モンキアゲハ

Papilio helenus nicconicolens

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概要

食餌 主食：県南部ではミカン科のカラスザンショウが主｡北部では栽培ミカン類が中心と考えられる。
代替：サンショウ､イヌザンショウなどのサンショウ類､栽培ミカン類が利用可能｡コクサギやミヤマシキミはあまり好まないが､与えれば食べる。
増殖：カラスザンショウ：実生が可能｡実生は10月頃に黒色に熟し､果皮から露出した枝上のものを採取するが､そのような個体はほとんどが大木であり､物理的に困難であるため､落下したばかりのものでも良い。乾燥に注意して冷暗所で保存し､翌春４月頃(花期)に蒔く｡ 暖かい室内や温室内であれば､採取後すぐに播種し､日向の暖かい場所に置けば１週間程度で発芽する｡取り木は高木になるので不可能｡挿し木は確かめていないが､比較的水揚げが悪いので困難と考えられる。増殖ではないが､県南部であれば幼木を山取りして地植えや鉢植えにするほうが楽｡頂芽を摘んだり枝を切り詰めると､容易に多くの脇芽を生じるので効率的に葉を増やすことができる｡ただ､高さ30㎝以上に成長した株は､落葉期に移植しないと活着率が悪い｡また､カラスザンショウは基本的に照葉樹林の先駆種であり､県央～県北部では絶対数が少ないので難しい｡
採集 ステージ：夏型は卵､幼虫｡春型は卵､幼虫､蛹(休眠)｡卵は庭先のミカン類の若葉や､日当たりの良い場所に生えたサンショウ類の新芽のほか､成葉の葉裏に産付されるので､見つけるのは簡単｡ ただ､カラスザンショウの大木が付近にある場合､これを集中的に産卵場所として選ぶ傾向が強いので若干条件が厳しくなる｡幼虫は全期間を通じて食樹の葉上や中肋上に静止する性質を持つので､高木でなければ採集は難しくない｡休眠蛹は食樹からかなり遠くまで離れることが知られており､ほとんどが褐色型なので探すのは結構難しい｡
適期：卵､幼虫共に５月～11月頃まで断続的｡９月以降に見つかるものは蛹で休眠することが多い｡休眠蛹は10月～翌３月上旬頃｡
難度 幼虫：比較的容易｡食樹さえ切らさなければ､ほとんど手がかからないくらいカンタンだが､過湿と高温に注意すること｡
成虫：困難｡飛翔力が強く､移動性の強い種なので､屋内での飼育は難しい｡
採卵：♀は羽化直後には交尾が可能なので､比較的容易といわれる｡その際には羽化から２日～３日後の元気な♂を使用すると成績が良いらしい｡ 一般に野外における♀の既交尾率は高く､羽化直後に交尾を済ませてしまっているものが多いようだ｡
飼育法 　特に過湿と高温に弱い｡涼しく風通しのよい場所におかないと､卵は孵化率が極端に落ち､幼虫はカビにやられてしまう。夏季の密閉容器での飼育は極力避け､開放飼育にしたほうが成績が良いようだ｡ただ終齢幼虫は蛹化などの際に食樹を離れる傾向が強いので､屋内外を問わずネットがけが必須になる｡ミカン科植物は一般に水揚げが比較的良いので､花瓶等に挿して開放飼育でも十分に可能｡ただし長くとも５日～６日に１回は枝を交換すること｡ 基本的には食草の交換を嫌う種だが､各種のミカン科植物が併用できる｡夏型となる幼虫は特に巨大で､摂食量もハンパな量ではないので､食樹は十分に用意しておきたい。
備考 　卵は産付直後のものを除き､タマゴヤドリバエの寄生リスクがある｡また黒色に変色したものはウィルスに侵されていることが多い｡ ５月～７月に採集した幼虫には､蛹から脱出するアゲハヒメバチ類が寄生していることがあるが､幼虫の外見では判別できない｡蛹化後､体の一部が黄色くなったりして変色したものは､ほぼ間違いなく寄生されている｡
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記録

№ 採集 記録 蛹型 性別 食餌 備考
St Date Loc 産卵 孵化 終齢 前蛹 蛹化 羽化 産卵 給餌
2005年 第１化(春型)
1 E 2004/9/20 館山市藤原 9/15 9/22 10/9 10/22 10/23 4/11 緑色 ♀ カラスザンショウ イヌザンショウ  
2 E 2004/9/20 館山市藤原 9/16 9/22 10/20 11/4 11/5 3/29 褐色 ♂ カラスザンショウ イヌザンショウ  
3 E 2004/9/20 館山市藤原 9/16 9/22 10/14 10/25 10/26 4/30 緑色 ♂ カラスザンショウ イヌザンショウ  
※採集総数29個体。死亡26(E(12)､L[2]:1,L[3]:6,L[4]:4,LP:2)。死因は卵が不明(孵化せず)､幼虫は感染症､ 前蛹は蛹化失敗。羽化個体３。
2004年 第３化(夏型)
1 E 2004/8/21 館山市犬石 ? 8/21 9/5 9/15 9/16 9/30 緑色 ♂ カラスザンショウ カラスザンショウ  
2 E 2004/8/21 館山市犬石 ? 8/21 9/8 9/21 9/22 10/7 緑色 ♂ カラスザンショウ カラスザンショウ  
3 E 2004/8/21 館山市犬石 ? 8/21 9/9 9/24 9/25 10/10 褐色 ♂ カラスザンショウ カラスザンショウ  
4 E 2004/9/20 館山市藤原 9/16 9/21 10/9 10/20 10/21 11/12 褐色 ♂ カラスザンショウ カラスザンショウ  
5 E 2004/9/20 館山市藤原 6/16 9/21 10/9 10/20 10/21 11/14 緑色 ♀ カラスザンショウ カラスザンショウ  
※採集総数11個体。死亡６個体(L[4]:1,L[5]:2,P:2)。死因は幼虫が感染症 ､蛹は蛹化失敗(1)、感染症(1)。羽化個体５。
2004年 第３化(夏型)
1 E 2004/9/20 館山市犬石 9/16 9/21 10/9 10/20 10/21 11/12 緑色 ♂ カラスザンショウ イヌザンショウ  
2 E 2004/9/20 館山市犬石 9/16 9/21 10/9 10/20 10/21 11/14 緑色 ♀ カラスザンショウ イヌザンショウ  
※採集総数３個体。死亡１個体(L[4])。死因は感染症。羽化個体２。
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