フィリップ・フィッシャーの情報入手先リボンを付けたネコタレブの告白
フィリップ・フィッシャーの続きアルファポリスの第1四半期決算高級官僚の発想
隠れバリュー指数投資に向かない人嫌な下げ方シンプルな銘柄選択手法
嫌いな経営者には投資しない業界知識

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ショートコラム(2016年8月)

■業界知識(2016年8月30日)

銘柄分析を行う際、業界知識が必要となります。一例をあげれば、ドラッグスストアでは次のような項目の業界標準値を知っておかなければ、各企業の強みをとらえることができません。

●売上高営業利益率
●自己資本比率
●標準的な店舗面積
●食品の売上高に占める割合
●新規出店に必要な商圏人口

こういった数字を知らずに「売上高営業利益率10%以上、自己資本比率50%以上」という製造業の基準を当てはめてしまえば、ほとんどの企業が投資対象から外れてしまいます。

SPA(製造小売)ならともかく、商品を仕入れて売る小売業に営業利益率10%以上を要求するのは無理ですし、在庫の回転が早い現金商売では自己資本比率30%台でも問題ありません。

また、上場している業界大手に関しては、それぞれの企業について、ある程度知っておくことが望ましいでしょう。

●顔ぶれと特色
●各企業の本拠地、店舗網、物流センターの場所
●今後の出店強化地域

業界知識を増やすには、投資対象をある程度絞り込み、その中で銘柄分析を繰り返し行うことです。手前味噌ながらバリュー投資塾でも、個人投資家に理解しやすい内需関連のローテク株を重点的に分析しています。


■嫌いな経営者には投資しない(2016年8月29日)

東京出張時、書店で見つけた『投資される経営 売買される経営』を読了しました。硬派で本格的な内容ながら、一箇所だけ、ホッとさせられる記述がありましたので紹介します。

私にとって、長期投資の最後のよりどころは「好き嫌い」なのです。「この経営者が好きか嫌いか、ずっと付き合っていきたいと腹の底から思えるか」が3600社もある上場企業の中から10社程度しか投資しない私たちの最後の投資基準なのです。

著者はピジョンなどに投資している機関投資家ですが、この点に関してはまったく同感です。

なぜなら、個人投資家が好むような小型株では、オーナー経営者以外、マネジメントのできる人材が皆無に等しい状況だからです。そのような会社に投資する場合、社長個人への出資に等しいといえます。

だったら、最後は好き嫌いで決めていいのではないでしょうか。私自身も、経営者の嫌いな会社には、基本的に投資しません。


■どんな馬鹿でも経営できる(2016年8月28日)

初心者時代に繰り返し読んだ『ピーター・リンチの株で勝つ』で一番インパクトを受けた言葉があります。

競争の厳しい複雑な産業の中で優秀な経営陣を抱えた優良会社と、単純だが競争のない産業の中で二流の経営陣を抱えた面白みのない会社の間で、選択を迫られたならば、私は後者に投資するであろう。

(中略)「どんな馬鹿でも経営できる」というのは私にとって完璧な会社の一条件である。

参考までに、この条件に当てはまる会社、当てはまらない会社のチャートを掲載しておきます。

バリュー投資塾の常連さんには、おなじみの3社です(「単に、お前が嫌いな社長の会社を並べただけだろう」という声も聞こえてきそうですが)。

いずれも、単純なローテク産業ながら「競争が厳しいか否か」といった事業環境に相当な違いがあります。ちなみに、某社もテクノロジーを利用しているだけで、やっていることは建築資材の卸という昔ながらの商売です。

なおサラリーマン時代の苦い経験より、どのようなタイプの経営者が会社を傾かせるかについて、多少は分かっているつもりです。

そんな社長でも務まる会社なら・・・、買っておけば良かったですね(涙)。

エスクリ 株価チャート(週足)

サンワカンパニー 株価チャート(週足)

エイジス 株価チャート(週足)


■シンプルな銘柄選択手法(2016年8月26日)

チャールズ・エリスが選ぶ大投資家の名言』の著者より引用します。

知り合いのある投資家は、非常に簡潔で、効果的な銘柄選択手法をとっていた。さまざまな企業のROA(総資本利益率)をまめにフォローし、企業収益が、その企業の過去の平均的水準よりも低くなると買い、高くなると売るというものである。この投資家は大変な成功を収めた。

トヨタ自動車を筆頭に、日本株にはこの手法が有効なグローバル製造業が多いです。内需系も、不動産関連には使えます。

景気サイクルを考慮すると、もう2年ほど待てば、買い場(=企業収益の低迷期)が訪れてもおかしくありません。


■嫌な下げ方(2016年8月23日)

8月12日に発表された飯田グループHD(3291)の第1四半期決算は、2.8%増収、32.7%営業増益とそんなに悪い数字ではありませんでした。ところが、株価は翌営業日に上げただけで、その後は嫌な下げ方をしています。

このところ、飯田グループHDのように、業績は堅調にもかかわらず、株価の下落する中小型株が散見されます。日銀のETF買い入れにより、日経平均は小康状態ながら、相場自体は崩れかけているようにも思えました。

飯田グループHD 株価チャート(日足)


■投資に向かない人(2016年8月19日)

ある不動産会社の社長が「不動産はミドルリスクミドルリターンで、たしかに副業にはむいてる」と述べた後で続けた言葉。

また働くのが嫌だから不動産買って、会社を辞めて楽したい…、 なんて思ってる人も不動産投資には、向かないタイプの人だと思う

個人的見解を付け加えさせてもらえば、そんな人は株式投資にも向いていないような気がします。株の職人として一人前になるには、相当の努力を要するからです。


■隠れバリュー指数(2016年8月15日)

