温かいから温泉か
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たびたび持ち出す日本温泉科学会編の『温泉学入門』によれば、「日本や韓国では、温泉は湧出温度を25℃以上と定めていますが、ヨーロッパでは20℃、アメリカでは21.1℃(70°F)が基準であり、若干の違いがあるものの温度は低く設定されています」p106とある。これは温泉の利用方法の違いから生ずるようだ。ちなみに、「湧出温度」というのは源泉が採取される温度であって浴槽の温度とは異なる。
余談になるが「ギターに挑戦」で紹介した最相葉月さんのベストセラー『絶対音感』にはA(ラ)の音が440ヘルツというのは歴史的にも国別でも唯一でないことが示されていた(これは「本の紹介」に掲載している)。温泉の解説には日本の温泉法を持ち出して25℃が世界標準のように説明するものがあるがそれは誤りである。
ところで、温泉とは何だろうか。それは普通の地下水である「常水」に対し、温度や成分などによって区別される「異常な地下水」である。これも鉱泉と温泉に区別されるが話を混乱させるから以後は異常な地下水を「温泉」としたい。
そこで、日本の温泉法第2条に戻ると温泉の定義は温度はひとつの条件にすぎない。もうひとつは地下水に含まれる物質の成分を基準としている(地下水だけでなくガスも含まれる)。そのいずれかを満たせば温泉というから、25℃未満の温泉もある。いわゆる「冷泉」や「鉱泉」も温泉になる。常水に比べれば温かいが、それをもって温泉というのでなく、含まれている成分も大きな意義を持つことを忘れてはなるまい。
数字を持ち出せば日本の温度別源泉数24,349のうち42℃以上が13,144で56パーセントを占める。これも日本には高温の温泉が多いということだろうか。それとともに、同じ統計では25℃未満の源泉は3,626あることも忘れてはなるまい。なお、総源泉数27,041のうち利用されていないものが約三分の一を占めているようだ(『温泉学入門』に掲載されている「平成14年度の環境省全国温泉統計」より)。
【追記】
環境省のホームページには「自然環境・自然公園」の中に「温泉の保護と利用」というコーナーがあります。
ここには温泉法や施行規則のほかに、平成17年度までの「温泉利用状況経年変化表」付いています。都道府県別に源泉の利用状況がつかめるので利用されるようにおすすめしまします。
横浜市の温度分布が全国集計と異なっていたりしてなかなか面白い。これについては4−3でふれています。総目次で確かめてください。
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