5ｰ2ｰ7　湯舟の浮遊物

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　わたしが山に出向いてびっくりしたのは湯舟にアカ(垢)がびっしり浮いていることでした。こんな湯に入れるものかとさっそく脱衣所に戻って着替えをしたら相棒に大笑いされたものです。慣れない者には「湯の華」は不快な浮遊物に映ります。

　ところで、浴槽に浮く「湯の華」は温泉成分の生まれ変わりの姿です。それは「温泉華」といわれ、温泉に含まれている成分が湧出後の急激な温度低下や減圧、空気との接触による炭酸ガスの逸出や酸化などによって沈殿したものです。

　そこで含有成分によって多様な温泉華が発生します。どんなものがあるかを日本温泉科学会編の『温泉学入門』にもとづいてまとめておきます。

　●硫黄華

　　温泉に含まれる成分が結晶化したものです。火山の噴気地帯の温泉に多く見受けられます。

　●石灰華

　炭酸カルシュウムを主成分とする沈殿物です。比較的緻密で硬いタイプを「トラバーチン」と呼び石材に使われます。通常は多孔質で軟らかいタイプを石灰華と呼びます。

　●珪華(けいか)

　温泉に含まれているケイ酸を主成分とする沈殿物です。

　●鉄華(褐鉄華:かつてっか)

　温泉中に含まれる針鉄鉱の沈殿物です。

　●硫酸塩華

　石膏(硫酸カルシュウム)、ぼう硝(硫酸ナトリウム)、明礬(みょうばん:硫酸アルミニュウム)などの硫酸塩の沈殿物からなるものです。


それはともかく、湯の華は家庭用の天然入浴剤として商品化されていますが大きく分けると二種類になるようです。

　●硫黄などを多量に含む温泉から成分を沈殿させ、それを乾燥して粉末にしたもの。
　●石灰華の塊などを粉末にして、焼いたりするなど多少の手を加えて生成したもの。

なお、商品については「ツムラ温泉科学プロジェクト」も参考になります。