東証2部株価指数を、私は勝手に「隠れバリュー指数」と名づけています。

東証2部は割安銘柄の宝庫であり、バリュー株全体の値動きに近い実感を持っているからです。また、思惑に左右される部分が少なく、割と一本調子で上昇・下落するため、相場の状況を理解しやすいです。

アベノミクス相場では、ほぼじり高だったバリュー株も、2015年7月に高値を付けてから反落しています。このまま、下に抜ければ、まずいことになるかもしれません。

2部株価指数チャート(月足)


■高級官僚の発想(2016年8月12日)

バートン・ビッグスの著書『富・戦争・叡知』より引用します。

それはさておき、1942年に話を戻す。この年の初め、日本の大蔵省(MOF)は戦費をどうやって調達したらいいかと懸念し始めた。若くて賢い次官が株価を吊り上げて国富を増やせばいいと思いついた。(中略)一見よさそうな景気は、実は莫大な財政赤字と物価上昇による人工的なものだった。

今も昔も、高級官僚の発想は変わらないということでしょうか。

近い将来「それはさておき、2012年に話を戻す。この年の年末、日本の財務省は・・・」という出だしで似たような文章が書けそうです。もっとも、物価は上がらなかったみたいですが。


■アルファポリスの第1四半期決算(2016年8月10日)

「まったく収益の読めない会社になってしまったな。ウォッチリストからも外さざるを得ないだろう」

IPO直後から目を付けていたアルファポリス(9467)がゲーム事業への参入を発表したとき、思わずそうつぶやいてしまいました。

同社は「インターネット上で人気のある小説・漫画を書籍化する」というユニークなビジネスモデルにより、絵に描いたような斜陽産業である出版業界において、成長を遂げてきた会社です。

にもかかわらず、畑違いであり、競争も厳しいゲームに参入する意味が全然理解できません。梶本社長には、隣の芝生が青く見えたのでしょうか・・・。

本日発表された第一四半期決算にて、さっそく、その悪い予感が的中しました。前期に大ヒットを飛ばした出版事業の反動減に加え、ゲーム事業が大赤字を計上したため、大幅減益に陥ってしまったのです。

【平成29年3月期第1四半期 経営成績】

 
  売上高 
 営業利益
 経常利益
 純利益
 1株益
当期
652
38
37
23

4.88

前期
783
204
203
144
29.76

現時点にて、業績予想の修正は行われていないようですが、ちょっと厳しいかもしれません。何より、株価チャートが業績の先行きを物語っています。

アルファポリス 株価チャート(日足)


■フィリップ・フィッシャーの続き(2016年8月8日)

優秀な投資家の意見に限り参考にしていたフィリップ・フィッシャーですが、相手の主張を全て認めていたわけではなかったようです。

この人たちが特に気に入っている株について本人たちが下した結論に同意できない場合も少なからずありましたし、調査する価値さえ感じられないこともありました。ときには、調査が甘いのではないかと感じたことも1度や2度はありました。

「優秀な投資家とのみ付き合うが、相手の意見には100%同意しない」という、いかにもフィッシャーらしい合理的なやり方です。

私たち個人投資家も見習いたいですね。


■タレブの告白(2016年8月5日)

まぐれ』の著者、ナシーム・ニコラス・タレブが著書の中で告白しています。少し長くなりますが、引用します。

(中略)マスコミを相手にせず、ビジネス社会にいる他の連中と付き合わない自分のやり方にいっそう自信を持った。他の連中というのはだいたいトレーダーや投資家で、私はいっそう彼らを軽蔑するようになっている。皆と仲良くして彼らの価値観に共感し、彼らとそっくりになりたいという生まれつきの欲望を抑えこむ力は私にはない。彼らと完全に手を切ったほうが、まだ自分の行く末を自分で決められる。

この考え方、すごく良く理解できます。

かつて、2003年から2005年の小泉相場にて一世を風靡したカリスマ投資家が、2006年の新興市場崩壊で次々と退場させられました。

その姿を横目に見ながら「何だ、この人達。単に運が良かっただけじゃないか。でも面識がある程度の付き合いで助かった。もし深くかかわり、価値観を共有してしまったら、自分も運命を共にしていたかもしれない」と背筋が寒くなったものです。

今では、投資家同士の付き合いも最低限で済ませていますし、投資ブログなどもほとんど見ていません。なぜなら、私もタレブ同様に、他人の影響を受けてしまう弱い人間だからです。


■リボンを付けたネコ(2016年8月4日)

数年前、リボンを付けたネコが人気者になりました。誰しもが「欲しい」と殺到したため、値段が跳ね上がります。

しかし、人気は長続きしませんでした。みんな「もういらない」と言い出したので、このところ値段が下がり続けています。

どうやら、投資家という人種は、周期的にネコを好きになったり嫌いになったりするみたいです。

サンリオ 株価チャート(月足)


■フィリップ・フィッシャーの情報入手先(2016年8月2日)

フィリップ・フィッシャーが著書『株式投資で普通でない利益を得る』にて、意外なことを述べています。

それは、調査すべき企業の候補をどうやって選ぶかについてです。

業界の友人から得たヒントをもとに選んだ企業がおよそ5分の1を占め、少数の優秀な投資家が奨める魅力的な企業のなかから選び出したものが5分の4を占めます。

他人の意見には耳を貸さない堅物というイメージのフィッシャーですが、「これぞ」と認める投資家の見立ては参考にしていたようです。



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