日銀短観、頭脳でなく胆である、二重相場、
ブルックス・ブラザーズの破たん、明日の大阪セミナー、
「ストック型ビジネス」音声CD、エスクリの動向、景気回復に2年以上、
空いていた東京、高値を追えない性格、キヤノン
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ショートコラム(2020年7月)
■キヤノン(2020年7月30日) |
サラリーマン時代、私は本社勤務でした。事務所にはコピー機室あり、月1回開催される営業会議の2〜3日前から、担当女性が一日中詰めて、配布資料のコピーに追われていました。彼女に付けられたニックネームは「コピーちゃん」です。 事務所が新しいビルに移転した際、コピー機室はなくなり、資料を大量にコピーする光景は見られなくなりました。PCが一人一台体制となり、社内でグループウェアを使い始めたからです。会議でのプレゼンも、プロジェクターに資料を投影する形に変わりました。 そういったオフィスのIT化に付いていけず、若手を捕まえては「私にもコピーを1枚」と言っていた世代は、数年後に退職しました。 また旅先でも、私のようにコンデジをカバンからごそごそ取り出し、スナップを撮るカメラマンは少数派となりました。たいていの旅人は、持ち歩いているスマートフォンで手軽に撮影しています。 キヤノンの収益源は事務機器とデジカメです。そういう意味で、同社のビジネスモデルは限界に来ていたのかもしれません。 昨日、キヤノン株が1999年以来となる、21年振りの安値を付けました。2000年以降に同社株を買った投資家は報われなかったことになります。 近年は高配当株として個人投資家の人気を集めていたようですが、中間配当は半減され、期末配当も未定とされました。 一時は栄華を極めた会社ながらも、昨今の時流を鑑み「以前のように、キヤノンの事務機とデジカメを買ってくれる会社や個人がどの程度いるのだろうか?」と常識的に考えれば、投資対象にならなかったと思われます。 |
■高値を追えない性格(2020年7月28日) |
たまたま読んだ記事、「100万円が1億円」株の甘い罠にハマり痛い目見る人の特徴が興味深かったです。 株式投資で損している投資家は全員、高値でつかんでしまっています。高値にある銘柄というのは、その株が話題であったり、証券会社の推奨銘柄であったり、もしくは専門誌の「今週の銘柄」で特集を組まれている銘柄であったりするケースが多いです。 つい最近、自分の売買履歴をすべて振り返り、高値をつかんでるかどうかを確認しました。ところが、ほとんど見当たりませんでした。 もともと臆病者の私は、高値を追えないタイプの投資家なのです。 強気相場に乗り遅れて、ずいぶんと儲け損ねましたけど、生き馬の目を抜くマーケットで生き残れたのは、チキンハートが幸いしているのかもしれません。 そんなわけで、世間が不況に突入しているにもかかわらず、日経平均が2万円を超えている状況では何もできず、悶々とした日々を送っています。 |
■空いていた東京(2020年7月25日) |
23日の祝日、東京まで日帰りで出張したときの状況を報告しておきます。 行きの「のぞみ84号」自由席はジャスト20%、帰りの「のぞみ53号」指定席は10%程度の乗車率でした。13時過ぎに入店した日高屋もガラガラです。セミナー会場にも空室が目立ちました。 いつも商品を山積みしている品川駅の弁当屋には、申し訳程度にしか弁当が並べられていません。店頭での押し合い圧し合いもなく、余裕で品定めできました。 東京がここまで空いてたのは初めてで、2011年の東日本大震災直後を上回っている気がします。この状況が長引けば、実体経済も相当にヤバくなりそうです。 |
■景気回復に2年以上(2020年7月21日) |
日経新聞の「社長100人アンケート」記事より引用します。 自社がビジネスをしている市場がコロナ禍前の水準に回復するのに「2年以上かかる」「戻ることはない」という回答が合計55.8%にのぼりました。 5月下旬の調査から12.4ポイントも増えています。企業はコロナ禍の長期化を前提とした経営を考えています。 企業経営者の感覚としては、概ね正しいと思います。立場上、本音を明かせない社長もいるでしょうから、実際の数字はもっと高いかもしれません。 こういった状況を、未だ楽観ムードに支配されている株式市場が、いつ織り込みにかかるのかにも注目したいです。 |
