温泉水の再利用と衛生問題

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 地下から湧出した源泉をそのまま浴槽に入れれば効果があるとは限りません。そのまま使えば資源を浪費して温泉を枯渇させるだけでなく、成分が強くて人体を刺激します。そこで源泉を加熱したり、うすめて利用しています。お酒でいえば水でうすめたアメリカンやブレンドにしたほうが身体になじむようなものです。

 また、資源の有効利用を図るために源泉を共同で使用するだけでなく、循環濾過方式を採用して再利用(リサイクル)もします。そこに衛生の問題も絡んできます。というのは温泉には微生物が住んでいるからです。すべてが有害ではありませんが人間に害を与える生物がいることを無視できません。

 ここで注意していただきたいのは循環濾過方式が「源泉かけ流し」に劣るということを述べていないことです。源泉かけ流しでも消毒が必要な温泉もあります。温泉そのものに微生物が住んでいるから当然のことです。AかBかの二者択一でなく温泉そのものに何が含まれるかを忘れた論議は不毛です。

 たびたび引用している日本温泉科学会編の『温泉学入門』には「
レジオネラ属菌は貯めっぱなしの湯ではもちろんのこと、循環濾過している湯でも繁殖可能で、これを飲んだり、気泡浴や打たせ湯で霧状になったもの(エアゾル)を吸い込むとレジオネラ肺炎になる可能性があります。」p90という記載もあります。

 このための殺菌に塩素を使った消毒を行ないますが、塩素の臭いが温泉の香りや風情を損なうことになります。そこで塩素をうすめたり、一度に大勢の客が入浴して塩素濃度が急激に低下してレジオネラ菌の繁殖がすすみ、感染の危険を増すようです。


【追記】

 衛生についてはこれ以上立ち入りませんが環境省自然環境局のホームページには「温泉の保護と利用」のコーナーに多数のPDF資料が掲載されています。平成17年5月24日から適用される「温泉法施行規則改正の概要」パンフレットには、「温泉利用施設において、温泉に加水、加温、循環装置の使用、入浴剤添加、消毒処理などを行っている場合は、その旨とその理由を掲示しなければならないこととしました。」と記載されています。
 また、参資料として温泉法や施行規則なども付いていますのでご利用したらいかがでしょうか。

風呂関係参考資料リストとホームページリンク集  
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