二極化相場相場動向の予測企業業績の調べ方
知識のある投資家が失敗する理由長期投資家の仕事四季報夏号の読後感
理想の投資ウィリアム・オニールの指摘

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ショートコラム(2023年6月)

■ウィリアム・オニールの指摘(2023年6月28日)

ガラス戸の付いた本棚の一角にて、大切に保管されている株本があります。バリュー投資家の私にとって、大切な気づきを与えてくれるインデックス投資やトレード関係の名著です。

昨日、久しぶりにガラス戸を開けて、ある方からいただいたメールで触れられていた『オニールの成長株発掘法』を読み返しました。

本書には、いくつもの付せんが貼ってあり、本文のあちらこちらにマーカーが引かれていました。その中から、改めて琴線に触れた文面を引用します。

多くの人々は、自分が長期的な投資家があると言ったり、そう考えたりすることを、賢明またはかっこいいと思っている。彼らは、終始一貫して資金の全額を投資するという方針を取る。

確かに一部の機関投資家は、こうした投資哲学に従っている。だがこの柔軟性を欠く戦略は時に、特に個人投資家にとって、悲劇的な結果をもたらすことがある。

個人投資家も機関投資家も、下落幅が20%以下の比較的穏やかな弱気相場ならば、こうしたやり方でもそう被害はないかもしれない。しかし、弱気相場の多くは穏やかなものではなく、なかには完全に壊滅的な弱気相場もある。

私が投資を始めてから、個人投資家が全滅してしまうのではないかという恐怖を覚えた、壊滅的な弱気相場を3回(アジア通貨危機、ITバブル崩壊、リーマンショック)経験しています。

幸いにも2009年以降、そのような状況は鳴りを潜めているものの、マーケットの歴史を振り返れば、似たような出来事が繰り返し起こっています。

米国金利の動向なども考慮すれば、長期投資家にとっては耳の痛い、ウィリアム・オニールの指摘に耳を傾けるべき時期が近づいているように感じました。

大切に保管されている株本


■理想の投資(2023年6月26日)

今の私にとって理想の投資は、株価を気にしなくていい投資かもしれません。次のようなイメージです。

●10年前、地元の有力者に仲介され、ある非上場企業に投資を行った
●オーナー経営者に会い、事業所等を見学したうえで決断した
●買値は純資産相当額(PBR1倍) 、DOE3%(当初の配当利回り3%)で引き受けた
●不況で減益になった年もあったものの、赤字を出したことは一度もなく、その会社は利益を積み上げていった
●純資産が10年間で3倍に増えて、元本利回りは9%になった

非上場企業への投資は、特別なツテがなければ難しいです。それに対して、上場企業への投資では誰でもできます。

しかしながら、上場企業は毎日のように株価が変動し、ときには目まぐるしく乱高下します。

この値動きが投資を難しくします。「買値を15%下回ったから損切りすべきだろうか」とか「短期間で30%も上昇したから売ってしまおうか」とか、余計なことを考えてしまうからです。

いっそのこと「非上場企業のように、日々の株価が分からなければ、じっくり構えられるのに」と思うこともしばしばです。株価を気にせず長期投資ができる、何かしらの妙案はないものでしょうか。


■四季報夏号の読後感(2023年6月24日)

昨日『会社四季報 2023年3集・夏号』の通読を終えました。読後感を箇条書きします。

●長きにわたり好景気が続いているため、企業収益が高原状態となっている
●程度の差はあれど、EPSが多かれ少なかれ下駄を履いており、直近の業績から真の実力が分かりづらい
●景気敏感株にPER1桁の銘柄が見受けられ、将来的な企業業績の平均回帰を織り込んでいる

「もっと素直に好業績を評価したらどうか」という声も聞こえてきそうですけど、生き馬の目を抜くマーケットでは深読み・裏読みしなければ生き残れないと考えています。

個人的には景気敏感株のEPSが大きく落ち込み、PERの高くなる、足元とは対極的な局面を待っています。そういった時期が長期的な投資チャンスです。


■長期投資家の仕事(2023年6月22日)

資本主義の歴史が繰り返すのであれば、そう遠くない将来、再び不況が訪れるはずです。企業業績も軒並み悪化して、「株なんか買うもんじゃない」というムードに世の中が支配されます。

長期投資家の仕事は、そういった時期に思い切った投資を行える会社を、予め調査してピックアップしておくことです。私自身も、上がり続ける日経平均を横目に、地道な作業を続けています。

もっとも資本主義が進化して、金輪際、二度と不況が来ないのなら、徒労に終わってしまうわけですが・・・。人間の本質が変わらない限り、その可能性は無いに等しいと思っています。