■エスクリの動向(2020年7月18日) |
一時期は人気銘柄だった、エスクリ(2196)から発表が相次いでいます。 7月15日 三井住友銀行と運転資金60億円のコミットメントライン契約 7月16日 TKPと資本業務提携 同社株をTKPに譲渡 7月16日 創業者の岩本会長が代表権を外れる 7月16日 SBIHDと資本業務提携 1株334円で第三者割当増資(希薄化率15%) 一連の流れから、資金繰りに不安を生じており、自力での業績回復を断念したようにも受け取れました。 SBIHDとの資本業務提携のリリースに書かれていた次の文面が、苦しい現況を物語っています。 このような状況を踏まえ、当社では、経費削減に取り組むとともに、当面の運転資金については既に金融機関からの借入により調達しておりますが、業績を回復・改善させるには一定期間を要するものと見込まれます。 この件に関して、エスクリ株を持っていない投資家も「対岸の火事」で済ませないほうがいいと思います。同社が早めに動いただけの話で(その点は評価できます)、新型コロナウイルスの影響を多大に受けている業界では、各社とも似たり寄ったりだと思われるからです。 まだ銀行も融資に応じてくれますし、資本業務提携先も見つかるでしょう。しかし今後の状況次第では、リーマンショック後のように、どこからも救いの手が差し伸べられないケースが想定されます。 「明日は我が身」とならないよう、持株の財務やビジネスモデルをチェックして、不況の長期化に耐えらるかどうかを確認しておきたいものです。 |
■東武住販の決算短信(2020年7月16日) |
7月14日に発表された東武住販(3297)の決算短信より気になった箇所を取り上げます。 (1)当期の経営成績の概況 期初の品ぞろえ不足に端を発した第1四半期の売上高の低迷に、営業人員の減少と新型コロナウイルス感染症拡大が追い打ちをかけました。 品ぞろえ不足の原因として、中古住宅の仕入に関する競争激化が考えられます。参入障壁の高い事業とは言えないだけに気がかりです。 それに加えて営業人員の減少も痛手です。人を採用し、育てるまで少し時間がかかるかもしれません。 (4)今後の見通し 海外に目を向けると米国と中国の経済摩擦、米国大統領選挙の行方等の変動要因もありますが、依然として新型コロナウイルス感染症が世界中に広がっており、世界経済は、短期間で新型コロナウイルス感染症の発生する前の環境に復帰するとは考えにくい状況です。 私の見ている範囲では、同社のようにL字回復を想定している会社が多いです。V字回復を期待している株式市場とは相当なギャップがあります。 世界経済の低迷が続くのであれば、いかに当局がゴリ押しを続けようとも、足元の株価水準を維持するのは困難と思われます。バリュー投資家としては、楽観派が肩を落としたときが狙い目になりそうです。 なお同社に関しては、短期的な業績回復は期待薄ながら、荻野社長の経営手腕に着目しつつ、長い目で追うのも一興です。 |
■「ストック型ビジネス」音声CD(2020年7月14日) |
7月開催のバリュー投資塾「ストック型ビジネス」音声CDが完成しました。 今回は、定量分析(バランスシートとキャッシュフロー)、定性分析(ビジネスモデルと経営者)の両面から、安定的にキャッシュが積み上がるタイプ会社を取り上げました。この手法は、皆さんが銘柄分析を行う際の参考になると自負しております。 ご購入を希望される方はメールにて、氏名、郵便番号、住所、電話番号を記入してお申込みください。折り返し、振込口座などのご案内をいたします。 既にお申込み・ご入金をいただいた分は、明日15日中に最寄りの郵便局から発送予定です。 |
■明日の大阪セミナー(2020年7月10日) |
