私は問題が生じた際でも担当者には、「1億円損しても、100億円儲けて返してくれたら大丈夫」と声をかけますが、失敗がダメではなく、その失敗を跳ね返す成長をあなたに期待しているという気持ちを込めています。 【SMC 高田芳樹社長】 社員の報酬は本来、成長への投資なのですが、日本では人件費がコストになってしまい、大企業でも収益性が低く、競争力が上がりません。 そして、このような事態に日本の人々は特に危機感を持たず、変化することを疎ましく思う人がたくさんいます。これでは社会全体が停滞してしまうのも無理からぬことと私には映ります。 最終的な投資判断の可否を「統合報告書のトップメッセージが心に響くか否か」で決めるのもありかなと思いました。 |
■企業価値評価における無形資産(2024年9月5日) |
内閣官房の資料に、興味深いグラフが掲載されていました(下図)。無形資産が企業価値評価のベースになっている米国市場に対して、日本市場では未だに有形資産が中心です。 ファーストイーグル社は、無形資産について、次のように述べています。 無形資産には、企業の市場での地位や経営の質といった要素が含まれるが、世界経済が知識集約型になるにつれてその重要性が増しており、無形資産を保有する企業の「本源的価値」を上昇させる重要な要因であると我々は考えている。 日本市場にて、無形資産に対する評価が不足している企業を今のうちに買っておけば、先行者利益を得られるかもしれません。 |
■ファーストイーグル社の銘柄選択(2024年9月1日) |
『一流投資家が人生で一番大切にしていること』から引用します。 たいていの投資家は、成長が期待される魅力的な企業を買いたいと思う。マクレナンはそうでなく、「消滅せずに生き残る」という、企業の消極的な使命のほうに注目する。彼の方針は、「複合的な競争要因」への耐性が強い、「持続的をもったビジネス」を探しあてることだ。 マシュー・マクレナン氏の運用するファースト・イーグル・オーバーシーズ・ファンドには、セコム(9735)や第一興商(7458)など「業界を牛耳っているものの、成長性にやや難のある企業」が組み入れられています。本書を読んだことで、その理由について、ようやく納得できました。 |
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by 角山智