■知識のある投資家が失敗する理由(2023年6月18日)

久々に読み返した『最新 行動ファイナンス入門』から引用します。

知識のある投資家が失敗するのは、心理的バイアスのもとで投資の意思決定を行うからである。

心理バイアスについて理解する手っ取り早い方法は、本書のような行動ファイナンスの本を読むことでしょうか。

個人的には、次のアドバイスがいちばん役立ちました。

チャットルームや電子掲示板は娯楽目的の利用に限るべきである。これらは、自信過剰や慣れといった心理的バイアスを増幅し、人工的な「社会的コンセンサス」を形成する温床である。

かつて自己分析を行ったとき、損をした投資の中に「あの投資家さんも買っているから・・・」といった類の銘柄がけっこう含まれていたのです。

今でも投資関係のブログやツイッターを見ることはありますけど、あくまで息抜き程度にとどめています。


■企業業績の調べ方(2023年6月11日)

銘柄分析を行う際、まずは業績推移を示した一覧表(下表)を作成します。ポイントは次の5つです。

(1)売上高・営業利益・純利益:不況の影響をいかほど受けるのか。

(2)配当:減益となる局面で減らすのか、それとも据え置くのか。

(3)1株CF(営業CF):利益を現金化できているか。

(4)1株純資産:純資産は利益の源泉であり(1株益=1株純資産×ROE)、極めて重要。右肩上がりに増えているか。

(5)ROE:中長期的に株主資本コスト(7〜9%)を上回っているか。

事例とした情報企画(3712)では、この一覧表から次のことが分かります。

(1)2009年9月期に大幅減収、大幅営業減益、最終赤字転落となっており、リーマンショックの影響を大きく受けている。

(2)2009年9月期に50円から20円に減配し、50円まで戻したのは2016年9月期である。

(3)2001年9月期を除き、利益を現金化できている。

(4)2009年9月期から2012年9月期まで、1株純資産が増えていない。

(5)中長期的に株主資本コストを上回るROEを達成している。

不況の影響を見極めるには、過去20年程度のデータが必要です。特に2013年からは好景気が続いているため、過去10年では何とも言えません。

情報企画に関しても、2014年9月期以降の業績だけを見れば、安定成長企業と勘違いする恐れがありそうです。

同社は地銀、信金、信組向けなど、金融機関向けの業務支援パッケージに特化しているため、顧客企業のシステム投資がいっせいに凍結される、金融危機を伴う不況に極めて弱いという特性を持っています。裏を返せば、そういったときが長期的な投資チャンスです。

【情報企画 業績推移】

情報企画 業績推移


■相場動向の予測(2023年6月6日)

投資のプロたち』は第13章のまとめが素晴らしいです。特に気に入っている文言を引用します。

取材したマネージャーたちは、株式と債券の個々の銘柄や市場の正確な底や天井を予測する能力は誰にもないと言う。むしろ、彼らは相場の過小評価と過大評価の局面を探している。

目先の短期間の相場動向を予測しようとするのは時間の無駄だと大半のマネージャーたちが感じている。

多くの者は、すべての雑音(日々の事実や数字を含む経済ニュース)を気にしないかわりに、3〜10年先の株式と債券の選択割合に注意を払っている。

共感できる部分が多いです。

私自身も、短期的な動向は気にせず、株式市場全体が割安になるまで、いつまでもじっくり待ちたいと考えています。自己資金を運用している分、本書に登場している、顧客の資金を預かっているマネージャーたちより気楽です。

いつ株式市場が割安になるのか、いくらで底打ちするのか、当たりもしないことを予測するつもりはありません。肌感覚で「そろそろ買ってもいいかな」と思える、そのときが来れば、少しずつ買っていきたいです。

もっとも、いつでも直ちに行動できるように、銘柄分析だけは続けています。「一日も早く、そのときが来ればいいな」とうずうずしながら。


■二極化相場(2023年6月5日)

相も変わらず、二極化相場が続いています。分かりやすいチャートが米国のナスダック総合指数とラッセル2000指数の比較です。

アップルやマイクロソフトなど米国を代表する巨大IT企業のひしめくナスダック総合指数が上げ続けているのに対し、米国の小型株指数であるラッセル2000指数はほぼ横ばいで推移しています。

短期と割り切り、この株高にぜひとも乗りたいのあれば、しかるべき銘柄を選ぶべきでしょうか。もっとも自己資金を長期で運用している投資家が、慌てて飛び乗るべき局面ではないですけど・・・。

【ナスダック総合指数 年初来】

ナスダック総合指数 年初来

【ラッセル2000指数 年初来】

ラッセル2000指数 年初来



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