明日7月11日(土)は大阪セミナーです。私にとって4カ月ぶりの、参加者の皆さんと膝を突き合わせたセミナーになります。 ズームも確かに便利ですけど、バリュー投資のような暗黙知(経験的に使っている知識だが、簡単に言葉で説明できない知識)を含む内容のセミナーは、少人数のフェイス・ツー・フェイスでニュアンスをつかんでもらうのが一番だと思っております(音声CDに、一見どうでもいいような雑談まで収録しているは、そのためです)。 間隔が空いた分、新鮮な気持ちでお話しできそうです。私自身も、明日のセミナーを心待ちにしています。 |
■ブルックス・ブラザーズの破たん(2020年7月9日) |
アメリカン・トラッドの老舗、ブルックス・ブラザーズの経営破たんは、 個人的にショッキングなニュースでした。 スーツの流行が目まぐるしく変わる中で、同社の商品は昔ながらの形を堅持しており、お気に入りのブランドだからです(我が国ではダイドーリミテッドとの合弁事業)。 経営破たんの理由として、オフィススタイルのカジュアル化が上げられていますけど、米国における中流階級の崩壊も関係しているのではないでしょうか。 いずれにせよ、ひとつの時代が終わったような気がしています。 |
■二重相場(2020年7月7日) |
『ウォール街のランダム・ウォーカー』より引用します。 しかし、株式市場が1972年初めから下落し始めるにつれて、このニフティ・フィフティ現象は一層異常に見えた。 市場全体が下落を続ける中で、ニフティ・フィフティ銘柄だけは記録的高水準の株価収益率を維持し続け、相対的にその過大評価ぶりはさらにひどくなった。 その結果、あたかも市場には2つの異なった相場が存在するかのように見え、いわゆる「二重相場(ツー・ティア・マーケット)」と呼ばれた。 下図は上から順番に、アップル(AAPL)、ウェルズ・ファーゴ(WFC)、エクソンモービル(XOM)の株価チャートです。大手商業銀行やオイルメジャーの株価が下げている中で、アップルが高値を更新しています。 この状況は今から半世紀前に起こった、1970年代初頭のニフティ・フィフティ(素晴らしい50銘柄)・ブームに酷似しているように思えてなりません。もっとも今回の相場を引っ張っているのは、たった5銘柄(GAFA+マイクロソフト)ですけど。 |
■頭脳でなく胆である(2020年7月5日) |
『ピーター・リンチの株式投資の法則』より引用します。 どんな方法で企業や株式投資信託を選ぶにしても、成功するか失敗するかは、懸念を無視して、自分の投資をずっと続けられるか否かにかかっている。 株式投資家の運命を決めるのは、頭脳でなく胆である。いかに優秀であろうと、自分の考えを持たない投資家は、株式市場では勝ち残れない。 まさにおっしゃる通りです。しかし、実践を伴わなければ、単なる精神論で終わってしまいます。 持って生まれた性格を変えることはできません。私のような臆病者に「大胆になれ」と強要しても無理なのです。逆に臆病な(=慎重であり、思慮深い)性格をプラスに活かす方向を模索すべきでしょう。 メンタルを鍛えるのも、なかなか難しいと思います。「自分はビビリだから、こういった点に注意すべき」といったチェックリストを作成することで、精神面の弱さをカバーしたほうが現実的です。 結局、自分自身をよく理解した上で、自分の投資をずっと続けられるような仕組みを築き上げるのが一番でしょうか。 |
■日銀短観(2020年7月1日) |
本日、日銀短観が公表されました。 まず現状です。(図が小さくて見づらい方は短観のサイトよりPDFデータをダウンロードしてください)。 ●業容判断の推移を見る限り、不況期入りした可能性が高い。 ●しかし遅行指標の雇用は、1997年のアジア通貨危機や2008年のリーマンショックほど悪化していない。 ●企業の資金繰りは苦しくなりつつあるものの、まだ銀行は傘を差し出してくれる。 今後のポイントは次のとおりです。 ●雇用がさらに悪化して、就職氷河期の再来と言われるようになるかどうか。 ●銀行のお尻に火が付き、差し出した傘を取り上げるかどうか。 この2つが実現すれば、さんざん待ちぼうけを食らってきたバリュー投資家の出番が来るかもしれません。マーケット氏から、いつ呼ばれても出られるように、肩を温めておきたいものです。 |
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by 角山智